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第五章「とりあえず集合」 |
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『銀の網』亭 |
「銀の網」亭では、おやじが一人で床にモップをかけている。おかみさんは買 い出しに出かけているし、他の冒険者も出払っているようだ。
■おやじ |
ふぅ………。誰もいないと平和だな………。 |
おやじが掃除を終えたのとちょうど同じくらいに、アーギー達が買物から帰ってきた。
■アーギー To:おやじ |
あ、ただいま帰りましたー。 (テント等荷物を降ろし、あたりを見回す) えっと、まだ誰も帰ってきてないですか?おかみさんはまだ・・? |
■おやじ To:アーギー |
ああ、まだ帰ってないぞ。夕方のはずだから、まだだいぶかかるんじゃないかな。 |
■ドリス To:おやじ |
(こちらも毛布などの荷物を降ろし) なんだ、まだ誰も戻ってないんだ。どうしよっか……。 |
■ドリス To:アーギー |
あっそうだ。レイチェルちゃんアングラードを出てからここまでの記憶がないっていってたよね。 アーギー様、医学生だったんだよね。そういう記憶喪失症とかいうのかなそういうことについて詳しい? 失った記憶があるって、レイチェルちゃんも凄く不安だろうし、もし記憶が戻る可能性があるんなら、取り戻してあげられないかな……。 それにレイチェルちゃんから聞いた話って凄い謎だらけだし、本当にただアングラードまで連れてってあげれば済むのかなってのも不安なんだよね。 レイチェルちゃんが街を出ようとした理由…ってのも気になるし…。その辺の謎も記憶が戻れば判るんじゃないかと思うんだけど……。 ねぇ、あとでレイチェルちゃんを診てあげてくれない? |
■アーギー To:ドリス |
記憶喪失、か・・・。(腕を組む) ・・・そういえば昔、先生と一緒に1人だけそんな患者を見たことがあったような気もするけど・・・。 でも、その時先生は・・。記憶を取り戻すためには、あの時見た光景だとか、あの時聞いた音だとか、何か本人に関係するきっかけが無ければどうにもならない、って言ってたと思う・・。 だから・・。今ここで記憶を戻そうとしたりするよりも・・町に向かいながら少しづつ何か思い出すきっかけが見つかれば、といった感じの方がいいんじゃないかな。 ・・・とはいえもちろん、もしレイチェルさんが魔法や薬とかで無理矢理記憶を消されたというのなら話は別なのかもしれないけどね・・。 |
『銀の網』亭 |
などなど話していると、通商ギルドに行っていたパオルが帰ってきた。
■パオル To:店内の人&おやじ |
ただいま〜! (キョロキョロ・・・店内を見回して) あれ?まだヴァーンさん帰ってきてないの? う〜ん・・・、きっとどこかで女の人に引っかかってるのかも・・・。 あ、おやじさん。紅茶とクッキーをお願しますね。 もちろん、皆さんも飲みますよね?(ニコニコ) |
■ドリス To:戻った人達&おやじ |
あ、おかえりなさ〜い。 うん、ヴァーンくんはまだみたいだよ。 それじゃみんなでお茶しながら話きかせてもらおっか。 マスター、みんなの分も紅茶とお茶菓子お願いね。 |
と確認もせずにみんなの分注文してしまうドリス。
■アーギー To:ドリス |
(少しあわてて)あ、ちょっと待ってよドリス・・・・。 あの・・・ごめん、オレは紅茶は今はちょっといらないや・・。 紅茶は朝にも飲んだし、それに、お菓子はあまり・・。 ・・・ごめんね。1人分減らしといてくれないかな・・?(苦笑) |
■ドリス To:アーギー&おやじ |
あ、お菓子とか好きじゃなかった? ごめんね。 (おやじに向かい) ごめんなさいマスター。1人分減らしてくれる? |
■パオル To:ドリス&おやじ |
あ、減らさなくていいですよ。 ボクが2人分飲んで、食べますよ。 |
■おやじ To:ALL |
じゃあ6人分だな。 |
『銀の網』亭 |
パオルにやや遅れて、ジョージとレイチェルも戻ってきた。
■ジョージ To:店内の人&レイチェル |
・・・・・・ただいま戻りました。 買い物の方は終わったようですね・・・・ヴァーン君はまだですか? とりあえず、地図を買って場所を確認して参りました。 それと、アングラードについてある程度の情報を得たので報告しておきます。 (レイチェルに) レイチェルさん。地図を見せていただけますか? |
■レイチェル To:ALL |
は、はい。 |
レイチェルが、テーブルに地図を広げる。
そして、彼女は『アールブルグ』と書かれた街を指さした。
■レイチェル To:ALL |
ここが、アングラード………。 ………今では、アールブルグと呼ばれているそうです。 |
■パオル |
ポリポリ・・・。(クッキーを食べてる。) ズズ、ズ・・・。(紅茶をすすってる。) |
■ジョージ To:おおる |
我々の調べによりますと、アングラードは領主の変更に伴い7年前にアールブルグと改名しております。 現在の領主はディオン=アングラード子爵。レイチェルさんの叔父に当たるそうです。 アールブルグまでの行程は街道沿いに徒歩7日・・・・ 昨今では目立った事件もなく道中は安全と思われます。 アールブルグの街は人口1000人弱、主な交易品は小麦だそうです。 これまでで、何か質問はございますか? |
■ドリス |
えっ?
