SW-PBM Scenario #24

水面に映る夢

第二章.自由人の街道を超えて
「真昼の野営」


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Contents


真昼の野営

 「街道近くの森」

1日目野営1直目

話も食事も終わると、いよいよ野営である。
野営1直目は、イスカとカナル。時刻は朝6時頃だ。

■カナル To:イスカ
しかし、こんな昼間に見張りをして森の中で寝るとは……。
道中はこんな日が続くのだろうから、早めに体を慣らして おかないとな。

カナルの声に、気が高ぶってたのか、まだ寝れなかったティトルが顔をもたげた。

■ティトル To:カナル?
ん…、昼間に寝るなんて久し振りですぅ(^-^)
天気も良くなりそうだし〜気持ちいいですよねぇぇ……ぐう…。

・・・・・・寝たようである。
こうなると、逆になかなか起きないティトルである。

■イスカ To:ティトル
ゆっくりお休み、ティトル。

■イスカ To:カナル
さて、夜が明けた・・鳥たちが新しい歌をうたいはじめた。
すがすがしい風だね。ちょっとあたりを散歩してきてもいいかな?

■カナル To:イスカ
ああ、期待してるぞ。
がんばれよ。

■イスカ To:カナル
おや、何を期待してるのかな? カナルに捧げる野の花束でも?
まあいいや、行ってくるから、何かあったら呼んでね。

弓を持って出かけると、 ほどなく森の中で野うさぎを見つけた。
イスカは風下から近づくと、獲物が気づく前に矢を放った!
矢は見事、うさぎを貫き、うさぎはやがて心の臓の動きを止めた。

■イスカ To:カナル
ほら、お土産。あたたかいシチューでも作ろうかと思って。

■カナル To:イスカ
お、なかなかやるな。
これで少しはましな食事がとれるな。

■イスカ To:カナル
みんなの分も残るといいんだけど、そんなにないかな?
で、カナル、料理は得意?(^ ^)

■カナル To:イスカ
まぁ、一応作れることは作れるが……。

■イスカ To:カナル
そう、じゃあ、よろしく。(^ ^)
私は料理の道具を全然持っていなくて。

イスカがうさぎの皮を剥ぐ。うさぎの肉は真っ赤な色をしていた。
それを、カナルが野草と一緒に煮込む。
出来上がるとさっそく2人は口にしたが、どちらも無言だ。
しばらく無言で食べつづけていたが・・・。

■イスカ To:カナル
うーん。・・まあ、いいんじゃない? 十分食べられるよ。
少し苦みが感じられるのは、ウサギの根性が良くなかったのかな?

苦しいフォローである。カナルの方も出来栄えが悪かったのは自覚があったので、 苦笑するしかない。

■カナル To:イスカ
……ははは。
はぁ。ま、こんな事もあるさ。

二人は(出来の悪い)鍋を食しつつ見張りをし、やがて交替の時間を迎えた。

1日目野営2直目

野営2直目は、スレイとリグ。時刻は朝10時頃だ。
スレイはまだ少々ぼーっとしている。

■スレイ To:リグ
むー、まだちょっと眠いです・・・・・・・・・・あふ。
そういえば、リグと野営するのは久しぶりですねー。改めて言うのも変ですけど、 よろしくお願いしますね(^^)

■リグ To:スレイ
・・・・・むにゅむにゅ。
ん〜、おはよう、スレイ兄ちゃん。
フェイさんの護衛の時以来だね、こちらこそよろしくね。

リグも同じくぼーっとしていた。(こんなんで見張りになるのだろうか?)
夜歩き、昼休むというサイクルに、まだ体が慣れてないのだろう。

■スレイ To:リグ
そういえば、リグも楽器を買いましたよね。うまく弾けますか?

