アルト、フェリオ、エデンの3人は、続いて本館の裏手、水門小屋に向かった。

ライトの明かりで照らされた小屋は、夕方の調査時と変わっていなかった。
扉の鍵は開いたままである。

扉を開けた階段上の場所も、アルトやエデンが見た時と変化は無い。
アルトの付けた濡れた足跡も、今は乾いていた。


階段を降り、水門室に向かう3人。
その時、下の部屋から何者かの足音と、複数の小さな鈴が鳴る音が聞こえた。
下に明かりは見えない。

すぐに呪文が唱えられるよう、用意して降りる。

音は、遠ざかっていく様に聞こえた。

室内には誰の姿も無い。
ただ、蛇の死体が水門近くの床に落ちていた。

耳を澄ませ、足音と鈴の音を聞くエデン。
左右在るうち、右側の地下水路内を1人の人間が走り去る音が聞こえる。

エデンのセスタスに、明かりの魔法を掛ける。

くり。（←猫耳を後ろ向きに倒す）
ぱたたたたたたたたたたたたたた……。

エデンは地下水路を駆けて行った。

ライトを灯したメイジスタッフを、フェリオに渡す。

既にエデンの姿は見えなくなっていた。

先行するエデン。
微妙に水路は曲がっており、このまま進むと本館地下1階にあった扉の付近に着くと思われた。
壁面はヒビ割れていたが、落盤はしていない。
見ると、何か粘度のある液体が付着して、テラテラと光っていた。


鳴っていた鈴の音が止む。

東方語で警告する声が、先から聞こえて来た。

今の所、危険は感じられなかったが、今の警告は本気のものだと感じられる。
急停止するエデン。

フェリオとアルトは、エデンが誰かと会話している事に気付いた。
しかし、明瞭に聞き取れない。
前方に、エデンのものらしきライトの明かりが見える。

その時、ようやくフェリオとアルトがエデンに追い付いた。

「＊＊」というのは、エデンやフェリオの知らない単語だった。

鈴の音が一度、短く鳴る。
その後再び、複数の鈴の音が響きながら遠ざかっていった。

鈴の音に掻き消されつつ返事が返る。

約1分後、鈴の音は聞こえなくなった。

先に進むと右側に鉄扉があり、その前の小さな踊り場に鈴が1つ置いてあった。
銅製の小さな鈴で、紐を通す穴が付いている。
エデンはその鈴を拾うと服のポケットにしまった。

エデンは見送られて水路を先に進んで行った。

更に50ｍ程先まで同じ様な水路が続いている事を確かめる。
それ以上は進まず、引き返した。

聞き耳をするが、向こう側で物音はしない。
取っ手は、押しても引いてもびくともしない。
最近開けた形跡も見当たらなかった。

調べていると、エデンが戻って来る。

何故か、フェリオをまじまじと眺める。

屈んでいる肩に、手をぽんと置く。

3人は狭い水路を水門室まで戻った。

反対側の水路を調べるエデン。

少し進むと、落盤が起きていた。
水路の下部に15cm程度の隙間を残し、崩れた土砂で塞がれている。

明かりで照らして覗き込むと、隙間の1ｍ程先に水路が続いているのが見えた。

落ちていた蛇の死体を調べるアルト。
蛇の肉には、人間のものらしい歯型が残されていた。

エデンが戻って来た後、3人は揃って地上に戻った。