SW-PBMトップへ
Scenario Indexへ
SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

 このシナリオのトップへ ←前のページ   次のページ→ 

嵐が来るまで……



  オラン西の海域・フレンジィ号/船上

『フレンジィ号』がオランを出発して、4日目。
今日もおだやかな潮風が帆を揺らし、どこまでも高い青空が広がっている。
物騒な噂が嘘のように何事も無く日々は過ぎていた。
しかし冒険者は手を抜くこと無く、いつもの持ち場で見張りを続けている。
リコリスとイェンスが船首。
ウーサーとソルが船尾を守り、マストの見張り台にはシグナスとライチ。
夜に備えて仮眠を終え、非番となっているゾフィーが舶刀を研ぐ姿も、もはや定番の眺めである。
■カイネ To:リコリス&イェンス
やぁ、今日もお疲れさん。
こうも平和だと、あの噂はガセだったんじゃないかなんて気もしてくるよなぁ。
いや、何も無い方がいいんだけどさ、釣りできるし!

■リコリス To:カイネ
そうだよね〜。またシグ先輩とウーさん、美味しいお魚釣ってくれないかな〜。

■カイネ To:リコリス
おまけに料理も上手いと来てる。最近の冒険者ってのは、多彩なんだなぁ。
はっはっは。

たわんだロープを片付けながら、気さくに話し掛けてくる。
船員たちの中には、この穏やかな海の様子に、少々気の抜けている者たちも居るようだ。
■シグナス
何だかんだで、この位置も慣れて来たモンだなあ。釣り糸たらせんのがなんだけど。

■ライチ To:シグナス
……うーん……。

ライチは見張り台のふちに両手をつき、睨むような視線で船尾側を見つめている。
それからふいに目を閉じて、まるで「においを嗅ぐ」かのように穏やかな風に鼻先を突き出した。
■ライチ To:シグナス
なんか、変な感じしない?
……勇気凛々っていうか、死霊臭いっていうか……。

■シグナス To:ライチ
……え゛ー。こんな潮の匂いしかせんとこで他の匂いって、確定ジャン。あー、確かに……ってあれ、ノームも居ねえ?誰か囲ってたっけ?

■ライチ To:シグナス
ああ、私。ほら、ここに。
海の上ではいつもこの子がお供なんだ。

ライチは左手首に嵌めたシンプルな腕輪を示した。
黒塗りの上に黒塗りの腕輪で、ぱっと見目に入らない。
■シグナス To:ライチ
へえ、塗り物かい?精霊使役しとけるって事は、そっちの腕も期待させてもらうぜ。

■ライチ To:シグナス
……それにしても、水の乙女たちも騒がしいような……海中?
一応みんなに呼びかけて──
──っ!

その時、砥石を二つ目に変えたゾフィーは、油を垂らし、壺の蓋を閉めたところだった。
刀を石にあて……いぶかしげに眉をひそめる。
右手で刃をおさえつつ、左手が用心深く砥ぎかけのカトラスの柄にまわされた。
■カイネ To:ALL
うわぁっ、何だ!??

■ウーサー To:ALL
どぉおっ!?

突然、身を投げ出されるような衝撃が船体を襲った。
甲板中央に居たゾフィーには、船のふちからピンク色の触手──吸盤がきれいに並んでいる──が唸りをあげて船に絡み付いてきているのが見えた。
■ゾフィー To:見張り組
見張りっ!なにをしゃ……こほん。
船体側面にキラー・オクトパスっ!触手の締め付けに用心なさい!

■シグナス To:ゾフィー
わりぃ!海中は流石に見えねえけど……まだ来るぞ多分アンデッド!

■ゾフィー To:シグナス
不死者ですって?魔法生物という話でしたのに?!

衝撃に倒れぬよう足を踏ん張るリコリス、イェンス。
その目の前に、船体の影から暗褐色の塊が音も無く飛び出してきた。
コウモリを思わせる黒い翼をぱたぱたとはためかせ、2人を見てニヤリと笑う。
■リコリス To:ALL
あ、こっちにはグレムリンが来たよっ。

船尾側のウーサーとソルが見つめる海上には、何の前触れも無く、突然豪華な装飾が施された中型の船が現れた。
それは音も持たず、重さも感じられない。
まるで霧か幻のようなその船から、ボロボロの船乗りの服をまとったうごめく肉体──どう見ても死体に見える──が、器用に船のふちからフレンジィ号に飛び移ってきた。
■ウーサー To:ソル>ALL
……おいおいおいおい。随分とまあ、盛況じゃあねえか?
こっちからも来たぞ! こいつぁ……随分な大物だぜ! 幽霊船のご登場だっ!!

