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SW-PBM Scenario#158
銀のしおり

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去りゆく月影



  西の館・2階ダンスホール

ダンスホールに、再び静寂が訪れた。
一行の目の前には、傷口から血を流しながら浅い呼吸を続けているアバラン。
そして、気絶したままのカボチャと異臭を放つ狼、負の生命すらも失った動物たち。
■リナリア To:アバラン
……。

■ユズリハ To:ALL
ふむ……。

皆、あの剣に触れてはならぬぞ。わらわにははっきりと正体が分からぬが、長い人生の中で研ぎすまされた勘がそう告げておるわい。

ユズリハがぱっぱっとローブについたホコリを払い落としながら、もう片方の手でうつ伏せになったアバランの背中を指し示しながら言った。
一行がダンスホールに入った時に、一瞬だけ見えた青銅色の剣。
同色の鞘に納められており、見えるのは柄の部分だけだ。
■アール To:ユズリハ>ジン
正体は判らないが、状況的に一番ヤバそうな代物ではあるな。
触らないでおきたいが、アバランに付けたままってのも危ないな。

槍の穂先でアバランと鞘を固定するベルトを切り裂く。
■アール To:ジン
ジンさん、お疲れのとこ悪いが、相棒にこれを持っててもらえないか。
アイツなら万が一、呪われる心配もナイだろう。

■ジン To:アール>鎧像
まあ、時間がくれば消えるしな。
・・・呪いに呪いは上書きできないだろうし。
『汝に命ず。魔の小剣を取れ。そして其の主以外に渡すな。』

命令を受けた石従者は重々しい足音をたてながらアバランに近づき、今や背中に乗っているだけとなった青銅色の短剣を手に取った。
見たところ、特に石従者に変化はないようだ。

身体から剣が離れたのを確認して、ヒノキがアバランにロープを掛ける。
■ヒノキ To:ユズリハ
剣が気にならないと言ったら嘘になるけどな、それより私が聞きたいのはアンタの事だよ。
結局アンタ、何者だ? アバランとどんな関わりがあったんだ?

■ユズリハ To:ヒノキ
むぅっ!?
……いや、本当に名前以外のことはちーーとも思い出せんのじゃがのぅ。
生まれも育ちもすべてすこーんと抜けておる。よぼよぼなのに生まれたての気分じゃわい。
まぁ、足掻いても仕方ないので流れに身を任せることにするがの。

ふむ。あとは……アバランとリュントの名にわずかながら聞き覚えがあるくらいか……
そういえば、アバランとは昔……こうして戦ったことがあるような気もするが……
いや、アバランとではなく、似た戦い方をする別の……

後半は自問自答するかのように、ぶつぶつとつぶやくように語っている。
■アール To:ヒノキ
年寄りは都合のいいことしか覚えてないっていうからな。
ま、時間をかけて思い出してもらうとしよう。
アバランは抑えたから、あとは帰る方法だな。

■ミァ To:アール
でスネー。
しかもこのユズリハばーちゃんは、いかにもその典型☆って感じの性格ですシー(=△=)b
帰る方法は……アバランが何か知ってませんかネー?

■リュント To:ユズリハ&ALL
思い出したら教えてくれよ。
耄碌婆さんに記憶を期待するだけ無駄なんじゃないか?
それよりも、この婆さんをピクシーの村まで帰すとするか?

■ユズリハ To:リュント
本人を目の前にしてモーロクとは何じゃっ。
わらわの心はいたく傷ついたぞえ。よよよ〜。

嘘泣きをしながらしゃがみこみ、床にのの字を書き始める。
■リュント To:ユズリハ
年寄りがいじけている絵ほど様にならないもんはねえんじゃねえか?
記憶がないだけだよな?(笑)悪かったよモーロクなんて言って。

■ユズリハ To:リュント
まったくじゃ〜。乙女に対してもっと優しくせい〜。よよよ。

■リュント To:ユズリハ
何十年前だったら優しく出来たんだけどな。
今は、何十年後だから、お年寄りは、より厳しく(笑)

■ヒノキ To:ユズリハ
…………。
【七風】や【ジャックナイフ】てぇ言葉に聞き覚えは?

ぢーっ、と。
疑いの眼を逸らさずに尋ねる。
■ユズリハ To:ヒノキ
おおぅ、そんな怖い顔しおってからに。年寄りを虐めると末代まで祟られるぞえ〜。

ナナカゼ? じゃっくないふ?
さぁ、知らんのぅ。ジャックナイフとは刃物の一種ではないのかえ?
何にせよ、わらわよりおぬしたちのほうが、わらわについて詳しそうな気がするが、どうじゃ?

