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「砂漠の花亭」 |
イスカとスレイ(サラ憑依中)が戻ると、食堂にはロッドだけが残っていた。
■イスカ To:スレイ(サラ憑依中) |
ロッド、ただいま。みんなはまだ帰ってきていないのか。 サラは部屋に戻って少し休むといいよ。 私はここでみんなを待つことにするから。 |
■スレイ(意識) To:サラ(憑依中) |
じゃ、上に行きましょうか |
■スレイ(サラ憑依中) To:ロッド |
私、部屋に戻ってるね・・・。 |
ポツリと言うと、2階へあがって行く。
ロッドは何も言わなかったが、やはり多少は気になるのか、 2階へあがって行く姿を目で追っていた。
スレイ(サラ憑依中)を見送ると、 イスカがロッドのいるテーブルにやって来た。
■ロッド To:イスカ |
おかえり、思ったより早かったね。 ・・・・・・どうだった? |
■イスカ To:ロッド |
涙なくしては語れない、美しい話ですよ。 サラは愛されていた。残された家族は彼女が戻ってくることを願い、 懸命に日々を生きている。 ・・しばらく、サラをそっとしておいてあげましょう。 |
予想はしてたのか、ロッドはただうなづいた。
■イスカ To:ロッド |
ところでみんなはどのあたりへ出かけたんです? |
■ロッド To:イスカ |
カナルが情報収集に行くと言って、皆ついていったよ。 どこへ行くとまでは聞いてはいないけど、あなたなら検討はつくのだろうね。 |
■イスカ To:ロッド |
カナルの情報収集ね・・。運を使い果たしてこなければいいけれど。 |
■ロッド To:イスカ |
彼等が戻ってくるのを待つだけなら、私の相手をしてもらえないかな? |
笑顔で誘う。やっとまたイスカを2人だけでしゃべれるのが嬉しいようだ。
■イスカ To:ロッド |
いいですよ。何か飲みます? |
心なしかイスカも嬉しそうだ。
イスカは喉が渇いたので水を、ロッドはコーヒーを頼んだ。
■ロッド To:イスカ |
これを見て。 |
飲み物が運ばれると、ロッドは首から下げていたペンダントを外し、 イスカに手渡した。
■イスカ To:ロッド |
このペンダントは、いつも身につけている・・? |
手に乗せていじっていると、何かの拍子で蓋が開いた。
中には小さな肖像画があった。
それは銀色の髪に、蒼い瞳の、とてもきれいな女性だった。
■イスカ To:ロッド |
なるほど・・。貴方の・・大切な人ですか? |
イスカはそれを、恋人だと思ったらしい。
ロッドはその勘違いを楽しそうに笑った。
■ロッド To:イスカ |
これはね、私の母なんだ。 ・・・・・・イスカ、貴方と似てると思わない? |
イスカの瞳も青い。髪の毛は白金なので、確かに似てるといえば似てる。
■イスカ To:ロッド |
この人が、貴方の・・。なんということ。 そう、似てますか? それは、なんとも光栄なお言葉ですね。 でも私には、これほど神秘的な陰はとてもありませんよ。 私よりも、貴方のほうに似ていると思います。 おや、そうすると、私と貴方は似ているということになるのかな?(^ ^) |
■ロッド To:イスカ |
嬉しいね。 あなたと似てるだなんて、幸せだ。 でも・・・母と私も似ている? この肖像でもそう思うのか・・・。 母に似ているのが嫌で、髪を黒く染めたと言うのに。 第一、私の瞳は血の色を透かせて、兎の目のような赤だ・・・。 |
■イスカ To:ロッド |
どんなに変えようとしても拭い切れない、血脈の流れが あるのかもしれません。 |
■ロッド To:イスカ |
15の頃はね、もっと似ていたんだよ。 私は母を知らない。私を産んですぐに亡くなったと聞かされていたからね。 だが、あれが母である事はすぐにわかった。 15のある日、私は寝室に自分そっくりの化け物を見たんだ。 銀色の髪に、白く透き通るような肌、血のように赤い唇をしたその女は、 赤い目をしていた・・・。 |
■イスカ To:ロッド |
なんて美しい魔物だろう・・ |
イスカはそっとつぶやいた。
■ロッド To:イスカ |
幸いと言うべきか、その時は戦わずにすんだ。 外から仲間が呼んだのだろう、すぐに化け物は窓から出て行った。 あの時の私は駆け出しの死霊魔術師だからね。戦えば私が殺られてただろう。 父を問いただして真実を聞いたよ。 これは先ほどカナル達にも言った事だが、 私の先祖にはDと言うノーライフキングがいた。 そのDに、母は化け物の仲間にされたんだ。 母は死んだと言った父の言葉は、ある意味正しい。 あの化け物は、私の母などではない。 母の永遠の苦しみを終わらせるために、吸血鬼殺しとなった。 |