■ライチ To:カイネ>ALL
カイネ、船室に入ってて!!

あの装飾は……『ツヴェート号』?
まさか……でも、沈んだのはこの海域じゃなかったはず……。

■シグナス To:ライチ、ALL
っつーか群かよ!?

■ゾフィー To:つぶやき
悪趣味な船ですこと。
あれも、どれかの本に描かれていたということなのかしら。

研ぎかけのカトラスの持ち主の姿を求め、船上を見回すゾフィー。
非番のまま船室にいると判断し、刃を鞘に収め、そのまま腰にたばさんだ。
やがて精霊使いたちが感じていた「精神を司る精霊」の気配が強くなり、ウーサーとソルの目の前の空中で凝り固まる。
その姿は、白く輝く鎧に身を包み、艶めく髪と残忍な瞳を持った、人間の女性。
薄く開いた唇から紡がれたのは、ふたりには理解できない言葉だった。
■ウーサー To:ソル
な――なんだ、コイツは!? 幽霊のお仲間……ってのとも、違うみてぇだな?!

■女性 To:ウーサー&ソル
(精霊語)
veri doa gi foaka. we qow uhjaz bg mqw,dpo?(勇敢な戦士たちよ。我が姿を美しいと思うか?)

■ライチ To:ウーサー&ソル
え、ええっと……??

ウーサー、ソル、わかるー!?
「私きれい?」って聞いてきてるけど!!

ライチが見張り台の上から大声で叫んだ。
■シグナス To:ウーサー、ソル>ライチ
二人とも気を付けろ!その手の問答は下手すりゃ血ぃ見るぞ!?
っつか普通にやべえ、アンデッドに戦乙女かよ。まともな武器じゃ遣り合えねえなあ……。
けど下は下で魔法使い多目だし……上からフォロー入れる準備しとくか。
ライチ、船上じゃそっちが先輩だし、何か指示があるなら従うぜ?遠慮は要らんさ。

■ライチ To:シグナス
あは……タコ以外と遭遇するの初めてなんだけどね……。
とりあえずタコは精神を攻めよう。一刻も早く落とさないと船が危ない。

■シグナス To:ライチ
OK、んじゃこっちも一息付いたらそっちに回るよ。

■ウーサー To:ライチ、シグナス
ナニ言ってるか理解らねぇと思ったら、精霊の言葉か!?
血を見るたぁ上等じゃあねぇか! そいつぁオレ様の出番だぜ!!
じゃあ、通訳を頼まぁ……って、こんな大声じゃあちと照れるな!!

突然の展開に戸惑いながらも、ウーサーは白く輝く女性の瞳を見つめ返しつつ、フル回転で思考を巡らした。
船の陥っている状況、他の「敵」との距離、仲間の配置――だが結局、目の前の女性への対応は、どれだけ考えてもひとつにしかなってくれない。
一見凄絶な嘲笑に見える、軽い自嘲の笑みを浮かべて、ウーサーはじりり、と一歩前に踏み出しながら、ソルに小さく囁いた。
■ウーサー To:ソル
すまねぇが、あっちの死体崩れは、お前さんにお願いしちまってもいいか?
それと、もしシグナスが動けるようなら、オレ様の筋力を上げてもらえるように頼んでくれ――いかんせん、まだまだ修行不足でな? この剣には、未だに「振り回されちまう」んだよ……だが、今日はソイツが、生死を分けそうだ。

そして、ライチとシグナスの元まで届くように声を張り上げ、白く輝く女性を真正面から見つめながら答えを返していく。
だがその時には、目の前の女性の美しさと、その瞳の映す感情の輝きのギャップに心を囚われていて、数日前に聞いた占い師の忠告については自覚できていなかった。
■ウーサー To:白く輝く鎧の女性(?)
ああ、オレ様にはアンタが、すげぇ美少女に見えてるぜ――なんだか、辛そうな瞳(め)をしてる女の子にな!!
だが、アンタの事を、オレ様はなんにも知らねぇ!
だから、なんでアンタがそんな瞳をしてるのかが理解らねぇ!!
だけどな、オレ様はそれが、どういうワケだか無性に知りてぇ!!!
とはいえこの状況だ、じっくり話してる時間も無さそうだからよ――

いったん言葉を切り、深呼吸を挟む。
そしてウーサーは銀の大剣を引き抜き、低く腰を落として身構えながら、ひときわ大きな声で最後の「答え」を叩きつけた。
■ウーサー To:白く輝く鎧の女性(?)
オレ様はウーサー・ザンバード! 見ての通り、命知らずの重剣士だ!!
アンタさえ良けりゃあ、オレ様とアンタと二人――こいつで語り合おうぜいッッッ!!!

