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「砂漠の花亭〜サラの実家」 |
話は少し戻って、サラ、イスカ、スレイが宿を出ていった後の話―――
「砂漠の花亭」を出て、通りに出ると、日差しはかなり強くなっていた。 しかし、幸いと言うべきか、乾燥した地域なので、汗はあまり出ない。
■イスカ To:スレイ(サラ憑依中) |
うっ、まぶしい!・・なるほどね、これではロッドが昼間に外を
歩きたくないのもわかるな。あの白い肌ではたちまち火傷を
起こしてしまうだろう。 スレイも気をつけて、顔を直接日光にさらさないほうがいい。 エルフの頬にそばかすは似合わないからね。 |
イスカはマントを頭からフードのようにかぶった。
■スレイ(意識) TO:サラ(憑依中) |
そばかすはいやですよ〜 |
■スレイ(サラ憑依中) TO:スレイ(意識) |
あ、ああ、ごめん。忘れてた(^^; 幽霊長くやってると、服着てる事も忘れちゃって(^^;;; |
スレイ(サラ憑依中)も、言われて慌ててフードをかぶる。
■スレイ(意識) |
そう言えば、日焼けしたエルフには会ったことないなぁ。 こんがりしてて・・・・・・・・・うん、いいかもしれませんねぇ(^^) |
日焼け程度ですめば良いが、スレイの肌では水ぶくれを作ってしまうだろう。
こうしてフードをすっぽりとかぶった、どこからどう見ても旅人の2人は、 ルーイェンの街を歩いていった。
通りには街路樹が植えられ、僅かではあるが、木陰を作り、
道の端には一段他高くなって水路が走っていた。水路は水の祠からの湧き水を 街全体に運ぶものだ。
「砂漠の花亭」からさほど遠くない所に、サラの実家はあった。
一軒の料理屋らしい建物の前でスレイ(サラ憑依中)は立ち止まる。 店の看板には「ステラ母さんの料理屋」とある。
■スレイ(サラ憑依中) To:イスカ |
ここだよ、営業・・・してるみたい。 ウェイトレス誰がやってんのかな。 私、いなくてもどうにかなっちゃうんだね・・・。 あ、入ろっか(^^;。 |
■イスカ To:スレイ(サラ憑依中) |
そうだね、ここまで来たんだ。覚悟を決めるしかない。 自分が死んだ後のことなど、本来は知るはずもないんだ。 だから、何を見たとしても・・あきらめる覚悟をね。 |
イスカを見て頷くと、覚悟を決めたようだ。
ゆっくりと、店の扉を押し開いた。
「ステラ母さんの料理屋」 |
「砂漠の花亭」より、いくらか狭い店内には、昼を過ぎているというのに、 まだ客がかなりいた。
その間を、少し太った中年女性と、まだ幼い男の子(12歳以下だろう) が、忙しそうに行き来する。
■スレイ(サラ憑依中) |
・・・・・・ |
その様子を見て、一瞬動きが止まる。
■イスカ To:スレイ(サラ憑依中) |
どうしたの、ええと、サラ? さりげなく、席についたほうがいいんじゃない? |
イスカがサラに囁く。
サラははっとして、促されるままに、近くのテーブルについた。
■スレイ(サラ憑依中) To:イスカ |
―――あの子さ、私の・・・あ、ええと、サラの弟でアレックスと言うんだけど、 店なんか一回も手伝ったことないのに、働いてるからちょっと驚いちゃって。 |
イスカに話し掛けつつも、目はまだ少年と中年女性を追っている。
■イスカ To:スレイ(サラ憑依中) |
そう・・。そういえば、面差しが似ているね。 まだ小さいのに、立派なことだ。 |
■スレイ(意識) |
・・・ |
スレイも頷いたらしかった。(意識体なので、サラにはその感覚が伝わったのみだが)
やがて、中年女性が2人のテーブルにやってきた。
■ステラ=ノーキアス To:お客さん |
いらっしゃいませ。 お待たせしてすみませんね。今ちょうど込んでる時間帯なんで(^^;。 ご注文をどうぞ。 |
