SW-PBM #172
“死にたがり”のメアリ

■ 二つの依頼 ■
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【 銀の網亭 】

久々に馴染みの冒険者が集まり、盛況に沸く銀の網亭。
旧交を温め、新人を快く迎え入れ、次の仕事を共に請けるべくパーティを結成し、前祝いの宴を楽しむ。
そして一夜が明けて、階下の酒場へと降りてきた翌朝の事。
■若い声 To:おやじ
な、頼むよ!?
ちゃんと仲介料だって払うし、前金も置いていくって言ってるじゃん!

■おやじ To:若い声
しかしなぁ、難しい話だしなぁ……。
最悪、払った金が無駄になるぞ。それでも良いのか?

カウンター越しにおやじに詰め寄る声の主。
頭にターバン、長めのマント。旅慣れた装束風ではあるが、その声は若い。
オランに着いたばかりなのか、少しばかり埃っぽい匂いがした。
ターバンの下からは、化粧っ気はないがその分だけ健康的な、日焼けした少女の顔が覗き見える。
それに対するおやじの方は、如何にも無理難題を持ち込まれたといった感じの苦い顔だ。
■少女 To:おやじ
それは承知の上だよ。
とりあえず依頼書と、あとこれ。前金と仲介料ね。
じゃ、よろしくっ!

■おやじ To:少女
あっ、おいこら!
俺はまだ引き受けるとは言ってない……!

有無を言わせぬ勢いでカウンターに丸めた羊皮紙と銀貨の入った袋を置くと、少女は慌しく店を出て行った。
後に残されたおやじは、困りきった表情だ。
■おやじ To:独り言
やれやれ……まいったな。

■ジン To:独白
……。
おやじさん、珈琲はまだかい?

いつの間にかにカウンターの端に座っているジン。
とりあえず騒動に触れる気はないようだ。
■おやじ To:ジン
注文するなら気配を消して座るなっ。
こっちの耳に届く声で伝えんと、一人でぶつぶつ言ってたって頼んだものは出てこんぞ。
まったく……ほら、珈琲。

■シロノワール To:おやじ
…店主殿は押しに弱いと判断します。……眠。ぼー。

朝に弱いので、なんとか起きてきたもののカウンターでうつらうつらしているシロノワール。
一応、先程のやり取りは見ていたらしい。
■おやじ To:シロノワール
……カウンターによだれを垂らすなよ。

■カラレナ To:おやじ
……?
おやじさん、おはようございます〜。
何だか、もめてたみたいに見えましたけど……どうしたんですか?

ちょうど階段付近からその様子を見ていたカラレナは、カウンターに近づいておやじに尋ねかける。
■おやじ To:カラレナ
おう、カラレナか。おはよう。
なに、ちょっと厄介な依頼が持ち込まれてな……。
やれやれ、昨日といい今日といい、頭が痛い。

頭が痛い……そう言うおやじの頭には、何故か実際に真新しい包帯が巻かれていた。
視線を下ろせば、置かれていった依頼書を持つ左手にも同じような包帯が。
表情を見る限り、物理的な意味での痛みもあるようだ。
■カラレナ To:おやじ
そうなんですか〜……って、ど、どうしたんですか、その怪我!?
ま、まさか、おかみさんと大げんかしたとか……

おろおろあたふた。
■おやじ To:カラレナ
そんな訳があるか。アイツにやられたんだったら、もっと酷い怪我になってる(震)
いやな。今朝の仕込をしている最中に、突然頭の上にあった吊り戸棚が壊れて落ちてきてな。
そいつに頭をぶつけた上に、勢いで持ってた包丁の手元が狂ってグッサリ、と。
ま、こういう事だ。

■シロノワール To:おやじ
店主殿はドジっ子に方向転換する気でしょうか。
いい年をした年配の男性がドジっ子……いえ、別に人の嗜好はそれぞれですから僕は別に構わないのですが。
見た目的に痛そうですので、方向性としては今ひとつのようだと判断します……眠。ぼー。

ぼんやりと白い包帯を眺めながらそんな感想。
■おやじ To:シロノワール
好きで怪我したわけじゃない。

■カラレナ To:おやじ
い、痛そうです……(TT
……あ、そういえば……私たち、昨日貼り出されていたメアリさんからの依頼書が気になってるんです。
怖いことが書いてあったけど……何か理由があるなら止めなくちゃ、って。
厄介な依頼って、それのことでしょうか?

■おやじ To:カラレナ
ああ、お前らあの依頼に興味があるのか?
その通り、もう一つの頭痛の種だよ。

カラレナの後から降りてきたマリィは、カウンターでおやじと話すカラレナを見てそちらに近寄る。
■マリィ To:おやじ&カラレナ
カラレナさん、どうしました……って、おやじさん怪我してるじゃ無いですか。
まだ治っていない様なら「治癒」を祈って差し上げましょうか?

