意外な贈り物
賢者の学院 セシリアの部屋 |
魔法のほのかな明かりに照らされた部屋の中、アルトとフェリオは奥へ通され、椅子を勧められた。
お茶の良い香りを楽しみながら、セシリアが切り出した。
■ セシリア To:アルト&フェリオ |
その様子だと何とかなったみたいだね。 |
■ フェリオ To:セシリアちゃん |
ええ……少しきつかったですが……何とかネックレスを箱に封印し直して持ってきました。 |
椅子に腰をかけ、出されたお茶を手に取りながら話し始めた。
■ アルト To:セシリア |
……危うく今日で人生に終止符打つとこだったよ……。 ……ま、しかしクリカイルの奴も、今回ばかりはちょいと相手が悪かったね。 今頃箱ん中で歯軋りでもしてんじゃないかい? |
不敵な笑みを浮かべるアルト。
■ セシリア To:アルト、フェリオ |
なかなか言うじゃないか(笑) どれ、見せてごらん? |
■ フェリオ To:セシリアちゃん |
ええ……ここにあります。 |
フェリオが差しだした手を返すと、そこにはいつの間にか例の小箱がのっていた。
■ セシリア To:フェリオ |
……ほう、見事なもんだね。 |
■ フェリオ To:セシリアちゃん |
そして……この箱と中身のネックレスの事なのですが、所有権は我々にはありませんので持ち主を納得させる為に導師に買い取って頂きたいのですが……。 確か導師は先ほど訪れました時に「箱を見つけてくれたのなら多少の礼はする」、とおっしゃられましたがそれとは別にお支払いしていただきたいのです……もちろんネックレスの持ち主は善意の第三者の様なものですので。 あぁ、それから今回の事件では深刻な被害者は出ていません……幸いな事に。 |
■ アルト |
(被害……そういやあのスラムの倉庫は…………) |
アルトの脳裏に、見るかげもなく壊れた倉庫の残骸が浮かぶ……。
(………ま、いいか)
アルトは素早く記憶から倉庫を抹消した。
■ セシリア To:フェリオ |
ほう……そういうのなら、いくら欲しいんだい? あたしは、たわけた弟子と違ってつまらない小細工とか七面倒くさい駆け引きは嫌いなのさ。 |
■ フェリオ To:セシリアちゃん |
たわけた弟子がどんな人物なのかは知りませんが……わかりました、単刀直入に金額を言います。 全部込みで2000ガメル頂きたいのです。 |
■ セシリア To:フェリオ |
……なんだ、それで良いのかい。 ちょっと待ってな。 |
奧から金貨の詰まった袋を取り出し、フェリオに手渡した。
■ アルト To:セシリア |
……へぇ? 随分気前が良いんだねぇ……。 てっきり導師ってのは、ねじ曲がった銅貨一枚まで出し渋るような奴ばかりかと思ってたよ。 んじゃセシリア導師、こいつはありがたく頂いとくよ(^^) |
■ セシリア To:アルト |
なに、あたしが最初に銀の網に出した依頼では4000ガメルだったんだよ? その半額なら、安いもんじゃないか。 |
■ フェリオ To:セシリアちゃん |
ありがとうございます。 流石は導師……気持ちの良い払いぶりですね。それではこの箱は御渡し致します。 また何かありましたら、今度は名指しで依頼してもらいたいものですね、導師の御依頼なら喜んでさせていただきますので(^^) それでは我々も疲れきっていますので失礼致します。 |
■ セシリア To:フェリオ |
……ただし。 この金は、あくまでもその箱の買い取り代だよ? その箱の所有者から、あたしが買い取っただけなんだからね? と言うことは、お前さん方にはただの1ガメルも入らないって事、分かってるのかい? それとも……あんたは、違うように考えているのかい? |
■ アルト To:セシリア |
く……やっぱり、そう来るかい……。 |
■ フェリオ To:セシリア導師 |
そういう事でしたか……それでは話が別ですね……。 私が全部込みで2000と言った事には我々が……例え貴方に頼まれた訳ではなく別の依頼においてした事であったとしても……事態を収め箱を回収したことに対する……言わば迷惑料のようなものも含めて言ったつもりでしたが……。 我々に1ガメルも入らない、つまり我々に対しての「多少の礼」が貰えないと言うのでしたらこれの現在の所有者を説得してまでセシリア導師に届ける意味がなくなってしまい…………。 あぁ、もう!! 敬語にも疲れたぜ……とにかくっすね、箱の回収に苦労したからその分、報酬払ってくれるとお金が入って嬉しいな〜って事なんすよ。お願いしますよ〜。 |