■リグ To:スレイ
う〜ん、まだまだヘタッピだね。(^^ゞ
バティ兄ちゃんみたいに上手く弾けるといいんだけどなぁ。

リグの中では、バティの演奏は上手いと言う事になってるらしい。
これはかなり希有な人と言えるだろう。

■スレイ To:リグ
はぁ、バティみたいにね・・・・・・。
「しゃっくりしたドラゴンが腕立て伏せしてひーほー」しか聞いていませんからな んとも言えませんが・・・うーみゅ(^^;
・・・・あ”、そう言えばリグは・・・・(^^;;;

■リグ To:スレイ
え、何か言ったスレイ兄ちゃん?
・・・でも、わたしってバティ兄ちゃんの歌ってしっかり聞いたこと無いなぁ。
きっと、楽しい歌ばかりなんだろうね。(^^)

前の依頼(シナリオ#12)でのリグの乱心した姿を思い出し、 スレイは耳をピクピクさせた。

■スレイ To:リグ
そうそう、この横笛には風の精霊さんが住んでいるんですよ(^^)

首にかけた横笛を見せながら言う。 コントロールスピリットにより、シルフが宿っているのだ。

■リグ To:スレイ
それって、楽器屋さんで買ったやつだよね。
スレイ兄ちゃんも歌を始めるのかなと思ってたけど、楽器がお家なんてオシャレだねぇ。
じゃあ、プーって吹くと中から出てきちゃうのかな?

■スレイ To:リグ
ほぇ?そう言えばどうなるんでしょうね・・・・

覗き込んでみる。が、何も見えない。
今度は吹こうとしてみるが・・・

■リグ To:スレイ
ねね、風の精霊さんには名前はついてないの?

スレイは笛から口を離した。

■スレイ To:リグ
名前ですか・・・・つけてませんよ。精霊に名前をつけることはめったにありませ んから。
特に、風の精霊などは一個所にとどまろうとしませんからね(^^)
でも、当分一緒ですし、名前をつけるのもいいですね。どんな名前がいいと思いま す?(^^)

そう言ってから、スレイは改めて笛を吹いた。
高い音が鳴ると共に、一陣の風が舞い、それはスレイの前で 人の姿を形作った。

■スレイ To:リグ
ほらっ、外に出てきましたよ、リグ♪

■リグ To:スレイ
わぁ〜、きっれーい!
ほんとにプーってやったら出てきたぁ。
ふ〜ん、なんかちっちゃくて可愛いな。
わたしはリグって言うんだよ、よろしくね“ぷうちゃん”

怪訝な表情のスレイとシルフ。

■リグ To:スレイ
だって、プーって吹いたら出てきたでしょ。
それに可愛いから、ぷうちゃんなの

よくわからない理屈だがスレイはこれで納得したようだ。
この後、一段落してから、リグはチャザへの祈りをし、ラックの魔法をかけた。

1日目野営3直目

野営3直目は、バティとティトル。時刻は午後2時頃だ。

■スレイ To:バティ
バティ〜、そろそろ交代ですよー。気持ちのいい天気ですよー

スレイはバティの寝ている木を、ゆっさゆっさと揺すって起こした。

■スレイ To:バティ
それじゃ、わたしは寝ますね、バティ。ティトルを起こしてあげてくださいね(^ ^)

いやー、本当にいい天気です。お昼寝にはピッタリですねぇ・・・・・うんうん( ^^)

心地よい眠りから、強引に起こすと、自分は木の幹に寄りかかって寝始めた。
(とても幸せそうである)
バティがティトルを起こす前に、ティトルがむっくり起き上がった。
どうやら、スレイに踏まれたようである。
このバティとティトル、2人の野営中の会話は、知らされていない。

スレイの耳

 「森」〜「街道」

2日目の夜

結局、野営中に何もおかしな事はなかったようだ。
日が暮れると、みなで夕食をとり、野営の片付けも終わり、 そろそろ出発しようという頃。

■ティトル To:サラ&おおる
そろそろ出発ですね〜(^^)
サラさんはぁ、また誰かに憑いた方がいいんですよね〜
う〜んと、私は憑いてもらうのやってもらったから今度は他の人が やってもらったらいいですよ〜、おもしろいんですぅ。

時刻は夜だし、オラン市街と違って人通りも少なく、 もう憑依して歩かなくても良いような気もするが・・・。
ティトルは自分が楽しかったので、他の人にも楽しんでもらいらしい。

■カナル To:スレイ
良かったな、お鉢が回ってきそうだぞ。

■サラ To:ティトル、スレイ
あ、嬉しいな(^^)。
じゃあ、この人にしよっと♪

と言って、スレイに憑依しようとする。

■スレイ To:ティトル、カナル、サラ
はい、嬉しいですっ(TT)
あ、ちょっと待ってくださいね。準備しますから♪

憑依されるのに、準備も何も必要ないのだが、スレイは身だしなみを整えたり、 耳の動き具合を確認したり、心の準備をしたりした。

■サラ To:スレイ
まだぁ〜?

