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第十三章「目覚め」 |
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応接室 |
■ヴァーン To:名前の分からない娘 |
おい、起きなっ。 (と、レイチェルの魂の抜けた娘の身体を軽く揺さぶる。) |
■娘 To:ヴァーン |
………ん………んぁ………ん………? ………ぁ? |
さっきまでレイチェルだった娘は、ぱちりと目を開き、ヴァーンの方をじっと見つめた。
■娘 To:ヴァーン |
………………だれ………? |
■ヴァーン To:娘 |
おれかい? 俺はヴァーンってんだ。 お嬢ちゃんの名前は? |
■娘 To:ヴァーン |
………カティ……… |
………と名乗りかけて、その娘は唐突に目を見開いた。
■カティ To:ヴァーン |
………………って、あー!!夢の中に出てきた………誰
だっけ………えっと…えっと…あ、そう
釣りの男!!!! し、しかも、なんだか、身に危険を感じるシチュエーションだわ。 |
カティと名乗った娘は、さっきまでレイチェルだったとは信じられないような機敏さでばたばたと手足を動かし(慌てている仕草らしい)、更にまくしたてた。
■アーギー |
(・・・・え゛?) |
■カティ To:ヴァーン |
えっと、その、ヴァーン、だっけ? そ、それ以上近づいたら、ただじゃおかないわよ。ただじゃおかないっていうのは、えっと、えっと、噛みつくとか、引っ掻くとか……… あーもー!!!絶体絶命!!!誰か助けて〜〜〜〜〜 |
■アーギー |
・・・・・・・・(^^; |
■ヴァーン To:カティ |
……(絶句)。 (けっ、うっるせぇガキだな。お嬢さんとはえれぇ違いだ。ったく、舌引っこ抜いてやろうか……。) |
■ドリス To:カティ |
ちょ、ちょっと待って。落ちついてっ!! 大丈夫! 大丈夫だからっ!! 誰もあなたに危害加えたりしないからっ。 えっとえっと今事情は説明するから! ねっ、とにかく落ちついて聞いてくれる? |
カティとヴァーンの間に割り込むように入って、カティを押さえつけにかかる。
しかし―――
■カティ To:ドリス |
は〜ぅ〜(ぢたばたぢたばた)、今度はドリスちゃんまで、あたしをトーサクの世界に引き込もうと襲いかかってきた〜〜〜(@_@;) ………イヤ〜〜〜〜やめて〜〜〜………って………ドリス…ちゃん………? |
■ドリス To:カティ |
と、倒錯の世界ぃ(=^-^=;) あ、あのねー (何を考えてるんだか……。いっそ本当に押し倒してやろうかしら……) |
手足をばたばたしようと両手両足を伸ばした状態で、カティはぴたりと動きを止めた。
■カティ To:ドリス |
あ〜………もしかして…ですけどぉ………もしかしてぇ………あたしがさっきまで見てた、貴族のお嬢様の幽霊に取り憑かれて、オランからはるばる7日も旅して、今ようやく解放された〜とかいう夢は………実は夢じゃなかったり…する? |
■ヴァーン |
(なんだ、全部分かってんじゃねぇか……) |
■パオル |
(これはまた・・・、レイチェルさんとは対照的な、えらく元気な女の子だね・・。) |
■アーギー |
(!・・・・・・・全部分かってる・・・・・!?) |
■ジョージ To:カティ |
カティさんと言いましたか? ……そうですね、実は夢じゃなかったりします。 しかし、夢と思っていて下さって結構です。 オランには責任を持ってお送りしますので、ご安心下さい。 |
■カティ To:ジョージ&ドリス |
………う………う〜………うぅ〜? ………うん……… |
カティはまだ状況が飲み込み切れていないようだが、小さく頷いた。
■ドリス To:カティ |
ねぇ、良かったらあなたのこと色々教えてくれる? あなたに取り憑いてたレイチェルちゃんのことは、知ってるけど……あなたのことは何も知らないから……。ねっ。 (…と、カティとおしゃべりを始める) |
悲しみに沈んでいたドリスも、カティのにぎやかさのせいか、少し元気を取り戻したようだ。
■カティ To:ドリス |
う………うん………いいけど……… |
カティは促されるままに、自分のことを話しはじめた―――
応接室 |
そのまましばらく無為な時間が流れ、皆も少し気分を落ち着けた頃、重苦しい 空気を無理に振り払うようにクリスが立ち上がった。
■クリス To:ALL |
それでは………今日はもう遅いですし、皆さんは別館の方で休んでください。オランまで帰るのに必要な食料は用意させましょう。レイチェルの依頼料の残りも、明日の朝お支払いいたします。 |
■ジョージ To:クリス |
すみません、何から何までご迷惑をおかけします。 |
■クリス To:カティ |
それから、カティさん。レイチェルが売り払ってしまった装飾品の代金を清算したいので、後で僕の部屋に来てもらえますか? |
■カティ To:クリス |
は、はい。 |
夜の別館 |
その日の夜。
一行は、結局その晩は別館に泊めてもらうことになった。食事も終わり、そろそろ皆寝静まっている。
昼間の騒ぎが嘘のようだ。
そんな中を、アリルは一人で屋敷の中の見回りをしていた。
■アリル |
………後は別館だけね。 |
そこへ、散歩(と称してアリルを探していた)ヴァーンとパオルが現れた。
■パオル To:ヴァーン |
(よし!目標補足・・・、行きましょうヴァーンさん!!) |
