受付嬢の憂鬱
賢者の学院 受付 |
■シェル |
……へぇ〜。ここが「賢者の学院」かあ〜。 |
シェルが物珍しそうにキョロキョロと視線を回しているのは、そこはかとない緊張感と静寂さに包まれた賢者の学院の一階ロビー。
何故か歩みの鈍るアルトの案内で、ようやく学院に辿り着いた一行は、オルダスを探すべく辺りを見回した。
そんなアルト達の姿(正確には、その魔術師の証である杖であるが)を認めると、受付の女性がにっこりと笑いかけた。
■ アルト To:エイシャ |
あー…………こんちは(^^;; 私の名前はアルト。ちょいとお邪魔するよ。 |
何故か、ややひきつった笑みを返すアルト。
■ エイシャ(受付) To:おおる |
こんにちは。 今日は、どう言ったご用件でしょうか? |
■ フェリオ To:受付のお姉さん |
な〜に、私が知りたい事はお美しい貴女の住所と次の休日の予定ですよ……。
……ってのは一応冗談で、この学院に席を置いているはずのオルダスさんは今、いらっしゃいますか? |
……コルナスに対する態度とは大違いである。
■ エイシャ To:軟派なお兄さん |
私の個人的な話はお答えできませんが、もう一つの質問ならば、ちょっとお待ち下さい。 |
■ フェリオ To:つれないお姉さん |
お答えいただけませんか……それは残念です。 ですがもう片方の方は期待して待ってますよ(^^) |
何か、ファイルのような物を検索するエイシャに、フェリオはそう付け加えた。
■ アルト To:心の声 |
(…………フェリオの奴、嬉しそーにまぁ(^^;; にしても……相変わらず辛気くさい雰囲気のとこだねぇ。 仕事とはいえ、出来ればもう二度とここには近寄りたくなかったよ……) |
よほど嫌な想い出でもあるのか、アルトは学院が苦手らしい。
ふと横を見ると、好奇心一杯で辺りを見回すシェルの姿が……。
■ アルト To:シェル |
で、どうだい? シェル。噂の三角塔に来てみた感想は。 |
■シェル To:アルト |
すごいな〜、三角塔ってこんなに大きな建物だったんだ。 これなら、フェリオが迷うワケないよね(^^;;) でも、ここってそんなに恐いとこなの? 今見た感じだとそんな感じしないけど。 あとで、その辺見てまわってもいいのかなあ? |
■ アルト To:シェル |
見たいってのなら案内くらいはするけど、ちょいと今回は時間がないかもねぇ。 それに…………。 |
アルトは、辺りを警戒するように見回すと、声をひそめて、
■ アルト To:シェル |
あんまりうろうろしてると、とっ捕まって魔法の実験材料にされるかもしれないよ……? 森から出てきたエルフってのは、珍しいからねぇ…………。 |
■シェル To:アルト |
え!? じ、実験材料!? |
言ったあとで、ハッとして口を抑えながら周りを見回す。
■シェル To:アルト |
じ、実験材料って……変な薬とか飲まされちゃうの……? の、飲んだら、ネズミになっちゃう薬とか……? ボ、ボク、そんなのやだよ。エルフのままがいいよ。 アルトさん、捕まりそうになったら助けてよ……? |
何故に、エルフは嘘を教え込まされるのか?