■アール To:ユズリハ
じゃあ、ばーさん、あんたの名前はフルネームはなんて言うんだ?
アストーカシャって名前…聞いたコトあるかい?

■ユズリハ To:アール
わらわの名か? ユズリハ=アストークスじゃが、それがどうかしたかの?
あすとーかしゃ……ふむ、なにやらわらわの名に良く似ておるのぅ。
妙に懐かしい響きを感じるが……何者じゃ?

くわッと両目を見開きながら、アールににじり寄る。
■アール To:ユズリハ
じゃあ、説明するから聞いてくれ。
ちょっと長いが、ボケるのはナシで聞いてくれよ。
アストーカシャっていうのは、今いる、この館の主人。
ユズリーフ=アストーカシャというらしい。
その友人は「百手巨人」のゼムリャ。
俺たちの推測では、ここは絵本の中に封じられた世界。
ローダリオンの樹という魔法装置と、それを操る者に、自然を支配されるのを恐れたアストーカシャが、抵抗するための…というお話しのハズだが…。
俺たちは、その結末は…知らない。
今こうしているのが、その意に沿っているのかどうかも…ね。
そして、あんたの別名がジャックナイフというふたつ名を持つ存在かもしれない…
ここまでが、だいたいのあらましだ。

■ユズリハ To:アール
ふむ……。

すまんのぅ。やはり、何も思い出せん。思い出せなんだが……
わらわには、「この世界」で為すべきことがあるようじゃ。
おぬしの話を聞いてそんな気がしてきたわい……。いや、モーロク婆のただの勘じゃがの。
アストーカシャとやらは、この館におるんじゃな? ならば、後で挨拶にでもゆくとするかの。

感謝の笑みを浮かべ、アールの肩をぽんと叩いた。
■ミァ To:ユズリハ
アストーっちならこの屋敷の1階の肖像画にいますから、そこに会いに行ってくださいネー。
きっと喜びますヨー。そんな気がしまスーゥ。

■ユズリハ To:ミァ
肖像画かえ。何やら面白そうな予感がするのぅ。
うむ、ありがとうよ。

■アリス To:ALL
あ〜っ!
やっと思い出したよ! あの剣、ディスペア・ソードだ!

詳細な剣の能力を説明する。
■ミァ To:アリス
Σ(・○・)!? そんな能力があったんでスカー?
アリスっち博識ー! すっごいのでスー!(きらきら)

■ジン To:ALL
魔剣の二つ名は「フェイト・オブ・アンデッド・ナイト」。
ファントムと化して、次から次へと魔剣を継承していくわけだ。
この剣といい「愛欲の傀儡針」といい、人間とはつくづく恐ろしい生き物だと思い知らされるよ。
ここでアバランを殺せば、確かに憑依したファントムを滅ぼすことはできる。
しかしアバランは助かることなくファントムと化し、次の犠牲者を求めて永劫の時を過ごすことになるな。

■リナリア To:ジン
そんな……。
あーくん……いつのまにそんなことに……。

■アリス To:ALL
ファントムに操られてたから、別人みたいになっちゃってたんだね。
……でも、ファントム退治はボクたちには出来ないよ。どうしよう?

■ジン To:アリス、ALL
ミァの言っていた寒仙桃の伝承では、魔を退けるそうだ。
今こそ試してみる時じゃないか?

■ミァ To:ジン、ALL
んに、ミーもそれに一票でスヨー。
効果があるか分からないですけど、そんなのそれこそやってみなきゃわかんないですしネー(・▽<)

先程アリスから手渡された桃を軽く掲げる。
■アール To:ユズリハ
もうひとつ付け足すなら、アバランに憑いているのは、もしやアストーカシャに敵対する者ではないのか?

■ユズリハ To:アール
先のおぬしの話と合わせて考えると、その可能性はありそうじゃの。
それが何者なのかは、わからぬがな……。
わらわの記憶の底にそやつがいるのなら、何とか思い出したいところじゃの。
……。
むぅ〜、知恵熱が出そうじゃわい。

透き通った瞳でそう語ったあと、ばりぼりと白髪の頭を乱暴に掻いた。
■ノール To:ALL
……あ、あれ? おいら、目がおかしくなっちゃったのかな?

