信念

(1998/05/22 更新)


朝が来た。

簡易牢に泊った3人の朝は、衛視の猫なで声から始まった。

■詰め所
☆From:衛視  To:アフル、カナル、クロス

おいっ、あんた達、いや、貴方がた。
お出迎えの方が来ていらっしゃいますよ。

いや〜、貴方達も人が悪いなぁ、そうと言ってくれれば夕べのうちに釈放したのに。 シャレゼール家の騎士様が貴方達の保証人として身元引き受けにいらしてますよ!

おや、ローンドファルか?と思いながら牢から出た冒険者達の前には、見知らぬ騎士が立っていた。 ローンドファルよりは幾分若い、精悍な印象の騎士だ。

■詰め所
☆From:騎士  To:アフル、カナル、クロス
やあ、夕べは大変だったな。
私が君たちの身柄を保証しよう。私と一緒に来てくれるね?まぁ、来てもらう以外の選択肢はないだろうが

騎士はにこやかだがやや高圧的だ。衛視詰め所の外には騎士のものと思われる馬車が用意されている。
アフルはまずこの騎士の素性を怪しんだ。

■詰め所
☆From:アフル  To:カナル、クロス
(騎士に聞こえないぐらいの声で)

ローンドファルの知り合いか?
でも、だったらまずローンドファルの名前を出すはずだよな。
それに、なんで俺達がここに捕まってるって事を知ってるんだ?
セリスたちがローンドファルに知らせてくれたのか?

■詰め所
☆From:クロス  To:アフル、カナル
(同じくひそひそ声で)
かもしれませんね。
一応確かめてみましょうよ。

■詰め所
☆From:アフル  To:クロス、カナル
(ひそひそ声で)
でも、もしローンドファルの知り合いじゃなかったらどうするんだ?
弟側の騎士で、俺達から依頼者の名前を聞き出そうとしてるのかもしれないぜ。
そうだとすると、ローンドファルの名前を出すのはまずいんじゃないのか?

内緒話の間中、見知らぬ騎士は最初の笑顔のまま立っている。アフルは意を決して騎士に話し掛けた。

■詰め所
☆From:アフル  To:騎士
まず、身柄を保証してくれた事には礼を言うけど、いったいあんたはどこの誰なんだ?
それに、なんで俺達の事を知ってんだ?
俺達がここに捕まってるって事は仲間たちしか知らないはずなんだけどなぁ。
あと、俺達をどこに連れて行こうっていうんだよ?

アフルは、前に依頼主の騎士に対してぞんざいな言葉使いをしてにらまれた事があったが、やはりここでも敬語を使わなかった。どうやら、これは彼のポリシーであるようだ。
見知らぬ騎士は、それを失礼とは思わなかったようだが、アフルを完全に子供扱いした。にこやかに笑いながらこう答える。

■詰め所
☆From:騎士  To:アフル
質問の多い少年だね。
私については、シャレゼール家の将来を憂える騎士団だと言えばわかるだろう?君たちの事は良く知っているよ。キルティング君のご母堂からうかがったんだ。君たちにはぜひ私の仲間たちに会って欲しいんだよ。それで迎えに来たのだ

この場にはキルティング家に話を聞きに行ったセリスもシーアンもいないため、騎士の話の真偽はわからなかった。しかし、アフルの質問に答えているようで肝心なところはボカした回答で、アフルたちの警戒心を煽ってしまったようだ。

■詰め所
☆From:アフル  To:騎士
それじゃあ、もうすぐ仲間たちが迎えに来てくれるはずだから、ちょっと、待ってくれないか?
そっちの仲間に会うんだったらこっちも全員いた方が都合がいいだろうし。

アフルたちはこの場で話を引き伸ばして、多分迎えに来てくれるはずのマーズとセリスとシーアンを待つことにした。この見知らぬ騎士も、冒険者たちを全員連れて行けるならばそれにこした事はないと同意した。

一方。詰め所で3人が見知らぬ騎士の訪問を受けている頃。
宿で待機していた3人の朝は、銀の網亭の主人のだみ声で始まった。

■銀の網亭
☆From:おやじ  To:セリス、マーズ、シーアン
おいっ、あんた達。お客だよ。ほら、例の依頼人が下に来てるぞ。
なんだか眉間にしわを寄せて難しい顔をしとるんだが、あんた達、何かしでかしたのか?

