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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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賢者の学院・図書館

〜 2 〜


  賢者の学院・図書館

ドロシーは受付のカウンターにシグナスを視線で招き、デスクから羊皮紙を取り出すと、さらさらとペンを走らせた。
そこに書かれたのは──

『わくわく☆うみのかいじゅうずかん オラン〜エレミア編』
『我が海路 〜波間と戯れた30日間〜』
『トビウオたちはマダコの夢を見るか?』この3つであった。
■ドロシー To:シグナス
今のところ、行方不明になったのはこの3冊です。
すべてに共通しているのは、いずれも詳細なモンスターの図説、挿絵があったということ。
それ以外に共通点は見いだせません。対象年齢もジャンルも大きく異なっています。

■シグナス To:ドロシー
……図鑑か伝記か創作か物凄く判断に困るタイトル混じってますねコレ。
けど、成る程……全部、海洋生物の関係ですね。
それにほら、この最初の。俺も読んだ事あるけどオラン〜エレミアと地域が限定されている。
二冊目のも、近い範囲だし……三冊目は、知らない本だなあ。
エレミアだったら、西方になるな。こりゃ、俺が調べたい辺りと被っちゃってるかも。

■ドロシー To:シグナス
先ほど、「イーエン」といういにしえの西方の地域について調べたいと言っていましたね。
窃盗だとすれば、すでに西方に渡っている可能性も否定できません。
文献を確保できなくとも、調査報告だけでも結構です。
報告によってはお礼も致しましょう。どうぞ宜しく。

ごくわずかに頭を傾け、目線だけで一礼。
■シグナス To:ドロシー
街を出るにしたら、方向が同じっぽい……まあ、道中聞ける機会が有れば、できる限り平行調査してみますよ。
お礼は結構、俺も助けて貰う訳ですし……これからも図書館を利用する事もあるし、また話し相手になって頂ければ。
無論、公私の区別を弁えて、ですよ。ええ、弁え捲くりますともさ。人生の格子すら弁えるこの私が。

■ドロシー To:シグナス
…………フッ。
図書館利用に関することなら何時如何なる時でも、話し掛けて結構。
……時にはラグりんの日々の素行を伝えて頂ければ。
何しろ鋭角な噂が聞かれなくなるまでは、私も気が気ではありませんから。

こぶしを口に当てて、こほんとひとつ咳払い。
■シグナス To:ドロシー
はっはっは、人は噂無闇矢鱈滅多等無責任に抉り込むような噂を曲解するものです。ええ、マジデ。
ともあれ。「イーエンにかかる虹」と言う絵本に心当たりとか無いですか?
著者はドワーフらしく、下位古代語で書かれた絵本です。
書いた物が本物になる魔法の絵筆を扱った、絵描きの自伝のようなのですが……。
ああ、そうだ。絵本にこういった刻印がありました。

孤児院で取った刻印の写しを取り出して見せるシグナス。
■ドロシー To:シグナス
……なんとも悪趣味な刻印ですね。残念ながら絵本、刻印ともに覚えはありません。

眉間にぎゅっと深いしわを寄せながら。どうやらカエルが苦手らしい。
■ドロシー To:シグナス
ですが、絵本についての研究書や各地の伝承を集めた文献ならばいくつか心当たりがあります。お望みならば後ほどご紹介します。

さて、まずは先ほど希望されていた「イーエン地方」についての調査、で宜しいですね?

■シグナス To:ドロシー
趣味に関しては、俺からは何とも。好き嫌いで言えば両生類は中途半端さで若干共感を覚えますが。
と言って俺も避けられたら泣きそうなのでカエルは超苦手になって置きますので、お願いします。

■ドロシー To:シグナス
……っ……む、無理せずとも結構です、ラグりん。
これはシンボルであって超現実では無いのですから。

ぷるぷると肩を震わせながら、ドロシーは図書館の一番奥の自習机にシグナスを案内すると、見上げるほど高い本棚たちの隙間へと消えていった。
ちょうどその頃、リノゲイド教授の研究室から戻ってきたイェンスとソルは、図書館の受付にたどり着いていた。
しかし奥の自習机にひっこんでいるシグナスの姿を認めることはできないようだ。
彼らはシグナスの姿を探しつつ、文献調査を始めることにした。
しばらくすると、ドロシーが数冊の本を抱えてシグナスの元に戻ってくる。
■ドロシー To:シグナス
オランの西と言っても広範囲に渡りますが、私の記憶が確かならば「イーエン」という名はこれらの文献の中に解説があったかと思います。