じゃあマスターがいってた街ってやっぱり (と、アーギーと顔を見合わせる) と、とりあえず判ったことを全部教えてくれる? |
■アーギー |
待って・・。今領主の変更、って言ってたよね。 じゃあまずその変更前の領主・・つまりレイチェルさんの父親はどうなったのか・・。 そこをまず最初に聞きたいんだけど・・。情報、あるかな。 |
■ジョージ To:アーギー |
(ちらっとレイチェルの方を見て) 図書館の公式記録では「病死」とだけ書いてありましたね、病名・症例等は不明です。 他に判ったことですか?・・・・そうですね・・・・ 現在のアングラード・・・アールブルグの治安は比較的良好と聞きました。 4代前にアールブルグからアングラードに改名されていまして、またアールブルグに戻ったと言うことですね。 あと、現領主ディオン=アングラード子爵は、故オーズ=アングラード子爵の弟と伺いました。 ・・・・・・・・アングラードについて判ったことはこの程度ですね。 |
■ジョージ To:おおる |
それと、レイチェルさんですが・・・・・。 アングラードを出たのは7年前・・・。前領主であるオーズ=アングラード子爵が、亡くなられる前だと思われます。 |
■アーギー |
・・・・・・???・・7・・・・年・・・・?? |
■ドリス To:ジョージ&レイチェル |
ちょっと、ちょっと待って。 7年前って……レイチェルちゃん7年も記憶がないってこと? (動揺のあまり、レイチェルへの配慮も忘れて、ちゃん付けで呼んでしまっているが気付いてない) それじゃレイチェルちゃん、街を出たときってほんの子供だったんじゃ? |
■レイチェル To:ALL |
………はい。と言っても、わたくしにもよくわからないのです。 7年間の記憶は…全くありませんの。わたくしが記憶している「7年前」、わたくしは17歳でしたわ。だから、今わたくしは24歳ということになるようなのですけれど………。 |
■ドリス(心の声) |
24? でも、十代半ばにしか見えないけど…… まさかエルフの血を引いてる…ってことはないだろうし……。 あたしみたいに童顔で…とか考えるよりも、何か魔法的な力か何かで時間を越えたとか、時を止められていた…とか、そっちの方が可能性高いよね… |
何かそういう話に心当たりがないか考え込むドリス。
■パオル To:ALL |
気がついたら、7年後のオランにいたと・・・・・。 確かに驚きますよね普通は・・。いや、絶句するのかな? ポリポリ・・・。 |
■アーギー To:ALL |
・・・・・。(ちらとパオルの方を見る。実は少しクッキーの音が耳に障っている) (視線を戻して、大きく一息。) ・・・そんな、7年間も年を取らずにいく方法なんて、本当にあるの・・? ・・誰か、何かそうなる方法みたいなの知ってる・・? |
■ドリス To:アーギー |
歳を取らないだけなら、マーメイドの肉を食べて不老不死の力を得た伝説とかあるけど、でもどっちかというと、魔法で仮死状態になって眠っていたという方が可能性としては高いと思う。 例えば不治の病の治療法が見つかるまで魔法で眠らされたローザ姫の伝説とか、その死とともに国に滅びをもたらすと予言され氷の中で永遠に国を見守り続けることを選んだ氷柱の聖女の伝説とか、そういう奴ね……。 あとはハウゼン男爵の冒険みたいに魔法の力で時を越えた話とかよくあるけど、ほとんどただのおとぎ話みたいなもので、そういう魔法の力とかアイテムとかが実在したって話は聞いたことないし… |
■アーギー |
・・・・(知らない話ばかりいきなり並べられて、少し困惑) |
■パオル To:ALL |
あれれ・・、皆さんあまりクッキーに手をつけてないですけど・・・
食べないんですか? ボクが食べちゃいますよ。ポリポリ・・・。 |
■ドリス |
あっ食べる食べるっ! (と慌てて自分の分を確保) ポリポリ…ズズズ |
■パオル To:ALL |
一応ヴァーンさんの分を別に取っておこうっと・・・。 (別の皿にクッキーを分ける) それじゃあこれがヴァーンさんの分です。 |
パオルが言うところのヴァーンの皿とやらには、クッキーが一枚だけぽつんとおかれている。
■ジョージ To:おおる |
とりあえず、この際レイチェルさんの年齢はどうでも良いでしょう。 何もしないでいて、状況が好転するとも思えません。 依頼の話なのですが、レイチェルさんはそれでもアールブルグに向かいたいそうです。 それについて、みなさん何か意見はございますか? 無ければアールブルグ迄の護衛の依頼として受けることになりそうなのですが・・・ |
■レイチェル To:ALL |
