幸運との出逢い
オランの街 路上 |
夜のとばりが、短い間夕暮れ色に染められた通りを覆い隠していく。
足早に各々の帰途につく人。店じまいの直前に、品物をたたき売る露天商。
夜の闇に沈み行くまで、ほんのつかの間の喧噪に包まれた街に、ジョージとパオルの姿があった。
■ ジョージ To:近所のお店の人A |
すみませんが、ご主人。 最近この少女を見かけたことは御座いませんか? |
ジョージは、歩いていた一人の男性を捕まえると、最も良く描けていた似顔絵を見せた。
■ 近所のお店の人A To:ジョージ |
おや、リトナルさんのとこのアニエスちゃんじゃないか。 最近は見てないけど、どうかしたのかい? |
どうやら、アニエスだと分かるほどの出来ではあったらしい。
■ ジョージ To:近所のお店の人A |
ええ……一昨日から自宅に戻っておりませんので……。 見かけましたらリトナル商会までご連絡下さい。 それと最近、子供が行方不明になっていることについて何かご存知ありませんか? |
■ 近所のお店の人A To:ジョージ |
なんだそりゃ? なんか悪い冗談か? |
■ ジョージ To:近所のお店の人A |
いえ、失礼いたしました。 お忙しいところどうもありがとうございました。 |
■ ジョージ To:独り言 |
(ふぅ……当然の事ながらそううまくは行かないものですね……。 ……気を取り直して次はあの方に聞きましょう。) |
■ パオル To:ジョージ |
やっぱりそう簡単には、手がかりは得られせませんよねぇ。 まぁ頑張って他の方にも尋ねてみましょうか。 |
こうして、余り芳しい成果は得られないまま、しばしの時が過ぎた。
その時、二人は、向こうから、一人の女性が歩いて来るのに気付いた。
だらしない格好をしているが、娼婦、と言った風でもない。痩せすぎと言えるような体格で、滑るように歩く姿は、どことなくヴァーンを思い出させた。
少々やつれてけだるさ漂う表情からは、微かな焦燥が窺えた。
■ パオル To:独り言 |
あららぁ……なんか”疲れてる”って感じの人だよね。(・・? いや”憑かれてる”? いやいや”突かれてる”……ってそんなわけないか。(^^; |
■ ジョージ To:やつれた様子の女性 |
あのー。すみませんが……。 最近、子供が行方不明になる事件について何かご存知無いでしょうか? |
■ やつれた感じの女性 To:ジョージ |
……子供なんて知らないわよ。 私だって、人を捜してる所なんだから。 |
■ ジョージ To:やつれた様子の女性 |
ほう? お節介でなければお聞かせ願えますか? 何か知っていることがあればお聞かせしますし、もしも見かけましたら言伝いたしますよ。 |
■ やつれた感じの女性 To:ジョージ |
なぁに、ただ単にあたしの連れを探してるのさ。 根無し草稼業かも知れないが、最近仕事をしたばかりだから普段通りなら家に戻ってくるのに……。 |
■ ジョージ To:やつれた様子の女性 |
なるほど……それはご心配でしょう。 ああ……申し遅れましたが私、ラーダの神官でジョージ・マクドヴァルともうします。 失礼ですがその方と貴方のお名前をお聞かせ願えますか? 今のところ残念ながら心当たりは御座いませんが、先ほどの話でも判るとおり我々も人を捜しております。 気にとめておきますので、その方とどこかでお会いしましたら言伝いたします。 |
■ ケイト To:ジョージ |
ふぅん、まぁいいわ。 私はケイトよ。私の連れは、リュースっていうの。 首の右に大きなほくろがあるから、もしリュースにあったら、『さっさと帰ってこい、このろくでなし』 って伝えといてくれる? ……そうね、ついでだから、私もあんた達が探してるっていう子供、探したげるわ。特徴とかは? |
■ ジョージ To:ケイト |
リュースさんですね。わかりました。 そうそう……我々が捜しているのは………。 |
そういって、先程の似顔絵を取り出す。
■ ジョージ To:ケイト |
この少女で、名前はアニエス=リトナル。11歳だそうです。 身長120cmほど、当時の服装は黄色のワンピースです。 何かありましたら、この並びにあるリトナル商会までご連絡いただけたら幸いです。 |
■ ケイト To:ジョージ |
それじゃ、あてにしないで待ってるわ。 私の方も、あんまりあてにしないでね。 |
■ ジョージ To:ケイト |
ありがとうございます。宜しくお願いいたします。 |
ケイトと名乗る女性は、そのまま歩き去った。
■ パオル To:ジョージ |
どうでした? 何か良い話しは聞けました? |
■ ジョージ To:パオル |
いえ……関係あるかどうかわかりませんが、彼女のお連れさんも行方不明だそうです。 それと、一応アニエス嬢の話しをしておきました。 見かけたら連絡していた…… |
■ パオル |
む? こっ、この……匂いは!? |
ジョージの台詞を遮って突然駆け出すパオル。
向かった先は、通りを90m程行った所に出ている鳥を焼く屋台。そこまでをほんの十数秒で駆け抜けた。混み合う路上であることを考えれば、驚異的な速さである。
■ ジョージ |
…………だける……って! ちょっと! ……待っ………… (は……速い…………もうあんな所に…………) |
呆れつつも、一応小走りで後を追う。
■ パオル To:屋台のおばさん |
おばさ〜ん! 鳥の腿肉を三つね!!(^^)ノ |
■ 屋台のおばちゃん To:パオル |
元気がいいねぇ。若いのはそうでなくっちゃ。 3本だね? ……丁度店を閉めようとしてた所だ。サービスしておくよ。 |
そう言って、鳥のもも肉(骨付き)を4本パオルに手渡す。
本来は、1本2ガメルの所、サービスで6ガメル。
■ パオル To:屋台のおばさん |
わ〜い! ありがとう、おばさん!! それじゃあ、6ガメルだね。はい。 |
6ガメルを手渡し、鳥肉を受け取ると、すぐにかぶりつく。
たっぷりの肉汁が舌の上に広がり、アツアツの肉片が口の中で躍った。
■ パオル To:屋台のおばさん、ジョージ |
あ、そうだ。ねぇねぇ、リトナル商会の一人娘のアニエスさんって知ってる? えっと〜、似顔絵はっと………………あ、ボクは持ってないや。 ジョージさ〜ん! こっちこっち!! |
■ ジョージ To:パオル |
(やっと追いついた) …………はぁ……。 聞き込みなら、一応これを見せて下さい。 それと、アニエス嬢の服装は覚えていますね? |
ジョージからアニエスの似顔絵を受け取り、それを見せながら、服装などを説明する。
■ パオル To:屋台のおばさん |
コレコレ、こんな感じの女の子で二日前にいなくなったんだ。 その時の服装は黄色のワンピースなんだけど……。心当たり無いかな? |
■ 屋台のおばちゃん To:パオル |
うーん、分かんないねぇ。 |
成果は、鶏肉が1本おまけされたことぐらいか……。
日はとっぷりと暮れ、通りの人通りも減ってきた。
二人は、ここでの聞き込みを諦め、リトナル商会に戻ることにした。