■シグナス To:ドロシー
やあ、それでも何冊か見繕える辺りステキですね。
……読んでるとこ観察とかヤメテね?流石に俺も読書中に珍妙な姿勢は取らないよ?マジデ。

乾いた笑いと共に、見繕って貰った本に目を通し始めるシグナス。
■シグナス To:ドロシー
労働者を眺める趣味はありません、ラグりんが睡眠したりページを折るなどの愚行をしないか見張るだけです。

そう言って椅子に足を組んで座り、シグナスの動きをじーっと観察。
■シグナス To:ドロシー
(内心:何このプレッシャー!?貴様見ているなってレベルじゃねえー!?)
ち、地名に関しては間違い無さそうです。
けど……んん、何だ……?
「モンスターからの襲撃を虹で防いだ」……?
虹、虹……二次、二児?いやちげぇ。と言うか若干きめぇ。
うーん……ドロシーさんは何かこう、心当たりとかありますか?こー言うの。

■ドロシー To:シグナス
二児に心当たりはありませんが、虹……さきほどの絵本のタイトルと一致するのではありませんか?
モンスターを撃退する虹というのは聞いたことがありませんが。
間接的にという意味なら、虹の意味するもの……色、光、雨上がり。
そう言った状況的な要因を示しているのかもしれません。単なる妄想ですが。

■シグナス To:ドロシー
ですよねー。流石に漠然とし過ぎかあ。物理的に壁になる虹だったら、綺麗そうなんで見てみたいところですね。なんかパリンって割れそうですけど。
絵本との符合……魔法の絵筆の能力だとしたら、副次的に虹が出たのかも。海沿いだしこう、津波的な……。
と言うより「モンスター防ぐから虹を書くよ!」とか言われたら俺、思わず張っ倒しかねないですし。
結果的に虹が出たなら、象徴的にこう言った伝承に残り易いとは思うんですけどね。
となると……魔法の絵筆の方向で探ってみるべきかな。ドロシーさん、マジックアイテム関連の資料ってどの辺ですか?

■ドロシー To:シグナス
マジックアイテム関連の文献はそれこそ膨大です。今、見繕って持ってきます。
それから、イーエン地方に伝わる伝承やおとぎ話に関する資料も。

そう言い残し、また本棚の間に消えるドロシー。
おそらく書庫に仕舞い込まれている貴重文献も含め、見繕っているのだろう。
そしてしばらく後、4〜5冊の本を抱えて戻って来ると、そのうちの1冊を机にそっと置いた。
■ドロシー To:シグナス
このあたりから匂います……特に、この『アレクラスト トンデモ伝承500選』という本から。

■シグナス To:ドロシー
何と言うか流石と言うチョイスってかトンデモ!?そう言うカテゴリー!?

タイトルに一抹の不安を感じつつも、ドロシーの選別を素直に信じる事にして目を通し始めるシグナスだったが……。
■ドロシー To:シグナス
………………(じーっ)

■シグナス To:ドロシー
……スンマセン、調子こいてました。素で観察されるととてもこう、何だろうこのドキドキ感。この胸の鼓動、高鳴り、もしかして、恐怖?

冷や汗を掻きつつ、未だにトラウマを払拭し切れて居ない事を思い知っていた。そもそも努力の方向が的外れだった可能性に気付いていない。
■ドロシー To:シグナス
恋愛感情と混同しなかっただけ冷静だと言っておきましょう。
ご安心を。99%の成分は信用しています。残りの1%を警戒しているだけです。

足を組み直し、ガン見続行。
■シグナス To:ドロシー
そりゃまあ、1%くらいはうっかり頁曲げかねないかも知れないですけども。
俺も言われるほど自惚れちゃいませんよ。遊んで楽しいのと恋愛感情は違いますし。
ドロシーさんの方こそ、声掛けられる事多いんじゃ無いですか?
まあ……思ったより慣れてそうなんで安心しましたが。何に慣れてるのかはサッパリですが。

気を紛らわしながらも、調べ進めるシグナス。
■ドロシー To:シグナス
そこから先は立派な私語です、ラグりん。調査を進めなさい。

丸めた羊皮紙をぴし、ぱしと手のひらの上で鳴らしながら。
■シグナス To:ドロシー
おう、アンタッチャブル……っとと、あぶなっ、危うく見逃す所だった。イーエンでドワーフと筆っつったら10中7、8は当りだろう、けど……。
あっらー、キッチリ落ちが付いちゃってる臭いなあ、これは。いやでも、絵筆だけに絞ってたら見落としてたかも知れない訳か。
どの道現場には向かう事になるだろうし……海沿いで行けば図鑑の方も並列出来そうだな。

そろそろ時間かな。ドロシーさん、今日は助かりましたよ。次に来るのは暫く先になりそうですけど、また宜しくお願いします。
とは言え、図書館じゃ静かな話しか出来ませんが。それはそれで、悪くはありませんけどね?

