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図書館 |
魔術の塔を駆け下りたバティは軽い足取りもそのまま、ホールを左に折れてお目当ての図書館へ直行した。
図書館のエントランスには司書のユージア・クオレイトがいた。背中を向けていたが、誰か入ってきた気配を感じて声をかける。
■ ユージア To:誰? |
会員の方ですか? お探し物でしたらお手伝いいたしましょうか。 |
エントランスを抜けると、そこは書庫。 いつものように古い本の匂いが立ち込めている。
広い室内には高い天井に届かんばかりの本棚がびっしり立ち並んでいて、脚立がいくつも立て掛けられている。 膨大な数の本が納められているがよく分類・整理されているので、アテがあれば目的のものを探すことは可能だろう。
バティは先程までに得られた情報をキーに、図書館でデータを増やすつもりだ。
■ ジャン=バッティスタ To:ユージア |
会員番号305496278162439のジャン=バッティスタってもんですけどちょっと調べものをしたいんでね この図書館で四行詩について扱っている書架はどのあたりかい? できれば「ラングドーフ」ってのに関連しているといいんだけどね。 |
■ ユージア To:ジャン=バッティスタ |
あら、ジャン=バッティスタでしたの。お久しぶり〜 第 48 室が詩歌に関する書庫で四行詩は第 3 架 4 段よ。 |
図書館の全ての本棚が彼女の頭の中に畳み込まれているようだ。迷いもなく答える。
■ ジャン=バッティスタ To:ユージア |
そしたら俺の方でも勝手に文献当たって見るから、あんたの方でもちょっと調べてくれないかね 図書館司書ならオチャノコだろ? |
■ ユージア To:ジャン=バッティスタ |
あら、もちろんよ。 「ラングドーフ」は人名ね。詩人の名前なの? |
■ ジャン=バッティスタ To:ユージア |
っと、魔法使いだ、多分…… じじぃだと思う。 |
■ ユージア To:ジャン=バッティスタ |
老魔法使いを詠った詩なわけね。判ったわ。 |
バティからもらった手がかりを元に、ユージアも協力する。強力な助っ人になりそうだ。
知識の塔 |
バティに遅れてセシリアの研究室を辞した一向は、階段を降り塔の 1 階からホールに出た。来た時には、ここに学院生がたむろしていたが、今は 1 人 2 人が通り過ぎるだけになっている。
ホールに漏れる陽の光は傾き、既に時刻が午後をかなり回ったと感じさせる。 思いの他セシリアの部屋に長居していたようだ。
ホールを右に横切ると知識の塔へ到着する。一向は塔の入り口へ。
ものめずらしさと建物の大きさに、目を丸くしているのはティトル、スレイ、リグのトリオだ。
■ ティトル To:独り言 |
なんだか広いところですねぇ… |
■ スレイ To:相づち |
そーですねぇ… |
■ リグ To:相づち |
ほんと、広いねぇ… 目が回りそう。 |
その後ろからジルとカナルが、こちらは慣れたもので堂々とやってくる。
その時、彼らは前を歩いている 3 人の横から、てんこもりの羊皮紙やら箱やらの大荷物を抱えて前も見ずによろよろ歩いて来る男性に気づいた。このままではぶつかってしまう、とジルが注意を促すが…
■ ジル To:ティトル&スレイ&リグ |
ほれティトル、スレイ、リグ。きちんと前を見て歩かんと危ないぞ。 |
■ カナル To:ジル |
いや、もう遅……。 |
そのとたん、男性は最後尾のリグにどすんと体当たり!しかし何故かリグに当たり負け、続いて持っていた荷物をスレイの上に盛大にぶちまけた。そして、そのまま勢い余ってティトルに突進!
