■ Index | ▲ Previous Page | ▼ Next page |
|
第五章「密談、そして出発準備」 |
|
『銀の網』亭 |
レイチェルの姿が階段の上に消え、扉の閉まる音を確認してから、ドリスが小声で話を再開した。
■ドリス To:ヴァーン |
ねぇねぇ、「うら」の情報なんだけどさ。 レイチェルちゃんがいると話せないようなたぐいの情報とかはなかったの? あったら教えておいて欲しいな。 |
■ヴァーン |
……そのことなんだがな、ちょっと聞いてくれ。 さっきは、お嬢さんの前じゃ、言いづらかったんだが…… と、オーズ=アングラードの悪評と、毒殺の疑いがあるという話を皆にする。 って話なんだが……。 となると、お嬢さんがアングラールに帰ったら、厄介な事になるかもしれねぇな。 (肩をすくめて、) ま、どっちにしろ――お嬢さんからすりゃ、オランには頼れる人がいねぇわけだし――帰るしかないんだろうけどな。 |
■ドリス To:ヴァーン |
アングラールじゃなくてアングラードだったと思うけど。あ、今はアールブルグだっけ…… でも、レイチェルちゃんのお父さんってそんなに評判悪かったの? でもでも、だからって毒殺なんて…(と呟いて眉をしかめる) 毒殺っていうと、疑わしいのはいまの領主ってことよね。 そっちの方の評判はどうなの? |
■パオル To:ヴァーン |
毒殺とはただ事じゃないですね。 アールブルグで変な事に巻き込まれないと良いけど・・・。 |
■ヴァーン To:ドリス & パオル |
ん、ああ、アールブルクだったけな。なんだか紛らわしくてよ。ハハ……。 まあ、それは置いといて、今の領主の方だが…… と、ディオン=アングラードの評判と、賞金をかけてレイチェルを探していたという話をする。 で、さっき、その叔父さんの事聞いてみたわけだが……今一つ要領を得ないというか、ホントに何も知らねぇんだよな、あのお嬢さんは……。 (と、肩をすくめて、溜め息をつく。) |
■ジョージ To:おおる |
先ほどはレイチェルさんの前でしたので遠慮しましたが、故オーズ=アングラ
ード子爵は領主としてはあまり良い方では無かったようですね。 彼が領主の間は税額は高く、目立った公共事業も記録にはありませんでした。 レイチェルさんが生まれた年に巨大な庭園を造っていることくらいですか・・・・ アングラードの経済状況もあまり良くはありませんでしたが、現領主に変わってからは、徐々に回復してきているようですね。 オーズ子爵はそういった方でしたので人に恨まれる可能性は十分にあると思います。 毒殺も考えられるでしょう・・・しかし、逆に言えば殺したいほど憎んでいた人もたくさんいると言えるでしょう。 |
■ヴァーン To:ALL |
ああ、まったく厄介なこった。 (と、クラリスの話を思い出す。) |
■ドリス |
ううう……。困ったなぁ。 なんか聞けば聞くほど、レイチェルちゃんをアールブルグへ連れてくと、厄介なことになるとしか思えないんだけど。 どう考えてもレイチェルちゃんを屋敷まで送って「はい終わり」ってことでは済まないよ、絶対。 |
■アーギー To:ALL |
うん・・・だから街についた際にはちょっと注意した方がいいと思うな・・。 もしかしたら住民の中でレイチェルさんを知っている人がいて、もしその人がオレ達と一緒にいるレイチェルさんを見つけたとしたら・・・。 ・・最悪の場合、住民に対して剣と盾を構えることになりかねない・・。 ・・・・まあでも、そのへんをどうすればいいかは街までの道を行く間にでも考えればいいんだろうけどね。 |
■ドリス To:アーギー |
レイチェルちゃん。住民にまで顔知られてるのかな? なんか凄い箱入りだったみたいだし…直接見知ってる人なんてそんなにいないと思うけど……。 あ、でも賞金かけて探してたってくらいだから似顔絵とかで知られてるかもしれないのか……。 じゃあ、やっぱ気をつけてた方がいいね。 |
■パオル To:アーギー |
その最悪の場合になったら・・シャレになんないですよね・・・。 |
■ジョージ To:おおる |
