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Sword World PBM #25
「天使のつるぎ」 | ||
| 魔神の影 |
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封印の間 |
■ヴィーザ To:ALL |
ちょっと………これは………参ったわね……… |
ぽたり、とヴィーザの腕を伝った血が指先から滴り落ちる。
ヴィーザはばさりと翼を打ち、宙に浮いた。そして、もう一度翼を打つ。
■ヴィーザ To:ALL |
仕方ない…わね………この身体、気に入ってたのに……… |
傷ついた身体からは信じられないほどのスピードで飛び───壁際で力無く倒れているイェルクの側に降り立った。そのまま抱きしめるように抱え上げ、もう一度飛び上がる。
■ヴィーザ To:イェルク |
イェルク…こうして抱きしめられるのも最後ね…もっと聞き分けよくしてくれれば、こんなひどいことしなかったのよ?わかってくれるわよね? |
ヴィーザは、イェルクの柔らかそうな髪を愛おしそうになでながら頬を寄せた。
そして、ちらりと冒険者達の方に優しげな視線を向ける。
■オジイ To:ヴィーザ |
………ヴィーザ、………何を……… |
一行は、ヴィーザとイェルクの所へ駆け寄る。そんな冒険者達を、ヴィーザは微笑みながら見下ろしている。
■ヴィーザ To:オジイ |
何って、決まってるじゃない。 |
ヴィーザの唇から白いもやのようなものがゆっくりと漏れだしてくる。もやは静かに空中でわだかまり、身長30センチくらいの小妖精に似た姿をなった。
■ヴィーザ To:イェルク |
ずっと、一緒……ィイイィイッショに……いて…ァァげ……… |
■オジイ To:ヴィーザ |
ヴィーザ、やめろ。 |
徐々にヴィーザの手足がどす黒く干涸らびていく………
白いもやは、ちらりとヴィーザの方を見るような仕草をした後、出てきた時と同じ緩慢さでイェルクの唇に吸い込まれていった。
■ヴィーザ |
ア………ガガ………グ……… |
ヴィーザのそれまでの美しい姿は見る影もなく、イェルクを抱きしめていた腕が半ばから折れると、支えるものを失った身体はそのまま地面に落ちた。腐って乾いた枯れ木のように醜く潰れる。
イェルクはうっすらとした光に包まれながら宙に浮いている。
───しばらくして、ゆっくりと降下してきたイェルクを、アフルが受け止め、静かに地面に降ろした………
封印の間 |
イェルクは意識こそないが、死んではいないようだ。それを確認すると、アフルはノエルに応急手当を施した。
■オジイ To:ノエル |
ノエル、大丈夫か。 |
■ノエル To:オジイ |
とりあえず、生きてる。 |
■オジイ To:ノエル |
よかった………。 |
ノエルはきょろきょろと辺りを見回して状況把握に努めた。イェルクが倒れている、アトールも。仲間達は皆傷ついている。
ヴィーザは既に原型がかろうじてわかる程度の黒ずんだ固まりになっていた。
■ノエル To:ALL |
倒したのね・・・ みんなボロボロになって・・・ イェルクさんまで・・・ 今治してあげる。 |
■オジイ To:ノエル |
ノエル………。言いにくいんだが………ヴィーザが、さっきイェルクに乗り移ってしまった。 イェルクには、とりあえず応急処置するべきだと思う………。 |
■ノエル To:オジイ&ALL |
なんだか単純に喜んでいい話じゃなさそうね。 もう少し詳しい話を聞かせてもらえないかしら? |
ノエルはオジイに状況を聞きながら、アトールとウィードに《キュア・ウーンズ》を施した。
アトールの生命点が9点、ウィードの生命点が8点回復した。
イェルクはぼろぼろになって倒れている。翼は半ばで折られ奇妙に曲がっているのが痛々しい。手足も擦り傷や打撲だらけだが、顔に傷がないことだけがせめてもの救いだろうか。
そして、その精神までも、もはや彼女のものであるかどうか、見ただけではわからない………
■ノエル To:ALL |
さて、これからどうしましょうか?とりあえずイェルクさんは起こしてあげなくちゃならないけど、このまま起こしていいのかどうか。それに、起きた後どうやって説明してあげるのか。 |
■ソフィティア To:ALL |
自分のことだけを考えるのなら、いまこの場でイェルクごとヴィーザを倒すのが一番だけれど、私はイェルクの心が残っていることに賭けてあげたい。お人よしかもしれないけど、私は最後までイェルクを信じてあげたいの。みんなはどう? ぐるぐるに縛っちゃえば、もしもの時はどうにかなるかもしれない。けど、縛られたイェルクが私たちのことをどう思うかしら?それで……それがきっかけでヴィーザの方に行っちゃう気がしてならないの。 わたしは、このまま起こしてあげたい。そしてイェルクの心を信じたい……。 |
■オジイ To:ソフィandALL |
ソフィのいうとおりだと思う。イェルクに期待しても良いんじゃないだろうか。 アフル、イェルクを手当してやってくれないか。 あと、起きた後イェルクにはすべてを話すべきだと思う。ただ、イェルクがイェルクでなくなっている場合は……… 戦うしかないのかもしれない。 後、ノエル。回復できるときに回復しておいた方がいいですよ。 イェルクは自分で回復できるはずだし。 |
■ノエル To:オジイ |
そうしておく。いざというときに間に合わなくてもイヤだし。 いざというとき・・・・のことなんて、考えたくないけどね。 |
と、ノエルは自分自身に《キュア・ウーンズ》を唱えた。ノエルの傷が7点回復する。
■ノエル To:ALL |
で、私も二人の意見と大体同じなんだけど。 |
無言でメンバーを見回し、意見を求める。
■アトール To:ALL |
俺も異存は無い。仲間として信じようぜ。 |
ウィードが無言で頷いた。
■アフル To:ALL |
うん…、わかった。 |
アフルがイェルクの手当を始めた───
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