■イスカ To:ロッド |
・・まるで吟遊詩人が語る悲劇のようだ。でも、貴方にとっては
それが逃れることのできない現実なんですね。
物語のような人生、そして、それを実際に生きる苦しみ・・ 私は耳を澄ましましょう、遠い旅先の街角で。貴方によく似た 美しい魔物の噂に。そして、愛する母親の呪われた生を終えるため、 レイピアをふるう黒髪の麗人のサーガに。 |
ロッドはイスカの言葉を、全て自分への祝福のように聞いていた。
イスカの口から紡がれる言葉こそが、自分の欲しかった言葉ではないだろうか。
このように他人に心のうちを明かすのも、初めての事だ。
ロッドとイスカが良いムード(?)の所に、2階からスレイが降りてきた。
■スレイ To:イスカ、ロッド |
まだ戻ってきていませんね、じゃ待ってましょうか。 ん?どうしたんですか、ロッドさん?(^^) |
2人のいるテーブルにつくと、無邪気にロッドに尋ねた。
ロッドの様子が微妙に違うと感じたようだ。
■ロッド To:スレイ |
いや・・・。 君は本当にタイミング良く現れると思ってね(苦笑)。 ああ、何の事かわからないって顔をしてるね。 そんな事より、カナル達はまだなのか? そろそろ行かないと・・・あ、これは私が口出しすることじゃなかったな。 |
■スレイ To:ロッド |
むぅ、どこに行ったんでしょうねぇ。もしかして賭博場だったりね(笑) |
■イスカ To:スレイ |
いや、もしかしなくても・・(^ ^) きっとカナルが「情報収集といったら行く場所はひとつしかない」 なんて言ったんじゃないのかなあ。 それで、ティトルがうれしそうに「面白いところに連れていって もらったんです〜」とか言いながら賑やかに帰ってくるんだ。 まったく、目に見えるようだね。 |
ロッドはイスカの演技に、ちょっと驚いたような顔をした。
が、特に何も言わずコーヒーをすする。
■スレイ To:イスカ |
ははは。それは真実味がありますね(笑) でもカナルのことだから情報収集はしっかりとやってくれるでしょうね。 ・・・・うん、たぶん |
ややあって、ティトル達一行が、店の入り口に姿を現した。
■ティトル To:イスカさん他 |
ただ今です〜☆ あ、やっぱりイスカさん達帰ってたんですね〜ゴメンナサイですぅ遅くなっちゃって…。 カナルさんに面白いところに連れていってもらったんですよぉ〜(^-^) |
ロッドが驚いてイスカの方をちらと見る。
先ほど言ってた通りになったからだ。
ティトルはみんなに一生懸命賭場の話を始めた。
(注:さんざんここに来るまでの道中に話しているが)
話の内容は入手した情報ではなく、主に賭場そのものについてだった。
■スレイ To:ティトル、カナル達 |
(やっぱり・・・・・・・・・・(苦笑)) それはすごかったですね、ティトル。 そうだ、何か情報は手に入りましたか? |
聞く方も心得たもので、ティトルの話を一応最後まで聞いてあげてから、 スレイはカナルに肝心なことを聞いた。
■カナル To:スレイ |
あ、ああ。 俺の腕も鈍っちゃいなかったて事ぐらいかな。
……いや、実際、それほど有力な情報は得られなかったのさ。 |
思ったより成果はなかったようだ。
(ゲームの方はそれなりに成果はあったのだが)
■スレイ To:カナル |
そうですか。まぁ、確認できただけでよしとしましょうか(^^) 残るはスキュラですね。 |
賭場の話が終わると、ティトルが尋ねる。
■ティトル To:イスカさん他 |
あ、ところでサラちゃんのお家はどうだったんですか〜? |
■スレイ To:ティトル |
あぁ、事は済みましたよ。でもサラの前ではその話題に触れないであげてくださいね。 |
■イスカ To:ティトル |
死に向き合うことは、自分の生と向き合うこと。 誰にとってもつらいことだろうからね。 |
一瞬、重い空気が漂う。
■ティトル To:スレイ |
??何かあったんですか?? …って、話ししない方がいいならそうします☆ ん〜。でももう出発しますよね〜私呼びに行ってきますぅ |
■イスカ To:ティトル |
ああ、ありがとう。そろそろ出かけなくてはね。
虫も殺さぬ笑顔だけど、ロッドはうずうずしているみたいだよ。(^ ^)
みんなも準備はできているかな? じゃあ、願いの泉に向かおう。 |
装備を整えると、一向は宿を後にした。
外に出ると、太陽が大きく西へ傾いていた。
オレンジ色に輝く空が、一日の終わりが来る事を 静かに伝えているようだったが、彼等の本当の一日は 今から始まるのだ。
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