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Sword World PBM #25
「天使のつるぎ」 | ||
| 洗脳作戦 |
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『銀の網』亭 |
銀の網亭に戻ってきた。
まだ昼時からさほど経っていないせいか、客はそれほど減っていない。ウィードとノエルが魔術師ギルドに、アフルとソフィティアが道具屋に行ってしまったため、アトール・オジイとイェルクだけが戻ってきている。
■オジイ To:おやじ |
ただいま〜! |
オジイの声に気付き、おやじは軽く片手を上げてみせた。
■おやじ To:ALL |
よう。どうだった、見つかったか? |
■オジイ To:おやじ |
ええ、おかげさまで明日出発する馬車が見つかりましたよ。 どうも有り難うございました。 |
と、オジイは軽く頭を下げて椅子に腰掛ける。
■オジイ To:ALL |
よいしょっと。 じゃあ、みんなが帰ってくるまでお茶でも飲んでますか。 イェルクさんとアトールも何か飲まれますか? |
突然オジイに呼ばれて、イェルクは少し驚いたように顔を上げた。
■イェルク To:オジイ |
いや…俺はいい。気にしないでくれ。 |
アトールは気にせずに椅子にかける。
■アトール To:オジイ |
じゃあ、俺も貰おうか。 |
■オジイ To:おやじ |
おやじさん、紅茶を二つと、何か簡単につまめるものお願いします。 クッキーか何かがいいですねえ。 |
■おやじ To:ALL |
ほい、分かった。 イェルクさんの方はどうするね。水でも飲むかい? |
妙な服装のイェルクに対しても、おやじは臆した様子はない。慣れの問題かもしれない。
イェルクが小さく頷いたのを確認し、オジイとアトールの前にクッキーと紅茶が、イェルクの前に水の入ったカップが置かれた。
■オジイ To:イェルク |
さてと。今日はどうも疲れましたねえ。 イェルクさんって普段どんなものを食べているんです?あと、人間の食べ物だとどんなものなら違和感なく食べられます?良かったら隊商の方に交渉してみますよ。 |
■イェルク To:オジイ |
いや、心配ない…と思う。人間の食べ物にも興味はあるし、あまり気にしなくていい。 |
フードの口元をずらし、少し水を飲みながらイェルクが答えた。「思う」のあたりに一抹の不安が残るが、誰もそれ以上追求しない。
■オジイ To:イェルク |
あと、今日の昼話していた話なんですけど、どれくらいの重さなんですかねえ。このメイスと比べてどれくらい重さに差があるかとかわかります? |
■イェルク To:オジイ |
剣か?そうだな……… |
イェルクは、オジイのメイスを少し持ち上げながら首を傾げた。
■イェルク To:オジイ |
………同じくらい…だと思う。俺には扱えないということだけは確かだ。 |
イェルクにとっては、オジイのメイスは重いらしい。オジイはイェルクからメイスを受け取りながら頷いた。
■オジイ To:イェルク |
ふむふむ。だったらもしかしたら僕にも扱えるかもしれないですねえ。それならソフィだったら間違いなくOKですから安心ですね。 で、その剣を今まで誰かが使ったこととかあるんです? あと、昼間炎の精霊王の力でも倒せなかったっておっしゃってましたが、ほかにイェルクさんの村に伝わっているヴィーザに関する言い伝えとかってあります?たとえば、変な魔法を使うとか、炎を吐くとかといった特徴とかあったら教えていただけません? |
■イェルク To:オジイ |
それが、炎の魔法も吹雪の魔法も通じなかったという話以外は、さっぱり伝わっていないのだ。 精霊魔法を扱うという話は聞くが、炎を吐くとかいう話は聞かないな。 |
つまり、分からない、と同じことだ。
■オジイ To:イェルク |
ふんふん、精霊魔法を使うんですかあ。でもって、使い魔っていうのがいるんですよねえ。 なるほど。なるほど。 |
言ってはみるものの、オジイは使い魔というものがどういうものなのか、いまいち分かっていない。とりあえず納得しているだけ。
■オジイ To:イェルク |
それと、(アトールに聞こえないよう声を潜めて)イェルクさんって彼女とか奥さんっています?うちのパーティの男連中で女っ気ないのってどうも僕だけみたいなんですよ。 |
■イェルク To:オジイ |
………? |
イェルクはもう一度首を傾げた。服装が服装なので表情は分かりにくいが、フードの間から覗いている真っ赤な瞳は明らかに戸惑っているように見える。
さっきから黙っているアトールはというと、聞こえないふりをしながら、しっかりと聞き耳を立てている。
■イェルク To:オジイ |
………それは、共通語の修辞か何かか?俺は女だから妻をもらったりはしないが……… |
■オジイ To:イェルク |
そ、それはどうも失礼しましたあ。しゃべり方から男性の方だとばっかり・・・。 |
オジイは顎をがくがくさせながら話している。視線もふらふらと宙をさまよっている。
