Sword World PBM #25

「天使のつるぎ」



魔術師たちの憂鬱




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魔術師ギルド

 ウィードは三角塔の前に来ている。魔術師のための組織としてはアレクラスト最大を誇る、オラン魔術師ギルドだ。賢者の学院とも言われるこの組織は、魔術に限らずあらゆる意味での知識の宝庫でもある。
■ウィード
 出発が早まるかもしれない…とっとと調べてしまおう。

 ウィードは入館の手続きを取り、やや早足で学院の中に入った。目当ては、顔見知りのバイナル導師(独身)だ。
 バイナル(独身)の研究室にたどり着き、ドアをノックする。
■バイナル(独身)
 あー、今開ける。

 返事と共にドアが開き―――
■バイナル(独身)
 ………(;´Д`)

 バイナル(独身)は、ウィードの顔を見るやいなや、露骨にイヤな顔をした。いや、もしやト書きで独身独身と連呼したせいかもしれない、可哀想だからやめてあげよう。
 この壮年の賢者が、バイナル導師だ。容姿に関してはさほど不自由していないはずだが、なぜかもてない。
■ウィード TO:バイナル
 おう、おっちゃん。探してたんだ。相変わらず1人身か? ヘ(ё)ヘ

■バイナル To:ウィード
 ………(;´Д`)

 顔に「毎度、挨拶はそれか」と書いている。
 バイナルが何か言い出す前に、ウィードはなだめる仕草をしながら話を続けた。
■ウィード TO:バイナル
 まぁまぁ、そんな顔しないで聞いてくれ。
 調べたい事があるんだ。協力して欲しい。
 おっちゃんの下っ端を何人か貸してもらえると助かるんだが…

 その代わりと言っちゃあなんだが、いい子紹介するよ。(笑)
 俺に任せておけよ。妹は女友達が多いんだぜ。
 な?悪い話じゃないだろ?

■バイナル To:ウィード
 用件にもよる。
 私一人の権限で、人をほいほい貸せるか。少なくとも研究に関係したことでないとな。

■ウィード To:バイナル
 おっちゃんの研究って確か…
 「何故ドワーフやグラスランナーには古代語魔法が使えないのか」だったよな。
 それなら、魔力について調べるのは有意義な事だよな。

■バイナル To:ウィード
 ふむ………

 バイナルが聞く体制になったので、ウィードは少し考えを整理しつつ話し始めた。
■ウィード To:バイナル
 『ヴィーザ』という名の『人型』の魔物について調べたいんだ。
 そいつは大昔に封印されたんだが、その封印がもう少しで解けてしまうらしい。
 今回俺達が受けた仕事は、その魔物を退治してくれってやつなんだ。

 で、ここからが重要なんだが…
 そいつは魔法に対して強い耐性を持っているそうだ。

 「魔力に抗するは魔力のみ」ってのは知っているだろう?
 魔法に強い耐性を持つって事は、『ヴィーザ』の体には魔力に抗する何かがあるはずだ。
 それが何なのかが分かれば、おっちゃんの研究に役立つかもしれない。
 どうだい、おっっちゃんの研究に無関係ではないだろう?
 『ヴィーザ』について調べるのに、おっちゃんの手を貸してくれないか?
 いい子紹介するからさー

■バイナル To:ウィード
 人型の魔物………ヴィーザ………魔法の耐性か………

 バイナルが腕を組んで少し考え込む。
■バイナル To:ウィード
 人型で、魔法に強いというと、考えられるのはまずダークエルフだな。ヴィーザという名のダークエルフ、ということならつじつまも合う。
 だが、私も知らない未知の魔物なということもありうる。それはさすがにどうしようもない。妖魔かもしれんし、魔獣かもしれんし、アンデッドかもしれんし、デーモンかもしれん。魔法耐性のある武具を身につけた人間かもしれん。
 まあいい、私もちょうど手が空いたところだ。図書館で少し調べてみるとしよう。
 動かせそうな下っ端が、一人…二人…

 その気になったバイナルを見て、ウィードは心中呟いた。
■ウィード(心の声)
 やはり女に弱いな…。壮年の独り者の悲しい習性か…

 ウィードの心の声には気付かず、バイナルは指折り数え最後にウィードを指さした。
■バイナル To:ウィード
 …三人か。よし、足りるな。

■ウィード(心の声)
 俺はおっちゃんの下っ端じゃないぞ。凸`´)

 ………と一瞬思ったが、哀れな独身オヤジの戯言と受け流し、話を再開する。
■ウィード To:バイナル&下っ端くん
 それじゃ手分けして調べよう。
 俺は「ダークエルフ」の線で調べてみる。
 下っ端くんは「妖魔」と「魔獣」の線で頼むよ。
 それらしい魔物が見つかったら、特徴と弱点を書き出しておいてくれ。