■ドロシー To:シグナス
……お役に立てたようで安堵しました。図書館では静かに会話するものです。もちろん勉学調査に必要な範囲内で。

■シグナス To:ドロシー
……けど思い返すと結構話し込んだ気がしないでも無いような。まあ気のせいでしょう。
付与魔法学部の教授の頭髪のズレも、気のせいの一言であと5年は戦えると言ってましたし。

■ドロシー To:シグナス
……っ……!

無言で机に突っ伏す。全力で腹筋の痙攣を堪えているらしい。
しかし数秒後には耳まで赤くなりつつも無表情を装ってキッと顔を上げた。
■ドロシー To:シグナス
そ……そのような超重要個人的機密事項をさらりと漏らすものではありません。
知ってしまうと言うことは罪を分け合うことでもあるのです。
し、しばらく私は付与魔法学部に行けそうにありません……。

ドロシーの(おそらく腹筋の痙攣によって)震えた最後の声をかき消すように、図書館閉館を知らせるベルの音が、広い館内に重厚に響いてきた。
■シグナス To:ドロシー
大丈夫、一週間単位で1mmずつずらして、最終的に誰にも気付かれずカミングアウトを目論んで居るのはまだ秘密ですから。
……っと、もう閉館時間か。今日はやけに早く感じるなあ。

■ドロシー To:シグナス
……っ……この時間からは図書館もその役目を終えます。よって私語を許可します。
今の暴露も立派な私語ですが、問題ありません。
ですが、胸の内に仕舞うには重すぎるので忘れることにします。

赤い顔のままで出されていた本を閉じ、片付け始めた。
館内に残っていた学生たちも、のろのろと帰り支度を始めたようだ。
■シグナス To:ドロシー
それは常に新鮮な気持ちで見れますね。
ああ、今日の分は俺も片付け手伝いますよ。自分が読んだ本が何処に在るか位、覚えときたいですし。
他の手伝いもしたいんですが、ちょいと仕事が残ってるんで、それはまた今度にしますよ。その頃には色々と、話せる事も溜まってるかも知れませんし。

■ドロシー To:シグナス
……恐縮です。しかしあなたは生徒なのですから、過度の手助けは無用。
ではこちらとこちらの本を。本棚の番号は背表紙に明記してあります。
重要な蔵書は書庫に戻さねばなりませんので、こちらはお任せを。

シグナスは数冊の本をドロシーから押し付けられた。
ドロシーはトンデモ本を始めとする重要っぽい文献を抱えて立ち上がる。
■シグナス To:ドロシー
ま、これでも向学心を無くしてる訳じゃないですからね。……無闇矢鱈に四方八方に対象が広がってるだけで。
ともあれ、ドロシーさんも手伝えれば、一石二鳥ですよ。って、そのトンデモ本も重要な方に入るんですね……。

ドロシーは涼しい顔で人さし指を唇に当てると、カツカツと書庫のある部屋へと向かった。
シグナスが該当する本棚を探して歩いていると、見知った顔とばったり。
今まさに文献調査を終えたらしいイェンスとソルだ。
■シグナス To:イェンス、ソル
ん?よお、さっきぶり。教授の方は如何だったんだい?
……そう言えばリノゲイド教授って海洋生物の研究してたよな。何か西回りの事で話聞けて無いか?
ちょっと、その辺の魔物関係の本が戻ってない見たいなんだわ。

そして閉館のためだろう、鍵を持ったドロシーが再びやってきた。
■ドロシー To:シグナス、イェンス、ソル
では、良い報告を待っています、ラグりん。
あなた方の本来のお仕事も順調に行くよう祈っています。

■シグナス To:ドロシー
有難うございます。ああ、早速ですけど、リノゲイドって教授が海洋生物の研究してるんですよ。
ひょっとしたら、何か心当たり在るかも知れないし、話を聞いてみたら如何ですか?

■ドロシー To:シグナス
リノゲイド教授ですか……少々偏愛的なのであまり関わりたくはないですが。
わかりました、借りを作らない程度に探りを入れておきます。

まるで変人を警戒しているかのよーな物言いであった。


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