■銀の網亭
☆From:マーズ  To:主人
いやだなぁ、何もしてませんよぉ。
だって、あの人はいつも難しい顔してるじゃないですかぁ。

■銀の網亭
☆From:シーアン  To:マーズ
(小声で)
”何もしてない”って、おまえ(^^;
結構神経ずぶてーのな(苦笑)

マーズに比べたら、誰だって難しい顔をしているに違いない。
3人が下に降りて行くと、階下にはローンドファルがいつもより2割増し難しい顔で腕組して立っていた。

■銀の網亭
☆From:ローンドファル  To:セリス、マーズ、シーアン
おはよう、諸君。調査の方はいかがかね?
実は、わしもじっとしておられずそれとなくキルティングの仲間に聞いたところ、キルティングの行き付けの酒場というのがあることがわかったのだ。もし、手がかりが無いようならそこへ行ってみてはどうかと思ったのだが...

3人だけか?他の者達はどうした?

■銀の網亭
☆From:マーズ  To:ローンドファル
えっとですねぇ。他の3人はあらぬ疑いをかけられてしまって、今捕まっているんですよぉ。
今から迎えに行こうと思ってるんですけど、一緒に来ますかぁ?

■銀の網亭
☆From:ローンドファル  To:マーズ
むむ。どういう疑いなのだ、いったい?

■酒場にて
☆From:セリス  To:ローンドファル
それが・・・私の仲間がラーベナルト氏殺害容疑で捕まってしまったのです。
私はこれから詰め所に行って仲間を解放してくれる様に頼むつもりです。
(シーアン、マーズの方に向き直って)
もし、私が帰れなかったら帰ってきた皆さんと頑張って下さい。
これでお別れになったとしても私は皆さんの事は忘れませんから。

■銀の網亭
☆From:シーアン  To:セリス
おいおい、単独行動はなしだぜ(にやっ)。
詰め所に行くのは俺も賛成だし、マーズだってそうだろう。
キルティングの行けつけの酒場ってのは、みんなが揃ってから行っても遅くないだろ?
どのみち、俺ら3人だけじゃ戦力的に見たって何も出来やしねーんだから。
その・・・なんだ。自分一人がどうにかしようってにはやめような。俺達は仲間なんだからさ。(てれ笑い)

シーアンの言葉は、かたくななセリスを溶かすことができるだろうか?

■銀の網亭
☆From:ローンドファル  To:セリス
なんと、ラーベナルト殺害とな!
まさか本当に諸君等が手を下した訳ではないのだろうな?
ううむ、それは由々しき事態。わしも詰め所へ行こうぞ

己の身に代えても仲間は守るというセリスの心にローンドファルは打たれ、自分の乗ってきた馬車を使って一刻も早く他の仲間の元へ行こうと申し出た。

一台の馬車が砂煙を蹴立てて詰め所の前に到着した。その馬車には、4人が乗っていた。セリス、マーズ、シーアン、ローンドファルである。
詰め所の前では、アフル、クロス、カナルの3人と見知らぬ騎士が対峙していた。ローンドファルはその騎士に目を留めると真っ先に馬車から飛び降りた。

■詰め所
☆From:ローンドファル  To:見知らぬ騎士
お前はエラスト!なぜここに居るのだ!

■詰め所
☆From:シーアン To:ローンドファル
(ほとんど独り言)
なんだ、なんだ。知り合いか?
話がみえねーぞ(^^;

■詰め所
☆From:カナル  To:見知らぬ騎士
どうやら仲間が来たようだな。
おや、どうしました? 俺達のことは良く知ってるんじゃありませんでしたか?

エラストと呼ばれた騎士の方はローンドファルが付いてくるとは思わなかったので驚いた様子だが、すぐに冷静を装った。しかし、先程までの笑顔は消えて、無言でローンドファルと向き合っている。

■詰め所
☆From:カナル  To:ローンドファル
お知り合いですか?
どうやら、こちらの方は『シャレゼール家の将来を憂える騎士団』の一員らしいですね。
俺達を仲間に会わせたいそうですよ。ご一緒にどうです?

■詰め所
☆From:シーアン To:カナル
(やはりほとんど独り言)
・・・話が見えたぜ。
そーか、そーか、そういう事かぁ。

本当に話が見えたのかはいささか怪しい所である。 ざわめきが静まるのを待って、ローンドファルとエラストの会話が始まった。

■詰め所
☆From:ローンドファル  To:エラスト
エラストよ、自分が何をしようとしているのか分かっているのか?