■おやじ To:マリィ
見た目ほど酷い怪我じゃあないんだがな。まあ、折角やってくれるって言うならお願いするか。
……礼金は出せないぞ!?

前もって念押し。
■マリィ To:おやじ
わたしはそんなにがめつくありませんよ。
「ラーダ神よ、彼の者の傷を癒し給え!」

マリィの祈りが癒しの力となり、おやじの怪我を塞いでいく。
■おやじ To:マリィ
おお、効いた効いた。痛みもまるで無くなったぞ。
……マリィも成長したもんだなぁ。

しみじみと。
■マリィ To:おやじ
ふふ、感謝はラーダ神にお願いします。

■シロノワール To:マリィ
マリィ様、流石のお手並みです。
ですが、甘やかしは適度が肝心だと思われます。
怪我などすぐ治ると思ってしまい、また店主殿にドジっ子を発動されても困りますし。
…余計な心配でしたら申し訳ありません……眠。ぼー。

■カラレナ To:シロノワール
し……シロちゃん。だいじょうぶ……?

あまりの眠たげな様子に心配になったのか、シロノワールの目の前でひらひらとてのひらを振ってみる。
■カラレナ To:シロノワール
う〜〜ん……
あっ。
シロちゃん、目の前に凶暴な熊さんが〜〜

耳元であること無いこと囁いてみる。
階下の騒ぎに目を覚まし、寝ぼけ眼で階段を下りてくるアイライ。
■アイライ To:おやじ&カラレナ&マリィ
なんでありんすかー?朝から賑やかでありんすなぁ。
あや?お金がテーブルの上に落ちているでありんす。
悪い人が拾う前に拾っておくでありんす・・・おや?
紙に何か書いてる・・・これもお仕事でありんすか?

銀貨の入った袋に手を伸ばそうとして、おやじが持っている羊皮紙に気づく。
■おやじ To:アイライ
床ならまだしも、カウンターに置かれてる物を落し物とか判断するな。
ネコババと勘違いされるぞ。

そう言いながら、手を伸ばされる前に銀貨入りの袋は回収。
■アイライ To:おやじ
〜って、おやじ様、怪我してるでありんす。ま、まさか、おかみさんと・・・?

■クローエ To:おやじ
あらあら、お盛んなことですねえ。

いつのまにか起きてきていたクローエも、アイライと一緒におやじの無残な手元を興味深げに覗き込んでいる。
■おやじ To:アイライ&クローエ
えぇい、どいつもこいつも。違うと言ってるだろーが。
というか、怪我は今マリィに治してもらったから心配いらん。

包帯を取りながら、カラレナにした説明を手短に繰り返す。
■ジン To:おやじ
で、その依頼書。一体どんな内容なんだ?
条件によっては、メアリの依頼の方よりそっちを受けてもいいが。

■おやじ To:ジン
生き別れの家族を捜してくれ、とさ。
しかし正直言ってオススメはせんぞ。
なにしろ、捜す対象の手掛かりがほとんど皆無だ。おまけに期限は一週間。
地図も無しの手探りで沈没船を引き上げるようなもんだな。

言いながら、手にしていた依頼書をその場のみんなに見えるように広げる。

【家族を捜しています … セラ】という見出しの下に、
「母方の姓の頭文字が『A』である事」
「自分の物と対であるペンダントを所持している『かもしれない』事」
「自分はキャラバンの一員であり、オランには一週間しか留まれない事」

……などが書かれていた。
■ジン To:おやじ
ふむ。確かに面倒そうではあるな。

■カラレナ To:ひとりごと
……家族を……。

■おやじ To:ALL
仲介料を(無理矢理に)置いていかれた以上、依頼書は張り出すが……。
店の信用問題もある。当てずっぽうの行き当たりばったりで訪ね歩くような奴らに任せるわけにもいかん。
ま、引き受ける人間がいませんでした……と言って、前金を返してお引取り願うのが無難だな。

■クローエ To:おやじ
母方の姓、ということは、今の姓は分からないということよねえ…
…まさかそれだけなの? 歳や性別も分からないのかしら?

あきれるクローエ。
■おやじ To:クローエ
一応、捜して欲しいと言ってるのは両親と、いるならばその子供……つまり依頼人の兄弟なんだがな。
そもそも、捜す対象が本当にいるのかどうかもはっきりせんのだと。
育ててくれた祖母の残したわずかな手紙に、それらしい事が書かれていたというのだけが根拠らしい。

■クローエ To:おやじ
なるほどねえ…

■カラレナ To:ALL
家族を捜すために、キャラバンに参加している……ってことなんでしょうか……。

■クローエ To:カラレナ
いろいろな場所を探すために、ということかしら。
そうかもしれないわねえ。

■シロノワール To:おやじ
ん、…それらしい事、の中には、オランに居るだろうということまで書いてあったのでしょうか。
その辺、何か言っていました?

