森 |
‥‥1時間も歩いただろうか。だいぶ山の奥へと進んでいっている。
奥に行けば行くほど、ノエルやア・トールにはマイリーの強い力が感じられた。
■ アトール To:ALL |
間違いない。マイリーの力強さが強くなっている。 |
さらに30分。今度はアフルとヘルムンスが「違和感」を感じた。
「違和感」といっても不快なものではない。まるで母に抱かれているかのような安らぎを感じる。
■ ヘルムンス To:ALL |
・・・おや?この感じはいったい・・・ |
■ アフル To:ALL |
…ん? なんか変な感じがする、ふかふかの布団に包まってるみたいな… ノエルとアトールが言ってたのってこの事? |
と言い、改めてアフルはセンスオーラをした。
アフルが感じたのは、
---植物の精霊が働いています---
---大地の精霊が働いています---
---風の精霊が働いています---
---水の精霊が働いています---
---精神の精霊の強い力を感じます---
人数は変わっていないのに先ほどにくらべて、だいぶ精神の精霊の力が強くなっているようだ。
■ オジイ To:ALL |
え、アフルも感じだしたのか?ルセウスはどうなんだい? |
と言いながら、何か感じないか感覚を探るオジイ。
■ ルセウス To:オジイ |
いいや、私には何も‥‥ |
と首を振るルセウス。
■ アフル To:ALL |
うん、さっきより精神の精霊力が強くなってる。 もしかしたら誰か人がいるのかもしれない。 でも、それともちょっと違う様な気がするな… |
■ ノエル To:アフル |
これって、精神の精霊なの? じゃぁ、よっぽど強い信仰を持ったマイリーの信者さんかしら(笑) 私も・・・近づくほどに強い力を感じるようになっているのよね。 |
強い何かにひかれるように進む冒険者。
ふと、その違和感がとても大きく感じたとき‥‥冒険者の前にあるもの‥‥材質は岩だろうか?それとも石か?
外見からは、とても石とは思えないモノが現れた。
‥‥‥
それはとても慈愛に満ちあふれている。
それを見ると、精神の安らぎをとても感じる。
ただ、それは‥‥
膝を付き、祈りを捧げる形の少女。
その少女を後ろから暖かく抱きしめる形の女性。
そして、その二人を周囲の何物かから守っるように、二人に覆い被さる形を取るのが3人。
それは、とても良くできた石像に見えた。
3人の顔は分からない。しかし、祈りの形の少女と、それを抱きしめる女性の顔は冒険者の位置からも見てとれた。
■ ヘルムンス To:ALL |
・・・こ、これは・・・まさか・・・ |
■ アトール To:ALL |
いや、たぶん間違いないだろう。 |
■ ルセウス |
リ‥‥ リヴェアさんにマーシィさん‥‥‥ |
その石像は10年前の冒険者達と、生け贄に選ばれた少女だった。
冒険者が呆然とその石‥‥を見つめていると、その場にいる全員の頭の中に声が響いてきた。
■ 少女の声 |
貴方達は冒険者の方々ですか‥‥? |
■ ヘルムンス To:少女 |
確かにそうです。ミトラ君の依頼でシンディさんをたすけるためにここまで来たのですが・・・ |
■ 少女の声 |
もし‥‥冒険者の方々でしたなら‥‥‥お願いしたい事があります‥‥ |
■ アトール To:少女 |
願い? |
■ 少女の声 |
私の願いを聞いていただけますか‥‥? |
■ アフル To:少女 |
願いって、どんな? |
■ 少女の声 |
ありがとう‥‥ 私の名前はマーシィ。10年前からここにいるの。 願いというのは‥‥お願い。父を‥‥私の父を止めて欲しいのっ!! |
■ オジイ To:少女 |
お父さんを? |
■ マーシィの声 |
父は、私が生け贄となった事で村を‥‥村長さんの事をとても恨んでいるの。 それで、今回10年前と似たような手段で生け贄を村に要求して‥‥ |
■ アトール To:少女 |
今回の生け贄騒ぎは、彼の仕業という訳か・・・ |
■ マーシィの声 |
お願いっ!父を‥‥父を止めて‥‥‥ |
■ マーシィの声 |
私は生け贄になったことを恨んでいないのに‥‥父は‥‥ 私、とても悲しいの‥‥ |
■ マーシィの声 |
お願い、父を止めて‥‥‥ |
■ ノエル To:少女 |
止めるって言われても・・・ あなたのおとうさんが今どこにいてどうしているのかわからないことには止めようがないわ。 もっといろいろ教えて欲しい。なぜあなたがここでこうしているのか。10年前なにがあったのか。 あなたのおとうさんを止めるために、ね。 |
■ マーシィの声 |