アトールは笑い出しそうになりながら声を殺していたが、話題が止まったのを見計らってオジイに話しかけた。
■アトール To:オジイ |
せっかくだから、この機会にもうちょっとお近づきになったらどうだ?(笑) 何なら俺は、テーブルを離れてもいいぞ。(笑) |
■オジイ (独り言) |
うぇ・・・。るぃ・・・。はぅ・・・。 |
オジイは動転して、下がもつれている。
イェルクはそれを気にした様子もなく、話を続けた。
■イェルク To:オジイ |
それはさておき、皆遅いな。俺は今のうちに宿を取っておこう。人間の宿に一度泊まってみたかった。 |
と、イェルクはおやじの所に行って、部屋を取りはじめた。
■オジイ To:all |
じゃあ僕も一緒に保存食を注文しておきますか。 |
我に返ったオジイも、イェルクに続いておやじの所へ行った。
■オジイ To:おやじ |
あ、おやじさん、あと保存食を明日の朝までに準備しておいて欲しいんですが。 えっと、6人掛け6日掛け3食で・・・う〜んと108食分とりあえずお願いしますね。 それで足りなかったらみんなが帰ってきた後又注文を増やしますから。 |
■おやじ To:オジイ |
108食分だな、ちょっと待ってろよ。 |
と、おやじは奥へ入っていった。
しばらくして大きな袋を片手に戻ってくる。
■おやじ To:オジイ |
これでいいか? |
■オジイ To:おやじ |
う〜んと、10、20・・・100と8個で108個ですね。 どうも有り難うございます。あ、おやじさん、この代金はイェルクさんから貰ってくださいね。 |
と言い残し、保存食を持ってオジイはテーブルに戻ってきた。イェルクは宿代と一緒に食料代を払っている。
そのとき、ちょうど魔術師ギルドに行っていたノエルとウィードが帰ってきた。
『銀の網』亭 |
■オジイ To:ノエル and ウィード |
あっ、ノエルにウィード、お疲れさま。 |
■ウィード To:ALL |
ただいま。明日出発の馬車が見つかったんだってな。 早めに学院に行って正解だったよ。 |
■ウィード To:ALL |
俺、ちょっと用事があるから一度家へ帰るよ。 用事を済ましたら戻ってくる。 |
それだけ言い残し、ウィードはまた酒場を出た。バイナルとの約束のため、ウィ リンに話をつけに行くのである。
■ノエル To:ALL |
おまたせ〜 ソフィーたちはどうしたの?ん、デート?じゃなくて、毛布買いに? じゃぁ、もう少し時間かかるわね。 |
■イェルク To:ノエル |
ああ、やっと帰ってきたか。 アフルとソフィティアは「でーと」とやらに行っているのか?共通語は分からん……… |
■ノエル To:イェルク |
そうよ。デートって、一種の遊びね。 いろいろな種類があるんだけど、この場合は買い物デート。 女の子が力一杯いろいろなものを買って、それを全部男の子に持たせるの。 ほら、オジイが持っているような袋をいっぱい買い込むんだけど、女の子に持 たせるのは反則よ。 買うものは、できるだけ大きくて重いのがいいわね。しかも、お店は一つじ ゃなくてあっちで一つ、こっちで二つって具合に、商店街を あちこち歩いて回るのが基本。 一日かけて男の子が荷物を持ちきれなくなったらデート終了なんだけど・・ ・ あの二人なら、力一杯買い物しても持ちきれないような買い方はしないわね (苦笑)。時間制限付きだし。 |
■イェルク To:ノエル |
そ、そういうものなのか………よくわからん……… |
イェルクはさっぱり分からない様子だが、ノエルは機嫌良く続けた。
■ノエル To:イェルク |
そうなの(^-^) まぁ、デートの目的って、結局はお互いの親密度をアップさせるってことで ね。時には周りが気を使って二人きりのデート状態にしてあげるワケ。 |
■アトール To:イェルク |
そうそう(^^) でもって、デートの終わりとかには、こんな風にキスしたりとかも するわけだ。 |
と言うが早いか、素早くノエルにキスをするアトール。
■ノエル To:アトール |
ちょ・・・ (さすがに突然なので驚く。人前なので赤くもなる・・・が、怒らない(爆)) デートがうまくいけばね。 |
■イェルク To:ノエル&アトール |
………人間の風習は理解できん……… |
深刻そうな声でイェルクは考え込んでしまった。
■オジイ(独り言) |
熱いなあ、おやじさん、うちわ、ない?それもでっかいうちわ。 |
親父からは、ひらひらと手を振るだけの返事しかかえってこない。
アトールは、完全にノエルのおもちゃにされているイェルクの様子を見て忍び笑いをもらしながら、ノエルに椅子を勧めている。
■アトール To:ノエル |
お帰り、お疲れさま。 どう?何か収穫はあった? |
■ノエル To:アトール |
残念ながらなにもなし(^^; 実際に剣や『ヴィーザ』を見るまでは、はっきりしたことはなにも言えない わ。 |
■アトール To:ノエル |
あらら。 |
■オジイ To:ALL |
