銀の網亭 |
銀の網亭の片隅で集った四人の冒険者達。
そこに、おやじが満面の笑みを浮かべてやってきた。
■おやじ To:ALL |
助かった! お前達が揃ってくれて助かる。 今回ばかりは本気で廃業を考えたぜ……。 今日は俺のおごりだ。好きな物を注文してくれ! |
■ザラ To:おやじ&ALL |
冒険者としての登録を終えたばかりなのに、いきなり廃業話を聞かされるとは。 オランの風向きも、外から聞くほどに良くはないということでしょうか? あ、わたしの注文はブラックエールと保存食でお願いします。 |
生真面目な顔をおやじに向ける、赤毛のドワーフ。
彼女の足元には、真新しい背負い袋と一緒に、使い込まれた弓が二つ置かれていた。
■おやじ To:ザラ>ALL |
保存食は何時でも食えるから、今日位は暖かいモノを食いな。 ……苦手というなら仕方ねえけどな。 こいつは俺の勝手だ。ローストビーフ一塊とミートパイ一皿持って来てやるよ。 |
■ザラ To:おやじ |
お気遣いありがとうございます。 ローストビーフとパイですか、そうおっしゃるなら遠慮なく。 あの、同時に保存食もいただくわけにはまいりませんか? |
■おやじ To:ザラ |
そいつ(保存食は)は依頼主に頼んだ方が早いかもな。 今回はスポンサーが結構付いているみたいだし、たらふくくれるんじゃないか。 ……まああれだ、実は今在庫を切らしていてな。 |
■ザラ To:おやじ |
依頼主…あの掲示に名前のあるロバート船長でしょうか? わかりました、では、お目にかかりました時にお願いしてみましょう。 …依頼主…保存食……提供……。 |
生真面目な表情のまま、頷いたザラは、羊皮紙を取り出すとそこに何やら書きつけはじめた。
■ウ―サー To:おやじ |
おう、早速注文が入るたぁゲンがいいじゃあねえかよ、おやじ? ついでにオレ様にもローストビーフと、パンでも……そうだなぁまずは軽く、三塊ずつにしとくぜ! |
おやじとザラのやりとりを見ていた巨躯の青年が、愉しげに哂いながら口を挟んだ。
傍らには背負っていた二振りの大剣とモールが置かれ、身につけているのは重厚な黒いプレート・メイル。
この店では既に熟練となりつつある、子猫憑きの重剣士だ。
■おやじ To:ウ―サー |
おう、お前さんも居たのか。 こりゃあ、今回は安心だな。依頼主とスポンサーにもいい顔が出来らあ。 |
■ウ―サー To:おやじ |
ん? てこたぁ、今回こそハードな荒事アリなのかよ!? 期待していいのかい? とはいえ…… |
ウ―サーは卓に座る顔触れ(いずれも、ウ―サーは一緒の仕事をこなしたことのない面々だった)をちらりと眺めまわしてから、ぐいと特大ジョッキ(というか、小樽に取っ手をつけたようなモノ)に並々と注がれた黒ビールを呷った。
■ウ―サー To:おやじ |
オレ様も、依頼は久方ぶりだからな。 ま、遣れる範囲で頑張らせてもらうとするかね? |
そう言って嗤ったウ―サーは、黒ビールの泡を気にするような仕草で片手を挙げると、おやじにだけ見えるように隠した口元を素早く動かす。
その唇の動きは、「いざって時は任せてもらうぜ?」と、そう無言でおやじに告げていた。
■おやじ To:ウ―サー |
はっはっは、今回の依頼は荒事前提だそうだ。 良かったな、久しぶりに暴れられそうだぜ。 |
■ギン To:おやじ&ALL |
みなさん、よろしくお願いします。 ほな、せっかくやし、パンとサラダとスープをもらおかな。サラダは大皿で。 |
嬉しそうに親指を立ててみせる、銀髪の少女。
■ギン To:おやじ |
あ、あとなんか甘いデザートでも…。 |
デザートという言葉を耳にしたとたん、ザラの視線が、同じ卓につく古強者らしき風体の大男に向けられる。
■ウ―サー To:ギン>おやじ |
んぁ? なんだ如何した? 言っとくが、オレ様は今日は何も持ってきてねぇぞ? そういやぁおやじ、確かパイ生地が仕込んであったと思ったけどよ。ありゃあ甘味用かい? |