■イスカ To:ステラ |
いいや、商売繁盛で結構ですね。じゃあ、私はこれと・・これを。 スレイは何にするの? |
イスカはタヒーナ、シャクシューカ、赤ワインを頼んだ。
■スレイ(意識) To:サラ(憑依中) |
サラのお勧めでお願いしますっ♪(^^) |
■スレイ(サラ憑依中) To:ステラ |
あ、わ、私はターメイヤとシャクシューカとマンゴジュースをお願い。・・・します。 |
しばらくぶりの会話(?)に緊張してしまう。
だが、まさかステラがそんな事に気づく訳もなく、 メニューを取ると、ステラは行ってしまった。
■スレイ(サラ憑依中) |
ほ。 |
ほっとしたのもつかの間、10分も立たないうちに料理が運ばれ始める。
■スレイ(意識) To:サラ(憑依中) |
うわぁ、おいしそうな料理ですね、サラ♪ |
明るく言ってみるが、サラからの返事が無い。
■スレイ(意識) To:サラ(憑依中) |
・・・・・サラ? |
■スレイ(サラ憑依中) To:ステラ |
あ、あの・・・。 前にここに来たときには、ウェイトレスの女の子がいましたよね。 か、彼女はどうしちゃったんですか? |
サラは一生懸命平静を装って、聞いてみた。
だが、グラスを持つ手が震えている。
このエルフの客の一種、なんでもない問い掛けは、 ステラの顔からも笑顔を消した。
■ステラ To:お客さん |
ああ、お客さん、あの子の事覚えててくれたんですか。 恥ずかしい話なんですが、家出されましてね。 もうすぐ一ヶ月になってしまう。最初は2、3日で戻ると思ってたんですけど、 はぁ・・・、今ごろどこでどうしているのやら。 おかげで、今はあの子の代わりにアレクに手伝わせてますけど、 アレクじゃサラのような働きは出来ませんし、 本当、困ってるんですよ。 |
■イスカ To:ステラ |
アレク・・サラの弟さんですね? サラの代わりは、やはりいないということか。それでいいんだ。 |
サラの様子を心配そうに伺いつつ、つぶやく。
このつぶやきは、ステラの耳にも入ってしまった。
■ステラ To:お客さん |
はい? 何が”それでいいんだ”―――ですか? 当たり前じゃないですか、何人子供がいたってみんな一人一人可愛いんですよ。 みな、私がお腹を痛めた子ですからね。 あの子の代わりなんていやしません。 |
■スレイ(サラ憑依中) |
お腹を痛めた・・・子? |
■イスカ To:ステラ |
ああ、これは失礼。そんなつもりでは。 娘さん・・戻ってくるといいですね。 |
イスカは、ステラに聞こえているとは思ってなかったので、ちょっと慌てたようだ。
■スレイ(意識) To:サラ(憑依中) |
子を想わない親なんていないんですね・・・・ |
■スレイ(サラ憑依中) To:スレイ(意識) |
うそ、だって・・・ 私、拾われっこじゃなかったの? 私ばっかり 働かされて、ぶたれて、辛くて・・・! |
サラの叫びは聞こえない。
ステラは涙ぐみながら、イスカに訴える。
■ステラ To:お客さん |
ええ、ええ、戻ってくると信じてますよ! でもね、本当は・・・あの子が元気で幸せにやってるなら、 もう・・・。 うちに戻ってきたくない気持ちもわかるんですよ。長女だからってんで、 私たちはあの子に厳しくしすぎたかもしれません。 だから、元気で幸せに・・・どこかで生きていてさえくれたら、 私はそれで満足しようと思うんです。 |
サラは心の中で泣いた。
■イスカ To:ステラ |
・・・・・。 それを聞けて、良かった。サラも、喜んでいるでしょう・・。 |
サラの事を思うと、言葉が出てこない。
スレイ(サラ憑依中)は目に涙を溜めて・・・
■スレイ(サラ憑依中) To:ステラ |
