Sword World PBM #25

「天使のつるぎ」



封印の一族




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野営地

 ラザが立ち去り、一同はたき火を囲んで座っている。
 イェルクはうつむいて押し黙っている。
■ノエル To:イェルク
 ずいぶんとまた生意気よね、あの人。村長の息子とかそんな感じなの?なに かとても自信ありげだし。"人間の流儀にしたがって村でもてなす"とか勝手に 言っちゃうし。

■イェルク To:ノエル
 いや、そういうわけではないが、魔法の腕で言えば奴は長老に次ぐからな。事実 上のナンバーツーだ。

■ウィード To:ノエル
 まぁまぁ、ノエル。
 あいつの悪口を言うよりも打開作を考えようぜ。

■ソフィティア To:イェルク
村のみんなが反対してるみたいだけど、この後どうするの?
ラザはああ言ってたけど、封印が弱まってる今、村のみんなを 説得するのも貴方の仕事じゃないかしら?依頼ではヴェーザを倒す 事になっているけど、封印を再度強化させられる方法があるのなら それを試してみてもいし……。なんだか村のみんなはあまり協力的 でないみたいだけど、今なら私たちが力になれるから色々な事がで きると思うの。

 ソフィティアが諭すように優しく語りかける。
■イェルク To:ソフィティア
 ………うん………

■ウィード To:イェルク
 ソフィの言う通りだ。
 あんたは独りじゃないんだ、俺達がいる。
 何ができるかよく考えてみようぜ。

■アトール To:イェルク
とりあえず、もうちょっと情報を教えて欲しいな。
 思っていた以上に複雑な事情みたいだし。
 依頼を受けた以上、出来るだけ役に立てるよう努力するから、あんたも 村の状況や、立場についてもうちょっと詳しく教えてもらえるか?

 イェルクはアトールの方をちらりと見て、こくんと頷いた。
■イェルク To:アトール
 村は長老がすべての決定権を持っている。狩りの時期から、それぞれの結婚相手 まで、すべてだ。
 ラザのように積極的に従っている者もいれば、逆らうことができなくてただ従っ ている者もいる。
 俺もこの間までは逆らうこともできずに従っていた。

■ウィード To:イェルク
 ………。

 結婚相手と聞いて、ウィードが少し複雑な顔をした。
 ウィードには親の決めた婚約者がいる。が、ウィードはあまり乗り気ではない。
■ノエル To:イェルク
 結婚相手まで・・・ねぇ。
 まさか、さっきのラザって人と結婚することになっていたとか?

■イェルク To:ノエル
 ………………

 イェルクはうつむいて答えない。これがイエスの意味なのかノーの意味なのか、それ以上追求する者はいなかった。
■ノエル To:イェルク
 ところで、封印って見た目にはどんな感じのものなの?

■イェルク To:ノエル
 洞窟の入り口のところに宝珠が四つ埋め込まれていて、精霊力を反発する壁のよ うなものを発生させている。強い精霊力を持つ者ほど反発力も強くなる。それでヴ ィーザを出入りできなくしているんだ。

■アトール To:イェルク
 じゃあ、俺みたいな精霊力の強くない奴は、その封印の壁って素通り出来るのか?

 アトールの問いに、イェルクは少し考える仕草をする。
■イェルク To:アトール
 精霊力を全く持たないということはないから本来なら通れないんだが………今 なら通れるかもしれない。

■ノエル To:イェルク
 確か、ヴィーザを封印する力も、一時的に力を押さえるのも宝珠の力って言 っていたわよね?
 じゃぁ、ヴィーザを倒すために直接的に力を押さえておこうとするなら、封 印している力は一時的になくなってしまうのかしら?

■イェルク To:ノエル
 宝珠を外すためには一度封印を解かないといけない。ヴィーザが自分で宝珠の 所まで来てくれるのでなければ、封印を解いてもっていくことになる。

■ノエル To:イェルク
 それじゃぁ・・・たとえば精霊力の強くない私たちが封印の中に入っていっ てヴィーザをおびき寄せるということも可能かもしれないのね・・・
おびき寄せる前に全員黒こげにされる可能性のほうが高そうだ けど絶対やらないほうがよさそう・・・

■イェルク To:ノエル
 ………試してみないと分からない………

 試して駄目なら手遅れなので試すことはできない。当然だが。
■ノエル To:イェルク
 仮におびき寄せることができたとして、封印を維持したままヴィーザの力そ のものを押さえることはできるのですか?

■イェルク To:ノエル
 それは無理だと思う。封印を維持するにも、ヴィーザの力を押さえるにも、宝 珠の全力を投じてやらないといけないから。

 つまり、ヴィーザの力を押さえるにはどのみち一度は封印を解かないといけないということだ。ということは、自分たちが失敗すればアウトということになる。
■ウィード To:イェルク
なら、ヴィーザの力を押さえる事に専念してもらおう。
ヴィーザとの戦闘は俺達が引き受ける。

 ウィードの言葉にイェルクが小さく頷いた。
■ノエル To:イェルク
 封印の中では精霊の力は正しく働くのですよね。ただ、それが外部に出ない というだけで。
 つまり、封印の内部ではヴィーザは精霊魔法を自由に使うことができるのか ということなんですが。

■イェルク To:ノエル
 たぶんそうなると思うが。

■ノエル To:イェルク
 あと、封印の宝珠って、ヴィーザを封印するか、力を押さえる以外になにか できることはないの?

