砦本館 1階 浴室前廊下 |
浴室に向かうジークとエデン。前の廊下に、トーラとベルミアの姿が見えた。
■ ジーク To:トーラ |
いったい何が起ったんですか?! |
焦り、返事を待たずにドアノブに手をかける。
が、2、3度引いても開かない。
■ エデン To:トーラ、ベルミア |
ちょっと外している間に仲間外れですわね………。 一体、何が御座いましたの? |
■ トーラ To:エデン |
コレットが、目を覚まして起きあがった様なのですが…。 |
■ エデン To:トーラ > 浴室内 |
……そう……。 ……何故鍵がかかっておりますの?(ガチャガチャ) 開けて下さいませんこと?(こんこん) |
■ ジーク To:浴室内 |
大丈夫ですか?! 何があったのですか?! |
ドアを叩いて、呼び掛ける。
■ アルト To:ジーク |
あ…っっ………ジーク!? |
その音に気づいたアルトが扉のロックを解除する。
ジークがもどかしげに扉が開くと、アルトやアルスの向こうにコレットとフェリオが見えた。
■ アルト To:ジーク、エデン |
コレットが…………。 |
■ ジーク To:アルト |
コレットさんが・・・・・・? ?! |
ジークがコレットに目をむけ、我が目を疑った。
コレットに芽生えた植物は、ゆっくりだが目に見える速さで成長を続けていた。
■ ジーク To:ヴェアリアス |
な、何がおこったんです? |
だがヴェアは首を横に振って応える。
■ ヴェアリアス To:ジーク 精霊語 |
わからない。わからないけど……。 |
狼狽する二人。
■ アルト To:ジーク > フェリオ |
急に、植物が成長を―――。 ………! フェリオ、大丈夫かい!? |
■ フェリオ To:アルト |
あ、あぁ・・・大丈夫だけど・・・何てこった・・・。 |
植物が勢いよく発芽を始めてから、20秒。
コレットの身体は茂ろうとする植物に既に覆われ、それに呼応するようにアナトリアやルーファも、植込まれていた植物が大きく成長していた。
そして―――植物の成長は突然止まった。
■ ジーク To:コレット |
止まった・・・・? だ、大丈夫ですか? |
アルトとアルスを押し退けて、コレットに近寄る。
しかしコレットの返事はない。
ヴェアはドライアードの力が急激に弱くなる事を。
エデンは、成長の意志が失せる事を感じます。
■ ヴェアリアス 精霊語 |
……ドライアードが…? |
その間にもコレット、アナトリア、ルーファの身体の異変は続いていた。
彼女達全員の身体が、端からボロボロと崩れ始めてしまった。
崩れ落ちる物は、まるで土のように見えた。
全員に生えていた植物は生気と青みを失い、端から枯葉色に変化してゆきます。
思わず目を閉じるヴェア。
■ ジーク To:フェリオ |
?! フェリオさん、神の奇跡は?! |
■ フェリオ To:ジーク |
・・・・・・すまねぇ・・・俺には・・・何とか出来るだけの力は・・・ない。 |
■ アルト To:コレット |
――――――――――!! 植物が…………。 コレット…… もう………何もかも、手遅れだったって言うのかい……? |
アルトは悲痛な面持ちで皆の顔を見渡す。
■ ヴェアリアス |
そんな…… |
■ えでん |
にゃ〜……。 |
■ ジーク To:アルト |
・・・・・・・・。 |
■ アルト To:全員 |
………いや、まだ…まだ終わっちゃいないね……。 みんな、急いで3人を外に連れて行こう。 |
■ ジーク To:アルト > 全員 |
・・・・・分かりました。 急ぎましょう。 |
コレットをフェリオ、ルーファをジークに任せて、アルトはアナトリアを担ぎ上げた。
彼らは急いで砦の外へと向かった。
砦本館 1階 廊下〜玄関ホール |
運んでいる間に、手や足(が変化した物)が落ちる。
皆の後を追うヴェアは、その落ちた手足を拾った。
既に人間の肉体ではなくなった土の様なもの…。
■ ヴェアリアス |
これが……本当に人間のものだったなんて………。 なんて恐ろしいことを……。 |
現実に起こっていることに、彼女はそうつぶやいた。
砦内 中庭 |
一向は玄関ホールを抜けようやく砦の外へとたどり着いた。
しかしアナトリアとルーファの二人は、セラと同じく陽の光を浴びた身体が持たず、植物共々、乾いた土状の物に変化していく。
彼女らの保護をしようと緑の水を吸わせていたシーツもまた、枯葉色に変色していた。
コレットの方は芽生えた植物が再び成長を始めた。
しかし、その間も彼女の身体は崩れ続け、身体が尽きた後、植物も枯死します。
