前 |
ここではシュウが衛視にまぎれて大活躍した。
まずは閉まっている玄関扉の鍵開け。
シュウにかかれば、こんなものは閉まってるうちに入らない。
1階キッチンの倉庫に、何か重いものを動かしたような跡を見つけた。
跡を辿って、地下倉庫への入り口を発見。しかし、上にはカモフラージュの重しが乗せられている。
シュウの力でも、なんとか重しを退けることに成功した。全身汗だくだ。
入り口の扉を開けると、中はまっくら。衛視がランプを差し出す。
倉庫の中にはロドン=ライラーが縄で縛られてうずくまっていた。
まだ子供といってもいい、若いドワーフだ。監禁されて3日と少し。多少消耗してはいるが、まだ元気のようす。助けに来たシュウを見て、彼はとびつくようにこう訴えた。
■カーラン邸地下倉庫 |
☆From:ロドン To:シュウ |
カーランさんは危険だ。彼は暗黒神の加護を受けている。 ・・・でも何か違う。ほかのファラリス信者のように無秩序を求めていな い。昨日もここにきてすまないとあやまっていた。 多分彼は死ぬ気なんだろう。僕には判る。 何か、理由があるに違いない・・・お願いだ、彼を止めて! |
シュウがもう事件は終わったことを教えてあげると、ロドンは安心したように微笑んだ。
■カーラン邸地下倉庫 |
☆From:ロドン To:シュウ |
そうか、カーランさんは無事なのか… よかった。 |
2階の書斎では、カーランの父親が残した 20 年前の手記を見つけた。 20 年前の事件の真相が克明に書かれている。手記自体はもう古びて色褪せているが、真新しいしおりが挟んであった。何度も何度もカーランは読み返していたのだろう。
書斎の机の上には、カーランが残した手記が残されていた。
バーレルンたちの犯罪の数々、20年前のカーランの父の死の真相、これを一年前母親が亡くなってかたみわけをしていた際に初めて知ったこと、ロドンの監禁場所、ロドンの無実など、今回の事件の全貌がかかれている。奇麗な筆跡だ。
戻ってきたシュウはこれをみんなに報告した。
事情聴取に行ったバーレルンは、とうとうそのまま帰って来ることはなかった。 バーレルン達の犯罪を、カーランとは別に追っていた王宮の騎士達がいた。タイミングを計っていた彼らに連行されそのまま逮捕とあいなった、と後の噂に聞いた。
カヴァレスとシュウの入れ知恵のおかげで、バーレルンを連行した衛視ガリオは彼ら騎士の覚えもめでたく、出世の糸口を掴んだようだ。
そんなことはまだ知らない冒険者たちは、依頼人が戻らないので一旦銀の網亭に戻ることとした。
そこへ、学院からの使者が到着。
「学院の綱紀と不正を正した諸君に感謝する」オランの賢者の学院知識の塔の長「知らぬことなき」クロードロットの署名のある書き付けと共に、金 3000 ガメルが冒険者に届けられた。
これにて一件落着。
そうそう、カーランはどうなったかというと…
彼は極刑は免れた。普段の勤務態度のよさとシュウが見つけた手記の内容を考慮されて、情状酌量されるらしい。目的が仇討ちということで、裁く騎士たちの同情票も買っているようだ。
それと、ファラリスの信仰からは抜けられたらしい。いや、ファラリスから見放されたと言った方がいいのかもしれない。幸いなことに。今はファリス神殿にいるとの噂だから。
ひょっとしたらそのうち、また衛視隊長として活躍する機会が与えられるかもしれない。
冒険者が彼の元を訪れて、昔話に花を咲かせることができるのも、遠い先のことではないだろう。
前 |