■詰め所
☆From:エラスト  To:ローンドファル
勿論、わかっていますとも。
われわれのしようとしている事は、いわば革命です。保守的な上、年のせいで感傷的になっておられるご老人達には理解できないかもしれませんが、われわれは理性と現実にしたがってこれを行うのです。

カナルはこの隙に、つつつぅとセリス達の方へ移動した。

■詰め所
☆From:カナル  To:仲間
まさか、本当にローンドファルを連れてくるとは思わなかったな。
(武器を受け取ります)

■詰め所
☆From:シーアン To:カナル
(武器を手渡しながら)
待たせたな。
手後れになってないといいんだが・・・。
今朝がた銀の網亭にローンドファルがやってきたんだ。 なんでもキルティングの立ちよりそうな酒場を思い出したから、これから一緒に行かないか?と言う話だったが・・・。
昨晩の事を話して、先にこっちへ連れてきてもらったんだ。

シーアンが事情を説明している間にも、騎士達の会話は続いている。

■詰め所
☆From:ローンドファル  To:エラスト
(やれやれ、という風に首を振りながら)
そのために、無関係な者達の血を流す事になってもか?

■詰め所
☆From:エラスト  To:ローンドファル
(ローンドファルから目をそらして、じっと足元を見る)
…革命に血はつきもの。今は理解されずとも、きっといつかは……

エラストは、ローンドファルの言葉に耐え難いものがあるようす。ぐっと口を結んで何かに耐えているような表情をしている。ローンドファルも痛々しいという表情でエラストを見つめている。

■詰め所
☆From:カナル  To:エラスト
『理性と現実に従った革命』? それならば、どの辺りに理性と現実があるのか、話して
欲しいですね。その言葉だけでは、何に拠って信じればいいのか分かりませんから。
自分のすることに信念があるのなら、我々に説明して下さい。

■詰め所
☆From:エラスト  To:カナル
勿論、信念はある。
私達は真剣にシャレゼール家の将来を考えぬいた末、こうするしかないという結論に達したのだ。我々の推すあの方こそが、伝統と格式を備える我がシャレゼール家次期当主として真に相応しい品格と能力を備えたお方。あの方が当主となられなければ、我がシャレゼール家は風前の灯火。騎士は仕える家を守らねばならぬ。たとえ命を懸けてもだ。それが我らが望み!我らの信念だ!

冒険者はほぼ、事の次第を了解した。
シャレゼール家のお家騒動、それは兄と弟の後継者争いだ。察するに、このエラストという男は弟側に組する騎士で、依頼主のローンドファルは彼らの老父に近い人間なのだろう。順当に行けば兄が次期当主になるのだろうが、エラストの言を信じれば弟の方が当主として相応しい人物であるらしい。

■詰め所
☆From:カナル  To:エラスト
自分の命を懸けることはあなた達の勝手だろう。しかし、力の無い者を拐かし、
傷つけることが騎士のする事か? それがあなたの信念なのか?
それは、騎士以前に人としての信念に背かないのか?
本当に、あなたが信じる人がシャレーゼル家の当主にふさわしいというのなら、
こんな事を望むような人物なのか?
どうなんだ!

カナルがエラストに詰め寄る。信念にはより大きな信念を持ってそれを打ち砕く、という作戦か?それともこれがカナルの本意か?

■詰め所
☆From:アフル  To:自分
(心の中で)
わからないでもないけどなぁ。
そのくらいの事でそこまで思い込めるものなのか?
騎士なんてなるもんじゃないな。

アフルにはエラストに賛成したい気持ちもあった。もし、本当に兄がぼんくらならば。でも正直に口に出して言うのはカナルとエラストの手前はばかられた。

■詰め所
☆From:マーズ  To:エラスト
う〜ん、僕には難しい話はよくわかりませんねぇ。
でも、任務を遂行することが冒険者の使命ですしぃ。
少なくとも、悪事に手を貸しているわけではありませんから、手を引くことはないですねぇ。
我々の依頼主はローンドファルさんであって、あなたではありませんしねぇ。

意外と現実主義者なマーズである。とりあえず、依頼主のローンドファルに敵対するならば相容れぬ存在である、という見解らしい。

■詰め所
☆From:エラスト  To:カナル
ちょっと待ってくれ。それは誤解だ。私達は彼らを誘拐したのではない。
キルティングは重要な使命を帯びていながら、それを遂行せずに逃げたのだ。女などにうつつをぬかしおって、少し上の覚えがめでたいからといって、許される事ではないぞ!
我が仕えるお方はそれは厳しいお方だ。そういったいいかげんな行為を許される方ではない。そういった方こそ、今あの家に必要なのだ!