そうですね・・・・。我々の仕事はレイチェルさんの護衛です。 依頼人が帰りたいと言っている以上、連れて行かないわけにはまいりません。 それに、住民や現領主の反応は行ってみないとわかりませんしね・・・・ 私はレイチェルさんの意志を尊重したいと思います。 |
■ヴァーン To:ALL |
でもよ、お嬢さんに、その辺のこと――親父さんの評判とか毒殺の疑いだとか――についてちゃんと話してよ、もう少し調べをつけておいてもいいんじゃないのか? その手の薬なんてそう手に入るもんでもねぇからな。このあたりで入手できるのはオランぐらいだろうし、ツテをたどりゃあ調べられないことはない。まあ、時間と金さえあればな。 |
■ドリス To:ALL |
う〜ん…今はレイチェルちゃんには話さない方がいいんじゃないかな。 ただでさえショック受けてるし…それにあの様子じゃレイチェルちゃんがその辺について何か知ってるとは思えないよ。 話すなら、あたしたちで調査を進めて、もっと事実関係がハッキリしてからにした方がいいんじゃないかな。 |
■アーギー To:ヴァーン |
いや・・・まだレイチェルさんの記憶すら戻ってないのにそんなに多くを話さない方がいいと思う・・。 それに、もしその薬のことを調べても、だからといってそんなにすぐに「ディオン=アングラードが領主毒殺のためにその薬を買った」という確信にまでいくとは限らないと思うし、もしいったとしても、どれだけのお金と時間がかかるか分からないし・・。 ・・・だから、今はもうとりあえず何もせずに出発した方がいい・・・。 |
■ヴァーン To:アーギー & ALL |
いや、いくら疑わしいっても、まだ黒幕と決まったわけじゃねぇだろ。そういう可能性があるから、確かめられることは確かめておいたらどうかってことなんだけどな。 (……どうも、なんでも決めつけてかかる気があるなぁ、このオ兄サンは……。) まあ、しかし、やっぱりお嬢さんには話せねぇよな……。 |
■パオル To:ヴァーン |
まぁ用心するには越したことはないし、調査を止めることはないんじゃないかな? とりあえず事実が掴めるまでは、レイチェルさんには話さないというのは賛成ですね。 |
■ドリス |
本人もアールブルグへ行きたがってるし、事実関係を調べるにもアールブルグへ行ってみなきゃ始まらないし……。 よし! さっさと準備済ませてアールブルグへ出発しよっ!! 向こうで調べればもっと何か判るよ、きっと。 (おやじに向かって) マスターみんなの分の保存食用意してもらえる? あ、それからこれ、1つは水、1つはワインを入れてね。 |
と水袋を渡しワイン代を払う。
■アーギー To:おやじ |
あ、オレの袋にも水をお願いしますね・・ |
■パオル To:おやじ |
あ、ボクも水を頼みます。 |
■ドリス To:ヴァーン |
あ、そうそう忘れてた。 はい、これ頼まれてた毛布に水袋それに(ゴソゴソ)食器ね。 |
この時点で、ひよこ模様の方の食器の包みを渡してしまっているが、双方共に気付いてない。
■ヴァーン To:ドリス & おやじ |
おっと、ありがとよ、ドリスちゃん。 (と、何気なく受け取り、中を確かめもせずにしまい込む。) おやじ、コイツには『ガルーラン』(火酒)を……いや、じゃなくて水を詰めてくれ。 |
その程度の理性は働いたらしい。
■パオル To:ヴァーン |
あれ! ボクはてっきり、ヴァーンさんはお酒を水代わりに飲むもんだと思ってたのに・・・。 |
■ヴァーン To:パオル |
(にやにや笑いながら、酒を詰めた袋を2つ見せて、) よくわかってるじゃねぇか。お酒だって、ちゃんと用意してあるぜ。だけど、さすがに酒だけじゃあ、長旅はキツイからナ。 |
と―――そのとき―――
■ジョージ To:外 |
何奴っ!?(いきなり叫んで外へ飛び出す) |
■アーギー |
???(驚いてジョージの方を見る) |
■ドリス |
えっ? 何っ何っどうしたの? (慌ててあたりの気配を探る) |
勢いよく酒場を飛び出したジョージの前を、痩せた野良猫が横切った。
■野良猫 |