ノールがあたりを見回し、不思議そうに目をこすっている。
つられて周りに視線を巡らせた者は気付くだろう。
ダンスホールの壁や床、テーブル──そればかりではない、窓の外に見える風に激しく揺れる針葉樹の森でさえも──まるで水面に浮かぶ風景のように、ぐにゃりと歪み出したのだ。
■ジン To:ALL
元に・・・戻るのか?
術者を倒すと魔法も解ける、ってことかな。

■リュント To:ノール&ALL
お前だけじゃないみたいだな。
俺の目にもおかしく映っているぞ?

■アリス To:ALL
ぐにゃぐにゃ〜♪

■リナリア To:ALL
私も、ぐにゃぐにゃしてます……。
気持ち悪い〜。

■ミァ To:ノール&ALL
なんでですかネー。ミーの目にも、ぐにゃぷーに映ってるでスヨー。
ミーとノールんが一緒におかしくなってるなんて解せませんネー(=△=)

■ノール To:ミァ
あっはっは、ミァっちってば照れちゃって〜♪
おいらたち、いつでもどこでもシンクロ率200%じゃないかまいはにー♪
……う、うぷっ。

歪む風景に酔ったらしく、ぐらりとよろめきながら。
■ミァ To:ノール
ふっ、この程度に負けるとは……まだまだ男気が足りないでスネー(’▽’)

■ノール To:ミァ
Σ お、おいらはミァっちの前では倒れないぃぃ!!!

必死で両足で踏ん張り。
■ヒノキ To:ALL
お気楽に言ってる場合かっ。
どーゆー状況なんだよこれ?
くそ、やっと毛玉を突っ返す相手も見つけたってのに……。

慌ててベランダへと出る窓の方に駆け寄り、顔を出して外に視線をやる。
先程の声の主……おそらくは毛玉の親、がその辺にいないかと捜す。
■ヒノキ To:毛玉
おい毛玉、お前も声出せ。
ひょっとしたら聞きつけてさっきの奴が戻ってくるかも知れねぇ。

■毛玉 To:ひのき>そと
ぴ? ぴぴぴ。

きゅ〜〜〜〜〜〜っ。

ヒノキの言うことがわかったのか、それとも窓の外で舞い落ちる雪を見たせいなのか。
毛玉はいっしょうけんめい首を伸ばして、何かを恋しく思うような切ない鳴き声を上げた。
だが、その声に反応する気配はない。
ヒノキが見上げた真っ暗な夜空に浮かぶのは、明るく真円を描く月のみだった――
そう思った瞬間、その月を横切る影が見えた。
遠すぎてよく分からなかったが、そのシルエットはお伽話に出てくる「ドラゴン」の造形によく似ていた。

それは不安定な飛び方で月夜を切り裂きながら、東の方へと飛び去っていく。
■ヒノキ To:毛玉の親(?)
だぁ〜っ! 待てこらーっ!
帰るならちゃんとコイツを引き取ってからにしろ〜っ!!

叫ぶ。
だが、白い点のようになってしまったドラゴンの姿は、やがてそのまま闇夜に消えてしまった。
■毛玉
きゅ〜。

落ち込んだ様子で、小さく丸くなる。
■ユズリハ To:ALL
むぅ? どうしたおぬしら、何ぞ変なモノでも拾い食いしたのかえ?
わらわは何ともないぞよ。

ユズリハも皆にならって辺りを見回すが、きょとんとして首を傾げている。
■ミァ To:ユズリハ
ユズリハばーちゃんはなんともないんでスカー?
となるとこりはミーたちだけに起こった作用??

むー…とユズリハ、歪む景色、アバラン、桃とぐるりぐるり見回す。
迷っている暇はなさそうだ。
■ミァ To:ALL
んにー。なんか変なことになっちゃってるし、こう、たいむりみっつな感じいっぱいなので、とりあえずアバランに桃ぶつけてみるでスネー。

えい。
アバランの頬にぴとっと桃をくっつけた。
しかし、何も起こらない。アバランは変わらず苦しげな浅い呼吸を続け、ぴくりとも動かない。石従者が持つ青銅の剣にも変化は見られなかった。
ミァには、自分のまわりの風景がよりいっそう強く歪んだように感じた。
■ミァ To:ALL
ありゃりゃのりゃ。はずれ(・x・)?

・・・・・・・・・って、うーーーーにーーーー…(@△@)!?