■おやじ To:ギン&ウーサー |
おう、うちのがラズベリーパイを焼いていたからそいつを持って来るわ。 |
■ギン To:おやじ |
わああ、楽しみです(○'ー'○)ノ |
さっきから食堂の中に軽くBGMとなって流れていたオカリナらしき笛の音が止んだ。
感動的に巧いというわけではないが、素朴な音色で奏でられたどこか懐かしさを感じさせる異国のメロディに、食事だけとりに来ていた近所の住人からまばらに拍手が上がったりしている。
■ダーニャ To:おやじ、ALL |
あの… |
向こうの壁際にしつらえれられた低い演台から急いでやってきて、3人の冒険者の足元においてあった荷物を引き寄せたのは、まだ背の低い細身の少年だった。
やわらかそうな灰色の髪の毛と、濃いブルーの瞳が印象的だが、それ以外に特筆すべき様相はない。
背負い袋から覗いているねじくれた木の棒は、古代語魔法の行使に必要な発動体の杖だろうか。
駆け出しの吟遊詩人かと思いきや、本業は魔術師なのかもしれない。
■ダーニャ To:おやじ、ALL |
すみません、すぐどかしますから。 |
荷物を置いておいた場所が先輩冒険者の打ち合わせか何かに使われようとしているのだと勘違いしたのだろう。
すごいベテランぽい人も居るので、恐縮してあっちへ行こうとしてる。
■おやじ To:ダーニャ |
おいおい、お前さんも今回の依頼を受けるんだろ? 遠慮してないでこいつらと一緒に座れや。 |
■ダーニャ To:おやじ |
え…あ、それじゃあ、この人たちが? |
一緒に仕事するメンツなんですね、と問う感じに首をかしげ、
■ダーニャ To:ALL |
どうも、はじめまして、ダーニャといいます。三角塔で魔術を学んでいる者です。 実際にパーティーを組んで本格的な仕事に取り組むことは初めてなんですが、補助の魔法は任せてください。 …足は引っ張りませんのでよろしくお願いします。 |
勢い込んで言うと、ぺこり、と音がしそうなほど勢いよくお辞儀をした。
■ギン To:ダーニャ、ALL |
よろしくね。うちはシーフやってる。仲間内ではギンって呼ばれてるかな。 |
銀髪だからね、と笑いながら片目を瞑ってみせる。
■おやじ To:ダーニャ |
ああ、実はそこのごつい兄ちゃん以外の面子は、新顔なんだ。 あんまりかしこまらなくても大丈夫だぜ。 |
ダーニャは、そうなんですか?という感じにまた首をかしげている。
■ウ―サー To:おやじ>ALL |
ってこたぁ、これで全員揃いかい? おっと、自己紹介が遅れちまったな。オレ様はウーサー・ザンバード。見てのとおりの重剣士だ。 この店じゃあちょいと長いがな、かしこまってもらう必要なんざ、これっぽっちも無いからな。 ああそれと、このオレ様は御覧のとおり、斬った叩(は)っはちょいと得手だが、それ以外のこたぁカラッキシだ。魔術だ知識だ「裏の業」だのは、全面的に宜しく頼むぜ? |
■ギン To:ウーサー |
わああ、噂のうさちゃん剣士や (人´ω`*) |
胸板に彫られた可愛らしいウサギのワンポイントを珍しそうに眺めながら。
■ダーニャ To:ウーサー |
うさちゃん…? |
ダーニャはごつい重剣士とうさちゃんという可愛らしい単語の結びつきがすぐには分からず、狐につままれたような顔をしている。
■ギン To:ザラ |
三つ編みのお姉さんは?? |
■ザラ To:ギン |
せっかくですが、わたしは耳当てとかは趣味じゃないんで。 |
唐突に笑顔を浮かべながら、ひとりで勝手に頷くザラ。
■ダーニャ To:ギン、ウーサー、そしてザラ |
銀髪だからギン、うさぎマークだからウーサー… まさかとは思いますけど、三つ編みだからミッちゃんとかミッチーとか、…は、流石に言いませんよね…? |
おそるおそるといった感じで唯一名前の分からないドワーフの女性に尋ねた。
冗談、なのだろうか? 場を和ませようとしているとか?