サラが、スレイの上を旋回しながら催促する。

■スレイ To:サラ
さぁ、準備は万全です、サラ!
い、いつでもかかってきて下さい!! \(−−;)/

■サラ To:スレイ
行くよ〜っ♪

両手を広げて、向かい入れるスレイの頭から、サラがすっと入り込んだ。

■スレイ(サラ憑依中)
ん〜今度のは、耳がぴくぴく動くよ。
おもしろ〜い(^^)♪

■スレイ(意識) To:サラ(意識)
ふふふ、エルフの耳はいいもんでしょう?
自由自在に動かせますし、耳会話も出来る。こいつはお買い得ですよぉ(笑)

■スレイ(意識) To:サラ(意識)
わたしの故郷ではね、耳を上手に動かすことが出来なかったら成人したとは認め てくれないんですよ。
だから、わたしも辛い修行をしたもんです・・・・

 スレイは遠い故郷と昔を思い出していた・・・。

耳の柔軟体操をしたり・・・
耳に息を吹きかけたり・・・
イメージを高めるために、耳が大きい空飛ぶ象さんのお話を聞いたり・・・
そして基本の型(?)の繰り返し練習・・・・。

そして最終目的である、 耳でする「あっち向いてホイ」を極めるまでの過程が スレイの頭の中で走馬灯のように流れていった。

その映像は、サラにも少し伝わったようだ。

■サラ(意識) To:スレイ(意識)
へぇ・・・結構大変だったのね。
耳の柔軟体操かぁ・・・こんなかな?

スレイに聞いた事をさっそく試してみようとするサラ。
街道を進みながら、始終スレイの耳を動かしてみる。

■イスカ
スレイの耳・・踊ってる・・

■スレイ(意識) To:サラ(意識)
それにしても、本当に身体が勝手に動くんですねぇ。ほうほう・・・・。
いやはやなんとも奇妙な感覚です。人に取り憑くのはどんな感覚なんですか、サラ ?

■サラ(意識) To:スレイ(意識)
んーそうだねぇ、人を操るってのは・・・
ぬいぐるみ着てるみたいな感覚かなぁ。
このぬいぐるみは、耳まで動く高性能なの♪

サラは耳の動くお人形さんが、いたく気に入ったようだ。

■スレイ(意識) To:サラ(意識)
へぇ、ぬいぐるみですか・・・。今度、着てみることにしますよ(^^)

(この世界に、どんな着ぐるみがあるのかは、深くつこっまないで欲しい。)

■ティトル To:カナル&おおる
そいうえば…スキュラって足が蛇で、水の中に住んでるんですよね〜
昔から泉に住んでるんじゃなかったらどおやってその泉まで来たんでしょうね〜
足が生えたりするんですか〜?

■カナル To:ティトル
まぁ、一応陸上でも活動は出来るからな。
とは言っても、陸上よりは水中を好んだはずだから、何故砂漠の端の街で スキュラが現れたのかは、俺も不思議に思っていたんだ。
昔からいたにしては、事件が起こったのはこの10数年の間のようだし……。
近くに大きな川でも有れば、そこをさかのぼってきたということもあるのかな?

■イスカ To:カナル
スキュラにもいろいろ事情があったんじゃないの?
ひと目砂漠を見てみたかった、 冒険好きなスキュラなのかもしれないし。(^ ^)

これを聞き、ティトルは”冒険好きな明るい?スキュラ”を想像した。
スレイも想像したが、退治しなきゃいけない事を思い出して、忘れようとする。

■カナル To:イスカ
スキュラの王国を追われた流浪の王族、とかな。

■イスカ To:カナル
ははっ、スキュラに会ったら訊いてみようか。

■スレイ(サラ憑依中) To:イスカ、カナル
あの・・・スキュラって私の仇なんだからね、
そこんとこお願いね!

