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Sword World PBM #25
「天使のつるぎ」 | ||
| 黒いマントの依頼人 |
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「銀の網」亭 |
ちょうど正午になった頃、酒場の扉が開いて、一人の人物が入ってきた。
黒いフード付きのマントに身を包んだ小柄な人物だ。何か背負っている上からマントを羽織っているのか、背中のあたりが妙に盛り上がっている。顔は、目のあたり以外は完全に隠されていて、真っ赤な瞳だけが覗いている。
一つ間違えると、それこそ未知のモンスターに見えかねない姿だ。
■黒いマントの人物 To:おやじ |
冒険者とやらは、来ているか? |
マントの人物は抑揚を抑えた声で言った。声はずいぶん高い。声の高さからすると、おやじが言った通り女性のようにも聞こえるが、口元を覆っているせいか声は少し聞き取りづらい。
■おやじ To:黒いマントの人物 |
ああ、そっちの方に――― |
■黒いマントの人物 To:おやじ |
ありがとう。 |
おやじがこちらを指さし、黒マントはこちらに近づいてきた。
■黒いマントの人物 To:ALL |
あなた達が「冒険者」か? |
■アフル To:黒いマントの人物 |
そうだけど… イェルクさん? |
■黒マントの人物 To:アフル |
……… |
「彼女」(?)はアフルの前で立ち止まった。近くで見るとよく分かるが、確かに小柄だ。ノエルより少し高いくらい、150cmあるかどうかといったところだろう。
―――と、突然「ぬっ」とマントの間から真っ白な手が出てきた。
■イェルク To:アフル |
そうだ。俺がイェルクだ。よろしく。 ―――ところで、あなた達の名前を、訊ねてもよいか? |
■アフル To:イェルク |
よろしく。 |
と言って、アフルは握手した。
■アフル To:イェルク |
俺は、アフルって言って、精霊戦士なんだ。 イェルクさんは? |
■イェルク To:アフル |
セイレイセンシ?精霊を操って戦うのか?俺も少しは扱えるぞ。 |
■アフル To:イェルク |
うん、精霊魔法も使えるし、戦士みたいに槍で戦うのもできるんだ。 精霊が扱えるってどのくらい使えるの? 俺はなんとかウィスプが呼び出せるくらいなんだけど。 |
■イェルク To:アフル |
俺もあなたと大差ないよ。武器の方はさっぱりだが。 |
■ノエル To:イェルク |
私はノエル。マイリーの神官です。 |
■オジイ To:イェルク |
どうもはじめまして、オジイっていいます。 よろしく。 |
手を差し出されて、ノエルが握手する。
次に、オジイが籠手を外し、大げさなジェスチュアで腕を振りながら、握手した。
■ソフィティア To:イェルク |
ソフィティアです。 |
■アトール To:イェルク |
アトールだ。よろしく。 |
ソフィティアは立ち上がって挨拶した。しかし、少し腰が引けている。
アトールは軽く手をあげて挨拶した。
■ウィード To:イェルク |
俺はウィードバルだ。よろしく |
ウィードも、アトールと同じく軽く手を挙げて挨拶した。内心、これなら変わっていると思われても仕方ないなと思っているようだ。
■イェルク To:ALL |
よろしく。 さて………依頼の話をしてもよいか? |
■ノエル To:イェルク |
おねがいします。 |
■ソフィティア To:イェルク |
まぁ、立ち話もなんですからおかけになって下さい。 |
ソフィティアが自分の席に戻りながら、椅子を引いて席を勧めた。しかし、イェルクは首を横に振る。
■イェルク To:ソフィティア |
ありがとう。だがこのままで構わない。 |
イェルクは、勧められた席をそのままに、話を続けた。
「銀の網」亭 |
■イェルク To:ALL |
お願いしたいのは、魔物の退治だ。俺達の村にかなり昔から封印されてきた魔物なのだが、封印が弱まっているのか、奴が力を取り戻し始めているのか、どうやら封印を解いて出てこようとしているらしいのだ。 できれば被害が出る前に、こちらから乗り込んで倒してしまいたいのだが。 |
