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賢者の学院 |
カナルの先導で難なく学院の受付をパスした一行は、学院内部へと足を進める。 学院生がたむろしているホールを抜け、導師居室のある塔へ向かう。
以前来た時と変わらず、骸骨やアヤシイ置物の多い廊下を抜け、数人の導師や学生とすれ違い、塔内を歩くこと数分。とある部屋の前にたどりつく。
よく磨かれた樫の木の扉に、金属の名札がひとつ。
そこにはジルとバティ以外の DreamWeaver にはお馴染みの名前、「導師 セシリア」と書かれている。
カナルは何のためらいも無くそのドアをノックした。
■ カナル To:セシリア |
セシリアさん、入りますよ? |
■ セシリア |
お入り。 |
中からは短い答えがあった。
ドアを開けて室内へ入ると、10 代後半と思われる少女が机の前から立ち上がり一行を迎える。短く切り揃えられた白髪に切れ長の知性的な黒い瞳。 背筋をしゃんと伸ばしてこちらを見ている。
その目が少し微笑んだように見えた。
何を隠そう、彼女こそが DreamWeaver カナルの師匠、セシリアである。
魔法のお茶会 |
■ セシリア To:ALL |
ああ、弟子カナルとその仲間かい。良く来たね。 |
■ ティトル To:セシリア |
こんにちはぁ〜セシリアさん(^-^) 前にゆってたケーキの魔法、できました?? |
ティトルはセシリアの顔を見るなりこう切り出した。
スレイとティトルの間では、セシリアの研究テーマは「ケーキを作る魔法の研究」になっている。スレイもゴクリとつばを飲み込んで答えを待っている。
セシリアは相変わらず冗談とも本気ともつかない表情で平然と答えた。
■ セシリア To:ティトル |
あたしを誰だと思ってるんだい?お嬢ちゃん。 今まさに試食をしていたところさ。 |
と指差す机の上には小さなガトーミルフィーユと紅茶が載っていた…
■ スレイ To:セシリア |
つ、ついに完成したんですねっ!? |
衝撃の事実にスレイの耳が感動に打ち震えている。 彼の脳裏にはセシリアが山盛りのケーキを背景に諸手を広げて出迎えるシーンが明滅していた。
ティトルも目をキラキラと輝かせて期待に満ちた表情。
■ ティトル To:セシリア |
さすがです〜(^-^) あとで見せて下さいね★ |
そんな期待の眼差しを受けて、セシリアは涼しい顔でうなづいている。
カナルはそんなようすを見て心の中でコッソリ白い目。
■ カナル |
(嘘つきばぁさんが……) |
が、そんな考えはおくびにも出さずに、礼儀正しく本題に入る。
■ カナル To:セシリア |
前回も似たような理由で来たように記憶しているのですが、 地図を見せて貰えませんか? |
■ スレイ To:セシリア |
あぁ、また宝探しなんですよ(笑) |
■ ティトル To:セシリア |
あ(^^; そうなんですぅ〜宝物探すのに地図みしてもらうんでした、てへへ |
スレイとティトルはカナルに言われてようやく本当の目的に気づいたらしい。 スレイは慌てて地図を取り出して広げる。
この間、ジルは訳がわからんというようにぼーっと立っていた。 リグとバティは大人しく待っていた。セシリアはスレイの出した地図になるべく触らないように覗き込む。
■ セシリア To:スレイ、カナル |
…随分と汚いんだね。 ところで、弟子カナル。何か忘れちゃいないかい? 何度言っても覚えないのは相変わらずだねぇ…。 |
■ カナル To:セシリア |
そこのテーブルの上にも何かあるでしょうに……。 一応買ってきましたがね。 その代わりと言っては何ですが、お茶でも入れて下さいよ。今回は、 人数分買ってきましたから。 |
■ セシリア To:カナル |
いつから師匠に要求するような子になったんだろうねぇ? “自分がいれます”という謙虚さは何処へ置いてきたんだろう。 お前の母親にはそういう所がちゃーんとあったのに… |
と、カナルの後ろの棚を指差す。 そこにはポットとお茶の葉とカップがなぜか人数分ある。
■ スレイ To:カナル |
お、カナルがお茶を入れてくれるんですか? う〜ん、初めてのことですねぇ。ありがとうございます(^^) |
■ カナル To:セシリア |
……まあ、構いませんがね。 |
しぶしぶお茶煎れ作業にかかるカナル。珍しい光景だ。 ティトルやリグは食べるの専門なのでどうやら手伝わないらしい。
カナルがお茶を煎れている隙にお土産のケーキを取り出すセシリア。 中身を確認して悲しそうにつぶやく。
■ セシリア |