たまりかねて、スレイ(サラ憑依中)が釘をささした。
冗談なのはわかっていても、口を出さずにはいられなかったのだ。
こうして2日目の夜も、何事もなく過ぎていく
今日は昼真寝ているので、夜中の行軍もそれほどキツくはない。
やがて街道の両脇が深い森に覆われ、夜明けも近くなった頃、 2日目の野営をする事にした。

2日目の昼

 「深い森」
野営地に入ると、サラはスレイを開放した。
昨日と同じく街道から外れた森ならば、人目につく心配もないだろう。

■スレイ To:ALL
いっやぁ〜、いい体験が出来ましたっ♪ありがとうございました、サラ(^^)
みんなも憑いてもらったらいいですよぅ(笑)

■イスカ To:スレイ
そんなに面白いものなの?うーん。
でも確かに、めったにできない経験ではあるな・・
話の種に、私も一度「幽霊に乗り移られる」というのを 試してみようかな。

最初は憑依を嫌がっていたイスカだが、スレイの好奇心がイスカの心をも動かした。

■イスカ To:サラ
サラ、明日・・いや、今日か、今日の夜は私に「憑いて」みない?

■サラ To:イスカ
ありがと(^^)。
あなた、最初私の事色々言ってたみたいだけど、 忘れてあげるね♪

■ティトル To:おおる
私、思ったんですけどぉ…
サラさんが誰かに憑いて歩くんだったら、別に昼間移動しても良かったんじゃないですかぁ〜

ティトルが素朴な疑問を口にした。

■スレイ To:ティトル
あ”・・・・・・・

絶句するスレイ。全く気づいてなかったようだ。

■カナル To:ティトル
…………。
たまには良い経験、というのは……理由付けには乏しいな……。

■ロッド To:ティトル
10日間、ずっと憑いて歩かせるんだったら、それも可能でしょう。
10日も疲れませんか?
それとですね、ルーイェンに近づくと、日中はかなり暑くなりますよ。 それでも構わないのであれば・・・。

■イスカ To:ロッド
なるほどね、暑さのことは考えていなかった。
でも、たまには夜の旅というのもいいものですね。 静かで、秘密めいていて。

■ ロッド To:イスカ
私も夜歩くのが好きですよ。
美しいものも醜いものも全て隠してしまう闇の中・・・
一番心が安らぐ時です。

■ティトル To:ロッド
そうですかぁ…。
森じゃぁ、闇夜はとっても危険なんですけどねぇ…。
小さい時はすごく恐かったですよぉ

このティトルのごく自然な発言に、ロッドはふっと笑って答える。

■ロッド To:ティトル
そうですね。
でも・・・闇は私にとって優しい存在なんですよ。
私は―――自分の外見にだいぶコンプレックスを持ってますから。
出来る事なら闇に隠してしまいたいのです。


ロッドの告白

(2日目野営1直目)

食事を終えると、昨日と同じように野営をする事にした。
1直目はイスカとカナル。イスカが昨日と同じように、弓矢を取り 獲物を狩りに出かけようとすると、ロッドが起き上がって声をかけてきた。

■ ロッド To:イスカ
森を散歩するのでしたら、私も御一緒したいのですが、 連れて行ってもらえますか?

■ イスカ To:ロッド
えっ? ・・いや、別にかまいませんよ。
そうですね、一緒に行きましょう。

突然の申し出に、ちょっとびっくりするイスカ。

■ ロッド To:カナル
念のために私のレイピアをあなたに預けておきましょうか。
ほんのちょっと彼女と話がしたいだけなんですよ。

自分が信用されていないと思っているロッドは、武器を全て預けようとする。
サラが心配そうに近づいてきて、カナルとロッドの顔を見比べる。
が、カナルは不思議そうな顔をして、ロッドにこう言ったのだ。

■カナル To:ロッド
邪魔だというのなら預かりますが、昼間とはいえ森の奧では何が あるか分かりませんよ?
身を守るため、武器の携帯は必要ではありませんか?
ロッドさんの護衛は仕事の内ではありませんから、イスカにただ働き させるのも悪いですからね(笑)

