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第十三章「救済の眠り」 |
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ワイン小屋の外 |
■パオル To:ヴァーン |
・・・・・よし。後は包帯をして、ゆっくり休める所に運ばないと・・。 ヴァーンさん、ちょっと手は空いてますか? 包帯をしたら、アルベルトさんを運びますから手伝って下さい。 |
■ヴァーン To:パオル |
ああ。どんな具合だ? (アルベルトの様子を覗きこんで、) なんとか大丈夫そうだな、パオル。 |
■ドリス |
ひっくひっく…ぐすぐす…… (まだ涙流し続けている) |
しばらくして、アリルが包帯を持って帰ってきた。
■アリル To:パオル |
包帯……持ってきたわ。 |
■パオル To:アリル |
(包帯を受け取って)包帯をまいたら、アルベルトさんをゆっくり休める所に運ぶから案内してね。 |
■ヴァーン To:パオル |
手伝うぜ。 |
ヴァーンとパオルは、傷ついたアルベルトをてきぱきと止血し包帯を巻いた。
■パオル To:ヴァーン&アリル |
・・・・ふぅ、これでいいな。ヴァーンさん、足の方をお願します。 よいしょっと。(アルベルトを抱える) それじゃあ運びますか、では案内して下さい。 |
■ヴァーン |
あいよ。 どっこらしょっと。ふう、随分重てぇな、このおっさん……。 |
■アリル To:パオル |
………こっちよ。 |
アリルは厨房裏口から、屋敷の中に入って行った。パオルとヴァーンもそれに続く。
レイチェルはタニアに肩を借りたまま、ディオンは後ろ手に縛られた状態で屋敷に入った。
屋敷の廊下 |
■ジョージ To:アリル&パオル&ヴァーン |
(通りがかり) ………ややっ!?どうなさったんですか? この人はアルベルトさんですね……酷い怪我だ………。 一体何があったのですか?パオル君も怪我をなさっているようですが…… 私がアルベルトさんを治療いたしましょうか? |
■ヴァーン To:ジョージ |
おおぉっ、ジョージ! どこで油売ってたんだ? ワイン小屋でエライ騒ぎだったんだぜ? オメェさんがいなくてアブネェとこだったんだ。ところがさ――え〜と、なんつったけな、そうだ――ラーダ仮面とかって名乗るジョージにホ〜ンット良く似たおぢさまが助けてくれてよ。いや、ホント、あのおぢさまが来てくれなかったらどうなってたことか…… (と、真顔(?!)でまくし立てる!) |
■ジョージ To:ヴァーン |
いや……これは失礼……ちょっとトイレに行っておりまして……。 (縛られているディオンを見て) 確かに大変だったようですね………。とりあえず現在の状況を説明していただけますか? |
■ヴァーン To:ジョージ |
いやな…… と、ワイン小屋の顛末 について一応説明して、 ……って具合だったんだけどよ…… (と、さすがに真顔でいることに堪え切れなくなって、ちょっとにやけながら、) まあ、そんなことはいいや、とりあえず落ちつけるとこまで運ぶから、手を貸して くれよ。パオルの怪我も結構ひどいしな。 いやぁ、それにしても、ラーダ仮面はカッコ良かったなぁ……。 (と、ボソッと言ってから、ジョージの表情をうかがう。) |
■パオル To:ヴァーン&ジョージ |
ボクの方は、何とか大丈夫ですよ。それにしてもあの仮面ラーダって人、カッコ良かったですよねぇ〜。ボクなんか、命を助けてもらいましたよ! ほん、・・・とぉ〜〜〜に、カッコ良かったです!! |
■ジョージ To:パオル |
……ほう……仮面ラーダですか?私も一度会ってみたいですね…。 (あくまでもとぼけようとしてるらしい) |
などと言っているうちに、応接間らしき部屋にたどり着いた。
■アリル |
………ここでいいかしら? |
■パオル To:アリル |
うん。そうだね。 |
応接間 |
■パオル To:ヴァーン&ジョージ |
それじゃあ、そこのソファーに降ろしましょう。そっと、そっと・・・。 |
ソファーにアルベルトを降ろす。
■パオル To:ヴァーン&ジョージ |
ふぅ〜・・・、さすがに重かったですね。ボク一人じゃ、運べませんでしたよ。 |
■ジョージ To:レイチェル |
レイチェルさんもお疲れの様子ですが大丈夫でしょうか? |
■レイチェル |
……… |
レイチェルは何も言わず、曖昧に微笑んだ。
■ヴァーン To:パオル & ジョージ |