依頼の内容はせっぱつまったもののようだが、イェルクの口調にはあまり緊迫感がない。これが地なのだろうか。
■ソフィティア To:イェルク |
封印された魔物?それも、かなり昔から……。どんな魔物なのか教えてもらえますか?言い伝えとかそういう類いのものでもいいですから。 |
■イェルク To:ソフィティア |
言い伝え、だな。 封印を維持するための宝珠とともに、奴を倒せると言われる剣が伝わっている。この剣がどの程度効くのかわからないが、必要なら使って頂くつもりだ。 それから、もう一つ。奴は魔法に対して強い耐性を持っているらしい。言い伝えでは、炎の精霊王の力をもってしても倒すことはできなかったそうだ。 |
炎の精霊王の力というのは、精霊魔法の「ファイアストーム」のことだろう。炎の精霊王の力を借り炎の嵐を呼ぶ魔法で、精霊魔法においては最強の威力を誇る。
■ウィード To:ALL |
魔法にたいして強い耐性か…。 そいつは厄介だが、日頃の剣の鍛錬の成果を試すいい機会になりそうだ。 |
■オジイ To:ウィード |
もしかしたら炎や熱さに対して強いのかもしれないですね。 それはそれでやっかいだと思いますが・・・。 |
■ソフィティア To:イェルク |
倒せる剣があるのに封印された……。剣は後から出来た物なのかしら?それとも、剣があっても封印するのがやっとだったのかしら? それから、どういった攻撃方法をするのかも聞いておきたいわ。 |
■イェルク To:ソフィティア |
そうだな、なるほど……… |
ソフィティアの質問に、イェルクは少し考え込んだ。
■イェルク To:ソフィティア |
封印されたのと同時期に作られたものだとは伝えられているが、封印された時に既に剣があったかは伝えられていない。もし、剣があったのならば既に倒されているだろうから、封印されてから作られたと考えるのが自然だろうか。
で、攻撃、だな。 精霊の力を借りた魔法で攻撃してくるらしいが、どの程度の力だったかまでは分からないのだ。奴の力を一時的に抑える術というのが伝えられているので、それで抑え込んでいるうちに封印してしまったのかもしれないが。 |
ソフィティアの質問に対して、一つ一つ考えながらイェルクが答える。
と、そこにアトールが割り込んだ。
■アトール To:ソフィー |
ちょっと、待ってくれよ、ソフィー。 次々と質問するのはいいけど、とりあえず順番に聞いていこうぜ。 攻撃云々の話の前に、俺にはさっきの説明だけじゃ、全然どんな魔物か想像も出来ないぞ? 豆粒ほどに小さい魔物なのか、人間の何倍もある巨人なのか? それすら解らない状態で、いきなり攻撃方法の質問とかは早いんじゃないか? それとも、ソフィーには、さっきの説明だけで何の魔物か見当がついたのか? |
■ソフィティア To:アトール |
ご、ごめん(^^; 精霊王の力をもってしても倒せない魔物って言うから……。そもそも私たちで太刀打ち出来るのかどうか心配になっちゃったのよ。炎の精霊王と言えば、精霊魔法でも最強の部類に入るものよ。でも、アトールの言う事はもっともよね(^^; 姿形がわからないのに、それを抜かして強さを計るのは早合点だったわ。う〜ん、まだまだ未熟者ね(^^; |
■アトール To:イェルク |
と言うわけで、俺にはまだ全然、魔物のイメージが全くわかない。 俺の知識が足りないだけかも知れないけどな(^^;; とりあえず、話を元に戻して申し訳ないが、どんな魔物なのかもうちょっと詳しく知っていることを教えてくれないか? |
■イェルク To:アトール |
ああ、確かにそうだな。 魔物は『ヴィーザ』という名で、異界から召喚されたものか、人為的に造られたものかは知らないが、古代の魔術師のところから逃げてきたものらしい。 外見自体は――― |
と、そこで、イェルクは少し他の客の視線を気にするように、周囲を見回した。そして、若干声のトーンを落とす。
■イェルク To:アトール |
―――我々と大差ない、つまり『人型』だったそうだ。中身まで似ているかどうかは分かりかねるが。 |