………わたくし、戻る場所は他にありませんから……… |
■パオル To:ALL |
何がなんだかよくわかりませんけど・・・、ポリポリ・・・。 まぁ変に考え込むより・・・、ポリポリ・・・。 アールブルグに行ってみたほうが・・、ポリポリ・・・。 良いと思いますよ。美味しいですねこのクッキー。 ズズ、ズ・・・。 |
■アーギー To:AL |
(再びパオルの方にちらと視線を送り、音を気にしながら) ・・・依頼はもちろん受けるよ・・・。 町の名前が変わったから断るなんて、そんな変な話は・・ありえない・・ |
■パオル To:アーギー |
(アーギーの視線に気が付き) アーギーさんも一口どうです?美味しいですよこのクッキー。 ポリポリ・・・。 |
と、アーギーにクッキーを差し出す。
しかし、アーギーは、パオルの方を見ずに、首を横に振りながら差し出されたクッキーを手で制した。
■アーギー To:パオル |
(パオルの方を見ないまま)いや、いい。 それよりも、話の最中だから、食べる時はもう少し静かに頼むよ・・。 |
『銀の網』亭 |
■ジョージ To:おおる |
それでしたら、出発するのは早い方がよいでしょう。遅れるとそれだけ無駄になります。 ヴァーンさんが戻ったときにすぐにでも出発できるよう準備をしておいてください。 それと、前もって野営場所と1日の移動距離等のスケジュールを決めておきたいのですが・・・ |
■パオル To:ALL |
ふむふむ・・・、ポリポリ・・・。 |
そこへ、盗賊ギルドに行っていたヴァーンが、ようやく帰ってきた。
■ヴァーン To:ALL |
おっ、もう、みんな揃ってんのか。わりぃな、遅くなっちまって。 おやじ、とりあえず水をくれ。 ふぅ……で、どういう話になってんだ? |
などといいながら、どかっと椅子に座り込む。
■パオル To:ヴァーン |
あ、ヴァーンさんお帰りなさ〜い! このクッキー美味しいですよ。はい、ヴァーンさんの分ですよ。 (とヴァーンに皿を差し出す。) それにしても随分遅かったですね? 奇麗な女の人でもいました? |
と、差し出した皿にはクッキーが一枚………。
■ヴァーン To:パオル |
……。 (やれやれ、といった風に首を振って、) ありがとうよ。 (と、クッキーに手を伸ばして、) それにしてもよくわかったな。確かに、すっげぇー綺麗なねぇちゃんと……ま、クッキー1枚じゃ、これ以上は教えられねぇな。 (と、ニヤニヤする。) |
■ジョージ To:ヴァーン |
お疲れのところ申し訳ありませんが、我々の得た情報を伝えておきます。 |
と、さっき話していた内容を、もう一度最初から繰り返すジョージ。
■ジョージ To:ヴァーン |
・・・・・とまあ、こう言ったところです。 何か質問や意見はございませんか? |
■ヴァーン To:ALL |
……ほ〜う……なるほどね。 まあ、俺のつかんだところでも、アールブルクまでの街道沿いで、とくに危なそうな事は、最近は起きてないみたいだぜ。アールブルクまで帰るだけなら、問題はねぇが……でもなぁ……。 (と、レイチェルのほうを意味ありげに見て、) なあ、お嬢さん……その、親父さんってどんな人だったんだ? 身体が弱かったのかい?それに今の領主だっていう叔父さんのことはよく知ってるのかい? もうちょっと詳しく話しちゃもらえねぇかな。 |
■レイチェル To:ヴァーン |
叔父様、ですか?あまり存じておりませんわ。別館に住んでおられたのですけれど、あまりお会いする機会がありませんでしたの。 ああ、従弟のクリスはよくわたくしのところに遊びにきておりましたわ。でも、あの子がもう16歳ですのね………。 |
■ヴァーン To:レイチェル |
そうかい……そのクリスさんは、近々結婚するらしいぜ。 で、親父さんのことも聞かせてくれよ。 |
■レイチェル To:ヴァーン |
お父様は………特に……身体が…弱かったということは…ないですわ………。 |
■ヴァーン To:レイチェル |
ふぅ〜ん。 |
■ジョージ To:レイチェル |
・・・・・・あ、レイチェルさん。 我々は出発の準備をいたしますので、その間部屋で休んでいて下さい。 準備ができ次第すぐに出発いたしますので、少しでも休んでおかれた方がよろしいと思います。 レイチェルさんも準備がまだでしたら、その間にやっておいていただけますか? |
■レイチェル To:ジョージ |
………ええ、分かりましたわ。 それでは……… |
と、レイチェルは自分の部屋に戻って行った。
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