あぁ〜、くったびれた。 (と、ぱたぱた手で顔を扇ぎながら) さ〜てと、ジョージの出番だ。困った時だけ神様に頼よるってのもなんだが、まあ頼むぜ。 |
■ジョージ To:ヴァーン |
わかりました。では………。 (神よ……偉大なるラーダ……真実に向かう者にその奇跡、顕わしたまえ!) ラー……ゴホン!! |
キュア・ウーンズの発動判定は成功、アルベルトのダメージが7点回復した。
■アルベルト |
う………うう……… |
■アリル To:アルベルト |
………もう終わったわ。今は休んでいて………。 |
■パオル |
こっちはこれでいいな・・。 |
皆は、注意をレイチェルの方に移した。
■ヴァーン toレイチェル |
(アルベルトの様子を見届けてから、) さてと、一息ついたところで、お嬢さん。これからどうするつもりだい? ディオン公もすべてをみとめたし、一応7年前の真相は明らかになったよな。 (そこでちょっと言い淀むが、一気に、) ……その……心残りは、まだ何かあるのかい? その身体がお嬢さんのものじゃねぇことは、わかってるはずだ。厳しいようだが、やっぱり借りてるもんはちゃんと返さねぇとな。 |
■ドリス |
……!!(ヴァーンの言葉にハッと顔を上げる) |
ドリスは、聞きたくない言葉を聞いてしまったという表情で、ヴァーンを見ている。
■レイチェル To:ヴァーン |
えぇ………もう………大丈夫ですわ……… |
レイチェルはこくりと頷いた。あまり悲壮なものは感じない。
既にそのつもりだったようだ。
■アーギー(心の声) |
そうか・・・ ・・・ひょっとしたらレイチェルさん・・自分を思い出してから、その覚悟を決められなくて、ずっと震えてた、ってことなのかな・・・・・・・。 (大きく一息つく) ・・・・・・お別れ、か・・・。 ・・・・・・・・?ちょっと待てよ・・・・・・・・・。 |
■アーギー To:ディオン |
(小首を傾げたあと、ディオンの方を向いて) ・・・ディオン・・・一つきいていいかな・・・・。 7年前に盗賊にレイチェルさんを襲わせた、とさっきお前はそう言っていた・・・。 ・・・ならば7年前、その銀髪の「本物」のレイチェルさんをその後どうしたのかとかは、お前はその盗賊達の報告とかで当然知っていると思うんだが・・。出来れば詳しく教えてもらえるか・・・? 殺してそのまま放置したのか、あるいはどこかに運んで埋めたのか・・ ・・・レイチェルさんの話を聞く限り・・・「仕留め損ねて逃がしてしまった」ことだけはどうしても考えられ無いから、どうしても聞いておきたいんだが・・・。 |
■ディオン To:アーギー |
死体かね。私は「殺してもいいからジャムを取り返してこい」と命じただけだからな、ジャムしか確認していないぞ。 人目に付かない所に捨てたとは言っていたが、細かいことは知らん。 |
■アーギー |
そうか・・・・・・・・・・。 (少しうなだれて) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか・・・・・・。 ・・・・・・せめて、レイチェルさんの供養が出来ればと思ったけど・・・・・・ ・・・・・・・・・くそっ・・・・・・・・・! |
■ジョージ To:おおる |
ところで……、その場合は我々の報酬の残りはどうなるのでしょうか? それどころか、前金も元を辿ればその商人の娘さんの物だということになりますが………。 |
■レイチェル To:ジョージ |
………あ……… |
■クリス To:ジョージ |
ああ………心配しないでください。僕が払いましょう。アングラード家の問題ですから。 |
■レイチェル To:クリス |
………ごめんなさいね………クリス……… |
レイチェルは、もはや自力で身動きすることすらできないようだ。
ソファに深く身を預け、今にも眠り込んでしまいそうな目で、唇だけが動いている。
■アーギー To:レイチェル |
!・・・・・レイチェルさんっ・・・・! |
アーギーは、レイチェルの様子に驚き、駆け寄った。
■レイチェル |
………ふぅ……… |
ゆっくりと、肺から空気を追い出すように息を吐き、もう一度息を吸い込む。
■レイチェル To:ALL |
………この一週間………楽しかったですわ………。もうなにも………思い残すことは………ありません……… |
■ドリス To:レイチェル |
うぐっ…うっっ(涙で言葉にならない) |
■アーギー To:レイチェル |
