港町イーンウェン
海上で嵐に遭遇してから、まる1日。
船ごと投げ出されるかと思われるほどの強風と稲光のなかを、フレンジィ号はたくましくも持ちこたえ、モンスターとの遭遇も幸い発生せず(波間に一瞬だけ現れて消えた巨大クジラを視認したが、それはどうやら温厚なクジラだったようだ)、5日目の夕方になってようやく、嵐のなかを抜け切ることができた。
ほとんど休み無しで見張りと警戒にあたっていた冒険者たちとライチ、そして船員たちも、太陽が落ちたあとの黒い海の波が穏やかになっていくのを、大きな安堵感と、緊張が解けたことによる疲労感を感じながら見つめていた。
風はほとんど無くなったが、雨はまだぱらぱらと、やさしく甲板を濡らしている。
■ゾフィー To:ALL
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やれやれ、雲が晴れる気配はなさそうですわね。
天気に関する噂は当たっていたというところかしら。
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もう見張りは必要ないと判断したライチは、皆を甲板に呼び寄せた。
■ライチ To:ALL
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みんなお疲れさま〜。ひどい目にあったけど、とりあえず、海の水を飲まずにすんだね。
ほら見て、イーンウェンの灯が見えてきたよ。
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ライチが前方を指差すと、黒い海と黒い空のぼやけた境界線のところに、海に突き出した岬と、波止場に光るかがり火がぽつ、ぽつと浮かんで見えてきた。
雨のせいで夜空に星は見えないが、さながらそれが地上に降ってきた星のようだ。
■リコリス To:ライチ&ALL
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うっわぁ〜、きれい〜♪
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■ウーサー To:ライチ&ALL
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ようやっとこの、頼りない皮鎧ともオサラバできるって事かよ。
ああ、かえって肩が凝ってやがるぜ……。
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■ライチ To:ウーサー
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なんか皮鎧に「着られてる」って感じだったもんね〜。
けど、金属鎧で雨に濡れたら冷えそうだから、気をつけてよ?
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■シグナス To:ライチ
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やれやれ、何日も船の生活ってのは、意外と慣れが居るもんだなあ。陸が見えてホッとしちまったよ。
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■ライチ To:シグナス&ALL
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あはは、けど海にハマると、そのうち海の方が恋しいくらいになっちゃうよ。
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そう言って名残惜しそうに、目を閉じ、静かに響いてくる波の音に耳をすませるライチ。
■シグナス To:ライチ
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……まあ、妙に釣りの成果が振るってた辺り、案外向いてるのかもと思いそうだが。
あー、そうかー。年中海の上なら人間関係で悩まなくて済むかもなあ……。
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■ライチ To:ALL
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船も無事、荷物も無事。波止場に着けばもう私たちの仕事は完了だね。
あとでハノクから報酬が渡されると思うよ。
苦労が報われる瞬間だよね〜♪
ところで、みんなって学院からの依頼のために、この仕事を受けたんだっけ?
もうオフってこと? イーンウェンでは観光して過ごすの?
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■ゾフィー To:ライチ
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それでしたら、エレミアまでご一緒させていただくことも出来たのですけれどね。
聞き込みの過程で皆が、あれやらこれやら頼まれ事を背負い込んだもので……そういうわけにもまいりませんのよ。
ところで、イーンウェンにおすすめの宿などはございまして?
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■シグナス To:ライチ、ALL>ウーサー
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いんや、まだまだこっちで調べモンあるのよ。それに前の魔物連中もこっちに居そうだし、まだ遊ぶには早いかね。
……けどまあ、こー言うタイミングも貴重だし、今日は名残でも惜しんで一緒に宴会でもするかい?
なあウーサー、お前もそー思わないか?新鮮な陸の幸にも飢えて来た所だしさ。
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■ウーサー To:シグナス
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同感だ。魚とラムも悪くは無ぇが、オレ様たちは人魚じゃ無ぇしな。そろそろ「船乗り風」だの「海兵風」だのじゃないモノで胃を膨らませても、バチは当たらねぇだろ?
明日からまた良い働きってヤツを見せるためにも、今夜は填に励むとしようぜ!
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■ライチ To:ゾフィー&シグナス&ALL
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そっかー、忙しそうだね。しばらく留守にしてたけど、一応地元だから、何か協力できることがあったら言ってね。
宿は……いくつか知ってるけど、いちばん料理がおいしいところがいいかな?
ライスを魚の切り身で巻いて食べるっていう、珍しい料理を出す宿があるんだ。
私たちもこれから夕飯だから、みんなさえ良ければ一緒に行こっか?
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■ライチ To:シグナス
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あははっ、ごめんごめん。大好きなふるさとの味だから、つい、ね。
だいじょうぶ、ちゃんと普通の料理もあるからさ。名産品のリンゴもおいしいよ?
