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闇の先へ |
銀色の円盤を抜けた先は中空だった。空中から放り投げられて折り重なるように床に落ちる一同。しかし運良く怪我は無かったようだ。
ティトルが思わず取り落としたたいまつがころころと石畳の床を転がり、壁に当たって止まる。その上に、たいまつに照らされて 1 枚の鏡が浮きあがった。 鏡の中には、1 人のグラスランナーがにこにこしながら写っている。先程の声で、下位古代語で話しかけてくる。
■ グラスランナー To:ALL |
やっほー、危なかったね〜。
あのまま落ちてたらドカバキのぐちゃぐちゃだったんだよ〜 オレサマちゃんが助けなかったらどうなってたことか… |
■ ジャン=バッティスタ To:グラスランナー? |
別にどうって事なかっただろ…… やるならアフターケアまでしっかりやってくれ。 |
彼の見る先には、こんもりと人の山が出来ている。その一番下からバティが文句を言う。
やおらその一番上にゆらゆらと立ち上がった男がいた。スレイだ。いきなりしゃきっとして、指を 1 本、ビシィッツと突きつける。何故か目つきがわるーい。
■ スレイ To:ちびっこいの |
(エルフ語) 貴様、何者だっ! |
■ グラスランナー To:ALL |
あれれ、あれれれぇ? (^^; 何で怒ってるのぉ〜? |
■ ティトル To:スレイ&おおる |
うにゃぁ〜いったいですぅ〜 ってあれ誰ですかねぇ…って?! スレイさぁん?! |
■ ジャン=バッティスタ To:ティト |
おもっ…… いや、鎧が痛いよ、ティト…… |
■ ティトル To:バティ |
はっ!はぅ!! (がばっと起きる!……と余計に体重かかる?!) ご、ゴメンナサイですぅ〜!…んっと。(<どいたらしい) |
しかしその上にはさらにカナルとキレたスレイが…
■ カナル To:スレイ |
その前に、降りろ! |
■ スレイ To:下にいるの |
・・・・・・・・(じろっ) ………え、あ、カナル?あれ、みんな? |
凶悪な目でカナルを睨み付けたスレイだが、そのとたんに 3 分経過。すってけて〜と山から降りる。
■ スレイ To:おおる |
何やってるんですか、みんな?(^^; 新しい見世物ですか? |
■ ジャン=バッティスタ To:スレイ |
伝説の神業、「クーミタイーソゥ」のひとつ、「ぴらみっどくずし」にでも 見えるのかね…… |
わたくし、な〜んにも知〜りません♪ってな感じでニコニコ。 鏡の中で、腹を抱えて笑うグラスランナー。
■ グラスランナー To:スレイ |
あははははっ、キミが一番面白いよぉ〜? |
■ ティトル To:スレイ |
どっちかっていうとスレイさんが変ですよぉ〜 あの人もそれで笑ってるんですよ、きっと…… |
ティトルも賛成。よっこいしょっと起き上がると、その下にはつぶれたバティが…。
■ スレイ To:ティトル |
そうですかね?何も変なことはしていませんが…。う〜む? |
咆哮の恐怖でバーサクしてしまったことなど露知らず、一人悩むスレイ君であった。
つぶされた割には怪我はない。大事な杖も手元にある。身なりを整えて、気を取り直してカナルは鏡の中のグラスランナーに相対した。
■ カナル To:グラスランナー |
……君が助けてくれたのか? 礼を言うよ、ありがとう。 それとすまないが、他の言葉は喋れないかい? |
■ グラスランナー To:カナル |
うん、ちょっと待ってね。そこのエルフの言葉にあわせてあげる。 |
なにやらしたかと思うと、次の言葉は共通語に変わっていた。
■ グラスランナー To:ALL |
うん。これでよしっと。 どう?ちゃんと聞こえてる? |
■ スレイ To:ぐららん |
あっ、わかります。 |
■ ティトル To:おおる |
ほえ〜。 なにいってるかやっとわかりますねぇ〜(^-^) |
安心したところで、スレイはグラスランナーを写した鏡をじっくり観察してみる。残念ながら、どういう鏡であるかはよくわからなかった。 あきらめて周囲に気を配って見ると、後ろの方で水音が聞こえる。が、危険な感じではなかった。
■ カナル To:グラスランナー |
ここは、何処なんだい? ゲートをくぐり抜けてきたようだが。 |
カナルは魔術師、先程の銀色の円盤がいわゆる古代語魔法の『ゲート』で作り出されたものであることに気づいていた。
■ グラスランナー To:ALL |
ここ?ここはお師匠様の家の地下だよ!