■イェルク To:ノエル
 ヴィーザの魔法を封じる代わりに、ヴィーザの魔法耐性を中和することもでき るらしい。だが、それは剣でもできることだし、ヴィーザに魔法を自由に使われ てしまうことになる。
 他にも何か力はあるようだが俺には分からないな。

■ウィード To:イェルク
魔法を封じてもらった方が有利になると思うな。
魔法が効かなくても、剣で倒せばいいだけだ。

 と、ウィードは自分の剣を指してみせた。彼も前線に出るつもりのようだ。
■オジイ To:イェルク
 で、封印ってどこにあるんですか。

■イェルク To:オジイ
 村とエルフの集落との中間あたりだ。俺も普段はその近くに住んでいる。

■オジイ To:イェルク
 封印は、何十年もしくは何百年前ぐらいに行われたんですかねえ。

■イェルク To:オジイ
 300年くらい前らしい。

■ノエル To:イェルク
 で、あなたの村には、そのときのこと自分で体験して知っている人はいるの?

■イェルク To:ノエル
 いや、長老が一番長生きしているが、200歳くらいのはずだ。

 さらにノエルは質問を続ける。
■ノエル To:イェルク
 たしか、使い魔のインプが封印の外に出てきていたから封印の弱まっている のに気がついたって、前に言っていたわよね?そのインプが出てきたところっ て、イェルクさんは見ていたの?それとも気がついたら封印の外にインプがい たって感じ?

■イェルク To:ノエル
 ………インプがそう名乗ったんだ。そして、剣を渡せ、と。

■ノエル To:イェルク
 じゃぁ、出てくるところを見たわけじゃないのね?

 イェルクは黙って頷いた。
■ノエル To:イェルク
 そういえば、剣のほうはいつもはどうやって保管しているの?

■イェルク To:ノエル
 普段は持ち歩いていたんだ。今はリーゼルに預けている。

 次いで、ノエルの質問責めが一段落したのを見て、アトールが質問を継いだ。
■アトール To:イェルク
 たしか、ラザの話だと、封印を守る役目はイェルクしか出来ないって言って いたよな?
 どういう事なんだ?

■イェルク To:アトール
 俺は…代々封印を守っている…ヴィーザを封印した者の末裔だ。
 封印の宝珠を使って封印を施したり外したり補修することができるのは、一族の 中でも俺のように白い翼を受け継いだ女子だけなんだ。
 でも………

 と言いかけて、イェルクは視線を伏せた。そして呟くように言う。
■イェルク To:アトール
 ………でももう、俺一人しかいない………

■ウィード To:イェルク
 このままでは白い翼を持つ者の血が絶えてしまうのか。
 それも問題だな…。

■アトール To:イェルク
 封印を守る役目がイェルクしか出来ないって事は、今は封印ってどうなって るんだ?
 大丈夫なのか?

■イェルク To:アトール
 たぶん、大丈夫だ。封印自体は放って置いても働く。俺の役目は、宝珠の力が弱 まってきた時に力を注ぎ込んでやることだ。だが、もう俺の力では力を取り戻せない ほど宝珠は弱まっている。………俺の力がないだけかもしれないが。

 イェルクは自分の手を見つめるようにして、そしてぶらんと手を下ろした。
■ノエル To:イェルク
 力がないかぁ・・・
力をそそぎ込むってどうやるの?命を削っているようにも聞こえるけど。

■イェルク To:ノエル
 触れて念じるだけだ。命を削るかどうかは分からない。………俺のように白い 翼を持って生まれてきた者は、30歳までにみんな衰弱して死んでしまう。宝珠に 全く触れなくても、だ。
 だから……気にしなくていい。

 気にしなくて良いわけはないが、誰もそれ以上聞かない。
 この際と、ノエルはさらに聞きづらかったことも聞いてみることにする。
■ノエル To:イェルク
 それからその白い翼が受け継がれていくものだとしたら、たとえばあなたに 子供ができたら確実に白い翼の子が産まれるの?それとも偶然にたよるしかな いのかしら?

 聞きづらい質問だったのだが、イェルクはさほど気にした様子もなく淡々と答えた。ただ、気にしていないというのではなく、深く考えたくないというのが本音かもしれないが―――
■イェルク To:ノエル
 それは、その子供の父親による。白い翼の血を受け継いでいる者との間なら、 産まれる女子は必ず白い翼になる。そうでなければ白い翼の子は産まれない。
 だが、白い翼の者の血を受け継いでいるかどうかは見ただけでは分からないん だ、男は白い翼にならないから。白い翼の母親から生まれた男なら確実に受け継 いでいるが、それ以降はどんどん血は薄まっていく。
 だから、偶然に頼るのと同じだな。

■アトール To:all
 しかも、結婚相手まで長老に決められるんじゃ、長老の見込み違いだと大変な 事になるな。

 アトールがやれやれと言った口調で言う。
■オジイ To:イェルク
 じゃあ、白い翼を持たないもの同士が子供を作っても白い翼の者は生まれてくる んですか?