レイチェルさん・・・・! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 (考え込むような表情をした後、レイチェルの方を見つめて) レイチェルさんだけじゃないよ・・。 ・・・・・オレも・・・・・・いや・・・・ (全員の方を見渡して)みんな・・・・この1週間、とても楽しかったですよ・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・! |
あとは言葉にならず、既にアーギーの目には涙があふれている。
■レイチェル To:アーギー |
………なんだか………よく………きこえ…ません………………でも………本当は…思いのこ……… |
………そして、そのままレイチェルは意識を失った。
応接室 |
■レイチェル |
……… |
ソファの上で、レイチェルは規則正しい寝息を立てている。
■アーギー |
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 |
■ジョージ To:レイチェル |
(偉大なるラーダよ……その英知、真実の光を以て向かうべき道を照らし出し、この汚れなき魂を導き賜え……。) |
■ヴァーン To:レイチェル |
お嬢さん……。 (と、力なく呟いて、目を背ける。) |
■パオル To:レイチェル |
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 (本当に・・、ボクはボクの役目を果たしたの?ボクに出来る事はココまでなの?) |
■ドリス To:レイチェル、アーギー |
レ、レイチェルちゃんっ……ううっ。 ううっ。これが終わったら……、事件の真相を明らかにしたら……あたし、レイチェルちゃんを幸せに……って…思っ…ひっく…。 (アーギーに向かい) ねぇアーギー様……レイチェルちゃん幸せに逝けたよね。ねぇ…満足だったよね。う、うわあああああっ!!! (アーギーの胸に顔を埋める) |
■アーギー To:ドリス |
!・・(いきなり泣きつかれ、一瞬驚く) ・・・・・・・・・・・・ (泣きそうになるのをこらえる表情をしながら) ・・・・・・・・ドリス・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (左手をドリスの頭に軽くポンと置く) ・・・・・・・泣くなよ・・・・・・ ・・・・・・・・・そんなに泣いてたら・・・・・オレまで・・・・・・・ ・・・・・・・・・・オレまで・・・・・・泣いて・・・・・・・ |
そこまで言ったところで、アーギー自身も、自分のマントで涙を拭った。
■アーギー(心の声) |
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・こんな時・・・どんな声をかけてやればいいんだろう・・・。 ・・・・・何も声をかけないほうが・・・・いいんだろうか・・・・・・? |
応接室 |
■パオル To:ヴァーン&ALL |
すみません、ヴァーンさん。その箱を貸して下さい。 |
■ヴァーン To:パオル |
あ、ああ。いまさら、こんなもんどうするんだ? 多分腐ってるぜ。 |
レイチェルが、ワイン小屋の床から取り出した箱だ。
パオルが箱を開けると、小さな瓶が出てきた。その中には、なにやら干涸らびた黒い固まりが入っている………。
■パオル To:ディオン |
ふむ・・・、これがその問題のジャムか・・・。 (すぐに箱の蓋を閉じる) ところでディオン公、七年前に貴方が前領主の暗殺を計画したのは誰の為にですか? |
■ディオン To:パオル |
誰のため………か。 領民のためだ………少なくとも私はそう思っている。 ………いや………そう思うことで、手を汚す自分に………酔っていたのかもしれんな……… |
■ヴァーン (心の声) |
偽善だな……。 だがよ、俺だって似たようなもんじゃねぇのか。なにも、お嬢さんにあんな厳しいこと言わなくたって良かったのに……ああ、俺って奴は……。 |
■パオル To:ディオン |
なるほど・・、確かに領主が貴方に代わってからはこの街は良くなったと聞いてますよ。 で、その気持ちは今でも変わってませんか? |
■ヴァーン |
この領主様のことは、クリスさんにまかせときゃいいじゃねぇか。貴族様には貴族様のやり方があるだろうさ。 (と、ぼそっと呟く。) |
■パオル To:ディオン |