ゲートはオレサマちゃんが出したのさ、スゴイだろう〜。 もー、ずーっと誰かが来てくれるの待ってたんだよぅ。 早くオレサマちゃんをここから出してよ! |
■ カナル To:グララン |
出してくれと言われてもな……。 ともかく、君は誰なんだ? お師匠様とは? |
■ グラスランナー To:カナル |
オレサマちゃんはお師匠様の一番弟子さ!
お師匠様はお師匠様、ラングドーフ様っていう
エラーい魔法使いだ! ね〜、それはいいからさぁ〜。 出して出して出して〜、出してよぉ〜。 もー、ここにじっとしてるの飽きちゃったよ〜。 |
■ ジャン=バッティスタ To:オレサマ |
乱愚豆腐? 知らんな、そんなやつは。 |
コレコレ。
■ カナル To:グララン |
(やはり、ラングドーフの……) 飽きたのならば、さっさと出てくれば良いんじゃないか? それとも、出られないわけでもアルのか? |
■ グラスランナー To:カナル |
出らんないから頼んでんじゃないか〜。ヒドイよヒドイよ。
お師匠様に閉じ込められちゃったんだよぅ。
自分じゃ出らんないんだよぅ。 いーよ、オマエが出してくんないなら… |
■ スレイ To:ぐららん |
いいえっ、わたし達がだ―――― |
グラスランナーの口が今にも泣き出しそうにM字型になるのを見て、慌ててスレイがとりなそうとするが…
スレイの背後の円盤から、何かが落ちて来た。
■ スレイ |
え”? |
ぐしゃ…
遅れて円盤に飛び込んだジルとリグが、ここで中空に放り出された。 守るようにしっかりリグを抱きかかえたジルと、その腕の中で涙ぐんでいるリグ。
■ リグ |
クスン、いった〜・・・・・くない? |
■ ティトル To:ジル&リグ |
ああ〜!リグちゃん〜ジルさぁん(^-^) ご対面です〜 |
ティトルの顔を見たとたんにぱぁっと笑顔になるリグ。
■ リグ To:ティトル |
ああぁっ!ティトル姉ちゃんにみんなだー!。 すぐに、会えてよかった〜。 でも、スレイ兄ちゃんが見当たらないけど何処にいるの? |
■ カナル To:リグ |
良いクッションがあって良かったな。 |
■ ジャン=バッティスタ To:リグ |
まったくだ。 |
そこには、リグの下で耳をピクピクさせてつぶれるスレイの姿が…
■ スレイ |
………きゅう……… |
■ リグ To:スレイ |
えっ、良いクッション・・・? フニフニ ああ!ごめんねスレイ兄ちゃん。 痛いところ無い? |
■ スレイ To:リグ、ジル |
イテテテ………。とぉっても、ぱわふりゃーでした(^^; 鳥が焼き鳥になってらりるれろ〜って感じですぅ………(←?) あぁ、焼き鳥が食べたいですねぇ〜(じー) |
笑いながらリグをジーっと見つめる。どうやら、どこかで『おねだり』という術を学んだらしい。
さぁ、みんな元気で再会できたことを神に祈ろう。 しかし、喜ぶ彼らの背後で、銀色の円盤は静かに消えていった。
■ ジャン=バッティスタ To:ジル |
最近のエルフは打たれ強いんだな、けけけ…… |
悪い仲間がいるらしいね(笑)
鏡の中のグラスランナー |
■ グラスランナー To:ドワーフ |
あっ、ドワーフのおっちゃん! オレサマちゃんをここから出しておくれよ〜 |
一方グラスランナーの方は、ジルを相手に必死の訴え。 しかし、リグはあんまり気に止めず。
■ リグ To:スレイ |
スレイ兄ちゃん、あの子は誰なの? |
■ スレイ To:リグ |
わたし達を助けてくれた人みたいです。 どうやら、閉じ込められているみたいですね… そうそう、やはりここは魔法使いさんのお家らしいですよ。 だからあんな罠があったんですね… ---- |
スレイ、魔法使いの使う罠は陰険だとラーニング。
■ カナル To:グララン |
理由もなくそんなところに閉じこめたのなら、お師匠様って言うのは 酷い奴だな。 |
■ グラスランナー To:カナル |
ちがうよ!お師匠様はひどくなんかないよ。 オレサマちゃんが、その、ちょこっとばかりやんちゃしたから、 お師匠様は反省させるつもりでここに閉じ込めたんだよ。 お師匠様の大事な日誌とか、道具とか持ち出したりしたから… でもそれから一万日位数えたんだけど、誰も来てくれないんだ… き、きっとお師匠様オレサマちゃんのことなんか、 わす、わすれちゃって…(:_:) しくしくしく… |
■ カナル |
