一ヶ月かけて行って、既に封印が解けてしまっていたとなっては単なる笑い話である。

　どうも、旅にかかる時間の感覚が、人間とはだいぶ違うらしい。

　そんなにうまくはいかない。

　アトールは、テーブルを離れ、店のおやじにオラン周辺の詳しい地図を借りてきた。そして、テーブルの上に地図を広げて、指さしながら訊ねる。

　アトールが広げた地図を、イェルクがひょいとのぞき込む。

　イェルクは戸惑ったように言い、首を傾げた。

　と、グロザムル山脈の中腹のあたりを指さす。街道からはさほどはずれていないが、山に入らないといけないのが多少面倒そうだ。

　地図を見ながら少し考え―――

　と言いつつ席を立ち、アフルはカウンターのおやじの所へ行った。

　おやじが、いつものあまり上手ではない字で紹介状を書く。
　アフルはそれを受け取ると、仲間のところに戻った。

　それを聞いて、生活費をノエルから借りているアトールが苦笑した。
　ノエルの方は、アトールの表情に気付き、少しふくれてそっぽを向きながら、 小さくため息をつく。

　イェルクがぽんぽんとマントを腰のあたりをたたく。

　山に住んでいるならば、そこいらで狩りをすれば食料は足りるのだろう。
　―――と、ノエルはふと聞かない名前があったことに気づき、問いかけた。

　と言いつつ、ノエルはパーティメンバーをぐるっと見回した。

　『二人の邪魔をするようで』のあたりに微妙なニュアンス。

　―――という二人の言い訳(?)は、あっさり聞き流される。

　一瞬、アトールの言葉の意味を考え、理解したらしい。

　と、ソフィティアは部屋に戻り、すぐに剣と荷物だけもって戻ってきた。

　ウィードはそこで一呼吸置き、声を和らげた。

　ウィードは部屋にスタッフを取りに戻り、その足で学院に向かった。

　オジイが、立ち上がり、背中にメイスを背負う。