これにはロッドの方が面食らったようだった。
ロッドは差し出したレイピアをまた装着し、一瞬迷った後―――

■ロッド To:カナル
ありがとう、行って来ますよ。

軽く会釈して森の奥へイスカと共に消えていった。
気のせいかその表情はいつもより和らいで見えた。

■カナル
さてあの二人、余り遠くまで行かないと良いがな。
若い男女が二人っきりか……。
うちのリーダーのことだから、間違いはないと思うが……。

カナルは2人が行ってしまうと、わざとサラに聞こえるように独り言を言う。
だが、サラはカナルの意図など、これっぽっちもわかっちゃいない。

■サラ To:カナル
ね、ね。
ある意味私たちも、”若い男女が二人っきり”状態だよね(笑)。

■カナル To:サラ
……そうかな?

てっきり、サラはロッドさんを好いてると思っていたんだが。

カナルは遠まわしに、サラに”2人を覗きに行け”と言ってるようだ。
だが―――

■サラ To:カナル
そ、そんな事ないよ(^^;
ただ、ロッドは私が・・・この、”幽霊の私”が近づいても、 驚いたり怖がったりしないで、普通に接してくれたから・・・。

ん?なんだ、カナルもそうじゃん!
私の姿見ても全然動じなかったもんね〜♪そーゆーの嬉しいんだよねっ☆

そんな遠まわしはサラには通用しない。

■カナル To:サラ
俺も、まかりなりにも魔術師だからな。
それに、サラみたいな人間 は嫌いじゃない。
互いの考えの裏を読みあいながらの会話はギャンブルに 似た楽しみがあるが、サラのような明け透けな言葉は、 耳に心地いいよ。
誰かさんを思い出させるからかもな……。

■サラ To:カナル
???
ふふ、そのうちカナルにも取り憑こっと。
(頭の中で)いっぱい話出来るよ(^^)

■カナル To:サラ
それは、ごめん被る。

■サラ To:カナル
えーっ!?
けちーっ!!
やっぱ、魔術師なんてダメダメじゃん!

・・・案外、話がはずんでる2人だったりして。

一方、イスカとロッドだが・・・歩き出し、しばらく行った所で イスカから声をかけた。

■ イスカ To:ロッド
今日もいい天気ですね。夜の旅もいいけれど、やはり 眩しい木漏れ日と鳥の歌が降り注ぐ、こんな美しい朝も 捨てがたいものです。

とりあえず、天気の話でもふってみたが、ロッドはそんな話はどうでも良いようである。
カナル達から充分離れ、ここでの会話は聞こえないだろうと判断すると、 立ち止まった。
そして、じっとイスカを見つめて口を開いた。

■ ロッド To:イスカ
・・・・・・イスカ、あなたに会ってからずっと聞きたかった事があるんです。
エルフには寿命がないと聞いた事があるんですが、ハーフエルフのあなたは?

■ イスカ To:ロッド
寿命?

■ ロッド To:イスカ
いきなり何を聞くのかって顔をしてますね。
困惑させて申し訳ない。
ずっと聞きたかったんです。
長い”時”を生きると言うのは、どういう気持ちがするものかと―――

■ イスカ To:ロッド
なるほど、そういうわけで・・。 なぜ、私がハーフエルフであることに興味を持つのかと 不思議に思っていたんです。

そうですね、エルフに「寿命がない」わけではありませんよ。 スレイに聞いてごらんなさい。永遠に生きていられるのなら、 エルフの家には何百人もの代々続くご先祖様が住んでいる ことになりますからね。
ただ、人間の目には推し量れないほどゆっくりと流れる時間の 中に生きているだけなのです。

そして、ハーフエルフの時間・・。
私の家系には何人かのハーフエルフがいますが、 その生きた時間は人それぞれでした。 エルフの血がどれだけ濃く入っているかにもよるでしょう。 また、精霊界に溶け込み、木々と同じ心を持ってゆるやかに 生きるハーフエルフと、人間の世界に興味を持ち、 めまぐるしい時流の渦に乗っていくハーフエルフとでは、 やはり寿命も違ってくるようです。
結局、ハーフエルフというのは人間とエルフのどちらにもなれて、 なおかつどちらにもなりきれない種族ですからね。 私がどうなるかは、まだ見当もつきません。

