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Sword World PBM #25
「天使のつるぎ」 | ||
| 誰かの涙 |
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封印の洞窟 |
■イェルク |
う………うぅん……… |
アフルが手当してやると、イェルクは少し苦しげな声を出しながら少しずつ目を開いた。
そして、まだ少しぼんやりとした表情のまま言う。
■ノエル To:イェルク |
気分はどう? |
■イェルク To:ALL |
………いったい……… あ、みんな、無事か?ヴィーザはどうな───痛っ |
あわてて立ち上がろうとし、折れた翼が痛んだのかイェルクはうずくまる。
■ノエル To:イェルク |
ヴィーザは・・・・あそこ |
と、かろうじて人型をとどめているにすぎない黒い固まりを指さす。
■イェルク To:ノエル |
そう…か………。ごめん、足手まといになってしまったみたいだ……… |
■オジイ To:イェルク |
そんなことないですよ。おかげで助かりました。 |
そう言いながら、イェルクはよろよろと立ち上がる。
■イェルク To:ALL |
帰ろう。ここはなんだか…息が詰まる。 |
■ノエル To:イェルク |
うん・・・そうだね・・・ |
■オジイ To:イェルク |
じゃあ、ちょっと外を見てきますよ。 みんなはゆっくり来てくださいね。 |
と言うが早いか、オジイは外へ駆けていった。一行もそれに続く。
洞窟の外 |
洞窟の外は、入る前と何ら変わったところがない。オジイが最初に外に出て、その後ろからノエル達がイェルクとともに出てきた。
イェルクはようやく一息つけたといった様子で深呼吸している。
■イェルク To:ALL |
やっぱり外がいい。あのじめじめした洞窟の中はいやな感じが………あ、あれ……… |
突然、イェルクがぽろぽろと涙を流し始める。
■イェルク To:ALL |
なんだ………急に涙が出てきた………なんだか………変な感じだ……… |
■オジイ To:イェルク |
イェルク……それは多分ヴィーザの気持ちなんじゃないかな。 って、急にいっても分からないよね。 イェルクが倒れてから後のことを全部話すね。 |
と言って、オジイは一同を見渡した。
■オジイ To:イェルク |
イェルクが倒れた後、なんとかヴィーザをアフルの一撃で傷つけたまでは良かったのですが、その後、ヴィーザは最後の力を振り絞ってイェルクの元まで飛んでいきました。そのときのヴィーザは、最初にあったヴィーザや戦っていたときのヴィーザと違って……なんといえばいいのか……とても優しい目をしていました。ヴィーザはイェルクのことを本当に愛していたのだと思います。 そして、ヴィーザの中から白いもやのようなものがでてきました。それはだいたい30cmで妖精のように見えたんです。そして、その妖精は、ゆっくりとイェルクの中へ入っていきました。 だから、ヴィーザは今イェルクを中から守っているのかもしれません。それで涙が出たんじゃないでしょうか。 |
■アフル To:イェルク |
ほら、ヴィーザってずっと閉じ込められてただろ? だから、復讐するとかなんとか言ってたけど、やっぱり、一番の望みは外に出る事だったと思うんだ。 だから、イェルクの中に入った今、やっと外に出れて嬉しいんだと思うよ。 |
■イェルク To:ALL |
………ぁ………それ………それは……つまり……… |
イェルクはそこで言葉を切った。自分の言葉で言い表すことを恐れているように、だが彼女は強ばった表情で顔を再び上げた。
■イェルク To:ALL |
………俺………駄目…なのか?取り憑かれて………意識も乗っ取られてしまうのか?………このなんだか懐かしい気持ちは…これは、奴の気持ちなのか……? 嫌……いや…いやだ…… |
ノエルの手を振りきって洞窟の方へ走って行こうとする。
■ノエル To:イェルク |
大丈夫よ。ヴィーザはあなたを乗っ取ることは望んでいなかった・・・と思う。私も倒れていたから、他の人の話を聞く限りだけどね。 ただ、ヴィーザは寂しかっただけなの。ただ、あなたの側にいたかったの。だから、あなたの中に入ったけど、あなたの意識を乗っ取ることはしない。だってそれは、一番そばにいて欲しい人を失ってしまうことだから。 あなたがこれからしなくちゃいけないことはね、あなたの中にいるヴィーザに、人間も、エルフも、優しい人はなんてくだらないことなんだって、そう教えてあげること。 洞窟の中に戻ったら、ずっとヴィーザにわかってもらえなくなるよ。 |
■イェルク To:ノエル |
違う……違う………奴は一緒にいたいだけじゃない………一緒になろうとしてる………同化して…取り込もうとしてる……… |
イェルクは立ち止まったが、その場で震えながら立ちつくしている。
■ノエル To:イェルク |
それにね、その涙は・・・イェルクさん自身のものでもあると思うよ。 うまく言えないけど・・・ヴィーザって、いろんな意味であなたにとって特別な人だったわけでしょ。 |
■イェルク To:ノエル |
そんなんじゃない…ううん、その通り?これが俺の気持ち?違う、違う。復讐…する…?そんなことしない。でも憎い?全部壊す…全部殺して…違う、違う、違う違う違う。いやだ。こんなの俺の気持ちじゃない。 いやだ……… |
■オジイ To:イェルク |
イェルク、がんばれ。ヴィーザに、ヴィーザに、うち勝つんだ。 精神を集中して、ヴィーザを鎮めてやるんだ。 心をゆっくり落ち着かせて、ゆっくりと顔を上げてごらん。 俺たちが、ついているから。 |