と、そこで数秒沈黙がよぎった。一同『ヴィーザ』という名の魔物についての知識を探っているらしい。しかし、誰もその名を聞いたことのある者はいなかった。
■アトール To:ウィード |
『ヴィーザ』ねぇ。 なぁ、ウィード。賢者の学院じゃ、そういうのって習わなかったのか?(^^; 名前まで解ってるなら、学院の書物とかを調べれば手がかりぐらいは得られそうな気もするけど? |
■ウィード To:アトール |
う〜ん『ヴィーザ』か…聞いたことがないな。 そうだな、後で学院に行って調べてこよう。何か分かるかもしれない。 |
■アフル To:イェルク |
封印を解いて出てこようとしているって、どうしてわかったの? まだ、完全に封印が解けた訳じゃないんでしょ? |
もっともな質問である。イェルクの方もこの質問は想定していたようで、すぐに答が返ってきた。
■イェルク To:アフル |
奴の使い魔が封印の外に出てきていたのだ。神の力を借りた魔法で、そのような使い魔を召喚する魔法があると聞いた。剣を盗み出そうと忍び込んで来たが、火トカゲの息を浴びせてやると逃げていってしまった。 封印は『ヴィーザ』本体には有効なのだが他の魔物に対してはそうでもなくてな。弱まった封印では、本体は外に出られなくとも使い魔なら出入りできてしまうようなのだ。 |
『神の力』というのは、おそらくまっとうな『神』の力ではないだろう。暗黒神の力を借りた魔法であれば、使い魔を召喚し支配する魔法が知られている。
■ノエル To:イェルク |
その使い魔ってどんな姿をしていましたか? 大きさとか色、形もわかれば出来るだけ詳しく知りたいのですけど。 |
■イェルク To:ノエル |
インプとかいう翼の生えた下等な妖魔なのだが、知っているか? |
イェルクの言葉に、ウィードが軽く頷いた。
■ウィード To:イェルク |
ああ。戦った事があるが大した相手じゃない。 暗黒魔法を使うから油断は禁物だけどな。 |
■ノエル To:イェルク&ウィード |
話には聞いたことあるけど、実際に見たことはないわね。 あまり会いたくなるような種類の生き物ではなさそうだけど(^^; |
■アトール To:all |
やっぱり使い魔よりも、『ヴィーザ』本体が問題になりそうだな、こりゃ。 |
と、さっきから横で聞いていたアフルが口を開いた。
■アフル To:イェルク |
その、『ヴィーザ』を倒すための剣ってどういう剣なのか分かる? 普通に切って使うのか、それとも、何か別の使い方をするのか。 |
■イェルク To:アフル |
剣は、剣だ。俺は剣のことは分からないが、普通に切ればいいはずだ。 |
■ノエル To:イェルク |
そういえば、魔物を封印していたという宝珠は、どうなっているのですか? まさか壊れてしまったとか・・・ |
■イェルク To:ノエル |
いや、俺が最後に見た時はまだ壊れていなかった。宝珠が壊れてしまっては、封印が完全に解けてしまうからな。 それに、さっき言った「奴の力を一時的に封じる術」も、宝珠の力なのだ。壊れてしまっていると困ったことになる。 |
「銀の網」亭 |
■ノエル To:イェルク |
ところで、あなたの住んでいる村とはなんという名前の村で、どのあたりにあるのですか? |
■イェルク To:ノエル |
村の名前………? ああ、なるほど、そうだな。オランとアノスというクニの間の山にあるのだが、村に名前は付いていないと思う。少なくとも、俺は「村」以外の呼び方をしたことがない。 |
■オジイ To:イェルク |
オランとアノスの間ですか。 歩いて何日ぐらいの距離なんです? あと、何人ぐらいイェルクさんの村には住んでいるんです? |
■イェルク To:オジイ |
徒歩か?徒歩なら一ヶ月近くかかると思うが………。 村の人口は56人だ。俺がこちらに来ている間に増えてなければ、だが。 |
■オジイ To:イェルク |
そうなんですか。 じゃあオラン寄りにあるって訳じゃないんですね。 なんで、オランの冒険者に依頼しようと思われたんです。 |
■オジイ (ひとりごと) |