少なくとも七年前の暗殺に関しては、ボクにも理解できなくもないです。 でも、レイチェルさんを殺す必要があったのですか? この一点が、民の為に事を起こした貴方自身を貶めたのですよ!! その時、たとえ告発されても貴方には大義名分があったでしょうに・・・。 それほどまでに我が身が大事なら、民の為にと言う貴方の言葉は、単なる言い分けにしか過ぎません! そして今度は、口封じにとルーカスさんを殺した・・・。 そうやって我が身の為に人を殺していくたびに、貴方は自分自身を貶めているのですよ。それに気づかないのですか? 死んでいった人に対して、本当に申し訳ないと思うのなら、自分の犯した罪を認め、心を入れ替え民の為に領主としての勤めを果たして下さい!! 少なくとも今後、貴方が民のために尽力を尽くしていけば、死んだオーズ公もあの世で納得してくれると思いますよ・・・。 |
■ディオン To:パオル |
………別に、兄に納得してもらおうとは思わんが………私にも、私なりの誇りというものがあるのでね……… |
■ヴァーン To:ディオン |
誇りってもんがあるなら、アンタの為に死んだ人間に対して弔いの気持ちをちゃんと持っておいて欲しいもんだね。 アンタ、レイチェルお嬢さんの遺体をちゃんと探して供養してやってくれる気があるかい? |
■ディオン To:ヴァーン |
………そうしてやりたいと思わんでもないがね……… |
ディオンの言葉には、暗に「それは不可能だ」という響きを含んでいる。
■ヴァーン To:ディオン & クリス |
(ディオンの言葉に肩をすくめて、) まあそりゃ、探しようがねぇよな……でもさ、ちゃんと供養はしてやってくれよな。 俺が言いたいのは、それだけさ。 |
■ジョージ To:ディオン&クリス |
それでは、墓標だけでもアールブルグに作ってもらえればと思います。 ご本人も帰る場所はここしかないといつもおっしゃっていましたから………。 |
■クリス To:ジョージ |
……… |
ディオンは動かない。しかし、クリスは小さく頷いた。
■パオル To:ディオン |
・・・・・・・・・・ふぅ、やれやれ・・。(左手で頭を掻く)
とりあえずこのジャムはもう必要ないでしょうから後で処分しておきます。 我々も、先ほどの騒動については忘れますよ。 |
■アーギー To:クリス |
・・・・・・・・・・・・・・・・。 オレは・・・単に「忘れて」いい問題じゃない気がする・・・。 (クリスの方を向いて) クリスさん・・・・・。 理由がどうあろうと、誰が許そうと・・・。ディオンが人を殺し、そしてオレ達をも殺しに来たという「真実」だけは、絶対に捻じ曲げることは出来ません・・・。 何か裁きを下さなければならない、とまでは今は言わないけど、そのことだけは・・・。その「真実」からだけは・・・。絶対に逃げないで欲しいんです・・・。 ・・・・わかって、もらえるでしょうか・・・? |
■ディオン To:アーギー |
………君の「真実」とやらが揺るがないことは、君の目を見れば分かるがね………私には私の「真実」があるのだよ……… ……… ………………君の言いたいことは分かっている。事実は事実だ、私は兄を殺し、レイチェルを殺させ、ルーカスも殺させた、紛れもない事実だ。………それを動かそうとは思わんよ……… |
■ドリス To:ディオン |
はあっ……。 もうどうでもいいや。みんなの好きにして……。 罪をあばいて騒ぎ立てたってレイチェルちゃんが帰ってくるわけじゃなし… レイチェルちゃんだって、きっともう気にしてやしないだろうし |
■ジョージ To:おおる |
執政については問題なさそうですし、我々が口を出すべき事ではないですね。 ディオン子爵のおっしゃる「誇り」を信じるしかありません。 |
■ヴァーン To:おおる |
そうだな。それに、 この娘さんを早ぇとこ実家に送りとどけなくちゃならねぇんじゃねぇか?
へたすりゃ、俺たちはかどわかしの罪でお尋ね者だぜ? それに俺は、こんなけったくそわるい町、さっさとおさらばしてぇしよ。 |
■ジョージ To:クリス |
彼女につきましては、責任を持って我々がオランの実家まで送り届けます。 (レイチェルだった人物から首飾りをとる。) それとこれを買い取っていただけますか? 形見の品ですのでアングラード家にお返しした方が良いでしょう………。 買い取っていただいた金額は彼女に渡してください。 |
■クリス To:ジョージ |
ええ、そのようにできれば助かります。 |
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