■ アルト To:全員 |
はぁ、はぁ、はぁ………………っく…。 …………こ、コレットは? ――――――――!! |
ようやく先行した3人に追いついたヴェア。
しかし――――。
■ ヴェアリアス To:仲間 |
コレットさ…! ……遅かった…………間に合わなかったの? |
■ ヴェアリアス |
わ、たし、たちは……結、局、誰一人………(-_;) |
そうつぶやき、うつむいて目を閉じる。
誰にも見られないように涙を抑えます。
■ アルト |
あぁ…………。 |
そっとジークの側に近付くと、静かにコレットの亡骸を見つめる。
そして、わずかでも生き残っている植物や根が無いか探すが、見つからなかった。
■ アルト |
ごめんね、コレット…………。 |
誰にともなく、呟きます。
■ エレボス |
…………。 何故……何故ラーダ様は誰も……。 |
コレットの側にエレボスは崩れ落ち、泣きながら地面を殴った。
■ エレボス |
何故……何故なんですか? ラーダ様教えてください何故なんですか……。 |
神に問い掛けるが、答えは得られない。
■ フェリオ |
これが・・・何の罪もない彼女たちに対する神の定めた運命か・・・。 ・・・だったらせめて・・・せめて彼女たちの魂を受け入れてくれよ・・・。 ・・・必ず・・・運命を変えられるだけの強さを身に付けてやる・・・。 もう二度と・・・救いたい人を救えないのはごめんだ・・・。 |
■ ジーク |
これが・・・・・彼女たちが神より与えられた運命だと、いうのでしょうか・・・・。 それなら神は・・・あまりに残酷すぎる。 |
彼女らを救えなかった無念さゆえに己を、そして神に憤る彼ら。
しかし、それで悲しみが薄くなるわけではなかった。
せめてもの安らぎを与えるために、彼らはコレット達の亡骸を集める事にした。
アナトリアとルーファに関しては、風が吹くと飛散して少ししか集められなかったが。
コレットのそれは少し湿っており、集め易かった。
■ えでん |
うんしょ、うんしょ……。(ザッザッ) |
■ トーラ To:冒険者達 |
これを使って下さい。 |
集めていると、トーラとマークスが集めた物を収める壺を3つ持って来た。
■ ジーク To:トーラ |
ありがとうございます・・・・・。 |
■ エレボス To:トーラ |
……ありがとう……。 |
彼女らの亡骸を出来る限り壷に納める。
そして集め終えた後、マークスが彼らに声を掛けた。
■ マークス To:全員 |
彼女達の埋葬は任せていただけませんか? |
無論ルドラ達は反対しない。
■ ジーク To:マークス |
お願いします・・・・。 彼女らに安らかなる眠りが、あるように・・・・・。 |
マークスに持っていた壷を託す。
■ エレボス To:マークス |
後の事はよろしくお願いします。 明日ここを立つ前に神殿とお墓の方に寄りたいと思いますので……。 |
■ マークス To:エレボス |
ええ。埋葬だけは済ませておきます。 |
そのまま神殿までバスクに送ってもらうという事で、マークスは砦を後にした。
マークスを見送った後、不意にエデンがルドラへと話し掛ける。
■ エデン To:ルドラ |
コレット様の遺品が幾つか御座いましたわね……。 御遺族の方はどちらにいらっしゃいまして? |
■ ルドラ To:エデン |
母親が居ると聞いていたが…。 |
■ アルス To:エデン、ルドラ |
この事、話に行くんだな? いいぜ、今からでも案内してやるよ。 |
■ エデン To:アルス |
その前に、遺品の整理と……セレン様にもお伝えしなければなりませんわね。 |
アルトはアルスに声を掛ける。
■ アルト To:アルス |
コレットの事………出来ればセレンには、アルスさんの口から伝えてもらえないかい? 優しそうな娘だから、このことを知ったらきっとショックも大きいだろうし……。 その時誰か、頼れる人に側にいて欲しいだろうからさ。 |
■ アルス To:アルト、エデン |
…そうだな。 それじゃ、伝えるのは任せてくれ。 ついでに、遺品も引き取ってくればいいんだな。 |
■ フェリオ To:アルト、アルス |
いや・・・事情は俺から全部説明しておくよ・・・。 アルスさん・・・あんたはその後にセレンの側に行ってやってくれ。 終わったら・・・呼ぶからさ。 |
■ アルス To:フェリオ |
そうか。 なら、任せる。 詳しい事情は俺より詳しいだろうしな。 |
■ フェリオ To:アルス |
あぁ・・・。 |
真実を伝える側と慰める側、どちらの方が辛いのだろうか?