■ヴァーン To:アリル & パオル |
おや、アリルさんじゃねぇか。見回りかい? 夜も遅いのに大変だねぇ。 |
クリスから、アリルが夜に見回りに来ると聞いて、延々と探して回っていたのは秘密である。
■アリル To:ヴァーン |
………何か用? |
■ヴァーン To:アリル & パオル |
いやあ、散歩してたのさ、俺たちは。今日は、いろいろと有り過ぎて大変な一日だったしさ、なんか寝つけなくてな……。 (……あほくさ、いったい何を言ってやがるんだ、俺は……) ところで、アリルさん。 俺たちも、明日にはオランに帰らなきゃならねぇんだが……、 昼間の話、少しは考え直してくれたかい? |
■アリル To:ヴァーン |
………昼間の話………。………なんだったかしら? |
■ヴァーン To:アリル & パオル |
なんだったかしらって、はぁ……アンタの姉さんが生きてるかもしれないって話をしたじゃねぇか? (少し焦って、パオルの方を見る。) |
■アリル To:ヴァーン |
あぁ………姉さんの話ね………。それがどうかしたの? |
■パオル To:アリル&ヴァーン |
ふぅ・・。(二時間も散歩して、帰ってきた返事がコレ?しかたがないなぁ・・・。) つまりですね。貴方のお姉さんは今オランにいて、妹さんの行方を探してるみたいなんですよ。 (いきなりヴァーンの首根っこを掴んで、グイと引き寄せる。そして、ヴァーンを指差しながら) そして、ココにいるお節介焼きさんがそれを引き受けたようで、まぁ偶然にもその妹さんに該当する人を見つける事ができました。 で・・・その妹さんの貴方に、一緒にオランへ行かないかと、この人は誘いに来たわけなんですね。 一応、確認しておきますけど貴方のお父さんの名前はクレイブ=ローン、お母さんはエルディアですよね? |
■アリル To:パオル |
………そうよ。 |
■ヴァーン To:アリル |
やっぱり、クラリスはあんたの姉さんなんだろう? だからさ、ちょいと休みもらってだな、姉さんに会いに行く気はねぇかい? |
■アリル To:ヴァーン |
………8年前、私を見捨てて逃げて、今更会いたいなんて………虫のいい話じゃない。 あのときアルベルトが助けてくれなかったら、私は今頃……… |
■ヴァーン To:アリル |
そうか……あんたがそう恨みに思う気持ちもわかるぜ。 だけどさ、クラリスだってさ、それで平気だったわけじゃないとおもうぜ。 アンタを見捨てて逃げたって事が、どっかで心に引っかかってて、すまなく思ってるからこそ、今でも忘れちまわないでアンタを探してんだと思うぜ。 それに、どうあれ、アンタもクラリスも生きてるんだしさ。 たった一人の姉貴じゃねぇか、会いたくもないなんて言わずにさ、会ってさ――そうだ、なんなら手紙でもいいしさ――私はこんなに苦労したんだって思いっきりぶちまけてさ、姉さんのばかやろうって張り倒してやんなよ。 |
■アリル To:ヴァーン |
………私、そんなに暇じゃないの……… |
アリルは、ヴァーンの視線を避けるようにうつむき、呟いた。
■アリル To:ヴァーン |
………でも…い、一応………場所だけ…聞いておくわ……… |
■パオル To:アリル&ヴァーン |
あの・・、アリルさん。もう少し素直になりませんか? 何もお姉さんと一緒に暮らせなんて、ボクらは言ってないんです。 お互い会って言いたい事もあるでしょうから、一度オランに行って会ってはどうですかと言ってるんです。 会って話せば、貴方の言ってるかとが誤解だったって事も分かりますよ! ですよね、ヴァーンさん? |
■アリル To:パオル |
………大きな………お世話だわ………。 |
■パオル |
・・・・・・・・・・・・。(いや全く、そのとうりですね・・。) |
■ヴァーン To:アリル & パオル |
そうか……ま、お節介はこれくらいにしとくよ。 と、ヴァーンとクラリスの属してる盗賊ギルドの支部の酒場としての名前を教えて、 ここにくりゃあ、姉さんに会える、忘れちゃダメだぜ。 |
■アリル To:ヴァーン |
……一応………覚えておくわ………。 ………私、見回りの途中なの。もう行くわ……… |
そしてアリルは去っていった。
■ヴァーン To:パオル |
はぁ〜、女心は難しいっていうか、なかなか簡単にはいかねぇなぁ、パオル。 あ〜ぁ、やっぱりお節介なんて焼くもんじゃねぇのかなぁ。 |
■パオル To:ヴァーン |
まぁ良いんじゃないですか? あそこまで言っとけば、そのうち自分から会いに行きますよ。 でもねヴァーンさん。世の中、お節介焼きがいないと生き別れた姉妹が一生会えないって事になりかねませんから、今回はこれで良かったと思いましょうよ。 |
■ヴァーン To:パオル |
そうだよな、無駄じゃなかったよなぁ。 |
■パオル To:ヴァーン |
しいて言えば、もし一緒にオランに行ってもらえてたら、ヴァーンさんの株も上がり、そうなるとボクにゴハンを奢ってくれることだろう。 ・・って思ってましたけど、さすがにそう上手くいかなかったのが残念ですね。 |
■ヴァーン To:パオル |
へへっ、まあ、パオルにはいろいろと手間かけさせてからな、オランに帰ったら一度メシおごってやるよ。 な〜に、とある正義の味方から軍資金を頂いてるからよ、オメェがどんだけ食べるたって大丈夫、好きなだけ食わせてやるぜ。 |
そして、すべて終わった―――
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