■イェルク To:オジイ
 分からない………そういう話は聞いたことがない。

■ノエル To:イェルク
 じゃぁ、あなたに子供が産まれなければ、白い翼の子はもう2度と生まれて こない・・・かもしれないということ?

■イェルク To:ノエル
 ………そう…いうことになる。

 少しうつむき加減にイェルクが答えた。以降も白い翼の子を残そうと思えば、イェルクが残さなければならないということだ。
■ノエル To:イェルク
 他に血を残している人はいないの?ほら、あなたの前にヴィーザの封印を守 っていた人たちの子供とか。

■イェルク To:ノエル
 ………おそらく………いない。

 まとめればこうだ。ごく簡単なことだ。
 白い翼の女と、白い翼の母親を持つ男の間に生まれた女子は、必ず白い翼になる。それ以外は偶然に頼るしかない。そして、白い翼の母親を持つ男はもういない。
 だが、長老には算段があるのだ。ごく簡単なことだ。イェルクが男子を産めば、その子は白い翼の母親を持つ男だ。
 そのことに気づいた者も、さすがにそれに触れようとはしなかった。

 さすがにこれ以上追求するのはイェルクを傷つけると感じたのか、アトールは話を変えた。
■アトール To:イェルク
 ずいぶんラザに毛嫌いされていたみたいだけど、まさか村長も含めて、村全体が イェルクに対してあんな感じじゃないだろうな?

■イェルク To:アトール
 村のみんなは無関心だ。長老にしても、ラザにしてもだ。俺はただ宝珠を操作で きるだけの存在だから。

 少し自嘲気味に言う。村ではあまり良い地位ではないらしい。
■アトール To:イェルク
 ラザに関しては、無関心の割に、こんなところでお前さんを出迎えてるけどな。
 まあ、どういう感情が入り交じってるのか、人間の俺には理解できないかも しれんが・・・・。

■イェルク To:アトール
 俺にも、奴は理解できない。

 少し諦めがちの表情で首を横に振る。
■ウィード To:イェルク
 ラザの目的が結局分からなかったな。
 ただ嫌味を言いに来たって訳じゃないんだろうが…

■オジイ To:イェルク
 それでは、リーゼルさんは毛嫌いされているんですか。

■イェルク To:オジイ
 長老は嫌っているな。ラザも。
 他の連中はどうとも思っていないと思うが………

 ふむふむとうなずき、オジイは続けた。
■オジイ To:イェルク
 そうなんですか、それはそうとリーゼルさんはどこに住んでいるんです。

■イェルク To:オジイ
 エルフの集落だ。俺達の村から少し下ったところにある。ここからだと、エル フの集落の方が近いな。

■オジイ To:イェルク
 で、リーゼルさんっていくつぐらいの方なんです。 もしかして封印されていた頃から生きていたなんてことはないですよねえ。

■イェルク To:オジイ
 リーゼルは………ヴィーザが現れた時、子供だったそうだ。多くのエルフが殺さ れたと言っていた。リーゼルの両親も、一緒に殺されたと。

 と、そこで、黙って話を聞いていたアフルが話に加わる。
■アフル To:イェルク
 あれ、って事は、リーゼルさんはヴィーザが封印された時の経緯とか詳しく知っ てるんだよね。
だったら、ヴィーザを倒せるって剣がどう言う効果を持ってるのとかも詳しく知っ てるんじゃないの?

■イェルク To:アフル
 あまり詳しく訊ねたことがないから分からないが………聞けば教えてくれるか もしれない。

■アフル To:ALL
 リーゼルさんが住んでるエルフの集落の方が近いんなら、そっちに先に行って リーゼルさんにも詳しい話を聞いたほうがいいんじゃないかな? 

■オジイ To:ALL and ノエル
 なるほど、そうですね。
それだったら、今のところ2つ行動に選択肢があるわけですね。
アフルが言っているようにリーゼルさんに話を聞きに行くか、
もしくは、まず長老と話をして説得してからリーゼルさんに剣を貰いに行くかです ね。
自分はアフルの案に賛成ですが、どうしましょう。リーダー。

■ノエル To:ALL
 そうね・・・どちらにせよエルフの集落には行ったほうがよさそうだし。近 いならそちらに先に寄ってみましょうか。
 他のみんなもそれでいいわね?

■ウィード To:ノエル
 了解。リーゼルから有用な情報が手に入るといいな。

■アトール To:ALL
 OK。
 あんまりのんびりもしてられないし、エルフの集落にはどっちにしろ行くん だから、先によって行こうぜ。
 そっちの方が近いんだしな。

■オジイ To:ALL
 よし、じゃあ今日は休むとしますか。
   野営順を決めて後はゆっくり休みましょう。

 


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ゆな<juna@juna.net>