ニ゛ャァァァ。 |
―――そのまま何事もなかったかのように、ジョージは振り返り酒場へ戻った。
■パオル To:ジョージ |
どうしたんです?何かあったんですか? |
■ジョージ To:おおる |
・・・・・・・・失礼。お騒がせしました。 外に不審な気配がしたのですが、どうやら気のせいだったようですね。 緊張しているのかも知れません。神経質になっているようです。 |
■アーギー |
・・・・・(複雑な表情) 大丈夫かい?まだそんなに心配しなくてもいいのに・・。 |
■ヴァーン |
……。 (肩をすくめるが、何も言わない。) |
『銀の網』亭 |
地図で経路を調べ、極力水の手に入る野営箇所をマークする。食料も十分(払うのはレイチェルだが)用意した。
ややあって、一通り準備が完了すると、ちょうど身支度が終わったらしいレイチェルが戻ってきた。
■レイチェル To:ALL |
準備、できましたわ。 |
■ドリス To:レイチェル |
あ、レイチェルさんも準備出来ました? えっと食料はもう準備済ですか? まだならマスターに用意してもらってください。 徒歩で7日ほどということですけど、念のために食料は2、3日分余分に用意しておいたほうがいいですよ。 |
■ヴァーン |
……。 (やっぱり話せねぇよな……。) |
考え込むふうに、レイチェルを見ている。
■パオル |
やっぱり話せないよ〜、追加の食料が欲しいなんて・・・ |
モジモジ
■レイチェル To:パオル |
………? どうかなさいましたか? |
■パオル To:レイチェル |
へ? あ、いえ・・その・・ですね〜・・・。 う〜〜〜ん・・・・・。(少し考え込んで) つまりその〜、アールブルグまでの七日間の食事はずっと保存食でしょ? 保存食ってそんなに美味しいわけじゃないし、量も少ないし満足な食事は取れないですよね。 それが大丈夫かな〜と、心配なわけで・・。 |
■ヴァーン To:パオル & レイチェル |
(横から口を挟んで、) いくらオメエの食欲が凄まじいからって、そう心配しなさんな。街道を伝っていくんだ。足りなくなったら、途中で調達できるさ。あんまり食いモンばっかり抱え込んだって重いだけだぜ。10日分もありゃ充分だ。 |
■レイチェル To:ドリス |
そうですわね。 |
頷いて、おやじに10日分の食料を注文する。
食費なども含めて代金を支払い―――
―――ふとヴァーンの視線に気付いたのか、少し首を傾げた。
■レイチェル To:ヴァーン |
………? どうかなさいましたか? |
■ヴァーン To:レイチェル |
ん? い、いやぁ、今まで俺たちみたいなこんな野暮ったい格好なんてしたことないんだろ? そのわりには、なかなか様になってると思ってな。 |
と、肩をすくめて見せる。
■レイチェル To:ヴァーン |
?………はぁ………そういうものですの……… |
■アーギー |
・・・・・。 |
アーギーは黙っている。実は彼も野外活動は始めてだ。
■ドリス(心の中で) |
ふ〜ん。もしかしてヴァーンくんレイチェルちゃんに見とれてた
のかな……。
くすくすくす… |
と勝手に妄想してニヤニヤ。
■パオル |
(なるほど〜、これがヴァーンさんの手口か・・・。) |
パオルも一人で納得している………。
■ヴァーン |
……? |
妙な視線を感じて、ドリスとパオルの方を見る。
しかし、二人は素知らぬ顔で視線を避けた。
『銀の網』亭 |
■ドリス To:ALL |
(みなの準備が出来たのを確認して)
みんな準備は出来た? 忘れ物はないよね それじゃアールブルグへ向けてしゅっぱ〜〜つ!! |
■ヴァーン |
へいへい。 ったく、元気だね……今日はもう、くたびれちまったぜ、俺は。 |
ブツブツぼやくヴァーン。
■パオル To:ヴァーン |
ヴァーンさん、年寄りじゃないんだからもっと元気良く行きましょうよ! ついに冒険に出るんですよね?くぅ〜〜〜・・・ワクワクするな〜!! |
そして、一行は店を出た。
■ Index | ▲ Previous Page | ▼ Next page |