■ ティトル To:男性 |
わわっ! なっ何?! |
さすがのティトルもこれにはびっくり。しかし、突進する男性をがっしりと受け止めた。狩人時代に熊と相撲を取っただろう彼女である。パーティの 2 大怪力自慢の娘たちにあってはまるで木の葉のようだ(ちょっとオーバー)。
■ 男性 |
……あぁぁ |
ひらひらと最後の羊皮紙が舞い落ちる陰から、いつのまにか近づいたカナルがティトルの腕の中で呆然とする男性に手を差し伸べる。内心『ここにバティが居なくてよかった…』と思いながら。
■ カナル To:男 |
これはこれは、とんだ災難でしたね。 失礼ですが、バイナル師ですよね? 丁度良かった。今からお尋ねしようとしていたところなのですよ。 |
カナルは同じ学院に勤める者として、バイナルのことを見知っていた。 起き上がるのに手を貸す。 バイナルも我に返って慌てて起き上がる。 女性の腕に抱きとめられるという滅多にない経験をしたためか、ちょっと顔が赤い。
■ バイナル To:抱きとめてくれた女性 |
こ、こっ、これは失礼、お嬢さん。 |
■ ティトル To:バイナル |
ほぇ? あ、ああ。いえいえですぅ〜(^-^)それより大丈夫ですか? |
■ バイナル To:魔術師 |
うぅ、大丈夫だ。
…よっこらしょ、と むぅ、いかにもバイナルだが、何か用事かね?諸君らは何者だ? …と、それより。 大丈夫かね? |
まともにぶつかってしまったリグに向かって、済まなそうに言う。
■ リグ To:ALL |
わたしは大丈夫だけどスレイ兄ちゃんが大変な事になってるよぉ。 |
■ スレイ |
…きゅう… |
リグが指差す先には、羊皮紙の山やら箱やらに埋もれたスレイが、正確にはスレイの耳だけがピクピクと動いていた…。
■ ジル To:独り言 |
エルフも歩けば棒に当たるとはまさにこのことじゃな。。。 |
注意一秒怪我一生。
これを見て、ティトルが慌てて駆け寄る。
■ ティトル To:スレイ |
はやぁ〜 大丈夫ですかぁ〜スレイさん(^^; |
荷物の山をかき分けると、どうにかスレイの頭が見えた。
■ スレイ To:ティトル |
はふぅ・・・なんとか生きてます(^^; こんなのに埋まったのは初めての経験ですよ。 いったい何が起きたのですか? |
■ ティトル To:スレイ |
う〜んなんだかどんっ、ばさっ、どさっ!ってなったですね〜 |
身振り手振りで説明するが、いまいち要領を得ない。後を引きとってリグが解説する。
■ リグ To:スレイ |
わたし達がよそ見していてこのおじさ・・・、ううん、バイナルさんにぶつかっちゃったんだよ。 |
■ スレイ To:ティトル、リグ、バイナル |
ははぁ、そんなことがね・・・(^^; すみませんでした。わたしの前方不注意です。 |
■ バイナル To:ALL |
いや、こちらも前をよく見ていなかった。済まなかったな。 |
どうやら、当たった相手が善人だったとみて、バイナルも心の底から謝罪する。 状況が落着したと見て、カナルがセシリアの紹介状を手に、さりげなく本題を切り出す。
■ カナル To:バイナル |
申し遅れました。 私は、セシリア導師に師事しておりますカナルと申す者です。 バイナル導師に、少々お尋ねしたい事があり、こうして伺って 参りました。 |
■ バイナル To:カナル |
ほぅ、確かにこれはセシリア導師が使われる印だな。これは失礼した。 立ち話も何だ。研究室へ行こうか。 |
バイナルはカナルの差し出した書面の封に、真偽を見たようだ。 散らかした荷物を片づけにかかる。
■ リグ To:バイナル |
さっきはごめんなさい、怪我はしなかったですか? お詫びに荷物重そうですからわたしが運びますね、何処に運べばいいんです? |
■ バイナル To:銀髪のお嬢さん |
あ、いやいや。女性に荷物を持たせるなど… |
■ ジル To:カナル |
どうやら、男に持ってもらいたいみたいじゃぞ。カナル。 |
■ カナル To:ジル |
俺に、何を期待しているんだ? |
後ろでは野郎 3 人でさりげなく荷物持ちの攻防戦を繰り広げている。
■ リグ To:カナル |
カナル兄ちゃんには無茶させれないよぉ。 これぐらいの荷物ぐらいわたし一人で持てるから。 |
そんな男性達を尻目に、リグは先程バイナルが苦労していた大荷物を楽々と抱えあげた。そして笑顔でバイナルを振り返る。
■ リグ To:バイナル |
ね、大丈夫でしょバイナルさん。 さ、研究室に行こう。 |
■ バイナル To:銀髪のお嬢さん |
あ、あぁ。それじゃこっちに… |
そんなこんなで、こちらの一行はようやくバイナルの研究室へとたどり着くのだった。
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