10年前‥‥村の近くに魔物が住み着き、村に悪さをしたのはご存じですか? その魔物は村人を‥‥生かさず・殺さずで支配しようとしていました。 だって、村人が育てた作物、村人が捕獲した獲物を捕れば‥‥楽に生活できますからね。 しかし‥‥その村に冒険者達が滞在していたのが魔物の誤算でした。 調子に乗り、村に生け贄を求めた時‥‥ちょうどリヴェアさんの体調がよくなったのもあって‥‥彼らが‥‥今も私を守ってくださっている冒険者が魔物退治を名乗りあげてくださったのです。 でも、相手は知恵が回る魔物です。そのまま冒険者だけで魔物に近づいたら魔物にやり過ごされてしまうかもしれない‥‥ということで‥‥仮の生け贄として私が選ばれました。 父は‥‥それをとても不当なものととってしまったのですね。 私が納得しているのにも関わらず、父は半狂乱になってしまいました。 私がいくら「大丈夫」と言っても、父は「なぜおまえが選ばれなければならないんだ!!」と叫んでばかり‥‥ 私は‥‥嬉しかったのに。 どんな形であれ、『村を守る』ことをお手伝いできるって事が。 |
■ アフル To:マーシィ |
ちょ、ちょっと待って。 父って…えっと…確かエーギルさんの事?10年前に村を出ていったって聞いたけど… |
■ マーシィの声 |
ええ‥‥ 私が‥‥村に帰ってこないことを知った父は‥‥狂ったまま村を出て‥‥‥そのまま魅了されてしまったようです‥‥‥‥ |
■ オジイ To:マーシィ |
エーギルさんが魅了されたのですか。それは、……魔物の虜になったと考えて良いのですか? |
■ マーシィの声 |
父が魅了されたのは‥‥名も無き狂気の神。 私に対する思いが、あまりにも深くて‥‥そのまま狂気に魅了されてしまったの‥‥ 父は‥‥魔物には近づいていないし、そもそも魔物に対して魅了される理由はなかったはずです。 |
■ オジイ To:マーシィ |
じゃあ、お父さんは今一人で遺跡に……? |
■ マーシィの声 |
‥‥父のそばに何体か‥‥父に邪念を吹き込んでいる者達がいるみたいです。 でも、それが何なのかは‥‥私にはわかりません。 |
■ ヘルムンス To:マーシィ |
とすれば、その「邪念を吹き込んでいる者達」を倒せば、お父さんは正気に戻るかもしれない・・・と? |
■ マーシィの声 |
それは‥‥私にはわかりません‥‥ |
■ アトール To:all |
ある意味、真の黒幕とも言えるかもな。 |
マーシィの声は寂しげだ。
■ アフル To:マーシィ |
ここはなんでこんな風になってるの? マーシィさんたちが、その…石になってるのに関係あるの? |
■ マーシィの声 |
それは‥‥私が「封印」だからです。 仮の生け贄として選ばれた私は、護衛に身をやつした冒険者の方々と一緒に魔物の待つ場所‥‥ここに来ました。 それで‥‥魔物を封印しようとしたのですが‥‥予想以上に強くて‥‥私が要石になる事で、魔物を封印する事にしたんです。 それで‥‥魔物を封印する時に‥‥魔物の使い魔から‥‥みなさん私を守ってくださって‥‥‥一緒に‥‥‥。 |
その状況を思い出したのか、マーシィの声は辛く重い。
■ オジイ To:マーシィ |
ところでその魔物とは何だったのですか?知っているなら教えてください。 |
■ マーシィの声 |
古代王国の魔法実験により生まれた魔物‥‥って魔法使いの方が言っていました。 私も外見しかしらないのです。 とにかくサル‥‥オランウータンの2回り大きいものに見えました。 |
■ アトール To:マーシィ |
結局、今その魔物は、君がこんな状態になって封印されて続けているのか? |
■ マーシィの声 |
ええ‥‥魔物は‥‥まだ「封印」しています。私達が居る限り。 そして、私は「封印」をするということで村を守っていられるの。 |
■ ソフィティア To:マーシィの声 |
「封印」しているのはわかったけど、その魔物はどういった風に封印されてるの?魔物も石みたいになっちゃってるのかしら?だったら私達がこれからたおすこともできるだろうし……。 それと、その魔物を倒せばみんな元通りにもどったりできるの? 「邪念を吹き込んでいる者達」を倒さなくても、マーシィさんが元に戻った姿でお父さんの前に現れれば正気に戻るんじゃないかしら? |
■ マーシィの声 |
魔物は私達の下で眠っています。 本当は意思を持って石に固めたかったのですが‥‥私達の力では足りなかったようです。 ‥‥魔物を倒すのは‥‥よほどの方が必要かと思います。 だって、リヴェアさん達もだいぶ経験をつんだ方々でしたし。 あと‥‥魔物を倒しても‥‥私達‥‥私は元に戻りません。 「呪い」ではなく「意思」でこうなることを「望んだ」から。 それと‥‥リヴェアさん達の魂はすでに消滅していますので、どんな事をしても‥‥どんなに祈っても生き返りもできないのです‥‥。 父に会いにいければ‥‥父も狂気から開放されるのでしょうか‥‥ |
■ アフル To:マーシィ |
エーギルさんが今回の事件を起こしたってなんでマーシィさんが知ってるの? |
■ マーシィの声 |