長い“時”を生きる、・・ですか?
私はまだ齢をあまり重ねていませんから、これといって 意識したことはないんです。親しい人間が年をとり、 自分を残して死んでいくような年になったら、しみじみと 切なさややるせなさを感じるようになるのかもしれませんが。
でも、私は世界中のさまざまな物事を出来る限りこの目で 見ておきたいのです。そのために、少しでも長く生きられたらと 願っていますよ。

・・あまり、答えになりませんでしたね。

まるで、森のそこだけが現実ではないみたいに、美しい2人の若者は 彫像のように立っていた。
ロッドはイスカの話を身じろぎ1つせず、興味深そうに聞いていた。

■ ロッド To:イスカ
そうでしたか。
私はだいぶ勘違いをしていたようだ。
エルフにも寿命はあり、ハーフエルフの寿命はまちまち・・・と。

私が一番聞いてみたかったのは、その長い時を苦痛に感じてるか、 喜ばしく思ってるかだったんですよ。
それと、出来る事だったら人間として生まれたかったのかどうかも・・・ これは、ずいぶんと失礼な質問ですけどね。

貴方の答えは、”少しでも長く生きたい”―――そう言う事ですね?
生きる事を楽しんでいる。それは、生きる目標があるからこそなんでしょう。

もし・・・、生きる目標もなく、長い時を生きるとしたら、それは苦痛でしか ない。
―――そうは思いませんか?

そういうロッドの表情は今まで見せた事がない、悲しげなものだった。

■ イスカ To:ロッド
たとえこの世界に生きていくことがどんなに大変であれ、 長い時を苦痛に感じることもなければ特に喜ばしく思うこともありません。 私がハーフエルフに生まれたのは変えようのないことですし、 私がいつまで生きられるのかは運命だけが知っていますから。
でも、「人間に生まれたかった」とは思いませんね。 やっぱり私は私として、イスカとして生まれたことが 一番ふさわしかったと信じていますよ。
大切なのは、昨日でも明日でもありません。 今日、やりたいことをやって生きられるなら、寿命なんか 犬の餌にくれてやったっていいんです。

ただ、貴方の話を聞いていると・・貴方はそうではないように聞こえますね。 生きる目標を持たずに、永遠に生き続けなければならない呪いでも かけられたかのように聞こえます。
もしよければ、話してくれませんか。 なぜ、そんなことを訊ねるのかを。

これを聞くと、ロッドは軽く笑って、かぶりを振った。

■ロッド To:イスカ
私が呪いにかけられているわけではありません。
私はただの人間です・・・。

ただ、私はね、呪われた命を絶つ為に生きているんです。
呪われた者に永遠の安らぎを与える―――
それが私の生の意味。この世に存在している理由です。

■イスカ To:ロッド
“呪われた命”を・・そうでしたか。

■ロッド To:イスカ
私は・・・母を殺すために生きているんですよ、イスカ。
必ず探し出し、そして私の手で彼女の悪夢に終止符を打つために。

言葉を切り、イスカの反応を見るようにじっと見つめる。
しばし、時が止まったかのような静寂があり・・・
イスカもロッドも黙ってそこへ立ち尽くした。

■イスカ To:ロッド
・・そう、そんなことが・・。
今の私には何もできませんが、その使命が果たされることを、祈ります。

それを聞くと、ロッドはふっと笑った。
その笑みは妙に安らかに見える。 重大な秘密を打ち明けたことが、彼をそうさせたのかもしれない。

■ロッド To:イスカ
今、話したことは内緒ですよ。
あなただけに話す気になったのですから・・・。

さ、あまり長いこと話していると、あなたの仲間が心配しますね。
ずっとこうしていたいけれど、戻るとしましょうか。

■イスカ To:ロッド
ははっ、お世辞にしても嬉しいですよ、ロッド。
貴方と話ができて良かった。その謎めいた瞳の奥にあるものが、 少しだけ見えてきたような気がします。

狩猟の事などすっかり忘れ、イスカはロッドと共に仲間のところへ戻っていった。

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連絡先
GM:澤口 佳子(かなめ)
E-Mail:kaname@yk.netlaputa.ne.jp