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砂漠の町への旅(#24参照)から戻り、次の仕事までの短い休日に思いきり羽を伸ばす冒険者たち。そんな日常にも、話の種は転がっているものである。
そんなある日のオラン。今日はよい天気で風も穏やか。
そぞろ歩きに誘われる一日。
オラン食い倒れツアー |
銀の網亭の朝はいつものように始まっている。 おやじはカウンターで仕込み作業をしていた。外の天気を見ながら、独り言。
■ おやじ |
今日も良い天気だな。馬小屋の掃除でもしちまうか… |
そんな横を、バティとティトルのコンビが話をしながら通り過ぎる。 いつものように、お出かけのようす。
■ ティトル To:バティさん |
バティさぁん☆今日はどこに行きましょうねぇ〜 最近トリさんばっかりだったんで、今度はお魚にしましょぉ(^-^) あ、辛いのもいいですね〜う〜ん あ、オヤジさん〜またちょっとお出かけしてきますぅ〜(^-^) |
おやじは手を振ってお見送り。
■ おやじ To:ティトル、バティさん |
おお、行っといで〜 |
■ ティトル To:オヤジさん&バティさん |
はぁい〜いってきまぁすっ! さ、れっつごぉです〜(^-^)うっきうっき〜♪ バティさん、何食べたいですかぁ〜? |
■ ジャン=バッティスタ To:ティトル |
なんでもいいよ。ティトがうまそうにほおばっているのが見れたらな。 辛くて魚料理だったら…… とりあえず市場にでも行ってみるか? |
■ ティトル To:バティさん |
はぁい☆ じゃぁ、市場にゆきましょぉ〜♪ |
2 人は元気よく宿を後にした。
ロック=エーテンの武具の店 |
いつもの武器屋はいつものように開店していた。
ロックとビティの兄妹も揃って店で商品の手入れに余念がないようす。店内からはこんな声が聞こえて来る。
■ ロック To:ビティ |
ほら、見て下さい、ビティ。
また新しい武器が手に入ったんですよ。 この鏃の美しいこと… きっと磨いたらもっと奇麗になりますね。 |
■ ビティ To:ロック |
もう、お兄ちゃんたら。 ちょっとは手間賃を惜しんでよね。それでなくてもうちは… |
そこにふらりと現れたのはスレイだ。
■ スレイ To:ロック、ビティ |
こんにちわっ、今日もいい天気ですね〜♪ |
■ ロック To:スレイ |
いい天気ですね。いらっしゃいませ、スレイさん。 |
スレイは店主の挨拶に軽く答えて、くるりと店内を見渡した。
店内には所狭しと数々の武器防具のたぐいが並べられている。 傍目にはどうやって使うのかわからないようなものまであるが、これはロックの研究材料なのだろうか。
■ スレイ To:ロック |
相変わらず、沢山の武器・防具がありますねー。 あ、そういうお店なんだから当たり前ですよね(笑) |
■ ロック To:スレイ |
お誉めいただきありがとうございます。 品揃えでも品質でもオラン一を目指しておりますので。(^^) 今日は何をお探しですか? 今日のお勧めはこちらの鎧なんですよ。(^^) こちらのハードレザーはシカの皮を何枚も重ねてありまして、 特に軽く丈夫にできております。このエッジの取り具合といい、 各パーツのバランスといい… |
またもや愛する武具の蘊蓄が始まってしまおうとするところで、あやうく妹のフォローが入る。ビティは、カウンターで陶酔している兄を押しのけて接客を始める。
■ ビティ To:スレイ |
そ、それで、今日は何をお求めでしょうか? |
■ スレイ To:ロック、ビティ |
ははは、鎧は間に合ってますよ(笑) |
そういえは、スレイはすでに高品質な鎧を使っているのだった。 顧客管理もしっかりせねば… と笑顔の裏に思うビティだった。
■ スレイ To:ロック、ビティ |
今日はすこし特殊なものを買おうと思うんです。 銀製のアローなんですけどありますか? |
■ ビティ To:スレイ、ロック |
あら、それは丁度良かったわ。 先程新しい銀の鏃が入荷したところなんですよ。 確か矢柄と羽をつけてもらったのが何本かあったわよね、お兄ちゃん? |
■ ロック To:ビティ |
…外して磨き直そうと思ってたのに… |
渋る兄を目線で黙らせるビティ…
焦る兄。
■ ロック To:スレイ |
(汗)1ダースでよろしければすぐお出しできますよ。 価格は50ガメルになりますが。 |
確認するようにスレイを見る。スレイは兄弟の無言の攻防には気づかずに、上機嫌に答える。
■ スレイ To:ロック、ビティ |
これは運がよかったですね。あるかどうか不安だったんですよ。 さすがは、ロックさんのお店(^^) じゃあ1ダースお願いしますね。(ごそごそ)…ハイどうぞ。 |