ご多分に漏れず、シェルもまた、アルトのよた話を真に受けた。
そんなシェルを見て、実に嬉しげに頷き、
■ アルト To:シェル |
うんうん、任せときな(^^) 心配しなくても、仲間を見捨てるような真似はしやしないよ。 ……まぁ、万が一シェルがトカゲや蝦蟇蛙、いやいや、スライムに変えられたとしても…………。 |
真剣な顔でシェルの肩に手を置き、
■ アルト To:シェル |
決して、シェルのことを冷たく扱ったりはしないからね…………。 |
■シェル To:アルト |
……できれば、そうなる前に助けてね……。 (……なんか今、嬉しそうな顔してた……? ……まさか……気のせいだよね……) |
■ フェリオ |
|
スライムは美味しいのだろうか?そんなくだらない会話をしているうちに、検索を終えたらしく、エイシャが顔を上げた。
■ エイシャ To:軟派なお兄さん |
こちらの導師、学生にはオルダスという名前の者はいませんね。 学院の雑務をお願いしている方にオルダスと言う人が居ますが、その方でよろしいのでしょうか? |
■ アルト To:ALL |
……雑務? ははぁ、なるほどねぇ……。 それで“魔術師じゃないけど、魔術師と関係がある”とか言ってたわけかい。 どうやら、その男で間違いなさそうだね。 |
シェルの肩から手を離すと、何事もなかったかのようにエイシャの言葉に頷いた。
■ フェリオ To:さらりとかわしたお姉さん |
ええ、その人で良いです(^^) 雑務を担当……ですか、今日は何処にいるんでしょうか? 良ければ教えていただきたいのですが……。 |
■ エイシャ To:おおる |
オルダスさんでしたら、1階の奧にそう言った方々の休憩室がありますので、恐らくそこにいらっしゃると思います。 |
■ アルト To:ALL |
よし、そうと分かれば善は急げだね。 さっさと行って、早くこんな所とはおさらば……いや、その、少しでも早く、アニエスを助けてやらなくっちゃね。 んじゃ、行こうか。 |
■ フェリオ To:最後まで事務的なお姉さん |
今度はプライベートでお会い出来る事を願っていますよ。 では……失礼します。 |
一行は、休憩室へ向かった。
そんなフェリオの後ろ姿を見ながら、エイシャはクスリと笑った。
それが、フェリオへの好意の現れなのか、それともその奇抜すぎるファションに対してなのか……。真相が語られることはないだろう。
賢者の学院 休憩室 |
エイシャに教えられた扉を開けると、中には椅子に座って茶をすすってる小男が一人。
アルトに気付くと、立ち上がって声を掛けてきた。
■ 小男 To:おおる |
魔術師さん、何か用ですかい? |
■ アルト To:オルダス |
あぁ、オルダスってのはあんたかい? もしそうなら、ちょいと聞きたいことがあるんだけどさ。 と……私の名前はアルト。 用が終わればすぐにおいとまするから、茶の用意はいらないよ(^^) |
■ オルダス To:アルト |
へい、なんでしょう? |
■ アルト To:オルダス |
あんまり時間もないんで、単刀直入に聞かせてもらうよ? コルナスって古物商に売った、これくらいの小箱を覚えてるかい? 細工が施してあって、蓋が開かなかったやつだけどね。 聞きたいってのは、その箱の件なんだよ。 まず、あれを何処で手に入れたのか教えてもらえるかい? |
オルダスの顔色が、明らかに変わった。
■ オルダス To:アルト |
な、なんのことです?(汗) ……って、今更ごまかせないみてえですね。 いやあ、ほんの出来心でして……だって、捨ててあった物でしょう? それぐらい……。 |
■ フェリオ To:オルダス |
五月蝿いんだよ、ぐだぐだ言うんじゃねえ……。
こっちは別にお前を罰しようとか考えてる訳じゃねえんだ……。 |
長々と続きそうなオルダスの言い訳を遮り、フェリオは顔を近づけて凄んだ。
■ オルダス To:怖いあんちゃん |
な、なんだよ、いきなり……。 |
■シェル To:フェリオ&オルダス |
(この人は魔術師じゃないみたいだね……) フェリオ、そんな顔したら、怖がってなにもいえなくなっちゃうよ。 オルダスさんだよね? ボクはシェル。よろしく。 ボクらは別にオルダスさんを責めてるわけじゃないよ。 ただ、その箱のこと聞きたいだけなんだ。 教えてくれない? |
■ フェリオ |
ふん……俺は罰しようとは思ってねえけどよ、 責めてないわけでもないんだけどな……。 |