それともキャラバンで滞留する街ごとに、毎回依頼を出しているのでしょうか。
だとしたら随分羽振りの良い方ですね。

仕事の話になってきたので、目を擦ってなんとか眠気を振り払う。
■おやじ To:シロノワール
さすがにそこまで当てもなく金をばら撒いたりはしてないだろう。
オランと限定されたわけじゃないが、この辺りの地方じゃないかという目星はついているらしい。
祖母の残した手紙に、オランやこの辺りの地名が多く出てきたそうだ。

■アイライ To:おやじ&ALL
なんだか、あいまいな話でありんすなぁ。
でも、わっちにも探している人がいるから、僅かな手がかりにでも縋りたい気持ちは分かるような気もするのでありんす。
ペンダントが高価なものだったり、特徴があるものだったら、ギルドの大人が何かを知っているかも知れないでありんす。わっちとしては、前金を返す前に、できることはしてみたいでありんすが...。
メアリさんの話もあるし、まだこっちの依頼を受けれるかどうかは分かりゃんせんけど、依頼主に話を聞くことはできるでありんすか?

■おやじ To:アイライ
そりゃもちろん、話を聞くのは自由だがな。
ハザード川沿いの東の広場で、キャラバンの仲間たちと一緒に寝泊りしているそうだ。
異国の交易品を扱っていると言ってたから、それ目当てで行くだけでも面白いかもな。

■クローエ To:おやじ、ALL
そうですか…
アイライさんやジンさんも興味がおありのようですし、マリィさんやカラレナさんはいかがかしら?
ちょっと異国の交易品を見に行って、ついでに話をうかが…(こほん)

あからさまに異国の交易品につられた物言いを自覚して恥ずかしくなったらしい。
■クローエ To:ALL
まずはちょっと話をうかがいに行ってみるのがいいと思うんですけれど。気の毒な事ですし。
それで…そのついでに、ちょこっとだけ異国の交易品を冷やかして来るのも、良いかな、と思ったり、するんですけれど。

■カラレナ To:クローエ&ALL
そうですね……私も、この依頼のことは気になります。
家族を捜してるなら、助けてあげたい……私も、少し前まで同じ思いを抱えていたから……。
けど、メアリさんの依頼とどっちつかずになって、中途半端な期待を持たせてしまっても、かわいそうですよね……?
メアリさんの依頼の件も、詳しく聞いてみてから考えませんか?

■マリィ To:カラレナ&ALL
はい。取り敢えず状況を確認しないと何とも言えませんからね。

■クローエ To:カラレナ、マリィ、ALL
たしかに。それじゃあ、そうしましょうか。
(カラレナさんも、ご家族のことで何か大変な事があったのかしらねえ…)

■シロノワール To:カラレナ&ALL
ん、僕もその意見に賛成です。
キャラバンのご本人に詳しく聞いてしまえば、見捨ることが出来なくなってしまう確率は高いと判断します。
皆様お優しいですし。
ですからある程度の店主殿からの情報をもとに、事前に一応優先順位をつけておきたいですね。

■カラレナ To:おやじ
おやじさん、メアリさんの依頼の件も、詳しいお話を聞かせてもらって良いですか?
今すぐ対処しないといけないことだったら、大変だし……。

■おやじ To:カラレナ
ああ、その依頼な……。

渋い顔。
■おやじ To:ALL
昨日の開店してしばらく経った頃なんだが、いつの間にやらカウンターにちょこんと座っていた娘がいてな。
……ほら、ちょうど今ジンが座ってる、その席だ。
フードを目深に被って、何をするでもなくずっと俯いたままだったから、最初は店の空気に慣れていない新顔かと思ったんだ。

そんな様子を見て、珈琲でも飲ませれば緊張が解けるかとおやじが声を掛けてみると。
驚いた風に突然立ち上がり「依頼をお願いします」と精一杯の震える声で言ってきたという。
■おやじ To:ALL
その後はこっちが口を挟む間もなく、無理矢理に依頼書を握らせて……って、聞いたような話だがな。
とにかく、呼び止める暇もなくその娘は出て行っちまった訳だ。
渡された依頼書を広げて内容を読んだ時には、どうしたものかと途方に暮れたよ。

仲介料を置いていっただけ、先ほどのセラという娘の方がマシだったかなぁなどと呟いている。
■ジン To:おやじ
ふむ。それでああゆう依頼書なわけか。なんとも独創的で気になってはいたんだが。

■おやじ To:ALL
まあそういう事情なんでな、この依頼書を置いていった娘が心配なのは俺も同じ気持ちだ。
ただの冗談であればそれで良し。そうでないなら何故こんな真似をしたのか理由を聞いて、できるものなら止めて欲しい……ってな。

■カラレナ To:おやじ
じゃ、じゃあ……その子の居場所すらわからない状態なんですか?