■下っ端くん To:バイナル
 ………(;´Д`)

 下っ端くん達の顔には、「なんでこんな奴にアゴで使われにゃならんのですか」と書かれている………
■ウィード To:バイナル
 それから、おっちゃんは「魔法耐性のある武具」について頼む。
 ただ、人間が装着できるようなサイズと重量の武具に限定だ。

■バイナル To:ウィード
 ………

 バイナルは頬のあたりを「ぴくぴくぴく」と痙攣させながら、実に作り笑いらしい作り笑いを浮かべている。
■バイナル To:ウィード
 ま、まあいい………行くぞ………

 バイナルの声に助手(=下っ端)達が従い、一行は図書館へ向かった。
魔術師ギルド・受付

 時間を少し進める。
 通商ギルドを早めに抜けてきたノエルは、魔術師ギルドの受付で入館の手続きをしていた。
■ノエル To:受付の人
 すいません。図書館で調べものしたいんですけど。
 ウィードが・・・
 (ふるふる)
 ウィードバルが来ていると思うのですけど、今どこにいるかわかりますか?

■受付の人 To:ノエル
 ウィードバルさん………ああ、さっきバイナル導師に面会に来た方ですね。
 何か調べものがあるとかで、バイナル導師と一緒に図書館の方に向かわれましたよ。

 台帳をめくりながら、受付が奥の図書館を指さす。
■ノエル To:受付の人
 それじゃ中で会えますね。ありがとうございます。

魔術師ギルド・図書館

 ノエルが図書館に入ると、すぐにウィードは見つかった。彼はなにやら熱心に調べている。
■ノエル To:ウィード
 あ、順調に調べもの進んでる?
 明日の朝に出発する馬車に乗せてもらえることになったから、気の済むまで資料集めできるわよ。

 声をかけられて、ウィードがようやくノエルに気付いた。彼の手には「人間の魂」に関する書物がある。ダークエルフに関する文献は早々に切り上げて、(#17の)ミシャルカを助ける方法を探していたらしい。
■ウィード To:ノエル
 ん…ノエルか?
 おっちゃんに2人も人を借りたんで意外と早くケリが尽きそうだよ。

■ノエル To:ウィード
 つきあって一緒に探してくれるなんて、ほんといい人なのね。

 ノエルは(事情も知らずに)素直に感心している。
■ウィード To:ノエル
 そうだな、いい人だよ。(^^)(独り身だけど)
 そういえば、おっちゃんのおかげである2人の命が救われたことがあったな…。
 正直、おっちゃんには感謝してる。f^^*)

■ノエル To:ウィード
 じゃぁ、命の恩人ってことにもなるわね。

■ウィード To:ノエル
 ん?俺にとっての恩人じゃないよ。
 訳ありで大きな声では言えないんだが、おっちゃんが助けたのは…
 グランディとシェリーっていう魔法生物さ。  彼らは今でもおっちゃんに感謝しているだろうな。

■ノエル To:ウィード
 ふぅん・・・
 (いろいろと想像しているらしい(^^;)
 それより・・・それ(「人間の魂」の本)読んでいたの?
 時間があるなら目の前の仕事の捜し物、もう少し手伝って欲しいな(^^;
 私一人じゃ時間が足りなさそうなの。
 ミシャルカちゃんのことは、帰ってきてから調べるのゆーーーーーっくり、手伝ってあげるから。

 興味をひかれていないと言えば嘘になるが、ノエルはその興味を抑えた。
■ウィード To:ノエル
 これ(「人間の魂」の本)か?
 『ヴィーザ』に関する調べ物はもう終わったからな。
 後はおっちゃん達が終わるのを待って情報交換をするだけさ。

 そこにバイナルが近づいてきた。
■バイナル To:ウィード&ノエル
 ん。なんだ、ウィード、知り合いか?
 私たちの方はあらかた終わったが、お前の方はどうだ。

 と言いながら、バイナルはウィードの持つ本をのぞき込んだ。
■バイナル To:ウィード
 ふむ、「人間の魂」について……?
 何か得るものはあったのか?

■ウィード To:バイナル
 いくらダークエルフでも、魔法武具なしでは魔法に対して無傷ではありえないようだ。
 頼みの綱はおっちゃん達が調べた情報かな…。

 ウィードが目で合図し、結果を話すように促す。バイナルは少しムッとしたように眉をひそめたが、それに関しては何も言わず、後ろにいた助手に命じて書類を出させた。


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ゆな<juna@juna.net>