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■シグナス To:ライチ
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ま、お勧めされたからにゃ、滞在中には試してみるさ。
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■ティガ To:ALL
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おーう。行こうぜ行こうぜ!! 仕事のあとの一杯、景気つけなきゃ地に足をつけた意味がねぇってもんよ!!!
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■カイネ To:ALL
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ボス、じゃねえ船長も誘えば、最初の1杯や2杯奢ってくれるだろうしなー。
あっはっはっは。
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いつのまにか傍にいた船員たち。行く気だ。
■カイネ To:ALL
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まぁ、荷下ろしにまだかかるから、遅れて行くことになっちまうけどな。
あんたら、初めての船旅で、疲れてんじゃないのかい?
無理はしないこったぜ。
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■シグナス To:カイネ
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なあに。奢りがあるなら、無理の一つもしますさね。
ちったあ騒いどかんと、終ったってー気がしねえしな!
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■ウーサー To:ALL
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おっしゃ、じゃあ行こうぜ!
だがオレ様が居るからにゃあ、ハンパな騒ぎじゃ済まねぇぞ?
派手にやらせてもらうからな、早速一軒目の店まで案内頼むぜ!!
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■ライチ To:ウーサー
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じゃあ、陸に着いたら案内するね。お酒も豊富にあるから、思いっきり騒ごっ♪
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■ティガ To:ALL
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お、俺たちの分も残しておけよ!? 特に酒は!!?
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■シグナス To:ウーサー以外
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まあぶっちゃけ、こう言う街じゃ少しは金落としとく方が、聞き込みもし易くなりそうだし、大き目の店で街の空気掴んどこうぜ。
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■ゾフィー To:パーティメンバー
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降り続く雨やら、集う魔物やらで町が不安を感じていなければ、ですけれどね。
下手に盛り上がって白い目で見られるのはごめんですわよ。
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船員達の耳にはとどかないよう声を落としつつ、眉間にしわを浮かべながらつぶやくゾフィー。
■シグナス To:ゾフィー、ALL
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まあ、この手の町じゃどの道目立つさ。んじゃ、姐さん適当なとこで抜けて町中の様子見てくるかい?
俺はとりあえず、さっきの魔物の行方でも追って見ようと思うけど。
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■ゾフィー To:シグナス&ALL
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町の日常をみるとしたら、明日、ですわね。
今宵は、わたくし早めに休ませていただきたく存じますの。
日の出ている間の行動に身体を合わせないといけませんし、今後を考えると肝心の時に無理が利かなくなっても困りますから。
とはいえ、船乗りさん達が仕事を終え、皆様お酒が入る前に、朝の行動計画の下地くらいは立てておいたほうがよろしいでしょうね。
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■ウーサー To:シグナス&ALL
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オレ様は、明日の早いうちにハプルマフルに行っておくぜ。
ついでに余裕がありそうなら、例の占い婆さんの姉だか妹だかを探してみるかな?
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■リコリス To:ALL>ライチ
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あ、リコは港でいろいろお話聞きたい!
図書館の本と、あの魔法っぽい絵の具の生き物が関係あるなら、最近イーンウェンに来た人があやしいよね?
ねぇ、ライさん、イーンウェンに入るには海からだよね。
どんな人が出入りしてるのか、わかりそうな場所ってある?
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■ライチ To:リコリス
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うーん、漁業ギルドの寄り合い所に行けば、船便の大雑把な種類とか人数とかは教えてくれると思うけど、詳しいことは控えてないと思うよ。
例えば私たちみたいな護衛とかまではね。
実際に船に乗ってきた船員をつかまえて話を聞いてみるのが、一番いいかも。
あとでハノクに聞いてみようか? あいつ、ここじゃそれなりに顔広いからね。
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■リコリス To:ライチ
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うん、お願い♪
そういえば、ライさんも同じ宿に泊まるの?
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一緒の部屋にお泊まりしたいな〜とでも言いたそうだ。
■ライチ To:リコリス
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うん、いつも世話になってるとこなんだ〜。
実家はもう無いし。
一緒の部屋にする? お風呂も一緒に入ろっか♪
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最後はかがみ込んで、リコリスにこっそり耳打ち。
■リコリス To:ライチ
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うん、一緒のお部屋がいい〜♪
お風呂も一緒、うれしいな〜♪
ライさん大好きっ!
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リコリスはライチに飛びついた。
ライチはぎゅっとリコリスの身体を受け止めて、軽く頬ずり。
潮風に当てられたせいで、お互いの頬はひんやりと冷たかった。
いつのまにかフレンジィ号は波止場に滑り込み、艀に船体をつけていた。
出迎えた船員たちが船を固定してくれる。
かがり火に照らされた港はそこそこ明るい。
雨に濡れそぼって、いくつかの小型の漁船やボートが波に揺れていた。
■ハノク To:冒険者たち
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おぅ、お疲れさん! あんたたちの活躍のおかげで、なんとか無事に着くことができた。
心からの礼を言うぞ! ありがとうっ!!