セシリアは、にやりと人の悪い笑みを浮かべ、
■ セシリア To:フェリオ |
最初っからそうお言いよ。 あたしは言ったろ? つまらない小細工や駆け引きは嫌いなのさ。 約束通り、箱を取り戻してくれたんだ。礼はするよ。 その2000ガメルは、箱の持ち主に。そしてほら。 |
先程と全く同じ、2000ガメルの詰まった袋を取り出した。
■ セシリア To:フェリオ |
こっちが、あんた達への礼だよ。 ま、箱を取り戻してくれただけじゃなく、他にも頑張ってくれたようだからね。 |
■ アルト To:セシリア |
…………いいのかい? 流石は導師、伊達に歳くって……あ、いや、その。 長い人生経験を積んできただけのことはあるねぇ。 懐の広さが器の広さって言うのか……大したもんだよ、まったく。 |
■ フェリオ To:セシリア導師 |
ふぅ……やれやれ……最初から地で喋ってないって事まで気付いていたんすかぁ? ……全く、かなわなかったなぁ……奇術師失格っすね(^^; ま、今度は貴方を騙せるくらいに頑張りますわ。それじゃ、ありがたく頂戴して失礼しますね……。 ああ……最後に……御美しいセシリア導師ってのは見たまんまの感想ですからホントっすよ(^-^) |
■ セシリア To:フェリオ&アルト |
前にも言ったろ? 正直者は嫌いじゃないよ。 また、縁が有れば会えるだろうよ。 もし、あたしのたわけた弟子に会えたら、よろしくいっておくれ。 |
フェリオは、お茶を飲み干し椅子から立ち上がった。
■ フェリオ To:セシリア導師 |
……確か弟子の名前は……名前はカナルでしたっけ? まぁ、そちらとも貴方同様、縁があれば会える時が来るかもしんないっすね……会えたら伝えときますわ(^-^) それじゃ、機会があったらまた会いましょう。 |
■ アルト To:セシリア |
カナル……師匠を敬う気持ちに欠けた、小細工や駆け引きの好きなたわけた弟子……だね。 よし、しっかり覚えておくとするよ。
……ところで、その箱は一体どうするつもりなんだい? |
■ フェリオ To:セシリア導師 |
そういえば……それを聞いてなかったっすね。 確か箱に関する文献が見つかったとか何とか……。 ……まさか、箱を開けるつもりはないでしょうな? |
■ セシリア To:おおる |
まさか、とんでもない。 それにしても、あたしが開けてたらかなり危険だったかも知れないね。 そう言った礼や、今回の事件をなるべくお前さん方の中だけに仕舞っておいて欲しいって言う意味も、さっきの礼金にあるのさ。 |
■ フェリオ To:セシリア導師 |
そうっすか……そーゆー事なら導師を信じるとしましょっか。 あんたは嘘をつく人ではなさそうだしな(^^) |
■ アルト To:セシリア |
……仕舞って置いたら、いつか都合のいい時に取り出すかもしれないよ? いいのかい? |
アルトの表情は笑っていた。
どうやら自分に何処か似たところがあるセシリア導師が気に入ったらしい。
■ セシリア To:アルト |
それならそれ相応の対応をするだけさ。 もっとも、あたしは自分の目を信じてるからね。 |
セシリアもまた、アルトに好感を持ったようだ。
■ アルト To:セシリア |
はは、そりゃあ怖い。 そんじゃ、ひとつ導師のお眼鏡に応えられるよう頑張る事にするよ。 ……もっとも、最近は色々バタバタと忙しいからねぇ……。 折角心に仕舞って置いても、明日まで覚えていられるかどうか(^^) |
かるく笑うと、フェリオに続いて席を立った。
■ アルト To:セシリア |
じゃ、どうも世話になったね。 みんな(と宴会)が待ってることだし、そろそろお暇するよ。 |
アルト達は、受付でエイシャに遊んで貰っていたアニエスを回収すると、コルナスの店へと向かった。
セシリアとの約束通り、箱代を払うために。