■ザラ To:ダーニャ |
それなら、ダーニャさんは、誰にゃ? |
真面目くさった表情のまま小首をかしげる、三つ編みドワーフ。
■ザラ To:ダーニャ |
冗談はともかく、これはいたって実用的な髪型です、特に海の上では。 ミッチーもいいけど、どうせならミッチェルとかミヒャエルとかその辺りにしませんか? ……ああ、ミゲルなんていうのもいましたね。 |
羊皮紙を取り出し、
「ミゲル、通称ミッチー」
と書きつける。
■ダーニャ To:ザラ |
う、結局ミッチーでいいの?(汗) 髪型は今回の仕事用ってことか…。なるほど。 |
どこまでボケでどこまでマジか判断付かず、やや気おされた感じのダーニャ。
髪型のくだりには素直に感心したもようだけれど。
■ザラ To:ダーニャ&ALL |
はい、今回は三つ編みミッチーでおねがいします。 |
ダーニャの反応に気づいてか、気づかなくてか、あいかわらずまじめくさった顔つきのまま、テーブルの面々に頭をさげるザラ。
■ザラ To:ギン>おやじ |
あーごめんなさい、デザートの話でしたね。 ミタラシダンゴっていうのを頼めるならお願いします。 |
■おやじ To:ダーニャ |
おう、なんか最近東方系の食い物の要望が多いな。 ちとネタ増やしておくか。勿論ミタラシダンゴはあるぜ。 じゃあ、注文を持って来る。 |
おやじはそう言って厨房に戻ると、暫くして大量の料理をテーブルに持って来た。
■ザラ To:おやじ&ALL |
うわぁ、これ全部おやじさんのおごりでいいんですか?! |
湯気をたてる塊肉や、瑞々しい野菜の盛り合わせを見回したザラは、息をのんだ後、どこか歯切れが悪そうな口調で言葉を続けた。
■ザラ To:おやじ&ALL |
あの、前にもこんな光景を見たんですけど。 その、テーブルにのる限りの注文をするのが、ここの店のマナーなんでしょうか? わたしたちまだ、依頼の話も聞いていないのにこんなに……。 ……もしかして、曰くありげな依頼だったりするんですか。 ロバート船長って、そんなに有名なヒトでもないですよね。 |
テーブルを囲む面々を見回しながら、問いかけるザラ。
■ウ―サー To:ザラ&おやじ |
ん? ああ、そう言われりゃあそうだなぁ……今日は確かに、ちょいと「少ない」か? 注文の量。 それともこの人数じゃあ、こんなもんだったっけっか? |
空にしたジョッキをおやじに差し出して御代りを要求しつつ、ウ―サーは卓上に空いた(ごく僅か、と言って差しさわりのない)スペースを見渡した。
■ダーニャ To:ザラ |
業界に詳しくないからかも知れませんけれど、僕も聞いたこと無い名前ですね。 何か運良く一山当てた人なのかな… |
■ギン To:ALL |
わあ、ローストビーフ、おいしそうですね。イタダキマース(* ̄¬ ̄)o―∈~ |
いきなり他人の皿に手を出す小娘。
■ギン To:ザラ |
今回はスポンサーがいっぱいいるって言ってたよ( ̄〜; ̄)もぐもぐ |
■ザラ To:ギン |
お言葉ですが。 それなら、依頼主なり出資者なりのおごりって話になりませんか。 さっき、斡旋者ははっきりと、自腹を切ったと言ってました。 それから、あなたが注文されたサラダってこちらのことですよ? |