さぁ、これはイーンウェンまでの報酬だ。ぴったりひとり500ガメルずつ入っているぜ。
俺たちは2、3日後にはエレミアに向かうが、もし気が変わったらそこまでの護衛も考えておいてくれよな!!
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ハノクは筋肉が詰まった巨体を揺らしながらでかい声でそう言うと、冒険者たち(と、ライチ)ひとりひとりに小さな布袋を手渡した。
中を確かめてみれば、確かに500ガメル分(ゾフィーは賄い分を差し引いた360ガメル)の硬貨が入っていた。
■ゾフィー To:ハノク
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ありがとうございます。
確かに受け取りましたわ。
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■ライチ To:ALL
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あ〜、これで眼鏡が買える〜♪
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小袋に頬を寄せてすりすり。
■ゾフィー To:ライチ
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ちょっとお伺いしてもよろしくて。
眼鏡専門の職人の方がこの町にはおられますの?
それとも、眼鏡に限らずいろいろな品を商うような店なのかしら。
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■ライチ To:ゾフィー
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私がいつも世話になってるのは、モザイク画が本業の職人なんだ。
手先が器用でわりとなんでも作れるから、眼鏡も昔から作ってもらってるの。
モザイクを使ったアクセサリーなんかも売ってるよ。
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■シグナス To:ライチ、ゾフィー
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あ、細工屋あるなら俺も教えて貰いたいね。折角だし、土産物でも見繕わんと。
……いざと言う時の命綱になるしな。
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■リコリス To:ライチ、ゾフィー、シグナス
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あ、リコも細工屋さんは知りたい〜。
お兄ちゃんたちへのお土産買うの♪
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■ライチ To:シグナス&リコリス
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質がいいから、それなりに値が張るよ〜?
あ、ちなみにその職人さんは、ドワーフのおじさんね。
名前はミガク、工房の名前は『モザイクガーデン』。
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場所を説明するライチ。港から近いようだ。
■シグナス
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確かに、眼鏡扱えるくらいなら腕も良さそうだしな……。
……とりあえずアンティはミルフィと合わせとくとして……クリスとエリスもその方が無難だな。
アーシュラにカオールさんにメアリに……バージニアも入れとかんとフォローが辛いな。
ドロシーさんにカナーに……あー神殿の方は細工モノはどーかなー、地味目なのなら……。
……よし、辺に意味勘繰られても死ねるし、量産品をセットで買えば安くもなるか。OKOK、俺はまだやれる。
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■ゾフィー To:ライチ
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ほう、ドワーフの。
イーンウェンは漁業と林檎の町と聞いておりましたが、昔から大地の妖精族も住まわっておりましたの?
昔の画家の話を耳にしたこともございましてね。
ミガクさんとやらは長いことこの町にお住まいなのかしら。
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■ライチ To:ゾフィー
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数える程度だけど、町中で何回か見かけたことはあるよ〜。
私がつきあいがあるのは、ミガクだけだけどね。
んー……確か、20年……いや、10年くらい前かな?
ふらっとこの町にやってきたんだって、海の絵を描きたいとかで。
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■ゾフィー To:ライチ
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……となると、やはりベルダインにいたという公園画家のようですわね。
この町のドワーフ達と繋がりをお持ちだと助かるのですけれども。
ついでに伺ってもよろしいかしら、今の町の情報に詳しい方や、逆に昔の話に詳しい方、 あとは……文献などを調べることができる場所などを知るには、どこで尋ねればよろしくて。
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■ライチ To:ゾフィー&ALL
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今の情報に詳しいのは……やっぱり港で働いている人たち、かな?
港に面した通りはお店も集まっていて、それなりに賑わう場所だし。
夜は酒場で、いろんなうわさ話が飛び交っていると思うしね。
文献といったらやっぱり『ハホリーナの葉隠れ屋』──移動図書館なんだけど、それを探すのがいいかな?
ハホリーナさんは半妖精らしくて、昔からイーンウェンに住んでいるって聞くから、昔のことにも詳しいかも。
まぁ、私は図書館に出会えたことが無いけどね〜。
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■ゾフィー To:ライチ
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『葉隠れ屋』に出会えたら一日幸運だとかいう話ですわよね。
噂話程度でもで結構ですが、出会える条件などといった探すための手がかりは耳になさったことはございませんか。
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■ライチ To:ゾフィー
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うーん……そういえば、見たって言う子は子どもが多いみたいだよ。ハノクのとこのナギも、一度だけ、見たことがあったって言ってたかなぁ……
あ、ナギっていうのはハノクの息子ね。
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まだ5歳で、父に似ず小柄で控えめな男の子だという。
■ゾフィー To:ライチ
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……………。
…そう………いえ、明日からの調査に役立ちそうですわ、ありがとうございます。
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■シグナス To:ゾフィー
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葉隠れ……か。偶然かは解らんけど、植物っぽいのは気になる所だな。
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