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第八章「『もう結構です』」 |
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アングラード邸の前 |
レイチェルの言葉が終わる前に、クリスはまたそれを遮った。
こめかみのあたりに人差し指を当てつつ、言う。
■クリス To:レイチェル |
―――もう結構です。 |
■ジョージ |
…………………。 (黙ってクリスをじっと見てる、内心ちょっと焦ってる。) |
■パオル |
(OK?、OKなの?本物のレイチェルさんて認めたよね!) (・・って事は屋敷で、ご馳走してもらえるの!?) |
パオルは期待に満ちた目で見ている。
■アーギー |
・・・・・・・? |
■クリス To:兵士A |
アルベルト――― |
クリスは、傍らに控えていた兵士に声をかけた。
■クリス To:兵士A |
タニアに言って、別館の部屋を用意させてください。7人分です。 |
■兵士A To:クリス |
分かりました。 |
アルベルトと呼ばれた兵士が、屋敷の方に戻っていく。
■ヴァーン |
……。 (ってことは、一応木登りの話は合ってるが、納得はしてねぇんだな……この仕事、まだまだ一件落着ってわけにはいきそうにねぇな。) |
■パオル To:ジョージ |
ふぅ〜・・・。 (ジョージに耳打ちする) なんとか中に入れてもらえそうですけど・・、これからが本当に大変かもしれませんね。 |
■ジョージ To:パオル |
そうですね……ディオン子爵と話をつけるまで安心はできませんからね…。 |
■クリス To:ALL |
僕には判断しかねることばかりですが、そのネックレスはレイチェルのものに間違いありません。 どうぞ。まだ宿が決まっていないのならば、ここに泊まっていってくださいませんか。父は昨日中に帰ってきている予定だったのですが………まぁ、おそらく今日中に帰ってくると思います。 |
■アーギー(心の声) |
・・・・・・どういう事だ・・? 今レイチェルさんが言った「記憶」・・あってるのか違うのか・・? 何故言わない・・・・・何故言わないまま・・・? |
■パオル To:アーギー&ALL |
どうします?アーギーさん。 ボクは泊めてもらった方が、面倒が無くて良いですけど・・・。 他の皆さんはどうなんですか? |
■アーギー To:パオル |
(しばらく無言になっていた後) 断る理由は無い・・・。・・・いや、断るわけにはいかない・・。 |
■ヴァーン To:レイチェル & ALL |
せっかくだから、泊めてもらおうじゃねぇか。お嬢さんもその方がいいだろうしな。 そうだろ? お嬢さん。 |
■レイチェル To:ALL |
ええ………わたくしには他に行くところもないですし……… |
■ジョージ To:クリス |
お心遣い感謝します。 我々と致しましても依頼を引き受けた以上は事の顛末を見届けたく思いますので、ご迷惑でなければ、泊めていただけますか。 |
■パオル To:クリス |
泊めていただけるんですか?ありがとうございます! あ、できれば食事は9、いや10人分でお願できますか? |
■アーギー To:パオル |
お、おい、ちょっと・・・! |
■ドリス To:パオル & クリス |
パ、パオルくんっ! いきなりそんなこと…失礼でしょ!! (クリスに向かい) あ、あのごめんなさい。彼…その… (何か言い訳をしようと考えたが、どう取り繕っても無駄な気がしたので結局正直に話す) なんというか…すごく食い意地が張ってまして……。 |
■ヴァーン |
……パオル。 オメェさんには遠慮ってモンが……。 (う〜ん、パオルの食欲の前には恐いもんなんてねぇんだな。) |
■パオル To:ヴァーン &ドリス |
え〜・・そんな・・・誉めないで下さいよ。照れるじゃないですか・・。 |
ヴァーンとドリスが顔を見合わせ、深くため息をついた………。これ以上突っ込むのは無駄だと悟ったらしい………。
■アーギー |
・・・・・????? |
何故パオルが「誉められている」と解釈したか理解できず、不思議そうに首を傾げるアーギー。
■クリス To:パオル |
………わかりました。用意させましょう。 部屋の用意ができるまで屋敷でくつろいで下さい。お茶を用意させましょう。 |
クリスは、返答も聞かずに振り返り、屋敷に向けて歩き出す。
■ドリス To:レイチェル |
(クリスが去ったあと小声で) あの…レイチェルちゃん クリスさんの話が本当なら、クリスさんの知ってるレイチェルちゃんと今のレイチェルちゃん…外見が全然違うような感じなんだけど……。 自分の姿が変わったとか、そういう感じする? (さらに小声で)レイチェルちゃんが本物かどうか試すために、クリスさんがわざと嘘をついたって可能性もあるけど……。昔の自分の姿がどうだったか…さっき言われた通り銀髪だったかどうかとか…記憶にある? |
■レイチェル |
………銀髪……… ……… |
レイチェルは少し上の空といった様子で、なにやら考えている。
■レイチェル To:ドリス |
………そう………わたくし、黒髪の、は・ず・が・な・い……… わたくし、銀髪があまり好きではなかった………黒髪ならよかったのにと…いつも言っていた………だから……… |
■アーギー To:レイチェル |
・・・はずが・・・ない・・・? ・・・・・ど、どういうこと?何か・・・何か重要なこと・・・思い出せたの!? |
■レイチェル To:アーギー |
………いえ………分かりません………わたくし……… ………でも、クリスの言っていることは………正しいと思います………。わたくしは…確かに…黒髪で・は・な・か・っ・た……… |
■ヴァーン |
……。 (わけわからんぜ……。) |
あらためて、レイチェルの髪をじっくり観察する。しかし、染めたものかどうかは分からない―――
■ドリス(心の中で) |
じゃ…クリスさんのいう通りレイチェルちゃんって銀髪なはずなの? 単に眠っていたとかじゃなく容姿まで変わってるっこと? とすると…他にも変わったところもあるのかも… 後で姿見かなにかで自分の姿を確認してもらった方がいいわね……。 7年前に何が起こったのか…その辺の記憶を取り戻すきっかけにもなるかもしれないし……。 |
■ドリス To:レイチェル |
あ、レイチェルちゃん。とりあえず屋敷へ入りましょう。 そこで落ちついてじっくり思い出してみて。 |
■レイチェル To:ドリス |
………はい。 |
そして、一行は屋敷へと向かった―――
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