■アトール To:イェルク |
しっかりしろっ!イェルク! ヴィーザは乗り移っただけで、まだ心を乗っ取った訳じゃないんだ。 自分の考えをしっかり持つんだ! |
■イェルク To:オジイ&アトール |
自分の……… |
イェルクは顔を上げ、こちらをじっと見ている。少し落ち着いた様子だ。
■イェルク To:ALL |
………わかってた………覚悟してた……… |
■オジイ To:イェルク |
……大丈夫……なのか。 |
■イェルク To:オジイ |
うん…大丈夫……今は奴を押さえ込めているみたいだ……… |
イェルクは顔を上げて一度小さく頷いた。
■イェルク To:ALL |
大丈夫…覚悟してる………今なら奴は身動きがとれない…完全に滅ぼすことができる…。だから……… |
■ノエル To:イェルク |
今なら? |
ノエルが聞き返すと、イェルクはぴくりと肩を震わせた。ゆっくりとノエルの顔を見つめる。視線はしっかりしているが、唇も指先も小さく震えている。
■イェルク To:ノエル |
……ずっと押さえ込んでいられる自信ない………でも、今なら………い、いまなら………俺が…死ねば、奴も死ぬ……… |
■オジイ To:イェルク |
イェルクに取り憑いたものは、ずっと、押さえられないものなのか。 少しでも押さえられるのならリーゼルに相談したいのだが。 |
■イェルク To:オジイ |
………今は、押さえている。いつまで押さえていられるかは…わからない。 でも、リーゼルには会いたくないんだ……ルァンにも…もし会ったら、きっと覚悟が鈍ってしまう……… |
■アトール To:イェルク |
イェルクが死ねば、奴が必ず死ぬという保証はあるのか? ヴィーザが死んだ後にイェルクに乗り移ったように、イェルクが死んだ後、他の者に絶対に乗り移らないと言い切れるか? つらい言い方に聞こえるかもしれないが、俺にはイェルクが死ねばいいという選択肢は、あまりにも安直に思える。 理論的にも、感情的にもだ。 |
■オジイ To:イェルク and ALL |
アトールの考え方には自分も賛成です。 何とかしようとしなければ何ともならないはずです。 で、例えばですがオランに行くっていう案はどうでしょう。 マイリー神殿や賢者の学院に相談するのも手だと思うんですが。 |
■ウィード To:ALL |
学院か…出発前よりは情報が集まったんだ。 もっと絞り込めば何かよい方法が見つかる可能性はあるな。 |
■イェルク To:オジイ |
オラン……… |
イェルクは不安げな目をこちらに向けた。
■イェルク To:オジイ |
………人間の…町?………人間なら…人間なら、俺のこと……た、たすけて…くれるかな? |
イェルクはすがるような目で冒険者達を見ている。迷子の子犬のような目で、彼女は助けを求めていた。そんなイェルクに、ノエルは小さくほほえんで力づけようとする。
■ノエル To:イェルク |
できるだけのことはする。今はそうとしか言えない。 DUM SPIRO SPERO──命の限り希望を捨てず 今イェルクさんが死んでしまえばすべて終わるのかもしれない。 でも、もし死ななくていい方法があるなら、それを探した方がいい。 探し続けていれば、きっと見つかる。あきらめることなんて、ない。 |
■イェルク To:ノエル |
………わかった………言うとおりにする……… |
■ノエル To:イェルク |
いい返事だ(^^)b |
と、イェルクの頭をぐしゃぐしゃとなでる。
■ノエル To:イェルク |
そうそう。宝珠はどうなってる? |
■イェルク To:ノエル |
あ………置いてきてしまった……… |
ちらりと洞窟の方に視線をやり、ノエルの方を向く。
■イェルク To:ノエル |
………いや、どうせもう力を使い果たしているだろう。ただの硝子玉になっていると思う。 |
■ノエル To:イェルク |
うーん。ま、しょうがないわね。 剣も折れて使えないし、手がかりなしってことになっちゃうけど。 |
■オジイ To:イェルク |
とりあえずリーゼルの所へ戻りましょう。 リーゼルなら何か分かるかもしれないですし。 くよくよしてもしょうがないからがんばりましょう。 |
■アフル To:イェルク |
うん、それにエルフの村なら、スリープを使える人ぐらいいるだろ。 その人にスリープをかけてもらえば、少なくともしばらくはイェルクがのっとられるのを防げるんじゃないかな? |
■イェルク To:アフル |
《スリープ》……… |
その名を聞いてイェルクは少しおびえたように身をすくめた。精霊使いでもある彼女は、その魔法がどんなものか知っているのだ。
■イェルク To:アフル |
………うん……… |
■ソフィティア To:イェルク |
気をしっかり持ってね。私たちはあなたに賭けたの、……イェルクに。あなたを起こす時、私は死すら覚悟してたのよ。今度はあなたの番。 |
そこまで言って、ソフィティアは暗い雰囲気を脱ぎ去ろうと、声の調子を変えた。
■ソフィティア To:イェルク |
まっ、人間にだってすごい人はい〜っ杯いるんだから、何とかしてくれるって。だから、イェルクも希望を持ってオランにいこ。ねっ。後のことはそれから考えれば良いじゃない。とりあえず、イェルクはイェルクみたいだし、リーゼルさんのところに一回行きましょう。 |
■オジイ To:ALL |
よし、じゃあまずリーゼルに報告しに帰りましょう。 心配していると思いますし。 |
■アトール To:ALL |
そうだな。イェルクも今は落ち着いているようだし、とりあえずいったん戻ろうか。 |
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