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第八章「あなたは、誰ですか?」 |
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アングラード邸の前 |
そして、一行はアングラード邸の前に到着した。
■パオル |
(やっぱりここ「たのも〜っ!」て言うのかな?) |
パオルはなにやら一人で考え込んでる。
■ヴァーン To:ALL |
ふぅ〜ん。御立派な屋敷じゃねぇか。 (と、云いつつも、辺りを油断なく見回す。) |
■アーギー |
・・・・・・・・・・・・・。 (やや緊張気味になりながら、屋敷を見渡す) |
と、そのとき―――
■兵士A To:ALL |
あー、なんだね。君たちは。 |
門の中にある兵士の詰め所らしき場所から、鎧を着て槍を持った男が出てきた。
どうやら衛兵のようだ。
■ジョージ To:兵士A |
我々はオランから来た冒険者である。 アングラード子爵殿の姪、レイチェル嬢をご本人の依頼によりお連れした! 至急、アングラード子爵殿におとりつぎ願いたい! |
■兵士A To:ジョージ |
レイチェル様というと………前領主の………? あー、ちょ、ちょっと待て。今、領主様は不在だ。クリス様を呼んでくるから、そこで待っていろ。 くれぐれも、そこから動くんじゃないぞ。 |
■パオル |
(ひゃー・・・、ジョージさん。カッコイイなぁ。「おとりつぎ願いたい!!」か、憶えとこっと・・。 ) |
■ヴァーン |
……。 (たいしたもんだぜ、だてに年食っちゃいねぇな……それにしても、この手の連中の前だと、どうも居心地悪くていけねぇな、別に今は悪い事してるわけでもねぇのに……ついつい隠れちまう習性は何とかしなきゃならんなぁ。) |
しばらくして、さっきの兵士Aが一人の少年を連れて戻ってきた。
貴族にしては随分とラフな格好だが、年頃からすると彼がクリスなのだろう。
■クリス To:ALL |
冒険者と聞いたけど。 ………レイチェルがどうしたって? |
■ジョージ To:クリス |
クリス=アングラード様でいらっしゃいますね? ジョージ=マクドヴァルと申します。 当人の希望により、レイチェル=アングラード様を護送させていただきました。 |
■クリス To:ジョージ |
ディオン=アングラードの息子のクリスです。よろしく、ジョージさん。 ………で、レイチェルはどこに? |
■ジョージ To:クリス |
こちらに…………。 (クリスの正面から脇へどいて、後ろを振り向く) |
■レイチェル To:クリス |
クリス………大きくなりましたのね……… |
感慨深げに近づくレイチェル。
しかし、クリスは怪訝そうに少し後ずさった。
■クリス To:レイチェル |
………?あなたは………誰ですか? |
アングラード邸の前 |
■パオル To:クリス&レイチェル |
へ?・・・何言ってんですか?彼女がレイチェル=アングラードさんですよ! 分かんないんで すか!? クリスさんとレイチェルさんは、いとこ同士なんでしょう? |
横からパオルが割り込んだ。
■アーギー To:パオル |
(耳元で小声で) ちょ、ちょっと・・。何も「何言ってんですか?」とまで言わなくても・・ この2人、少なくとも7年間は会ってはいないんだし・・。 |
■パオル To:アーギー |
大丈夫ですって!ボクに任せて下さい。 |
■パオル To:クリス |
あ、スミマセン・・、失礼しました。 はじめましてボクはパオル=バード、レイチェルさんを護衛してきた者です。 |
ペコリと頭を下げるパオル。
■クリス To:パオル |
はじめまして、パオルさん。 それで……この方が、レイチェル?僕のいとこの?7年前行方不明になった? |
■パオル To:クリス |
ええ、そうです。 確か新王国歴513年にアングラードの街を出たらしいですね。 その後どうやら記憶を失ったらしく、気が付いたらオランの街にいたと。 幸いすぐ近くの「銀の網」亭女将さんが保護して下さったから、無事でしたんですけどこの七年間の記憶を失ってたみたいです。 それからボクらが雇われて、レイチェルさんをここまで護衛してきたんですよ。 とまぁ大体こんなとこですけど・・。 |
■ドリス To:クリス |
彼女から聞いた話を信じるならば、単に記憶を失っていたというより、7年前に行方不明になってからオランで気がつくまでの間、魔法的な力か何かが働いて時を超えたとか、時が止まったまま眠っていたとしか思えない状態なんですが……。 とにかく本人もここ以外に行くあてはないようですし、ご領主様ならば、もしかして7年前レイチェルさんに何が起こったかについて心当たりがおありではないかということで、こうして彼女をお連れしたんですが……。 |
■ヴァーン To:レイチェル |
……。 お嬢さん、あのネックレスを見れば、納得してもらえるんじゃねぇかい? |
■レイチェル To:クリス |
クリス?本当にわたくしが分かりませんの? この―――ネックレス、お母様の形見………何度か見せてあげたことがありますわよね。覚えてい――― |
レイチェルが言い終わる前に、クリスが言葉を遮った。
■クリス To:レイチェル |
もちろん覚えています。そのネックレスは確かにレイチェルのものです。 ですが………何故あなたがレイチェルを名乗っているのですか。挙げていけばきりがありませんが、例えば――― |
と、クリスは、レイチェルの漆黒の髪を指さした。
■クリス To:レイチェル |
レイチェルは銀髪です。 |
■アーギー |
!? |
■ドリス To:レイチェル |
(レイチェルの方を振り返り) え? 銀髪? あの、レイチェルちゃんって昔、銀髪だったの? |
■レイチェル To:ドリス |
え………わたくしの髪………?黒………?銀………? |
■パオル |
え゛、えええ!!黒髪じゃなくて・・銀髪!? (ちらりとレイチェルを見て) ・・・ボク的には漆黒の髪の方がキレイだと思うけど・・。(ぼそ) |
■ドリス To:パオル |
キレイとかキレイじゃないとか、そういう問題じゃないでしょっ!! (そういってパオルの腕をギュッとつねる) |
■パオル |
(  ̄□ ̄;)!!(ぎゃ!!) |
■ヴァーン To:パオル |
(とっても青い空のほうを見上げながら、) ……パオル、多分ドリスちゃんの云う通りそういう問題じゃねぇと思うぜ? (別に髪を黒く染めるくらいワケねぇが……人相がまるで違うような口ぶりだな。) |
■パオル To:ドリス |
・・・・ズミマゼン・・。 |
パオルは、つねられた腕を痛そうにさすってる。
■ジョージ To:クリス |
なるほど………困りましたね……… こちらとしましても、レイチェル=アングラード様の外見は存じませんでしたので……… クリス様、それではレイチェル様しか知らないことをご質問されて、確認をとっていただきたいのですが………。 |
■クリス To:ジョージ |
………わかりました。それでは――― |
少し考え、クリスは続けた。
■クリス To:レイチェル |
僕が7歳の時、馬から落ちて怪我をしたとき、どんな怪我をしたか答えてください。レイチェルはその時いたはずです。 |
その問いに対してレイチェルは明らかに狼狽した様子を見せた。
■レイチェル To:クリス |
馬………?わたくし……そんな話知りませんわ………。 7歳の時というと、わたくしのところに遊びに来ていて、叔父様に禁じられていた木登りをしている最中に木から落ちて………馬から落ちたことにしようと言って………。 ………あの時は右肩に大きな痣ができていて、慌ててメイドのタニアを呼びに――― |
その言葉が終わる前に、クリスはまたレイチェルの言葉を遮った。
こめかみのあたりに人差し指を当てつつ、言う。
■クリス To:レイチェル |
―――もう結構です。 |
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