冒険者は三たび賢者の学院の前に立った。 玄関前にはここを訪れた人や観光客などが何人かたむろしていたが、疾走してきた冒険者の勢いに押されてわらわらと道をあけていく。
玄関ではまたもや記帳を強要する受付と一悶着起きたが、
■賢者の学院 |
☆From:シュウ To:受付の人 |
たった今ジャックさん殺人犯がこの中に入っていったんだよ! すぐに捕まえなきゃ第三の被害者がでちゃうんだっ! お願いっ!悪いコトなんかしないから通してよぉっ!!! |
一着でゴールしたシュウのただならぬようすにそのまま通過する許可を出した。その代わり、階段を駆け上がる後ろを受付けにいた何人かがついてくる。
冒険者は真っ直ぐバーレルンの部屋を目指す。カーランが目指すところといったらそこしかない。階段を駆け上がり、廊下を走り、角を曲がる。
いた!カーランがいた!!まさにバーレルンの部屋の扉をノックしようとしている!
■賢者の学院 |
☆From:シュウ To:カーラン |
カっカーランさんっ!ちょっとまったぁぁぁーーーーっ! |
カーランの行動が、ノックをしようとする姿勢のまま停止した。駆け寄るシュウを認めて、優しく微笑む。
■バーレルン研究室前 |
☆From:カーラン To:シュウ |
…? 君は…確かシュウだったね |
■賢者の学院 |
☆From:シュウ To:カーラン |
(はぁはぁと息をしながら) カ、カーランさん、ちょっと、貴方に、聞きたい、コトが、あるんだけど、 聞いても、いいですか? |
アフルとセリスとジョンがようやく追いついた。全員肩で息をしている。
■バーレルン研究室前 |
☆From:カーラン To:シュウ |
ああ…何だい? |
カーランは、全員を見渡す。ちらりと眉を顰ませたが、あくまでもシュウに対する態度は優しいものだ。が…
■賢者の学院 |
☆From:シュウ To:カーラン |
あの、レオン=レンテルリンクさんって知っていますか? 貴方のお父さんではないのですか? ‥‥不幸にも、悪いヒトに殺されちゃった勇敢な騎士様だって聞いているのですが‥‥ |
その名前を聞いたとたん、カーランの表情が一変した。何か熱いものを飲み込むような、驚愕と、悲しみと、憎悪に引きつった顔をしている。
■バーレルン研究室前 |
☆From:カーラン To:シュウ |
… いかにも。レオン=レンテルリンクは私の父だ。 お前達は何をしにここへ来た。私の邪魔をするつもりか? |
カヴァレスとユリも追いついていた。
■バーレルン研究室前 |
☆From:ユリ To:メンバー&カーラン |
はぁ・・はぁ・・・・・みなさん、速すぎますよぉ・・・・ あ、カーランさ・・・・? (剣を持っているのを確認して) ・・・そんな・・・・信じたくなかったのに・・・・・・・ |
仇は取らせてあげたいような気はする。しかし…
■バーレルン研究室前 |
☆From:アフル To:カーラン |
ええ、止めに来ました。 いまさらお父さんの仇を討ったところでなんになるんです? それより、バーレルンさん達の罪を立証する方がお父さんの意思を継ぐ事になるん じゃないですか? |
■バーレルン研究室前 |
☆From:カーラン To:アフル |
罪は立証されている。が、断罪する手がない。 彼らの顧客にはかなりの地位のものもいるのだ。 裁きの御手をさえぎるほどのな… だが、昨日君たちの仲間が言ったとおり、隠された真実は明らかにされ伝えられるべきだ。 たとえ、ある程度の犠牲を払う事になるとしても。 そして、父の無念を晴らすためにも… |
■バーレルン研究室前 |
☆From:アフル To:カーラン |
う…、で、でも、お父さんの仇って言ってるけど、それは単なる自己満足じゃないか。 それじゃあ、お父さんを殺した3人と何も変わらないよ。 それでもまだ仇を取るって言うの? |