お母さんがサラを思うように、 サラもお母さんの事を思ってる、・・・きっと。 だから、お母さん、元気になって・・・ね。 |
震える声で、これだけ言うのが精一杯だった。
気丈にも笑顔を作ろうとさえする。
ステラも手の甲で涙をぬぐうと、 これに応えるように、わざと明るく振るまった。
■ステラ To:スレイ(サラ憑依中) |
ありがとう、優しい人達だね。 そうだよ、めそめそしててもしょうがない。 前向きに生きなくっちゃね。 じゃ、私は失礼しますね、こんな話しちゃってすみませんでした。 でも、聞いてくださって嬉しかったですよ。 |
■イスカ To:ステラ |
いいえ、こちらこそ。本当にありがとう。 |
ステラは軽くお辞儀をすると、カウンターの方へ戻って行った。
その様子はきびきびとしていて、頼もしく感じさせる。
■スレイ(意識) To:サラ(憑依中) |
さぁ、ステラさんのお料理を食べましょう(にこ) |
■スレイ(サラ憑依中) |
ん・・・。 |
ステラが立ち去ると、一応運ばれた食事を食べ始める。
サラは、もそもそと食べ物を口に運んだ。
イスカもサラ気を遣い、声をかけるような事はせず、 2人は黙って食事をした。
料理はどれもサラの好物だったはずだが、悲しみの中で食事をしても、 味などわからなかった。
ただただ、機械的に食事を終えると、スレイが話し掛けてきた。
■スレイ(意識) To:サラ(憑依中) |
そろそろ行きましょうか、サラ。みんなも待っていることでしょうから |
■スレイ(サラ憑依中) |
・・・そろそろ出ましょう。 |
■イスカ To:スレイ(サラ憑依中) |
そうだね、行こうか。もう心残りはないね?じゃあ、ごちそうさま。 |
全員が早く店を出たかったに違いない。
「料理屋〜砂漠の花亭」 |
外へ出ると、日差しが少し和らいでいた。
太陽が少しづつ西へ傾き、夕暮れが近くなってゆくのだろう。
■スレイ(意識) To:サラ(憑依中) |
いい、お母さんでしたね・・・・。 |
スレイのこの言葉は起爆剤になった。
■スレイ(サラ憑依中) |
私・・・死にたくなかったよぉ。 もっと、もっと生きたかった・・・。 |
ぴたっと止まると、両手で顔を覆い、泣きじゃくりはじめた。
■スレイ(意識) To:サラ(憑依中) |
サラ・・・・・・・・。 アレクがサラの分まで生きてくれますよ・・・・。 それに・・・・ それにサラは、皆の心の中で永遠に生き続けてゆけるのですよ・・・ そう、永遠にね。。。 |
■スレイ(サラ憑依中) To:スレイ(意識) |
ひっく・・永・遠・・・? |
■イスカ To:スレイ(サラ憑依中) |
・・気のすむまで、泣きなさい。 |
イスカはスレイ(サラ憑依中)の両手を握って優しく言った。
■スレイ(意識) To:サラ(憑依中) |
サラ・・・思いっきり泣いていいですよ。胸を貸してくれる人はいるんですから・・・ |
スレイ(サラ憑依中)はイスカに抱きついて、声をあげて泣き始めた。
イスカは自分より背の高いスレイの体を支えると、なるべく人目につかないよう、 物陰に座らせて、サラが泣き止むまで背中をさすってやった。
■イスカ To:スレイ(サラ憑依中) |
どう、落ち着いた? ・・つらいことだったね。これもみんな、スキュラのせいなんだよ。 私たちが必ずかたきをとるから。そうすればサラは、いつまでも 家族のことを見守っていけるから。 |
■スレイ(サラ憑依中) To:イスカ |
うん、うん・・・。 |
サラがようやく落ち着つくと、まっすぐ砂漠の花亭に戻ることにした。
本当はイスカもスレイももう少し歩き回ってみたかったのだが、 サラがこんな状態では、それは辛すぎるからだ。
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