七風のお出迎え
〜 1 〜
ぐっすり眠ったはずなのに、妙に疲れ切った身体を引きずりながら、一行は1階へと下りてきた。
朝日を開け放たれた板窓からいっぱいに取り込んで、見慣れたテーブルに淡い光を落としている。いつ見ても安心できる、冒険者たちの「家」の風景だ。
■ジン To:ALL
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不思議なもんだな。一晩ぶりなだけなのに、ひどくなつかしい風景に感じるとは。
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■おやじ To:ALL
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お〜う、やっと下りてきたか。
ちょうど最後のベーコンエッグが焼けたところだぞ。ま、座っててくれ。
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厨房からひょいと顔を出したおやじがそう告げた。
見ると、カウンターそばのテーブルには、6人分の椅子がセッティングされており、木の器にこんもりと盛られたサラダ、焼きたてのロールパン、
カットされたフルーツが人数分乗せられていた。
こんがりとベーコンと卵が焼けるいい匂いが、冒険者たちの食欲を刺激してくる。
■ミァ
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ああ、ステキ匂いが〜〜(>▽、<).。o○うっとりじゅるり
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■リュント To:おやじ
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おやっさん!体を思いっきり動かしてきた後の気分だから特盛で頼むぜ!
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■おやじ To:ALL
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と……トクモリだと……?
あー、いやそのなんだ。相部屋になっちまったお詫びに、朝飯は奢ってやるから。
だが……追加注文は受け付けないぞ?(念押し)
ああ、飲み物は何がいい?
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■ヒノキ To:おやじ
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ホットココアくれ。
毛玉にはミルクな。
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嬉しそうにバッグの端をはむはむして空腹をアピール。
■リュント To:おやじ&ALL
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なんだ〜?
肝心なところが聞き取りにくかったぞ?
全てはおやっさんの奢りだから思う存分食いやがれってか??
よ〜〜し!みんな腹ごしらえは遠慮せず頂くとしようぜ!
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■ミァ To:おやじぃ
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ふっふふのふー。
この腕利きシーフ2人組に向かって、そんなちょちょいの囁き声じゃー聞いてくださいと言ってるも同然でスー!
さーて、朝ごはん朝ごはん〜♪
追加はしないけどもっちろん特盛ならぬメガ盛で!
飲み物はフレッシュオレンジジュースをお願いするでスヨー。
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■おやじ To:ミァ
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メガ盛って待てお前俺のこづかいは
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■アール To:おやじ
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追加は受け付けない…って言い分はわかるが、ミァの分が普通に計算されてるんじゃ、足りないよ(笑)
代金は払うから、もう3人前を追加してくださいよ。
あ、俺はトマトジュースで。
ジュースにはレモンを少し絞ってくださいね。
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■おやじ To:アール
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アール、お前もか!!? お前もフォロー無しなのか!?!?
……ああわかったよ盛ればいいんだろう盛れば!??
メガでもテラでも盛ってやろうじゃないかこのやろう!!
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何かが吹っ切れたおやじはカウンターの裏で、何かを積み上げ始めた。
■ミァ To:おやじぃ
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あ、おやじぃがきれた(=▼=)ノにしし
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■ヒノキ To:おやじ
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いや、私は別にそんな盛らなくても……食いきれねぇよ。
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■アール To:おやじ
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いや、ミァ達だけ追加してくれれば、俺も普通でいいんだが…
言い方がマズかったか?
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■リュント To:ALL
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いえ〜〜!
おやっさん!話せるじゃねえか!!
食い放題だから、何でも食いやがれだってよ!
