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第九章「タニア」 |
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レイチェルの部屋の前 |
レイチェルが案内されたのは、昔クリスが使っていたという部屋らしい。
護衛、ということで、アーギーが部屋の前に立っている。アーギーの方にはさほど気を留めず、メイド Aことタニアは軽く扉をノックした。
■タニア To:扉 |
レイチェル様、タニアです。入りますよ。 |
■アーギー To:ジョージ |
・・・・タニア・・・? (ジョージの肩をぽんと叩いて) ・・・・・・タニアって、さっき屋敷の前で小さい頃の記憶の話してた時レイチェルさんが言ってた、あのメイドのタニアのこと・・・? |
■ジョージ To:アーギー |
ご苦労様です。 ええ……おそらくそうだと思います。 レイチェルさんとは、かなり親しい間柄のようですので、何かお話をうかがえると思いまして……。 |
■レイチェル |
開いていますわ。どうぞ。 |
レイチェルの部屋 |
部屋はこざっぱりとしていて、さほど広くもない。
■ジョージ To:レイチェル |
レイチェルさん。タニアさんをお連れしました。 できましたら、彼女を交えて少しばかりご質問されていただけないでしょうか? |
■レイチェル To:ジョージ&タニア |
え………タニア………? |
■タニア To:レイチェル |
………レイチェル様? |
タニアは、レイチェルの姿が一瞬理解できなかったようだ。
■レイチェル To:タニア |
わたくし、その………こんな姿ですけれど………タニア、わたくしが分かりま すか?それから、他の使用人達は……… |
■タニア To:レイチェル |
………レイチェル様……… |
と、突然、タニアがぼろぼろと涙をこぼしはじめた―――
■タニア To:レイチェル |
レイチェル様………レイチェル様がいない間に…みんな解雇されてしまいました。あたしはクリス様のおかげでどうにか残ることができたんですけど………。 レイチェル様。どうしていなくなってしまわれたのですか。7年間どうしていたのですか。なぜそんな姿で……… |
■レイチェル To:タニア |
あの、わたくし、その……… |
レイチェルは困ったように、ジョージとアーギーの方に視線だけで助けを求めている
■ジョージ To:タニア |
レイチェルさんは、7年間の記憶を失って倒れているところを、冒険者の店によって保護されました。 姿に関しては我々がはじめて会った時からこの容姿でしたので詳しいことはわかりません。 クリス様の話によりますと、以前のレイチェルさんとはかなりの相違点があるようですので、ディオン子爵にレイチェルさんが本人であると証明するのは難しいと思います。 我々としましても、このままの状況でここに置いていくのは心苦しいので、できれば円満に解決したいと思っているのですが………。 できましたら、その事についてタニアさんにご協力いただきたい。 記憶を取り戻す手がかりになるかも知れませんので、今からいくつかの質問に答えていただけますか? |
■タニア To:ジョージ |
………ありがとうございます。ぜひ協力させてください。 |
■ジョージ To:タニア |
それでは、当時、最後にレイチェルさんを見たときの事や、その当時の状況をできるだけ詳しくお聞かせ願えますか? |
■タニア To:ジョージ |
はい。 オーズ様が亡くなった次の日、レイチェル様は何か急いでいる様子で突然「オランに行く」って言い出したんです。あたしが理由を聞いても、止めても、全然相手にしてくれなくて、それっきりいなくなってしまいました。 あ………そうそう、屋敷を出ていく直前に、レイチェル様は「わたくしに何かあったらワイン小屋を調べて欲しい」と言っていたんです。 |
■ジョージ To:タニア |
なるほど………。タニアさん、あなたはもうワイン小屋を調べられましたか? |
■タニア To:ジョージ |
ええ。許可がなければ入れないんで、入ったのは次の日だったんですけど、とにかく調べてみました。 でも、何も見つけられなかったんです。あたしの探し方がまずかったのかもしれないですけど。 |
■ジョージ To:レイチェル |
レイチェルさんは、ワイン小屋で何をしたかについて、心当たりはございませんか? |
■レイチェル To:ジョージ |
………ジャムを………ルーカスの持っていたジャムを………ワイン小屋の床の下に………隠しました……… |
■アーギー To:レイチェル&タニア |
ジャム・・・・? それは・・・前に少しだけ言ってた「木苺のジャム」・・・・ってやつのことなのかな・・・? ・・・・あ、あとそういえば、今言ったルーカスっていう名前・・・オレ達には聞き覚えの無い名前なんだけど・・・どういう人なのか、思い出せるかな? (タニアのほうを向いて) ・・あ、タニアさん・・だっけ、タニアさんももしご存知なら是非・・・。 |
■タニア To:アーギー |
………今、副料理長になっている男です。わたし以外でオーズ様の頃から仕えていた者で、以前は下っ端の料理人だったんですけど、領主様が替わった時に突然大抜擢されて、今の地位になっています。 |
■アーギー |
・・・・・・・・・・・・。 突然大抜擢・・・・か・・・・。 |
■ジョージ To:アーギー |
……アーギー君……静かに外へ出て、誰か来ないか見ていただけますか? それとヴァーン君が戻られたらすぐにこちらへ来るように伝えていただきたい。 |
■アーギー To:ジョージ |
え・・・? ・・・・あ、誰か他に会話が聞こえた人がいないか、って事・・かな・・? わかったよ。ちょっと見てくる・・。 |
と、アーギーが扉を開けようとしたのとほぼ同時に、外からノックの音がした。
■ヴァーン |
(コンコン) ヴァーンだ。 |
■アーギー |
! あ、丁度良かったや・・・。 (扉を開ける) |
■ヴァーン To:アーギー |
(すぐに戸が開いたのでちょっとびっくりして、) おおっと、すまねぇな。 ん? なに深刻そうな顔してんだい。何かわかったのかい? |
■アーギー To:ヴァーン |
いや・・・ちょうど今重要な話してるから、他の人に聞こえたりしてなかったかちょっと見てこようと思ってたんだけど、ヴァーンが来たんならちょうどいいや。 ・・今ここに来るまでに・・他に誰かこの部屋の近くに人見なかったかな・・? |
■ヴァーン To:アーギー |
べつに、誰も見かけなかったから、大丈夫だと思うぜ。 (と、訝しそうに首をかしげながら答える。) |
■ジョージ To:アーギー&ヴァーン |
アーギー君……。すみませんが、しばらく見張っていていただけますか? ヴァーン君は中に入って下さい。 |
■アーギー To:ジョージ |
ああ・・・・・・分かった・・・。 |
アーギーは、扉を開け外に出た。
■ヴァーン To:ジョージ |
あいよ。で、どんな話になってんだい? |
■ジョージ To:ヴァーン |
とりあえず今までの経過を話しておきます。 (レイチェルがワイン小屋の床下にジャムを隠したらしきことを小声で伝える。) もしかするとあなたに取ってきていただくことになるかも知れません。 |
■ヴァーン To:ジョージ |
ほ〜う、なるほどねぇ。 (と、ちらっとレイチェルの方を見ながら頷く。) ま、俺にできることならなんでも言ってくれや。 |
■ジョージ To:タニア&レイチェル |
ワイン小屋を管理しているのはどなたでしょうか? それと、レイチェルさん。覚えていらしたら、ジャムの詳しい場所をお聞かせ願えますか? |
■タニア To:ジョージ |
ワイン小屋はディオン様かクリス様の許可なしでは開けられないんです。というか、鍵をクリス様が持っていますから。 |
■レイチェル To:ジョージ |
ジャムは………行けば説明できると思います。………タニアにもっと詳しく場 所を教えておけばよかったですわね……… |
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