1万日だって? ラングドーフが来なくなってから30年ぐらいだとでも言うのかよ……。 それはともかく、この鏡の中が特別なのか、この場書が特別なのか、 はたまたこいつがまるっきりのでたらめを並べているのか。 もし、この場所の時間の流れがおかしいとか言うのなら、この場に とどまるのは考え物かも知れないな……。 |
■ ジャン=バッティスタ To:カナル |
その「オシショウ」さんとやら、もう死んでんじゃねぇの。 魔法使いってのは爺ぃばっかりだからな |
それを聞いてさらに泣くグラスランナー。
■ スレイ To:ぐららん |
わわわ(^^; そんなことないですよ、きっとラングドーフさんには事情があったんですってば! 可能ならばわたし達が出してあげますから。ね、だから泣き止んで?(あせあせ) そうそう、わたしの名前はスレイっていうんです。あなたのお名前は何て言うんです か? (^^) |
涙を拭いて上げたいところだが、相手が鏡の中ではそれもできない。 グラスランナーを慰めながら、仲間には「これでいいよね?」と目配せする。 カナルは仕方がないな、と言う顔をしてみせる。
■ グラスランナー To:スレイ |
ひっく、ひっく… な、名前?ナマエ…わすれちゃった。 だってぇ、誰もオレサマちゃんの名前呼んでくれないし… しくしくしく… |
■ ジャン=バッティスタ To:オレサマ |
さっきから気になっていたんだけどな、 自分を「俺様」という一人称で呼称していいのは、俺様だけなんだぜ? |
むむ、ライバル出現?
■ カナル To:グララン |
どうすれば出られるんだ? |
■ ティトル To:カナル&ぐららん |
ほぇ?う〜ん…あっ! カナルさんっ、カナルさん!、あの鏡ぱか〜ん!って割ったら じゃじゃや〜ん♪って出られないですかね?? |
■ カナル To:ぐららん |
……と言ってるが、どうする? |
■ スレイ |
う〜ん、単純明解(^^; |
■ グラスランナー To:ALL |
わ〜い、割っちゃって割っちゃって〜 オレサマちゃんもそれがいいと思う〜 (^^) |
このノリに、なんとなく不安を感じるカナル。
■ カナル To:グララン |
……おい、出方は全く知らないんだな? この鏡が割れたら、一緒にお前さんも割れてしまう可能性はないのか? |
■ グラスランナー To:カナル |
……? オレサマちゃん、わかんない… |
■ ジャン=バッティスタ |
割れた破片の数だけ分身したりしてな、けけけけけ |
そしてグラスランナーのちっちゃい分身がバティにたかる、と。わらわらわらわら…
■ カナル To:グララン |
ラングドーフの部屋には行けないか? もしかしたら、何かこの鏡について書かれていることが あるかも知れないからな。 |
■ スレイ To:カナル |
確かにちょっと不安ですね…。もう少し情報が欲しいところです。 |
■ グラスランナー To:カナル |
お師匠様の部屋は上だよ。 あっ、でもお師匠様の書いたモノならちょっとだけここにあるよ〜。 ほらっ、そこの隅っこのところ。 |
■ カナル To:ぐららん |
どれどれ…… |
グラスランナーの指す方に行ってみると、確かに何冊かの本が積んである。 一冊取って開いて見ると、中身は下位古代語で書かれていた。かなりたくさんあるようだ。それぞれの表紙には「日記」と書いてある。どうやら、これはラングドーフの個人的な日記のようだ。彼の研究についてもかなり書き込まれている。 カナルは鏡についての記述を求めて真剣に読み始めた。
それを横目に、今度はスレイが質問を代わる。
■ スレイ To:オレサマちゃん |
じゃあ、気になっていることを少し質問していいですかね? |
■ グラスランナー To:スレイ |
うん、なーに?何でも聞いてよ! |
■ スレイ To:オレサマちゃん |
まず、どうやってわたし達を助けてくれたんですか? 実は全然覚えていないんですよね…(^^; |
■ グラスランナー To:スレイ |
この鏡の中にいると魔法が使えるんだ〜。 みんながドラゴンのおっちゃんを起したから気づいたんだよ。 あのまま落ちちゃうと、すっごい深い穴になってるからアブナイと思って、何とかしなきゃと思ったら、こうなったの。 |
■ スレイ To:オレサマちゃん |
そうですか、危ないところをありがとうございました(^^) でも、思うだけで魔法が使えるのですか?それは凄いですねぇ… (グラスランナーは魔法が使えなかったんじゃ…?) |