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おやじが切れたら便乗〜〜
■おやじ To:ヒノキ&アール&リュント
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ああ何でも喰いヤガレ皿まで喰えよコノヤロウ。
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すでに自棄状態。
■ミァ To:おやじぃ
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りくえすとでスカー。なら食べないとですよネー(うんうん)
お皿はぱりぽりカルシウムにいいですかネー(=▽=)
悪夢に疲れた身体もばっちり回復しそうなのでスー。
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■ジン To:ALL
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おまえら・・・ナイトメアの被害者とは思えん元気さだな(^^;
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■ヒノキ To:ジン
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お前らってナンだ、【ら】って。
一緒にすんな、頼むから。
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■リュント To:ヒノキ
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共に戦った仲間なんだから、同調しようぜ〜〜
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■ヒノキ To:リュント
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見習うべきところは見習ってるよ。
悪い癖まで真似する気はねぇだけだ。
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■リュント To:ヒノキ
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なかなかしっかりしているな。
それでこそ、俺の弟子になれるってもんだ。
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妙にくそ真面目に、しかも関心した風で
■ジン To:リュント、ヒノキ>ALL
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夢とはいえ信頼関係を築くには十分な時間だったな。
昨日組んだばかりとは思えんよ。
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■リュント To:ジン
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昔から組んでいるような感覚だよな(笑)
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■ミァ To:リュント
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んにんに、そーなるとこの夢も思えばラッキィだったかもしれませんネー(・▽<)-☆
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なんでもポジティブしんきんぐ。
ふと店内を見回すと、冒険者たちから離れた一角、一番奥のテーブルで、見慣れない男が木製のカード遊びに興じていた。
細身で、ぴったりと身体の線が見える服を着込み、腰には2本のダガーを差している。
山になったカードから一枚ひいてはテーブルに置き、またひいては置く……という仕草を繰り返している。
カードをめくる度ににんまりと笑みを浮かべたり、苦虫をかみつぶしたような表情になったりと、楽しそうである。
■リュント To:ALL&おやじ
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一人で笑ったり嫌そうな顔をしたり気持ち悪い奴だな。
誰かあいつを知っているか?
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多分リュントは知らない奴
■ヒノキ To:ALL
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知らねぇなあ。
ま、あんまお近付きになりたいタイプでもなさそうだけど。
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■ミァ To:ALL
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見た目は、なんてゆーかぺらそうで身軽だからシーフっぽいですけドネー。
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じー。ギルドで見覚えないかどうか観察してみる。
■アール To:リュント
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あんまり遅いから、オッサンを迎えにきたんじゃないのか〜
借金取りが(笑)
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■リュント To:アール
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遅いかな?
遅刻しないようにおやっさんが起こしてくれたんじゃないかな?
ってオッサンって言うんじゃねえ!
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■ミァ To:ALL
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ん〜〜に〜〜〜〜?
やっぱしギルドで見たよーなよーなよーな。
けど、あの時は確か・・・・・・・もっとオネェな感じ、だったでスー??
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じじじー。もうガン見。
そんな冒険者たちの視線には気付いているのか居ないのか、細身の男は最後の山に残された一枚のカードを眺めて、にんまり笑った。
■細身の男 To:ひとりごと?
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あらン、「逆さ月」のカード♪ 今の状況にぴったりじゃな〜い♪
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どうやらああいうタイプは生理的に受け付けないらしい。
■アール To:ヒノキ
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ん、どうした?
“なんぱ野郎”ではなさそうだぞ(笑)
もっとスゴイみたいだけどな(笑)
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最初に言われたコトを根に持っているらしい。
■おやじ To:ALL
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ん? あの人はギルドからの使いだそうだ。
朝飯が終わったらお前らを約束の場所に連れて行くと言っていたぞ。
まぁそんなわけだから、さっさと喰えお前ら。お残しは許さんからな。
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おやじは説明しつつ、テーブルの上にベーコンエッグ・トマト・レタス・ビーフパテ・「きのこ」ソテーなどが何層にもなってパンに挟まれた、塔のごとき物体をテーブルの上に置いた。
もちろん6人分だ。
■ミァ To:おやじぃ
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ああ、やっぱりお使いサンでしたカー。
Σって、にょっはーーーーー!!ヽ(○▽○)ノ
なななんてびゅーちふるでわんだほーなメガめがタワー!!