う〜ん、それは残念ですねえ。 まあ、向こうに着いてから情報が入るかもしれないですし気楽に行きましょう。 とりあえず、保存食も買い込んでおいたんで、後はゆっくり休むだけですねえ。 あっ、イェルクさん申し訳ないんですが明日の出発の時にこの保存食の代金もおやじ さんに支払っておいてくださいね。全部で、え〜と、756ガメルですので、よろし くお願いしますね。あ、おやじさんには話は通してありますんで大丈夫ですよ。 |
という説明が終わるのとほぼ同時に、イェルクはオジイの後ろからひょいと顔を出した。
■イェルク To:オジイ |
大丈夫だ。さっき宿代と一緒に払っておいた。 人間というのは、眠るにも食事をするにも金が必要なのだな。不便な話だ。 |
■ノエル To:イェルク |
支払いありがとうございます。 人間には人間の、あなた達・・・フェザーフォルクにはフェザーフォルクの 習わしがあると言うことです。 おそらく私たちがあなたの村に着いたときには、あなたには当然のことにも 驚いてばかりでしょうね。 |
■イェルク To:ノエル |
………そうかもしれないな。 |
イェルクはさほど興味のない様子で肩をすくめてみせた。
■オジイ To:イェルク |
あ、あとお金の話が出たんで丁度いいタイミングなんで、前金の話をさせていただ
きたいんですが。 前金だいたい3割程度が相場かと思うんで200G×6で1200Gほどいただきたいんです が・・・。 リーダー計算だいたい合ってますよねえ。 |
■ノエル To:オジイ&ALL |
計算はあっているわね。ただ、3割もらえることはまれだと思うわよ。 必要経費が別で落ちているんだから、2割でも前金としては多いぐらいかも しれない。 私としては一人150が6人で900 ガメルいただければ十分かと思うけれど。 |
とノエルが提案するが、イェルクはかぶりを振った。
■イェルク To:オジイ&ノエル |
いや、200ガメル必要というなら200ガメル渡しておこう。万全を期してもらい たいからな。 |
■ノエル To:イェルク |
イェルクさんがそれでもいいというなら、1200ガメルいただ きます。ありがとうございます。 |
そういいながら前金を受け取るが、ノエルは少し申し訳なさげである。
と───そこへ、道具屋へ行っていたアフルとソフィティアが帰ってきた。
■ソフィティア To:ALL |
ただいま。買い物おわったよ(^^) |
■アフル To:ALL |
ただいま〜、みんなもう帰ってたんだ。 |
アフルは、早速買ってきたばかりの(ソフィティアとお揃いの)マントを身につ けている。
■ノエル To:アフル&ソフィティア |
あら、おそろいのマントが見つかってよかったわね。似合ってるじゃない で、毛布はどうなったの? |
■アフル To:ノエル |
うん、山の中だったら、毛布だけじゃちょっと寒いかなって思って、ソフィーに選
んでもらったんだ(^^;; ソフィーの分の毛布もちゃんと買ってきたよ。 |
■イェルク To:アフル&ソフィティア |
おかえり。「でーと」とやらは楽しかったか? |
いきなりイェルクがさらりと訊ねる。
唐突な質問に、アフルとソフィティアが露骨に狼狽した。
■ソフィティア To:イェルク |
で、で、デ、デ〜トォ?(*^^*) |
■アフル To:イェルク |
え、あ、いや…(^^;; |
アフルは戸惑った様子をしつつ、ちらりとソフィティアに同意を求めるような視線を送った。
■アフル To:ソフィティア |
やっぱり、そうなるのかな…? |
■ソフィティア To:アフル |
なっちゃうのかな……?(^^; |
■イェルク To:アフル&ソフィティア |
ああ。ノエルがそう言っていたのだが………違うのか? |
アフルはもう一度ソフィティアの方を伺うがなにも言わない。ソフィティアも同じ。
少し待つが、結局答えを待たずにイェルクはちらちらと二人の顔を伺った後嘆息し た。
■イェルク To:アフル&ソフィティア |
なんだ、しないのか まあいい。俺は人間の宿というのを見せてもらってくることにしよう。 では、失礼する。 |
何を期待していたのか知らないが、イェルクはそう言い残して階段を上っていっ た。
■ソフィティア To:ノエル |
ノ、ノエル。いったいイェルクさんに「なに」吹き込んだのかな〜?(^^;;;; |
ソフィティアは笑顔がひきつっている。
■ノエル To:ソフィティア |
吹き込んだわけじゃないわよ。人間のことに興味があるって言うからいろい ろ教えてあげたの(^^; |
涼しい顔をして答えるノエル。楽しそうである。
■アトール To:アフル&ソフィティア |
イェルクはああいっているけど、しないのか?(笑) |
なにを?
■アフル To:アトール |
"しないのか?"って、さっきからなんのこと言ってるの? |
■ソフィティア To:アトール |
いったい、私たちがいない間になに話したてたのよ(^^; |
■アトール To:アフル&ソフィティア |
さぁて、何でしょうねぇ?(笑) |
アトールはにやにや笑うだけで答えない。
結局その答えはアフルにもソフィティアにも知られないまま、その日は更けた。
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