そのとおり。
■ グラスランナー To:スレイ |
スゴイだろ〜。えへへ。 |
■ ジャン=バッティスタ |
ぢゃあ、自分でそこから出る魔法も唱えろよ…… |
気を取り直して、質問再開。
■ スレイ To:オレサマちゃん |
そうそう、ラングドーフさんってどういう人なんですか? |
■ グラスランナー To:スレイ |
ラングドーフ様はオレサマちゃんのお師匠様さ。 えらい魔法使いで、オレサマちゃんはお師匠様がここに来るまえからずーっと一緒にいる一番弟子なんだ〜。ラングドーフ様はすっごく偉くて、オレサマちゃん達にもすっごく優しいんだよ。 |
■ スレイ To:オレサマちゃん |
”達”ってことは他にも人はいるのですか? |
■ グラスランナー To:スレイ |
オレサマちゃんと、デュナンと、お師匠様の 3 人だよ。 デュナンてのはオレサマちゃんの弟ね。 |
■ スレイ To:オレサマちゃん |
この家の構造とかはどうなっているのですか?あと、ここは一体? |
■ グラスランナー To:スレイ |
上(地上)は研究室とか住むところとかで、ここはゴミ捨て場。 …あと、オレサマちゃんの秘密基地でもある。ヘヘ |
■ スレイ To:オレサマちゃん |
秘密基地ですか、いい感じですね(^^) ”上”って言いましたけど、あのスゴイ眺めの良いところですか? |
■ グラスランナー To:スレイ |
そう、お師匠様が空飛ぶ街を出てから最初に着いた所があそこだったんだ。 だから、そこにお屋敷を作った。 |
■ ジャン=バッティスタ |
(空飛ぶ街? どこだそれは…… まさか、落ちた都市のことぢゃねぇよな……) |
■ スレイ To:オレサマちゃん |
ここに危険はありますか? |
■ グラスランナー To:スレイ |
ここは危なくないよ。罠なんかないさ。
だってオレサマちゃんの秘密基地だぜ? まぁ、ゆっくりしてってよ。 |
■ スレイ To:オレサマちゃん |
そうですか。あの扉以外の罠はないんですね…?ちょっと安心です(^^) |
■ グラスランナー To:スレイ |
罠?…そっか。 入りかたを知ってるのは弟子であるオレサマちゃん達だけだから、 知らない奴にとっては罠なんだね〜 |
■ ジャン=バッティスタ |
(あの言い方、他にも「罠」があるかもしれないな……) |
注意しておくに越した事はないようだ。
■ スレイ To:オレサマちゃん |
ところでアナタはどこに閉じ込められているのです?まさか本当に鏡の中なんですか? |
■ グラスランナー To:スレイ |
ここだよぅ。鏡の中さ。 ちょっと悪さが過ぎちゃって、お師匠様に閉じ込められちゃったんだ。 でも、もうそろそろ出してくれてもいいと思うんだけどなぁ… |
スレイは、鏡は単なる通話装置で、本体はどこか別の場所にあるのだと思っていた。 しかしどうやら、グラスランナーは鏡自体に閉じ込められているらしい。
■ スレイ To:オレサマちゃん |
そういえば、なんでキミはこんなに長生きしてるんですか?(^^) |
■ グラスランナー To:スレイ |
長生き?エルフに言われたくないなぁ〜、それ。 人間とかから比べたら長生きかもしれないけど、オレサマちゃんは普通だよ |
■ スレイ To:オレサマちゃん |
………(やはり時代が違うことに気がついていない…?) あっ! す、好きな食べ物はなんですか?(汗 |
■ グラスランナー To:スレイ |
スイカ!(^^) |
ごまかす言葉が見つからなくて、ちょっと困り耳のスレイ君。
■ スレイ To:オレサマちゃん |
はぁ、スイカですか…。おいしいですよねぇ、ハハハ(^^; |
■ グラスランナー To:スレイ |
そうそう、この鏡に閉じ込められた時もスイカ食べてたんだよな〜。 お師匠様が『○○××〜』って言ったら、すぃ〜って鏡に吸い込まれちゃったんだ。あっと思って見てみたら、オレサマちゃんが床に倒れてるじゃん!も〜、すっごいビックリしたんだ。 ちなみに、この鏡もお師匠様が作ったんだよ。スゴイだろ〜? |
■ スレイ To:オレサマちゃん |
そ、そうですね(^^; (自分が床に倒れていた…?) |
何だかちょっとづつへんてこなグラスランナーの返答に、考え込みモードに入るスレイであった。
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