生真面目な顔つきのまま、ザラは瑞々しい野菜がたっぷりと盛り合わされた大きなボウルを、どかんとギンの前に置いた。
■ギン To:ザラ |
えへへー、ありがとう。こっちのお肉もおいしいよ(○'ー'○)ノ |
いたずらっ子のような瞳でドワーフを覗き込むギン。
■ザラ To:ギン |
なるほど、薦めるだけのことはあるってことですね。 |
■ギン To:ザラ、ALL |
キャプテン・ロバートはアザーン諸島かなんかの軍属って聞いたことあるよ。海賊の間では有名みたい。 |
■ダーニャ To:ギン、ALL |
アザーン諸島!? そんなところからわざわざ… はるばるオランに来てまで船乗りじゃなくて陸の冒険者を雇うなんて、やっぱり何か理由があるのかな… |
■ウ―サー To:ダーニャ |
有名、ねえ……そいつぁ、どっちの意味でだい? 良い意味でかい? それとも……悪名って意味で有名なのかよ? |
ウ―サーは「悪名」のほうを期待しながら口角を上げると、ローストビーフをざくざくと切り分けたナイフを、そのまま肉の塊に突き刺してかぶりついた。
■ギン To:ウーサー |
軍属ってゆうくらいやから、天敵的な意味でかと思ってたけど(* ̄¬ ̄)o―∈~ |
さりげなくウーサーの皿から切り分けられた肉を簒奪する。
■ザラ To:おやじ |
ああ、おやじさん、取り皿をもうちょっといただいていいですか。 ここ、だんだんワイルドになりつつあるみたいなんで。 |
ザラはおやじに向かってそう頼んだ後、サラダボウルから大きなレタスをつまみ上げ、切り分けた肉を包んでかぶりつく。
■ザラ To:ギン&ALL |
ほれにぃー…ごくり…歌に歌われたりしてもなさそうだし、日の当たる方で有名とは限らないかもしれませんよ? 便宜が図れるんで知られているとか、ちょろいんでらっきーとか、ほらマリーンにもいろいろありますし。 それに、すんごい軍人なら、なんでオランくんだりでわたしたちみたいな駆け出し雇ったりするんでしょうか。 |
■ダーニャ To:ザラ、ALL |
なるほど、名前が知れてる=腕利きとは限らないってのは、確かにあるかも… やっぱり、あとはもう本人に話を聞いてみないとかな。 |
■ギン To:おやじ |
依頼人の話はいつ聞けるん?( ̄〜; ̄)むしゃむしゃ |
■おやじ To:ギン |
ああ、それなんだが……。 件のロバート船長殿は、昨夜街に繰り出して帰って来たのが朝方なんだわ。 もう少ししたら起きてくるだろうよ。 |
■ギン To:おやじ、ALL |
夜遊び系男子や(●´ω`●) 海賊退治のお手伝いって話やけど、最近なにか海で気になるニュースってあったっけ? おやじさん、なんか聞いてる? |
■おやじ To:ギン&ALL |
ああ、最近な、アザーンとの交易海路に海賊が出没して問題になってるらしい。 オランにはあっちとの交易で儲けてる連中も多いだろ? で、アザーン側としても良客を逃す訳にはいかん、と。 色々有ってキャプテン・ロバートが選ばれ、オランからは冒険者を出すことになって、うちに依頼があったと言う訳さ。 海に慣れているかは兎も角、戦闘力として期待していると言われてたな。 勿論、物理的な意味以外の戦闘力も期待されてるぜ。 |