‥‥たった二人の親子ですもの‥‥父がこの森に帰ってきたのがわかるんです。 特に父のココロが‥‥私にははっきりと伝わってくるんです。 父の声が、叫び声が‥‥狂ったまま、どんどんと膨らんでしまったココロが伝わってくるんです。 それが‥‥私には悲しくて。 私の想いが父に伝わっていないのがとても悲しいんです‥‥ |
■ アフル To:マーシィ |
エーギルさんが今居る場所ってわかる? |
■ マーシィの声 |
えぇ‥‥ この山を越えたところに滝があるんですが、その近くに古い小さな遺跡があるみたいです。 そこに父はいると思います。 |
■ アフル To:マーシィ |
沢の奥にあるって言う遺跡の事…? |
■ マーシィの声 |
‥‥たぶん。 |
■ アトール To:マーシィ |
お父さんは、そこで何をしていて、これから何をしようとしているのか解るかな? |
■ マーシィの声 |
何をしているかはわからないです。父の心は悲しみと狂気にあふれていますから。 でも、新月が近づくにつれて‥‥狂気の中に狂喜が少しずつ含まれてきているのがわかります。 |
■ ノエル To:マーシィ |
新月が近づく・・・ということは、新月が過ぎるとまた狂気が引いていくの?それから、昼と夜でおとうさんの心ってなにか違いはあるのかしら? |
■ マーシィの声 |
狂気は常に父にあります。 新月とともに大きくなるのは狂喜。‥‥自分が思い描く復讐を達成できるという喜びにあふれているんだと思います。 昼と夜では父の心には変化はありません。 そもそも‥‥父にとって「時間」は意味をなさないみたいですから。 父の時間は止まったまま。 あの日、狂気のままに村を飛び出した時間のままだと思います。 |
■ ヘルムンス To:マーシィ |
・・・1つだけ、確認しておかなければならないことがあります。 あなたのお父さんを止めるためには、最悪の場合、我々はあなたのお父さんを殺してしまわなければいけないかもしれません。 ・・・あなたは、それに耐えられますか? |
■ マーシィの声 |
‥‥‥耐えられます。耐えれると思います。 じゃなきゃ‥‥‥ |
マーシィを励ますかのように、やさしく像に触れるヘルムンス。
■ ヘルムンス To:マーシィ |
・・・わかりました。 われわれも全力を尽くすことを約束します。 |
■ マーシィの声 |
‥‥ありがとうございます‥‥ |
ヘルムンスの触れている部分。
この手が触れている部分が、こころもちしっとりと感じるのは‥‥きっと気のせいなのだろう。
■ オジイ To:ALL |
それは……困りましたね。 至急対応する必要があるでしょうね。 皆さん、この後、どうしましょう? |
■ アフル To:ALL |
さっきの川をそのままさかのぼれば遺跡があるんだよね。 だったら、今から行って見た方が良いんじゃないかな? |
■ ヘルムンス To:ALL |
私も、一刻も早くその場所へと向かったほうが良いと思います。 ただ、このまま直接行ってしまったのでは、万が一の際にこの事実を村に知らせるものがいなくなります。 ルセウスさんに、この経緯を村長さんのところまで報告にいってもらいたいとおもうのですが、どうでしょう? |
■ ルセウス To:ALL |
私が‥‥ですか? |
■ アトール To:ALL |
俺もその意見に賛成だな。 時間がたてばたつほど、おそらくやっかいになって行くんじゃないか? |
■ オジイ To:ルセウス |
それが良さそうですね。ルセウスさんお願いします。一人で迷わず帰れるのはルセウスさんしかいないんですよ。 |
■ ルセウス To:ALL |
しかし‥‥‥‥ ‥‥判りました。では、すぐに村に戻って村長に今の事を伝えて来ます。 みなさん‥‥ムリはなさらないでください。 |
■ ヘルムンス To:ルセウス |
もちろん無理はしないつもりですが・・・ もし万一、我々が明日の昼になっても帰らないようなら、ここまで来てください。 そしてマーシィさんのお父さんの悪意が変わらず感じられるようだったら・・・すぐにオランに向かって代わりの冒険者を探すことをお勧めします。 4日あれば、馬などを使えばぎりぎり間に合うかもしれません。 |
■ ルセウス To:ALL |
‥‥ オランへ行く準備はしないで待っていますよ。 ‥‥お願いです、ちゃんと生きて村に帰ってきて下さい。 ては‥‥ |
■ アフル To:ALL |
わかってるって、俺達もまだ死にたくないからね(笑)。 あくまで、「万一、帰って来なかったら」だから。 |
ルセウスは気がかりそうに後ろを振り返りながら村の方へと歩いて行った。
■ ノエル To:ALL |
じゃぁ、このまま川沿いに進んでいきましょうか。 マーシィさんのいうおつきの人たちにも警戒しながら行ったほうがいいでしょうね。 |
■ オジイ To:ALL |
賛成ですね。正念場ですし、皆さんがんばりましょう。 |
■ アフル |
うん。 |