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第十章「ひとりぼっち」 |
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アングラード邸玄関 |
別館から廊下を通り、ちょうど本館の玄関あたりにさしかかったところで、クリスは足を止め振り返った。
■クリス To:ジョージ |
ところで――― さっき言っていた、聞きたいこと、というのは何ですか? |
■ジョージ To:クリス |
タニアさんからうかがったのですが、オーズ様の時につかえていらした方は、ほとんど入れ替わったとか………。 それでは、以前のレイチェル様をご存知の方は少ないのでしょうか? できればお話を伺いたいので、当時からいらっしゃる使用人の方のお名前を教えていただきたいのですが………。 |
■クリス To:ジョージ |
ええ。タニアは、僕が小さい頃レイチェルのところに遊びに行っていたよしみで、父にわがままを言って残してもらったんですよ。 あと残っているのは―――今、副料理長をしているルーカスだけですね。僕はあまりそういうのはよく分からないんですが、父が彼の料理を気に入ったと言いまして。正直言うと、僕は叔父さんに仕えていた料理長の方が良かったと思うんですけどね。 |
■ジョージ To:クリス |
なるほど、副料理長のルーカスさんですか………。 お忙しくないようでしたら、その方と少しお話しするお時間をいただけないでしょうか? |
■クリス To:ジョージ |
ええ、構いませんよ。ワイン小屋に行く前に立ち寄りますか? ワイン小屋は厨房の裏にあるので、ちょうど通り道になりますけど。 |
■ジョージ To:クリス |
ええ……では、そうさせていただきます。 ………あと……変なことをうかがうようですが……… レイチェル様のことをどう思っていらっしゃいますか? |
■クリス To:ジョージ |
ど、どう思う、と言われても……… |
少し狼狽したよう言葉を濁し、そして少し考え込むクリス。
■クリス To:ジョージ |
………彼女は、明らかにレイチェルの姿をしていない。それは間違いないんです。でも、それ以外は、ちょっとした言葉や、仕草や…記憶も……僕の知っているレイチェルなんです。 |
■ジョージ To:クリス |
………ああ……いや失礼………。質問の仕方が悪かったようですね。 その………レイチェル様をお好きですか?と聞きたかったのですよ。 ここに受け入れられたとしましても、当時とはずいぶん周りの環境も変わられたようですし、レイチェル様と親しかったのはタニアさんとクリス様以外には残っていなさそうでしたので……レイチェル様も居づらいと存じます。 つまりクリス様にはレイチェル様を信じて守っていただきたい。……と、そういう話です。 |
■クリス To:ジョージ |
え……… |
予想外のことを聞かれたのか、一瞬間の抜けた声をあげ、そしてクリスは顔を真っ赤にしてうつむいた。
■クリス To:ジョージ |
そ………その………あの………僕は……… ……… ………7年前、父上は全く構ってくれなかったし、領民は館に立ち寄りもしなかったんです。………母上が死んでしまって、僕はいつもひとりぼっちでした。レイチェルだけが、僕のことを本当の弟のようにかわいがってくれたんです………。 ………もしレイチェルが、ひとりぼっちになってしまうのなら………その、なんていうか、恩返しというか……… |
■ジョージ To:クリス |
………失礼なことをお聞きしました。 ……しかし、ありがとうございます。これで我々も安心できます。 我々もレイチェル様がここに残れるよう、できる限りの協力を致しますので、よろしくお願いします。 |
ジョージが、深々と頭を下げる。と、クリスはますます気まずそうに、手を振った。
■クリス To:ジョージ |
あ………あ、いや、ええと………ほら、そ、そうでした。ワイン小屋の鍵を取りに行 かないと。 |
クリスの部屋の前 |
クリスの部屋の到着する。
部屋に入り、クリスはすぐに件の鍵らしきものを持って出てきた。
■クリス To:ジョージ |
お待たせしました。それでは戻りましょうか。 |
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