アフルの言葉から丁寧語が消えて年相応の言葉遣いになった。彼の心は必死にカーランを止めようとしている。しかし身体は自然と、精霊を呼び出す準備を始めている。
■バーレルン研究室前 |
☆From:カーラン To:アフル |
そうだ。父のために、私が出来ることはそれしかない。 |
■バーレルン研究室前 |
☆From:シュウ To:カーラン |
にゅにゅぅ?お父さんの為に殺すの?悪いヒトを捕まえれなかったから?? ‥‥‥ 「お客」にどんなお偉いサンがいるかしらないけどさ、 このままバーレルンのおっちゃんまで殺したら‥‥ そしたら殺された三人は「可哀相な被害者」でしかないよ? 悪いヒトを犠牲者‥‥事情を知らないヒトから見たら良いヒトにしちゃってもいいの? それがお父さんの為なの? ‥‥‥なんか変なの‥‥‥ |
■バーレルン研究室前 |
☆From:カーラン To:シュウ |
他人がどう思おうと関係ない。 私は父を殺した相手に復讐できればそれでいい。 その後のことなど、何故気にする必要があるというのだ。 その頃は私は既に… |
そう言って、カーランは冷たく笑う。
「権威」嫌いのカヴァレスも、ここはカーランに言いたいことがある。
■バーレルン研究室前 |
☆From:カヴァレス To:カーラン |
クク,ご立派なモンさぁ,流石は隊長殿だぜぇ。 そのご立派な「正義」ってぇ奴と「ある程度の犠牲」ってぇ奴をあの世で親父に聞かせてやりな。 親父もドジなら・・・クックック,息子も情けねぇ野郎だったたぁなぁ。 所詮はてめぇの無能さを隠すためだけの行動ときちゃぁ救えねぇぜぇ? 大層な大義名分も,結局は「地位」とやらに屈服した負け犬の遠吠えたぁ,笑えねぇぜぇ。 隊長殿の正義とやらじゃぁその「地位」とやらに抗う術を探すより「関係無ぇ容疑者」が大変な目にあったほうが良いとはよぉ。 ロドンとやらの災難も「ある程度の犠牲」で,結局やってる事ぁ私怨の復讐と来りゃぁ・・・いやぁ,ご立派よぉ。 手前ぇの殺戮はただのエゴだぜぇ。怨恨の輪廻を呼ぶだけのなぁ・・・。 さぁ,とっとと奴を殺って次の私怨を作ってきてくれやぁ,何の解決にもならねぇ殺戮をしてなぁ。クックックックック・・・ |
結局、一体ロドンはどうしたんだ?まさか彼も…?
しかし、カーランはそれには答えない。
■バーレルン研究室前 |
☆From:カーラン To:アフル&カヴァレス |
では、そうさせてもらおう… |
そう一言残して、バーレルンの部屋の中に入った。中では、扉を通して聞こえてきた外の話に驚愕して呆然としているバーレルンがいた。
カーランは、剣を目の前に掲げ名乗りを上げる。
■バーレルン研究室 |
☆From:カーラン To:バーレルン |
レオン=レンテルリンクが子、カーラン=レンテルリンク。 貴様の命をいただきに参った! |
バーレルンは、かたわらのメイジスタッフにすがりつくように立った。
■バーレルン研究室 |
☆From:バーレルン To:カーラン |
お前が…あの時の騎士の子供か。 道理で何処かで会ったことがあると思ったら…。 わしも思い出したぞ。お前は父親にそっくりだ。 |
しかし、恐怖で硬直しているのか自力で逃げることはできない。バーレルンはその場に立ち尽くす。カーランはバーレルンの言葉には応えず、そばまで歩き肩に触れ呪文の詠唱を始めた。
■バーレルン研究室 |
☆From:カーラン To:ファラリス |
神聖なるファラリスの御名において… |
その詠唱をさえぎるように、シュウが叫ぶ。
■バーレルン研究室前 |
☆From:シュウ To:カーラン |
なんか、まだあたし納得いかないから邪魔するもんねっ! |
カーランの復讐を阻止するべく、冒険者は立ち上がった!
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