おやじぃ、おやじぃ・・・・!
ミーは今、ものすごく感動してまスーーーーゥ!!!!
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目がキラキラキラ。
■おやじ To:ミァ
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ミァは何を出しても喜んでくれるから嬉しいよ(笑)
がっつりパワーつけて行けよ。
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ぐっと親指を突き立てる(笑)
■ミァ To:おやじぃ
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おうとも! がってんしょうちでスー!(>▽<)b゛
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ぐっと親指を突き立て返す(笑)
■ヒノキ To:おやじ
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待ておやじ。
リュントとみゃーはともかく、私はこんなに盛れなんて一言も言ってねぇ。
朝っぱらからこんなテンコ盛りにされたって、食い切れるわけねぇだろうがよっ!
それで残すなってのはちょっとヒデェぞ!?
それに、こんなに食ったら太っちまうじゃねぇか……。
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身軽な動きを身上とする盗賊として、そしてうら若き女性としての悲痛な訴えである。
■リュント To:ヒノキ
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残したら、罰金として、ここの食事代おやっさんじゃなくて、ヒノキ持ちだからな(笑)
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■おやじ To:ヒノキ
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俺はそれでも構わんが。いまさら遠慮するなヒノキ。喰いきれないならミァが居る。
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何か自信たっぷりに言いつつ、注文された飲み物もテーブルに並べていく。
■ヒノキ To:ミァ
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みゃー、半分……いや、もっと食え。
私はこれで充分だ。
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上部に積まれたパン、ベーコンエッグ、トマト、レタスを普通の一人前分だけ取り分けると、それでもなお塔の如くそびえ立つ残りを皿ごとミァの前に滑らせる。
■ミァ To:ヒノキ
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んに? 気持ちはめっちゃ嬉しいですけドー。
ヒノキっちー、そりじゃ少ないでスヨー。
ほら、もっとこりくらいは食べた方がいいでスヨー(^▽^)
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超善意で、もう一人前分くらいをヒノキの皿に載せる。
■ヒノキ To:ミァ
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…………。
いや、気持ちはありがたいけど、な?
食いきれねぇからみゃーに回したんだよ。いいから遠慮せず持ってけ。
朝からこんな量、見ただけで胸焼けがするっての。
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そして結局、戻された分には手を付けず。
■ミァ To:ヒノキ
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んにー? そうでスカー?
ヒノキっちってばダイエット子さんなのでスーーゥ。
全然ぷにぷにじゃないですのニー。
そりじゃ遠慮なくいただきまーーーーす!!(>▽<)
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ぱくぱくぱくぱく。幸せそうだ。
■ヒノキ To:おやじ
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まぁ、それはそれとして、だ。
私らの分だけじゃなくて毛玉にもなんか適当に見繕ってくれ。
果物も結構平気らしいから、ハムを少しとそこのリンゴで良いや。
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■おやじ To:ヒノキ
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おう、ちょっと待ってろよ。
……しかし、ずいぶん母親っぷりが板についてきたもんだな(笑)
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おやじはすぐに毛玉の前に小さく切ったハムとリンゴを乗せた小皿を置いた。
毛玉はぽてぽてとすり寄って、いっしょうけんめい啄み始める。
その姿は、夢の中でのやや成長した姿から、縮んでいるように見えた……正確には、眠る前の生まれたての大きさから変化していない、とも言えるが。
■アール To:おやじ
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残したりはしないよ〜、テイクアウトするだけで。
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「それ」を持ったまま、「使いの男」の向かいに座る。
■アール To:細身の男
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そのカードは占いかな?
俺にはどんな先が見えるか…引かせて欲しいものだけど、どう?
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並べていたカードを寄せ集め、細くて長い指先で器用にシャッフルし始める……
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