困ったように、おやじと仲間たちの顔を交互に見ながら。
■おやじ To:カラレナ
いや、さすがに気になったんでこっちでも調べてはみた。
賢者の学院に近いあたりに「ハーム通り」ってのがあって、そこにフランネル姓の屋敷があるってよ。
依頼書を持ってきた娘がその家に住んでいるかどうかまでは分からんがな。

■カラレナ To:おやじ>ALL
フランネル……って、そういえば、商家の家でしたね。
数年前に当主夫妻が亡くなられてからは、たったひとりの娘さんだけが残されたって……

思い出したことを皆に伝える。
■アイライ To:ひとりごと
家族を探す娘さんと家族を失った娘さん・・・。どっちも切ないでありんす。

■クローエ To:アイライ
そうねえ…。何か力になってあげられるといいのだけれど。

アイライがもらした言葉を聞いたクローエは、優しい調子で言った。
■カラレナ To:おやじ
えっと……私、田舎者だから、良くわからないんですけど……
そんな良家のお屋敷に、いきなり冒険者が連れ立って会いに行っても、通してもらえませんよね……?

■おやじ To:カラレナ
どうだろうなぁ。捜してる娘さんが本当にその家の者なら話が通ってるかもしれないが。
とにかく、その確認のために足を運んでみても損にはならないんじゃないか?
いくらなんでも事情を聞くくらいはしてくれるだろう。

■アイライ To:ALL
他に手がかりが無い以上、そのお屋敷にとりあえずは行ってみるしかないと思うでありんす。行ってみてダメだったら、その足でキャラバンの交易品を見に・・・じゃなかった、セラさんのところへ行くというのは、どうでやんしょ?

■カラレナ To:アイライ&ALL
そうですね。
メアリさんの依頼のほうが、一刻を争うのかもしれませんし……まずはお屋敷に行ってみましょうか?

■クローエ To:カラレナ、アイライ、ALL
それで良いのじゃないかしら。
メアリさんは、どうやらかなり追い詰められているご様子のようですしねえ…
でも、できるだけセラさんの話も聞いてあげたいですね。

■シロノワール To:ALL
僕は元よりメアリ殿の依頼の方が気にかかっていましたので、お屋敷優先は賛成です。
ただ、1週間と期限のあるセラ殿の依頼も、もし請けるのであれば詳細は早めに伺うべきでしょう。
現時点でセラ殿の依頼の方に関心を持っている方がおられるのでしたら、二手に分かれて事情を聞きに行くなりした方が良いのではと僕は思いますが。

■ジン To:シロノワール、ALL
セラの方はある程度前情報があるが、メアリの方は検討がつかんからな。どんな技術が必要になるか判らない分、屋敷の方には全員で当たった方がよいのではないかな?

■クローエ To:シロノワール
よっぽどのことがなければ、メアリさんの所から一歩も動けなくなる事はないのじゃないかしら。
それなら、今日の間にハーム通りのフランネル屋敷と、キャラバンを両方訪ねるくらいは多分出来るでしょう。
ジンさんの言うように、全員で順に回るのが良いように思うけれど、どうかしら。

■シロノワール To:おやじ
店主殿、その謎の依頼人少女の容姿を詳しく教えていただけますか?
それから、その屋敷がその娘さんの居場所だと判断した理由も参考までに聞かせてください。

■おやじ To:シロノワール
先に断っとくが、俺はその屋敷が娘の住んでいる家だとは言っとらんぞ。
依頼書に書かれたフランネルと同じ姓の屋敷がそこにある、と言っただけだ。

で、依頼書を持ってきた娘だが……何しろフードを深く被っていた上に、まともに話もできなかったんでな。
すまんが、はっきりと顔は見ていないんだ。ただ、フードから零れるくらいの長い黒髪だった。
それから、依頼書を渡してきた手だが……妙に青白かったな。まるで日焼けしていない感じだった。

それから声から判断して、若い娘だろうという事を付け加える。
■おやじ To:ALL
そうだ、お前ら。
もしも屋敷が当たりでそこに依頼人がいるようだったら、俺が「店に依頼を持ち込むときは、仲介料を置いてくもんだ」と言っていたと伝えてくれ。

本気とも冗談とも判断の付かない事を言う。
■カラレナ To:おやじ
わかりました〜、お伝えておきますね。

本気と受け取ったらしい(笑)

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GM:倉沢まこと