彼女の問いかけへの感想を、まっすぐに伝えられそうな「言葉」。
混戦となり、これ以上の「通訳」は望めなさそうな状況の下で、彼女との対話を続けられそうな「言葉」。
それは、ひたすらに「戦士」としての修練のみを積み重ねて磨き上げてきた、自らの剣技だけだ。
少なくともウーサーには、今この状況下において、それ以上に気の利いた応えは思いつかなかった。
■シグナス To:ウーサー、ALL
……通訳できるかボケ!?いやまあその姿勢だけで充分通じるわ、多分!

って、あの剣銀製だったっけか。飛ばれちゃ如何にもならんし、正解っちゃ正解か。

■ライチ To:ウーサー>戦乙女
そ、それ全部訳すの!?
ええっと…

(精霊語)
聞くんだ、戦乙女! 貴女の目の前の戦士はこう言っているよ。
貴女は美しい少女、だけど哀しみを宿した瞳に我が心は──

戦乙女はついと片手を上げ、ライチの言葉を制した。
■戦乙女 To:ライチ>ウーサー
(精霊語)
十分だ。

その後に続く言葉…こなたの目が語っている。
曖昧模糊な返答ならば、こなたのつるぎが届かぬ上空より串刺しにする処…
我は応じよう、こなたの鏡のような心に。「人」の間合いにて…何れかの命が果てるまで。

血に飢え、死の誘惑に狂った目が細められる。
美しいまつげが、白い肌に僅かな陰を落とす。
ウーサーの剣が届く範囲までふわりと身を晒しながら、戦いに魅入られた男ならば誰しもが奮い立つ激しい感情の力を、空に向かってかざした手の中に集める──研ぎ澄まされた白銀の槍の形に。
■ライチ To:ウーサー
ウーサー! 魔法が来る、何とか耐えて! 下手すると死ぬよ!!

■シグナス To:ウーサー、ALL
しかし……戦乙女だぞ、ツヴェート号つったら豪華客船だったろうに……どっから出てきたんだ……?
何にしても、ヤバイのはあいつと……船的にはタコの方か。生け捕れそうなのはタコとグレムリンだが……んな余裕くれっかねえ?
向こうの船に、ドンだけ居る事か……いや待て、妖魔付きでアンデッドつったら暗黒神官居てもおかしかないそ!?

皆、死体の方はグールだ!毒持ってっから気ぃ付けろ!あと向こうの船から後続来そうだからココから見張っとく!魔法欲しけりゃ怒鳴ってくれい!

■リコリス To:シグナス&ALL
え? え? い、生け捕り!?
グレムリンって寝るの?
っていうか、リコかイェンさん、どっちか船尾に行って援護したほうがいい?

■ゾフィー To:シグナス、リコリス、ALL
皆、落ちついて、幻の船をよく見なさい!
上には誰もいません、死体も、暗黒神官もっ!
相手は見た目の姿しか持たない、絵に描いた餅です!
各自、目の前の敵に専念なさいっ!
排除が終わってから、他の場所の援護に!
空いている人はまず蛸を!全ての触手が船体を攻撃してきますっ!

■シグナス To:ゾフィー、ALL
だと良いんだがね……人が居なきゃグールも戦乙女も出来りゃしねえからなあ。
ま、良いさ。それを眺めとくのが上の仕事。ガチンコ勝負が下の仕事、キッチリ割り切ってきゃあ如何にかなるさ。……つか、この配置じゃ俺も回復に回る事になりそうだな。ウーサー、怪我したら一回10ガメル罰金なー!

■ライチ To:リコリス
リコ、大丈夫。グレムリンに効かない攻撃はないよ。
“忘却”の精霊魔法に気をつけて!
危なくなったらすぐに行くから。



 このシナリオのトップへ ←前のページ   次のページ→ 

SW-PBMトップへ
Scenario Indexへ
SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

GM:ともまり