■詰め所
☆From:ローンドファル  To:エラスト
逃げたには、それなりの理由があってのこと。
そなたには判らんだろうがな、エラストよ

ローンドファルはため息まじりにそう言って話を打ち切った。

■詰め所
☆From:ローンドファル  To:パーティの皆さん
さて諸君、ここでこうしていても始まらん。
とにかく、あの2人を見つけんことには。

しかし、冒険者たちはエラストに何かの手応えを感じていた。この男をもう一押ししてみればなにか得られるのではないか?そういった冒険者の勘がローンドファルを押し止めた。

■詰め所
☆From:カナル  To:エラスト
私達が、なぜ一晩こんなところにいれられる羽目になったかご存じなのでしょう。
それなら、この件も誤解だと? 少なくとも、人が一人死んでるのですよ?

■詰め所
☆From:エラスト  To:カナル
昨夜のことについては…(ちょっと口ごもる) すでに私達の手を離れたところで起きた事件なのだ。 不幸な事故であった、と私は思う。 おそらく、殺された男は素直に協力しなかったのであろうな。 彼らも必死なのだ。

■詰め所
☆From:シーアン To:エラスト
(ぴくり)
”手を離れた”?、”不幸な事故”?
何ぬかすんだこの男。他人事みたいな事言いやがって。
(怒りで、顔がひきつる)

■詰め所
☆From:カナル  To:エラスト
彼ら……、ね。
つまり、もう自分に責はないと? 仕事を依頼した者が何をしようとあなたには関係ないことだ
とでも言うつもりですか。騎士様というのは素晴らしい精神の持ち主ですね。

エラストの顔にすこし喋りすぎたかと後悔の色が走った。しかし、カナルの最後の一言はエラストはともかく、ローンドファルにとっても不愉快だったようだ。ムッとして2人の騎士は押し黙る。
そこにアフルが畳みかけた。

■詰め所
☆From:アフル  To:エラスト
まだ誘拐していなくても、盗賊ギルドに依頼してアンナを捕まえようとしたのはあんたたちなんだろ。
キルティングに与えた使命ってのもアンナを捕まえろって言うのじゃないのか?
それで、アンナとキルティングが恋人同士なら逃げるのも当然じゃないか。

■詰め所
☆From:エラスト  To:アフル
(ちょっと焦って)そんな事は私達は知らん。
キルティングに与えられた使命はそんなものではない。 もっと重要な…

■詰め所
☆From:ローンドファル  To:エラスト
盗賊ギルドだと!
エラスト、貴様、盗賊ギルドなどを使って何をしようとしていたのだ!それでも貴様、誉れあるシャレゼール家の騎士か!恥を知れ!

最後まで言わせず、ローンドファルの雷のような怒鳴り声が割って入った。 怒り心頭で今にも血管がキレそうだ。が、エラストも怯まずに叫び返す。

■詰め所
☆From:エラスト  To:ローンドファル
そのご決断をされたのはオルダス様だ!
ずいぶん長い間悩まれた上でのご決断、それもこれもお家のため。

■詰め所
☆From:アフル  To:エラスト
それじゃあ、キルティングに与えた指令って何なんだよ?
やましい事がないんだったら、言えるはずだろ。
それに、自分の主君が決断した事なら何でも従うのか?
自分の仕える家のためなら何をやっても許されるとでも思っているのか?

■詰め所
☆From:エラスト  To:アフル
どうやら君たちは私達の信念に賛同してくれる者ではないようだ。そんな者達に大事な使命の内容を明かす訳にはいかない。
私達は遊びでやっているのではない。
私は自分の定めた主のためならば、その主が決めたことならば喜んで従うだろう。

エラストはこれ以上話しても無駄であると理解したようだ。話を打ち切って馬車に向かう。 ローンドファルは眉間に深く皺を刻んで、苦々しげにそれを見送っている。

■詰め所
☆From:シーアン To:エラスト
あんた、まだまだ色々隠し事してそうだよな。
だいたい、なんでここに現れたんだ?
俺達(っつーかカナル達)をどこへ連れて行こうとしてたんだ?
キルティングかアンナの居場所はもう掴んでるんじゃないのか?
そうじゃなかったらなぁ!、もうこんな話はたくさんだ。
人の命がかかってる時にいつまでもこんな所で、くっちゃべってられっかよ!!

