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第九章「兵士B」 |
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アングラード邸・廊下 |
■クリス To:ALL |
それでは、部屋の方には彼女(=兵士B)が案内しますから、どうぞくつろいでいてください。 分からないことがあったら、使用人にでも気軽に聞いてくれて構いませんから。 それでは。 |
と、クリスは、庭園に行く組を連れて出ていった。
■ヴァーン To:ALL & 兵士B |
さてと、とりあえずは、荷物を置かなくちゃな。 (兵士Bに一旦預けた荷物を返してもらって、担ぎ上げながら、) じゃあ、すまねぇけど、案内してもらえるかい? |
■ジョージ To:兵士B |
ついでといっては何ですが、お手洗いや当たり障りのない範囲で各部屋を教えていただけますか? こう広いと、うっかり間違って入るといけませんので……。 |
■兵士B To:ジョージ |
お手洗いなどは別館の方にもありますよ。では、一通りご案内しておきましょうか。 |
言われたとおり、かなり時間をかけて別館中をうろうろと歩き回り、丁寧に説明を受ける。
■ヴァーン To:兵士B |
俺はヴァーンていうんだが、アンタはなんて名前なんだい? (と、さりげなく(?)たずねる。) |
■兵士B To:ヴァーン |
アリルです。 ―――さて、着きましたよ。こちらです。 |
■ヴァーン |
あ、ああ、ここかい? (アリルだってぇ! こいつは、ひょっとすると……。) |
別館の客室 |
■ジョージ |
失礼します。 |
部屋に入り、中を見渡す。
ちょうどメイドらしき女がベッドメイクを終えたところらしく、こちらを向いてぺこりと頭を下げた。
そして、兵士B(アリル)に軽く手をあげてみせる。
■メイドA To:兵士B |
じゃあ、アリル。あとお願いね。 |
■兵士B To:メイドA |
はい。 あ、タニアさん。お客様のお料理7人分、料理長に言っておいてくださいね。 |
■メイドA To:兵士B |
はいはい、任せて。 |
■ジョージ To:メイドA |
すみません。お手数かけます。 えーと、タニアさん…? レイチェル様のお話でお名前があがりましたので、以前からレイチェル様をご存じとお見受けします。 少々うかがいたいことがございますので、すみませんが、後でお時間をいただけますでしょうか? |
■メイドA(タニア) To:ジョージ&兵士B(アリル) |
え……?レイチェル様が……? どういうこと、アリル?お客様というのはレイチェル様なの? |
■兵士B(アリル) To:タニア |
………と、ご本人は申しておられました。 はぁ(嘆息)………タニアさん、ここお任せします。レイチェル様は、あちらの――昔クリス様が使っておられた部屋においでのはずですよ。 厨房へは私が行っておきます。 |
■ジョージ To:タニア |
大変失礼。申し遅れましたが、私は、ジョージ・マクドヴァルと申します。 我々はレイチェル様より護衛を依頼されオランより参りました。 本来ならば依頼は終了しているのですが、多少事情がございまして、本日こちらに宿泊させていただくことにあいなりましたので、宜しくお願いします。 その事情につきましては、レイチェル様と会われるのが手っ取り早いかと思いますので、少しの間、お仕事の邪魔かとは存じますが、お時間をとらせていただきたい。 |
■タニア To:ジョージ |
ええ、おねがいします。 |
■ジョージ To:タニア&おおる |
では、参りましょうか。 タニアさん、クリス様が昔使っていらした部屋までご案内お願いできますか? (「そっちは任せましたよ。」:ヴァーンにテレパス……っていうか視線通信。) |
■ヴァーン To:ジョージ |
(「後から行くぜ」とジョージに目で合図して、アリルを追いかけて、廊下へ出ていく。) |
■タニア To:ジョージ |
―――分かりました。こちらです。 |
別館の廊下 |
■ヴァーン To:アリルという名の兵士 |
アリルさんだったな。ちょいと訊きてぇことがあるんだが。 アンタ、ひょっとしてクラリスって名前の姉さんがいるんじゃねぇのかい? |
■アリル To:ヴァーン |
はい?………クラリス? |
一瞬、アリルの視線が揺らいだ………が、すぐに元に戻り何事もなかったかのように言う。
■アリル To:ヴァーン |
すみません。プライベートなことにはお答えしかねますので。 ………それでは。 |
ヴァーンは、歩き去ろうとするアリルの横を並んで歩き、質問を続ける―――
■ヴァーン To:アリル |
ちょ、ちょっと待ってくれ。いきなり立ち入ったことを訊いて悪かった。 ただな、別に答えてくれなくていいから、聞くだけ聞いてくれ。 (アリルの返事をまたずに、話を続けて、) 俺の知り合いに、この町の生まれのクラリスって女がいるんだ。そいつには、アンタと同じアリルって名前で、栗色の髪に黒い瞳、アンタと同じくらいの年頃の妹がいるんだが、七、八年前に生き別れたっきり消息が知れねぇでずっと探してる。親父さんとお袋さん――もう、死んじまったそうだが――は、クレイブ=ローンにエルディアって名前だそうだ。 その離れ離れになっちまったときのことは詳しくは知らねぇが、ひょっとしたら、その妹は見捨てられたと思って姉貴のことを恨んでるのかもしれねぇ。その妹が、まだ小せぇ女の子が一人で生きてくのは、どんなに大変だったかもしれない。でもな、そのクラリスって女だって、一人で苦労してなんとか生きてきて、いまでも妹のことが忘れられねぇでずっとさがしてんだ。 俺には、ほっとけなくてな。この町についたらきっと探してやるって、アイツと約束したんだ。 そういうわけで、ひょっとしたらと思ったんで、声をかけたんだ。 |
と、一気にしゃべり終えると、アリルの反応を窺う………
■アリル To:ヴァーン |
………私には両親と姉がいましたが、8年前に死にました。それだけです。 失礼します。 |
少し、アリルの声に動揺が混じっているように聞こえた―――
■ヴァーン To:アリル |
そうかい……悪かったな……。 (立ち止まって、しばしアリルの後姿を見送るが、) でもな、クラリス=ローンは生きてるんだ。もし、アンタの気が変わって、何か話したくなったら、いつでもいい、待ってるぜ。 |
と、背後から声をかけてから、踵を返してレイチェルの部屋へ向かう。
その後ろから、アリルが小さく呟く声が聞こえた気がした………
■アリル |
………姉さん……… |
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