と言って、50 ガメル差し出した。ロックはこれを受け取って確認する。
■ ロック To:スレイ |
はい、確かに。 では、こちらがアローです。どうぞ。 |
銀の矢を受け取りながら、スレイは嬉しそうに思い出話。
■ スレイ To:ロック、ビティ |
前回の冒険でね、普通の武器が効かないモンスターに出会ったんですよ(^^) 仲間に魔法使いがいましたから大事にいたりませんでしたけど、 万が一ってこともありますからねー。 だから念のために銀製のアローを準備しておこうと思ったんです。 |
■ ロック To:スレイ |
なるほど、それは大変でしたね。 その矢も出番がくれば喜んで役に立つことでしょう(^^) |
こちらは武器が役に立つと知って嬉しそう。ビティもとりあえずニコニコして、平和な雰囲気が流れている。
すると、近所の「時忘れのお店」の主人が入ってきた。手にはボロ布を持っている。
■ おやじ To:ロック |
武器屋、いるかの? |
■ ロック To:おやじ |
おや、どうされました?「時忘れ」の。 |
■ おやじ To:ロック |
お前さんが前言っとったのに丁度いい物が手に入ったので
見せに来たんじゃがの… |
ここでちょっとスレイの方を見て、「来客中か」というように
■ おやじ To:ロック |
後にするか? |
■ ロック To:おやじ、スレイ |
あ、それはそれは… スレイさん、ちょっと失礼しますね。 |
■ スレイ To:ロック |
いえいえ、お気になさらず(^^) |
スレイはビティに後をたのむと目配せしておやじと店の奥に移動する。ビティはスレイの方に向き直って営業スマイル。スレイも何やらニコニコと笑いかけたりしてみる。
しかし、2 人とも奥が気になるようす。
奥の 2 人は何やら布のようなものを開いてぼそぼそ話をしていたが…
■ ロック To:おやじ |
う〜ん。もうちょっと見栄えがいい方がありがたいですね。 ちょっとこれは…(^^; |
■ おやじ To:ロック |
趣味じゃなかったかの(^^;; |
■ ロック To:おやじ |
本物っぽすぎるんですよね〜。飾りには向かないでしょう。 すみません、また何かあったらお願いします。 |
どうやらあちらの商談は失敗したようだ。
スレイとビティもチラチラと奥を覗き見している。ビティは変な物売りつけられるんじゃないかと心配で。スレイは興味を持って。得意の長い耳センサーもピクピクと好奇心を抑えられない。
しばらくすると、ちょっとがっかりした顔のおやじがやってくる。ふと顔を上げたとたんにスレイと目が合った。そして思案するようにじっとこちらを見ている。
■ おやじ To:エルフの方 |
おや、どこかでお会いしたかの… 冒険者かね? |
■ スレイ To:おやじ |
ええ。銀の綱亭に出入りしているスレイといいます(^^) どうしたんですか? |
■ おやじ To:スレイ |
おお、そうじゃったか。銀の網の所のなぁ。
わしも時々顔を出すんで、そんときにでもお会いしたかの。 冒険者なら丁度いい、これをお前さんにあげよう。 今ここの若いのに断られたとおり、店に置いても商品にはならんようじゃ。 冒険者なら話の種くらいにはなるじゃろうて。 |
スレイの目の前に、先程のボロ布が広げられる。古い布に何かの地図と見える線が描かれているように見える。裏には文字が書いてあるが、何のことやらスレイには読めない。
地図を見て、苦労してエントの森まで行ったら人が埋まってた(#12参照)…という前々回の仕事を思い出してちょっと寒くなるスレイ。
■ スレイ To:おやじ |
へへぇ・・・・・・宝の地図ですか?(笑) ・・・また人が埋まってたりはしませんよね・・・(汗) あ、これは何て書いてあるんですか? |
■ おやじ To:スレイ |
うん?詩のようじゃな。 ほう、お前さんオランに居ながら東方語が読めんとは… 不便じゃろうに。 |
スレイをからかうようにほっほっほと笑う。
■ スレイ To:おやじ |
宿屋とかは共通語ですから大丈夫です。 でも今は、不便なのを実感しているところですよ(苦笑) |
■ おやじ To:スレイ |
詩の内容は、古代王国期にいた「ラングドーフ」という名前の
魔法使いが箱の中にいるというような内容じゃ。 後はお前さんの仲間にでもゆっくり読んでもらっとくれ。 |
おやじに詩の才能はないらしい。布をくるくるっと丸めてスレイに手渡す。
■ スレイ To:おやじ |
ありがとうございます。そうすることにしますよ。 (・・・魔法使いが箱に・・・?(^^;) カナルも箱の中に入れるのでしょうか・・・・・) |
箱の中に隙間無くぴっちりカナルが入っている… または、箱入り息子ならぬ「箱入りカナル」とか。どっちにしろ、あまり気持ちのいい想像ではなかったようだ。