砦の中―セレンのところへ向かおうとしてふと思い出したように、アルスが口を開く。
■ アルス To:全員 |
…ところでよ。 ウォルクライの奴はどうした? |
■ ジーク To:アルス |
ウォルクライは・・・・・私が殺しました。 |
言った後、大きく息を吐く。
■ アルト To:アルス |
あの狭い地下室で、自分から火を放ったんだよ。 たぶん……最初から死ぬつもりだったんじゃないかい? |
そっとジークの背中を叩いて、
■ アルト To:ジーク |
……ジーク…一人で責任を感じてるなら、よしなよ。 罪を背負う必要があるのは、ウォルクライ一人。責任は、ここにいる全員にあるだろう? 止めなかった私たちにも、今まで気が付かなかった砦の人間にもさ…。 |
■ フェリオ To:ジーク > 全員 |
気にすんな、俺も殺す気で斬りかかってた。 お前が殺らなきゃ俺が殺ってただろうよ。 それに死ぬ気だった、ってのもあながち間違いじゃねぇと思うぜ。 あいつは正気だったよ・・・完全に、かどうかはわかんねぇけどな。 少なくとも自我はあったはずだ。 |
■ ジーク To:アルト、フェリオ |
・・・・・そうですね。 ありがとうございます。 |
そういってみせた笑顔は吹けば飛ぶほどに薄かった。
■ ジーク To:全員 |
・・・・・・・こうなる前にコレットさんは何かいってませんでしたか? |
■ フェリオ To:ジーク |
そういえば・・・箱庭の夢・・・ってな事を言ってたな。 俺にはよくわかんなかったけどよ・・・。 |
■ ジーク To:全員 |
箱庭の夢・・・・・・。 すみません、少し出てきますね。 |
その言葉に心を動かされたジークはそういうと、独り街へと出掛けた。
その彼を見送ったフェリオとアルスは、セレンの所へと行く。
2階に上った所で別れ、フェリオはセレンの居る使用人室へ。
アルスは、階段の上から玄関ホールを見下ろしてフェリオの話が終わるのをじっと待つことにした。
エデンはふとミディからの依頼のことを思い出した。
■ エデン To:ルドラ |
ルドラ様、この件ミディ様にもお伝えして宜しいかしら? 御心配なさっていた様ですし……。 |
■ ルドラ To:エデン |
いや。…彼女には後日、自分から伝えておく。 |
さすがにこんな話を他人に託して連絡しようとは思わなかった。
■ ヴェアリアス To:ルドラ |
ルドラさん……。 裏切られるってつらいよね………。 |
ヴェアは彼に向けた言葉を彼に届かない程の小声で呟く。
エデンはさらに残った人間の中にフォンの姿を見つけた。
一応依頼は解決した、ということになるのだろうか?
