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SW-PBM Scenario#158
銀のしおり

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キッチン・バトル

★西の館MAP(別枠表示)


  西の館・キッチン

アールが扉を開けた先は、白い湯気がほのかに漂うキッチンだった。
いくつかの調理台が並び、壁には鍋やおたまなどの調理道具がたくさんぶら下がっている。
調理台の上には、解体中だったと思われる血まみれの肉のかたまりがあった。
■少女 To:ALL
……っはぁ…はぁ………。

入って来た一行の気配に気付き、キッチンの奥からこちらを見ているのは、肩で息をしながら必死の表情で包丁を握りしめたひとりの少女だった。
歳の頃は16ほどだろうか。アールの記憶の中のハンナに良く似た、ふんわりとした金髪以外には目立って特徴の無い、素朴な顔立ちの少女だ。
白いニットセーターの上からエプロンを身に着けている。
その少女を守るようにしながら立っているのは、高さ1.5メートルほどの石人形だった。
今まさに石床に拳をめり込ませた状態から、むっくりと上体を起こしたところであった。ひび割れた床から、カサコソと黒くて光る小さな虫が逃げ出し、アールとヒノキのそばを素早く通り抜けて去って行った。
■ヒノキ To:虫
おっと。……ゴキ、か?
キッチンに出るとは衛生がなってねぇなあ。

■ノール To:少女
あーっ! リナリアだっ!

アールとヒノキの後ろから顔を出したノールが叫ぶ。
■ヒノキ To:ノール&リナリア?
あん? あれがリナリア……?
コラレットの村で見た女とまるっきり違うぞ?

ヒノキにとっての【リナリア】は、村で見たあの姿しか認識がない。
■アリス To:ALL
お姉ちゃんじゃない……あの子が、本当のリナリア?

しかし、リナリアはノールには一瞥もくれない。かわりに、突然苦しげに表情を歪めて、首の後ろに手をかける。
■リナリア To:ALL
…………め…いれ……い……
……敵……。

そうつぶやくと、一瞬にして何の感情も宿していない氷のような表情へと変わっていく。
■アール To:ALL>ノール
誰だって構わないさ。
おい、俺たちは敵じゃないって言ってやってくれよ。

あと、アバランに怒られたのって、首飾り…だったな。

“リナリア”の違いよりもその反応の方が目に付く。
手を持って行った先…首元に注視する。
しかし、首をすっぽりと覆ったセーターの襟に隠れていて見えない……。
■ヒノキ To:ALL
【敵】ねぇ……。私らは別にまだ何もしてないし。
それより、さっき逃げてったあの黒いの……。

あれの事を【敵】と言ってるんじゃないかなぁなどと想像。
■アール To:ヒノキ
どっちにしろ反応を見ないことにはな。
んじゃ、その話を信じてみるとして…

一応刺激しないようにそろそろと部屋を移動。
一歩、二歩…と近づこうとしながら、リナリアの様子を探る。
しかし一歩踏み出したところで、即座にリナリアが反応した。
調理台の上に置いてあったメイジスタッフを手に取り、それを冒険者たちの方へかざすようにしながら身構える。
その動きはとても無感情で、まるで精巧なからくり人形のようだった。
■ノール To:アール>リナリア
ええっと……敵じゃないってしゅちょーするんだよな?

リーナーリーアーっ! おいらのこと忘れちゃったのか?
「暁の七変化亭」でパーティ組んだだろっ!
すぺしゃるわんだふりゃぐららんのノールだよっ!
ここにいるのは、おいらの新しい仲間たちだぞっ!

ぴょんぴょん飛び上がりながら説明。
しかし、リナリアの表情は凍り付いたまま動かない。
■リナリア To:ノール
……敵の……仲間……なら……ノールも敵……

■ノール To:リナリア
へっ???

■ヒノキ To:ALL
ノールが居る、て事は理解できるみたいだな。
自分の意識がまるっきり無い訳じゃないのか。

■ノール To:ヒノキ&ALL
変なの! 昨日よりずっとぼーっとしてるぞ!
どーなってるんだよぅ!

■ヒノキ To:ノール
お前が知らないモンを私が知ってる訳ゃないだろっ!

■アール To:ヒノキ
ちょっとムリしてでも止めたいとこだが…
あーっと、おせっかいは嫌いってのはさっき判ったが言っておくぞ。
あれはストーン・サーバントっていう、御主人様に忠実な人形だ。
この場合は…リナリアに、「やっちまえ」って言われたらぶち壊さないと止まらないからな。

さすがにヒノキの方を振り返って反応を見る余裕はナイ。
■ヒノキ To:アール
つまり、あの女が『やめろ』って言やぁ止まるんだろ。
……正気に戻るのか分かんねぇけど。

■リナリア To:ALL>石人形
……め…いれい……敵……排除……。
(上位古代語)
我を守れ

リナリアが小声でつぶやく。
石人形は重そうな足音を立てて、冒険者たちの方を見据えて身構えた。
■ヒノキ To:アール
まいったな。
下手に暴れたらお互い怪我じゃ済まなくなりそうだし、何よりも騒ぎを聞きつけられるのを避けたい。
……一旦退くのも手か?

■アリス To:ヒノキ
その方がいいかも。
命令が『我を守れ』だったから、下がったら追いかけてこないかも知れないよ?
追いかけてくるなら、扉を出たところで待ち伏せも出来るし。

■アール To:ALL
『守れ』ってことは「こない」ってことだろ。
待ち伏せの意味はないな。
それにアバランのいない今こそ、リナリアのことはカタをつけておきたいし。

■ヒノキ To:アール
リナリアの事、たってなぁ。
ホントにアレが本物なワケ?
なら、アバランが【リナリア】って呼んでたあの女は何になるんだ?

状況に納得できてない上に、なし崩しに戦闘になりかねないこの場の雰囲気にかなりゲンナリしている。
■アール To:ノール
なあ、お前のそのウィップでリナリアを止められるか?
例の首飾りも怪しいんで、取り上げてくれると嬉しいんだが。
俺が先に行ってあの「石の塊」を引き付けるからさ。

■ノール To:アール
兄ちゃんが先に行くのか? んじゃ、おいらは移動を遅らせてから行くね!
ばっちり引きつけておいてくれよっ!

腰のウィップに手をかける。
■ヒノキ To:アール
ま、援護くらいはしてやるから、頑張れ。
それ以上をする気はねぇからな。

結局こうなるのか、と溜息。


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GM:ともまり