■ おやじ To:スレイ |
ま、人でもなんでも埋まってたらめっけもんというとこかの。 敷物くらいにはなるじゃろ。 |
■ スレイ To:おやじ |
ははは…(^^; あ、ところでこれはどこから手に入れたんですか? |
■ おやじ To:スレイ |
うん? 実はの、出入りの商人がロープを包むボロ布として使っとったんじゃ。 それだけいやに古いんでよく見てみたら、変な絵が書いてあったと いうわけでの。 |
■ ビティ To:おやじ |
廃物利用でうちの店に持ってこようなんて… やるわね、時忘れのおじさん。 |
やっぱりそういう物を売りつけてお兄ちゃんを引っかけようとしたのね…。 口は笑っているが眉間に皺が寄っているビティ。 草々に退散の体の時忘れのおやじ。
■ おやじ To:ビティ |
おぉ、怒った顔もかわいいのぅ、ビティ。 ほっほっほ、わしもそろそろ店に戻らんと… |
■ スレイ To:おやじ |
あ、お引き止めしてすいません。 コレ、ありがとうございますね、おじさん。大切にしますよ(笑) |
■ おやじ To:スレイ |
ほっほっほ、命あってのものだねじゃて。 |
■ スレイ To:おやじ、ロック&ビティ |
今度、買い物に行きますね〜〜 じゃあ、わたしも帰りますね。 |
■ ロック&ビティ To:スレイ |
はい、毎度ありがとうございました〜 またどうぞご利用ください (^^) |
おやじの後を追うように、スレイも店を出た。
銀の矢を買いに来ただけなのに、妙な拾い物をしてしまったものだ。
市場 |
■ ティトル To:バティさん |
はぁ〜(^-^) 市場っていつ通っても良い匂いしますよねぇ〜うっとり☆ あ、バティさん!! あれっ、あれっっ!! |
珍しそうな物を見つけては走っていってしまうティトル。バティはその後ろをついていく。
ケーキ・ケーキ・ケーキ |
その頃の銀の網亭の前の表通り。 明るい日差しにさわやかな風が渡っていく。
銀の網亭から見ると左側のちょっと先に花屋、その正面にパン屋が見える。
チャ・ザ神殿からの帰り道、パン屋から漂ってくるほのかに甘くて香ばしい香りに、彼女はふと足を止めた。
■ リグ To:独り言 |
う〜ん、美味しそうな香り。 ・・・・あれ? 足の向くままに歩いていたらいつの間かここに来ちゃった。 わたしの足ったらなんて食いしん坊なんだろ。 まっ、いいや、せっかく来たんだから挨拶してこっと。 |
と言って、その足はパン屋へ。 ここは DreamWeavers 御用達のお店、店番は「パン屋の姫君」ことロレッタ嬢 20 歳である。
■ リグ To:ロレッタ |
こんにちわ、ロレッタさん。 今日は気持がいい日ですね。 |
■ ロレッタ To:リグ |
あら、こんにちは。えっと…リグさん? ほんとに良い日ですね。 こんな日はケーキの仕上がりも一段といいんですよ♪ |
今日は品物の出来がよかったのか、ロレッタは一段とうきうきしている。
■ リグ To:ロレッタ |
ほんとだ綺麗にできてるし、すっごく美味しそ〜。 |
リグはゲージの中のケーキたちを目をキラキラさせながら見ている。 その上には焼き立てクッキーが香ばしい香りを放っている。 そして周囲にはとりどりのパンが並べられている。
■ リグ To:ロレッタ |
うーん、どれにしようかなぁ、ここのはどれも美味しそうで困っちゃうなぁ。 でも、前はクッキーだったから今日はケーキにしよっと。 ロレッタさん、このチョコレートケーキ1ホールください。 |
■ ロレッタ To:リグ |
まぁ、ホールで? うれしいけれど、…大丈夫? |
チョコレートケーキを 1 ホール…
まさかこの華奢な体で全部食べるの?と心配顔のロレッタ。
それを察してリグが素早く訂正する。
■ リグ To:ロレッタ |
一人で食べるんじゃないよ。 ここのは美味しいから、みんなで食べようかなっと思って。 |
■ ロレッタ To:リグ |
まぁ、そうなの。ありがとう、リグさん (^^) 今日のチョコレートケーキは一段とおいしいのよ♪ 皆さんにもよろしくね。 |
おしゃべりしながらもロレッタは手早く籠にラッピングしてリグに渡した。 その籠を抱えて満足そうなリグ。
■ リグ To:ロレッタ |
じゃあ、また来ますね。 バイバ〜イ |
■ ロレッタ To:リグ |
ええ、またよろしくお願いします (^^) |
この後、銀の網亭ではリグのケーキとお茶でちょっとしたお茶会が開かれた。
偶然幸せの木に居合わせた人々や、おやじやおかみさんにまでリグのケーキがふるまわれたという。
こうして冒険者たちの休日はあっと言う間に過ぎていくのだった。
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