…あぁ、チーズケーキしかないんだねぇ…おかしいねぇ… あたしは“チーズケーキも”って言わなかったかねぇ… |
■ セシリア To:カナル |
ならば、丁度良いじゃないですか。 その完成した魔法とやらを見せて下さいよ。 |
背中を向けてお茶をいれながら、振り返りもせずにこう答える。
■ ティトル To:セシリア |
わぁ〜それじゃぁ、ケーキの魔法見せてくれるんですかぁ(^-^) チーズケーキじゃなかったら何が出来るんですかぁ? |
やっぱり話題はケーキに戻る。
ワクワクしてティトルが尋ねる。スレイはティトルの横で大きくうなずいている。 セシリアは慌てず騒がず、お土産のチーズケーキを分けながらしれっとこう答えた。
■ セシリア To:ティトル |
ケーキなら何でもできるがね。 残念だが、魔法はそうそう人様に見せびらかすようなものじゃないんだよ。 |
■ スレイ To:セシリア |
はぁ、そういうものなんですか・・・ それじゃあ、こんど遊びに来たときに見せてくださいね♪ |
■ セシリア To:スレイ |
いいともさ。 ざっと 4000 ガメルくらいにまけておいてあげるよ。 |
■ スレイ To:セシリア |
よ、4000がめる・・・・・う〜む。 |
にっこり笑うセシリアを見て、苦悩するスレイ君であった…
パズル?! |
カナルの煎れたお茶はけっこう美味しかった。
それとチーズケーキで一息ついた DreamWeaver とセシリアは、ようやく本題に入るのだった。
■ スレイ To:ALL |
そろそろ地図を調べてみましょうか? |
■ セシリア To:ドワーフ |
地図はいつもの所にあるから… 貴方の後ろです、黒髭のドワーフ。 その、箱の中に入っています。 |
立ってる者はドワーフでも使え、ということで、後半はドワーフ語でジルの後ろの一番下の棚を指す。キョロキョロしていたジルもこれには驚いたようだ。
■ ジル To:セシリア |
これは驚いた。ワシはドワーフで無いものがワシらの言葉を話すのをはじめて聞いたぞい。 魔術師というのは、偉いもんじゃのう。 |
ところが、もう一人ドワーフ語を聞き取ったヤツがいた…
■ ジャン=バッティスタ To:スレイ |
スレイ、地図はその箱の中だそうだ……けど、 蓋に仕掛けがあってパズルを正しく解かないと箱が爆発するそうだ。 気を引き締めて作業に取り掛かってくれたまへ。 |
■ ティトル To:バティ |
うにゃ? バティさんセシリアさんのゆったことわかったんですか〜さすがですぅ。 箱ってあれですか??パズル?? |
ところが、最初に反応したのはティトルだった。
■ スレイ To:バティ |
ほへぇ。 これにそんな仕掛けがあったんですか。 前に来たとき、カナルは簡単に開けていましたよねぇ・・・。 |
■ ジャン=バッティスタ |
…… |
ティトルとスレイは、棚の前に座り込んで、ああでもないこうでもないと地図の入った箱の蓋を観察している。バティは、ナナメ下に視線をそらして口笛吹いて知らん振り…。
その心は「ティトルまで信じちまったぜ、バツ悪りぃ…」
そしてセシリアのフォロー(?)。
■ セシリア To:ドワーフ |
…そこの男も理解しておるようですね。 内緒話には重宝することでしょう。 |
しかし、無い物はないのである。スレイとティトルが必死に観察しても、蓋の謎は一向に解けず。スレイは箱を指差しながらティトルと相談。
■ スレイ To:ティトル |
むむむむ・・・・・。 (・・・・わかりませんねぇ(^^;)) ティトルはどうです? |
■ ティトル To:スレイ |
むむぅ〜 わかんないですねぇ………む〜(--;) ……… えいっ! |
痺れを切らした直感行動娘ティトルが思い切って蓋を取った!
…箱の蓋はスポッと開いた。
■ ティトル |
はれっ?? |
■ スレイ To:ティトル |
おぉ、ティトル! いつの間にパズルを解いたんですか!? いやぁ、ティトルもあなどれませんね〜 |
拍子抜けして蓋を持ったまま呆然とするティトル。
スレイは蓋を振ったりひっくり返したりして調べてみるが何もみつからない。 魔法のパズルでもかかっていたのかと、一人納得している。
■ ティトル To:スレイ |
え?えっ? ……てへへ〜(よくわかんないが誉められたので照れてみる) |
こうしてティトルの勇気によって禁断の(?)箱は開けられた。いよいよ二つの地図を広げて見比べる。スレイの地図の場所を特定するのだ。
しかし…
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