そんなシェルの言葉にも、未だ怯えたように、周囲を見回す。
しかし、逃げられないようなので観念したのか、ぽつりぽつりと語りだした。
■ オルダス To:アルト |
アレは、セシリア導師の所から出てきた物なんですよ。 どうやっても開かなかったんですが、綺麗な箱だったし、コルナスの爺さんなら買い取ってくれるかと思いやして……。 |
■シェル To:アルト |
セシリア導師? アルトさん、知ってる? |
■ アルト To:シェル&オルダス |
いや、聞き覚えはあるんだけど…………誰だっけねぇ? 旦那、話したからって別に官憲に突き出しやしないからさ、その導師についてもうちょい詳しく教えてもらえるかい? |
■ オルダス To:アルト |
へえ、そういうことでしたら……。
セシリアさんていえば、一風変わった人でねえ。 |
■ フェリオ |
(ど……どういうこった? 50年以上前に10代の女の子が来て現時点で50歳越してるはずなのに10代の女の子で……はにゃ?(?_?)) |
■ アルト To:ALL |
へぇ……てことは、学院じゃ古株の導師ってわけだね。道理で名前を聞いたことがあると思ったよ。 ……不老の魔術か…実際に見るのは初めてだねぇ。 |
■ フェリオ To:アルト |
なるほど……不老の魔術か……便利なもんだ。 |
■シェル To:アルト |
不老? ……年を取らないってこと? そんなことできるんだ……すごい……。 (……ボクも暇になったら、ちょっと勉強してみようかな……でも……実験材料にされちゃうかも……) |
■ アルト To:シェル |
私たちから見りゃ、シェルたちエルフの方がよっぽどすごいけどねぇ……? いくら魔術で伸ばしたって所詮は仮初めの命、いつかはボロが出るもんだよ。 |
言って、かるく肩をすくめる。
■シェル To:アルト |
……あ、そうか……。 じゃあ、アルトさんはエルフに生まれたかったって思う? |
■ アルト To:シェル |
…………いや、思わないねぇ。 人生ってのは、短けりゃそれなりに気合いの入るもんさ。内容はどうあれ、ね。 それに、人間よりも寿命の短い生き物なんてこの世にはごまんといるんだしさ、あんまり欲張っちゃあ罰が当たるってもんだよ(^^) |
■ フェリオ To:アルト&シェル |
いい事言うね、アルト。 ま、いくら寿命が長くたってエルフも人間も命は一つ……だからな。 |
■シェル To:アルト&フェリオ |
内容はどうあれ、気合いが入る……か……。 ……そうかもしれないね。 |
そう言いながらと、ふと故郷を思い出すシェル。
■シェル To:アルト&フェリオ |
ボクもそういう人生送れたらいいな。 (……森のエルフの仲間達はそういう人生送ってるのかな……) |
■ アルト To:オルダス |
と、ついでにもう一つだけ。 さっき、“捨ててあった”とか言ってたけど、ありゃどう考えてもそうそうぽいと捨てられるような代物じゃないよ? 一体どういう状況であれを見つけたんだい? |
■ オルダス To:アルト |
いつもどおり導師様達のゴミを集めているときに、処分品の所にあったんでさぁ。 べつに、戸棚や机から持ってきた訳じゃありやせんぜ。 |
■ フェリオ To:オルダス |
あんなもんを廃品にした導師ってのも抜けてるような気がするけどな。 ああ、そうそう……最後にもう一つだけ重要な質問があったんだ……。 ……そのセシリア導師ってのは美人か? |
オルダスは、先程凄まれたときとのギャップに一瞬きょとんとしたが、すぐににんまり笑って、
■ オルダス To:フェリオ |
そりゃあ、もう。 |
■ フェリオ To:オルダス |
よしよし……歳を取らない神秘の美女か……そりゃ楽しみだねぇ。 さてと……邪魔したな、今度からは拾うモンに気を付けろよ? 洒落じゃすまねえ場合もあるんでな……。 |
■シェル To:フェリオ&アルト |
……導師さんて、ここの偉い人だよね。 ……じゃ、いこ? (なんか、面白そう……でも、実験材料にされるかも……そうなったら精霊たちの力かりなきゃだめかなあ……) |
こころもち、アルトの後ろに隠れるようにするシェル。シェルの好奇心は、アルトの言葉でかなり弱気になっているようだ……。
■ アルト To:ALL |
(…………んー、ちょいとからかいすぎたかねぇ……?(^^;) |
■ フェリオ To:シェル&アルト |
さぁ、二人共、ちゃっちゃっと行くぞ。 |
様々な思惑を絡ませながら、導師の部屋へと向かった。