■ エデン To:フォン |
フォン様……今晩そちらに伺いますわね……。 |
■ フォン To:エデン |
何だ? 話なら、今ここで聞くが。 事件も解決したようだしな…。 |
■ エデン To:フォン |
…………。 …いえ…やはり今晩伺いますわ。 未だ幾つか仕事が残っておりますから……。 |
■ フォン To:エデン |
そうか。 なら、待っておく。 |
エデンの遠慮をしってかしらずか、フォンはそう肯いた。
ただ彼女の遠慮も、冒険者達がウォルクライの研究室に乗り込んだ時にフォンはルドラにすべてを話しているので 無駄なことになってしまっているのだが。
今まで黙って仲間達の行動ややり取りを見ていたエレボスであったが、 そろそろ終わりに近いと感じたところで、ルドラへと口を開いた。
■ エレボス To:ルドラ |
すみませんルドラさん……。 ……使っていない部屋がありましたら明日の朝までお借りしたいのですが……。 |
■ ルドラ To:エレボス |
何に使うかは知らないが――。 1階の、入って左奥の部屋が空いているはずだ。 |
■ エレボス To:ルドラ |
一人になって瞑想したいんです。 出来ましたら、その部屋を貸して頂けませんか? |
■ ルドラ To:エレボス |
そうか。 構わないから、自由に使ってくれ。 |
そう答え、ルドラは砦の本館内へと戻って行った。
■ エレボス To:ヴェアリアス、エデン |
すみません、私はこれから1階の部屋に篭ります。 もし何かあったら呼びに来て下さい。 |
■ ヴェアリアス To:エレボス |
篭る…? ……う、うん。わかったわ。 |
首を傾げるヴェア。
エレボスは瞑想に入る為、元衛兵詰め所に向かった。
■ ヴェアリアス |
篭って…どうするの? ……泣くの?? |
ヴェアは、もう一度話をする為、ルドラを追いかけた。
砦本館 2階 執務室前 2nd Day 17:40- |
扉をノックするヴェア。
■ ヴェアリアス To:扉 |
……失礼します。ヴェアリアスですけど……。 |
居ないのか、返事は無い。
■ ヴェアリアス To:扉 |
…………留守かしら? |
扉にそう尋ねても、返答はなかった。
しょうがなくヴェアは本館内を探して回る。
砦本館 屋上 |
ほどなくルドラの姿を見つけることが出来た。
彼は独り、屋上に立っていた。
■ ヴェアリアス |
………………。 |
その後ろ姿に、声を掛けるのを少しためらう。
■ ヴェアリアス To:ルドラ |
………隣いいですか? |
だが、返事はない。
■ ヴェアリアス To:ルドラ |
いつも来るんですか、ここ? あ、手摺にもたれたら危ないですよ。 |
■ ルドラ To:ヴェアリアス |
君か。 すまないが、独りにさせてくれ。 |
伏せ目がちに、ルドラの隣へと行くヴェア。
■ ヴェアリアス To:ルドラ |
………これからコレットさんの遺品をもって彼女の家に行きます。 実家の方には真実は伏せておこうと思います。 |
■ ルドラ To:ヴェアリアス |
そうか。 しかし、何時かは知られる。 ……その時が、自分の責任を果たす時だな。 |
■ ヴェアリアス To:ルドラ |
責任………? ルドラさん、先ほどは………。 |
続けようとした言葉を止める。
■ ヴェアリアス To:ルドラ |
……いえ。 わたしが言う台詞ではないかもしれませんけど―――。 後ろ向きにならないでくださいね。 どんなに悔やんでも、過去、彼女の生命は戻りません。 ………でも、彼女達の生命の意味、人生を分かってあげて下さい。 そして、あなたのしなくてはならないこと、できることを、そしてこれからを。 コレットさんや、他の使用人の人たち――。 領民の人を大切にしてください。 ときどきでも、彼女達や彼女の周りの人を気遣ってください。 それから―――。 もうお分かりだと思いますけど――。 わたしたちの仕事も不本意ではありますが終了しました。 明日の午前中にはお暇します。 騙すつもりは無かったのですけど、仕方なく。 |
ルドラは彼女の言葉を聞きに徹した後、
■ ルドラ To:ヴェアリアス |
そうだな…。 今回の事で、至らない領主だと言われても仕方ない。 今晩は、ゆっくり休んでくれ。 |
そう言って、屋上を後にする。
■ ヴェアリアス To:ルドラ |
ルド……。 そう…いう、意味では………。 |
だが、彼女の言葉が領主の背中にはじかれてしまったようだ。
階段の下に彼の姿が消えた後。
■ ヴェアリアス |
……………………。 なによ……そんなに自虐的になってどうするの……? ばかぁ。 |
空に向かって叫んだ後、いまだ晴れぬもやもやを抱いて彼女も屋上を後にした。
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