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第四章「今日も臭い酒場」 |
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盗賊ギルド支部 |
酒場にカムフラージュされた盗賊ギルド。常闇通りにあるギルドの本拠と違う、 いわば出張所のようなものだ。
特徴は、詳細に解説することもできれば、一言で表すこともできる。一言で表 せば、汚い、ということだ。
相変わらず乞食が、酒場の入り口を塞いでいる。
■乞食(盗賊ギルドの門番) |
よぉ………また来たのかい………。 ………今日は、何の用だい………。 |
■ヴァーン To:乞食(門番)のおっさん |
(相変わらず、くせぇな、たまらんぜ。) いやあ、ちょいと知りてぇことがあってよ。店長、まだいるかい? |
乞食は少し黙って、こちらを伺っている。
そして、軽く顎で店内を示した
■乞食 To:ヴァーン |
入んな。 |
盗賊ギルド支部・支部長室 |
ギルドの中はあいかわらず暗い・臭い・汚いときている。
そして、昨日もくぐった「支店長室」と書かれたドア。これは、店内で唯一、 奇跡的な程上等な代物で、正常の70%くらい正常に設置されている。
■ヴァーン |
(ドアを軽くノックして、) 店長! ヴァーンだ! じゃまするぜ! |
■「支店長」 |
おう、開いてるぜ。 |
■ヴァーン To:店長 |
まだ起きてるとは意外だぜ。このおっさん、いったいいつ寝てやがんだ? (と、ぶつぶつ呟きながら、壊さないように慎重に扉をあけて、中に入る。) 店長、朝っぱらから邪魔してすまねぇな。 ……。 まあ、世間話をしに来たんじゃねぇから、さっさと用件に入るぜ? |
■『支店長』ガノン To:ヴァーン |
あ。 ん、もう金の工面ができたのか?………違うって顔だな。なんだ? |
■ヴァーン To:店長 |
うっ、そっちの方は、今度ののヤマが終わるまで待ってくれよ。頼むぜ……。 (と、顔をしかめてから、気を取りなおして、) いやな、その今度のヤマのことで、妙に気になることがあってよ。 で、ギルドのほうで、なんか関係ありそうな話をつかんじゃいねぇか、と思ってな。 (一旦言葉を切って、おもむろに、) なあ、店長、アングラードって町、知ってるかい? オランから、歩いて一週間ほどのとこにあるらしいんだが……。 |
■『支店長』ガノン To:ヴァーン |
あー。ちょ、ちょっと待てや。 |
と言って、「支店長」は羊皮紙とペンを取り出し、ヴァーンの言葉をメモした。
外見―――に限らずその他ありとあらゆる要素―――からは想像もつかないほど丁寧な字でさらさらと書き留める。
■『支店長』ガノン To:ヴァーン |
よし………。で? |
■ヴァーン |
ま、要はだな、今度のヤマの依頼人が妙なこと言ってやがるんだ。 まだ15歳くれぇのガキなんだけどよ。その町の領主の娘だって言ってるんだ。え〜と、アングラード子爵家っていったっけな。で、俺も今度の仲間も、誰もその町の名前すら知らなかったもんでな。 ホントにそんな名前の貴族がいるのかどうか、怪しくてナ。 |
■『支店長』ガノン To:ヴァーン |
………アングラードの町の…子爵の…娘………っと。 ふむ…まあこの程度なら一時間もあれば調べは付くが………肝心の予算の方は いくらほどあるんだ?あまり高くふっかけるつもりはないが――― |
そこまで言って、「支店長」は噛み煙草で黒くなった唾を床に吐いた。
■『支店長』ガノン To:ヴァーン |
あー、そうだな。あまり高くふっかけるつもりはないが、はした金だと出せね
え情報もあるかもしれねえ。 まあ、おまえさんの気持ち次第ってところだ。 |
にやにやしながら、机の上をとんとんと叩く。金を催促しているらしい。
■ヴァーン To:店長 |
わ、わかってるよ、そのへんのこたぁ。急かさなくても、その分の金はちゃんと用
意してきたぜ。 (と、懐の辺りをポンポンと叩いて見せてから、指を一本突き出して、) とりあえず、前金で100、それでなんとか頼むぜ。あとは、でてきた話次第で上 乗せって事で、手を打っちゃあ、もらえねぇかな。 (と、店長の顔色を窺う。) |
■『支店長』ガノン To:ヴァーン |
100か。シケてやがるな。 まあいい、調べてやる。 で、何を調べればいいんだ? 詳しく言いな。 |
■ヴァーン To:店長 |
すまねぇな。じゃあ、まず、
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■『支店長』ガノン To:ヴァーン |
お、任せとけや。 |
■ヴァーン To:店長 |
じゃあ、俺は外で待ってっからよ。よろしく頼むぜ。 |
■『支店長』ガノン To:ヴァーン |
ああ、よければ酒場の方で何か飲んで待ってな。水ならタダにしとくぜ。 |
■ヴァーン To:店長 |
ああ、そうさせてもらうぜ。もっとも、いくらタダでも、ここの水はいらねぇけど よ。きっと腹壊しちまうぜ。 |
にやっと笑って、手をひらひらさせながら部屋を出る。
そして、バタン、という音だけが部屋に残った。
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