エラストは馬車に向かいかけて、シーアンの言葉に少しためらった。 そして、しばし考えてからゆっくり振り返り、シーアンを正面から睨み付けた。

■詰め所
☆From:エラスト  To:シーアン
私は信念のためには全てを犠牲にする覚悟はできている。
しかし、全ての者を私の信念のために犠牲にするつもりはない。
それは狂信でしかない。そんな事は君たちに言われるまでもなく分かっている。
それでも、譲るわけにいかないことはあるのだ…

アンナと言ったか…その女性を巻き込むことについては私も心苦しくないではない。よかろう、アンナ嬢を保護することを条件に、私の持つ情報を渡そう。

キルティングはオラン郊外のシャレゼール家の荘園にある馬小屋に潜んでいる。おそらく、アンナ嬢も一緒だろう。場所はローンドファル殿がよくご存知だ。

■詰め所
☆From:シーアン To:エラスト
(こくっとうなづく)
 アンナ嬢は俺達が保護すると約束する。
俺はただの戦士だから、騎士の誓いなんざ出来ないが、信じてくれ。

エラストはシーアンに目礼を送った。そして視線をローンドファル騎士に移した。ローンドファルはひとつ肯いてみせた。

■詰め所
☆From:エラスト  To:ローンドファル
…急がれるがよろしいでしょう。この情報は盗賊共も得ておりますので。

■詰め所
☆From:カナル  To:エラスト
……その情報は、どこから?
『彼ら』からの情報ですか?

■詰め所
☆From:エラスト  To:カナル
その逆だ。
私が掴んだ情報を盗賊共に流した。

では失礼、と言ってエラストは馬車に乗って去った。

■詰め所
☆From:シーアン To:ローンドファル、みんな
(ローンドファルと一緒に乗ってきた馬車に飛び乗る)
さぁ、案内してくれ。
(セリスが乗るのに手を貸し)
みんな、急げよ、盗賊どもとの戦闘もありそうだ。
(じっとしていられない様子(^^;)

■詰め所
☆From:アフル  To:シーアン、みんな、ローンドファル
そうだな。
盗賊達に先を越されるわけにはいかないからな。
早く行った方がよさそうだ。

■詰め所
☆From:カナル  To:シーアン
シーアンも、意外と人の扱いが上手いな。
揺さぶりを掛けて、どうにかあいつからアンナたちの情報を得ようと思ったが、
これで情報収集完了だな。
さあ、アンナたちを助けに行くか。

冒険者達は馬車に乗り込んだ。馬車には6人しか乗れなかったし、それでもずいぶん窮屈だった。年かさのローンドファルを中に座らせて、アフルは御者の隣についた。

■馬車内
☆From:カナル  To:ローンドファル
荘園まではどれぐらいです?
……それに、幾つかお聞きしたいこともあります。先ほどのエラスト殿のこと、
そして、彼が言っていたオルダス殿の事など……。
お家のことは語れないと仰られるかもしれませんが、ここまで関わって何も
知らされない というのも納得がいきません。アンナさんを守るために亡く
なったラーベナルト氏のためにも、話してはいただけませんか?

■馬車内
☆From:ローンドファル  To:カナル

オランの街を南へ抜ける。馬車で飛ばせば 30 分ほどだ。

そなたの質問に答えれば恥になる…
しかし、諸君等にはもうある程度はわかっているのだろう?それならば本当のことを知ってもらうのがよいようだ。

我がシャレゼール家の兄弟が相争っておるのは既に聞いたと思う。
兄君は、幼い頃から大事に育てられたためか少し専横な所がおありだ。弟君は、とても賢い方だが情を知らぬ。我が主である父君はすでにご高齢、この争いを止める術を持たず、心を痛めておられる。

騎士のうちでも幾人かはエラストのように兄弟のどちらかにつき争いを助長する始末だ。

このままでは何かが起こるのではないかとご賢察された我が主は、私にそれとなく弟君を監視するようにとご命令を下された。

その矢先、弟方の騎士についていたキルティングが失踪したのだ。しかも、キルティングは姿を消した早朝にオルダス様から直に命を受けたようだ。アンナも弟君の下女としてお側に仕えている。この2人が揃って姿を消したとなれば…
わしは胸騒ぎを覚え、一刻も早く2人を探し出さねばと考えて諸君等に依頼をしたのだ。
しかも、その使命には盗賊ギルドが関わっていると言うではないか…

わしが恐れているのは…
オルダス様が最悪の手段に訴えられる決断をされることだ

■馬車の中で
☆From:セリス  To:独り言
人の欲望はどこまで罪深い物なの・・・?
生きる為に人が傷つくなんて・・・不思議ね。

セリスの自問に答えられるものは、馬車の中には誰ひとりとしていなかった。
セリスに答える資格を持つのは、彼女の仕えるマーファ神のみなのかもしれない。

馬車は、一路南を目指して朝の街を疾走した。



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