アノスの聖戦士たちも優秀な戦士だと思うんだがなあ。 何か事情でもあるんだろうか。 |
■イェルク To:オジイ |
知り合いが、オランに行けば冒険者が集まっていると言っていたのでな。 近くのアノスというところにも行ってみたのだが、街に入れてさえくれなかったのだ。 |
普通入れてくれない………。というよりも、こんな不審人物をすんなり入れたオランの門番の方が謎である。
■アフル To:イェルク |
後、この依頼書に「人間の勇者」って、書いてるのはどういう意味なの? その剣が「人間」じゃないと扱えないとか? |
イェルクそのものが人間でないのかもしれない、と感じつつアフルが質問を続けた。
■イェルク To:アフル |
別に、人間じゃなくても扱えるだろうが………剣技に長けた者は人間に多いと聞いたから、人間を探しに来たのだが………。 な、何かおかしかっただろうか………? |
■ノエル To:イェルク |
いいえ。別に。 人間を捜しにきたというと、なんだかイェルクさんが人間じゃないみたいだけど。 |
■イェルク To:ノエル |
そ、それは……… |
思いがけないことを言われたとでも言いたげに、イェルクは口ごもった。そして、意を決したように、小声で答える。
■イェルク To:ノエル |
………いや、しかし、いずれ言わなければならないことだったな。確かに………俺は人間ではない。 ………だが…済まないが、この場で姿を見せるのは勘弁してもらえるか…。何というか…俺の姿は…醜いのだ。あまり他の人間に見られたくない………。 |
それを聞いて、ノエルはむしろ安心したように少し微笑んでみせた。
■ノエル To:イェルク |
ほんとのことが早めにわかってよかったわ。 で・・・ おやじさんはこのこと知っているんですか? もし知らないのなら、別に部屋を借りたほうがイェルクさんも安心して話せると思うのですけど。 |
■イェルク To:ノエル |
いや、話していない。 そうだな………できればあまり聞かれたくはないが、我ながらこれ以上不審なことはしたくないのだが……… |
■ノエル To:イェルク |
そう・・・わかったわ。 |
ノエルは辺りをさりげなく見回すと、小声なら大丈夫だと判断したのか、メンバーに目配せしつつ小声で話を続ける。
■ノエル To:ALL |
私・・・この依頼受けたいと思う。 イェルクさんの話を聞いただけじゃ、詳しいことはわからないけど・・・ でも、私たち以外に頼りに出来そうな人がいないというなら、協力してあげたい。 |
■アトール To:all |
人間じゃないのなら、俺達にとっても都合良いと思うぜ。 人間の知らない知識や技術を知っているかも知れないだろ? 何かミシャルカを救う手がかりが得られるかもしれない。 この仕事が終わった後に、ゆっくり聞くことにしようぜ。 |
■ノエル To:アトール |
人間の間には伝わっていない伝承とかもあるかもしれないわね。 ただ、そのぶん今回の『ヴィーザ』に関することが学院で調べてもわからないかもしれないってことが逆に不安なんだけど。 |
■ウィード To:ノエル |
だが、可能性を否定するのは良くないと思うよ。 少しでもやれる事はやっておかないとね。 それが積み重なって希望が見えてくるはずだよ。ミシャルカの件もね。(^^) |
■ノエル To:ウィード&ALL |
そうね。希望を捨ててしまったら見つかるはずのものも見つからなくなるものね。 で・・・・・ みんなは依頼受けることどうなの? |
■アフル To:ALL |
うん、俺もこの依頼を受けても良いと思うよ。 |
■ソフィティア To:ALL |
そうね、わたしも受ける方に一票。 |
■ウィード To:ALL |
俺も賛成だ。 |
■オジイ To:ALL |
ええ、この依頼を受けるのは僕も賛成ですね。 |
■ノエル To:ALL&イェルク |
じゃぁ決まり これからよろしくね、イェルクさん(^^) |
■イェルク To:ALL |
………ありがとう。 |
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