■ジン To:ALL>ミァ
ダメか・・・
操られるものに対しては効果がないようだな。
ならば・・・。
ん?ミァ、どうし・・・

そこで、ミァの意識は途切れた。
ことの成り行きを注意深く観察していた皆の前で、ミァの姿が何の前触れもなく半透明になってゆき、次の瞬間空気にとけ込むようにしてふっと消えてしまったのだ。
■ノール To:ミァ
Σ えええぇーーーっ!! ミァっち!!?
消えた! 消えちゃったよぅ〜〜〜っ!!!

動揺しまくったノールが駆け寄り、空気をかき集めるような仕草をするが、何も起こらなかった。
支えを失った桃がころんと転がり、ミァが身につけていた羽根付きピン留めと指輪ふたつが空中に残され、重力に従って石床にぽとりと落ちた。
■ジン To:ALL
ミァは先に帰ったか・・・あまり時間はないな。

■アール To:ジン
消える前に謎を解かないと…。

アバランの動きがしっかりと封じられているのを確認すると、リナリアはヒノキに頼まれていた回復の準備を整える。
緊張に震える手をかざし、短く詠唱すると、アバランの目が静かに開いた。
すぐに自分の身が拘束されていることに気づいた様子で、口の中に溜まった血を忌々しげに吐き出すと、一行を睨みつけた。
■アバラン To:ALL
……回復させて……尋問でもしようってのかい?
残念だがもうすぐ「物語」は終わる。そして、もう一度繰り返される……

■アール To:アバラン
もう一度?

■アバラン(?) To:アール
そうだ……一度閉じた「絵本」は、もう一度最初から読むより方法がないのさ……

そして、今度はリュントとアールが立っていられないほどのめまいを感じた。
他の者から見れば、彼らの足元が徐々に半透明になっているのがわかるだろう。
■アール To:ALL
次に消えるのは俺達かよ…
なにか…考えろ…考えろ…

ちょっとまてよ、邪悪の本体は剣の方だろ?
アバランもただ支配されてるだけなら、その剣の…宝石に桃を…

アールがそう言った瞬間、アバランの表情に強い緊張が走った。
■ジン To:、ALL>ストサ
うむ。ではやってみよう。
『汝に命ず。其の果実を拾え。そして魔剣の柄に果実を押し付けよ。』

ジンがそう告げたとき、リュントとアールの意識が途切れ、暗転した。
ふたりの姿は先程のミァとまったく同じように音もなく掻き消え、身につけていた腕輪とミスリル銀の鎧、ルーンスピアが石床に落ちて転がった。
■ジン To:リュント、アール
リュント・・・アールもか。

■アバラン(?) To:ジン
ま、待て………
よせ! やめろ! この低俗エルフがっ! 今すぐその人形をとめろ!!
や……やめ……やめろぉぉおぉぉぉっっ!!!

石従者がゴリッと音を立てて動き出す。
その命令を実行するには、ほんの数秒しかかからないはずだったが、アバラン──に取り憑いている者──にとっては、それは永遠とも感じられた、恐怖の時間だったことだろう。
■ジン To:アバラン
ふむ。どうやら芝居ではないようだな。
最後までよくわからんやつだったが、まあ大人しく眠ってくれ。

桃が剣の柄に埋め込まれたブラック・ダイヤモンドに触れた瞬間、神聖なる神の力が働いたことが、その場にいた神官たちにはわかった。
現世に縛られた哀れな不死者を物質界から抹消する、神聖魔法「イクソシズム」の奇跡と同じ力。
鈍く輝くブラック・ダイヤモンドから悲鳴のような、骨が軋むような音が鳴り響く。
■??? To:ALL>ユズリハ
ああぁぁ……まさかこんな……こんなところで……きえる……なんて……
ゆ、ユズリハぁぁ……
お、俺様が滅びても……悪夢はまだ終わらんぞ……
貴様に関わるもの全てを抹殺するまで……終わらんのだ……!

ぐっ、ふはっはははは……あぁ…………

ブラック・ダイヤモンドが砕け散り、その瞬間アバランの表情が一瞬だけきょとんとしたものに戻った……かと思われたが、確かめる間もなくすぐにその姿が透明になり、消えてしまった。
残された冒険者たちの姿も、次々と半透明に犯されていく。

ただひとり、ユズリハを除いて。
■ユズリハ To:ALL
……な、なんじゃ。わらわだけが残ってしまうのかえ?
寂しいのぅ〜。

そして、ユズリハ以外の全員の意識が闇の中に落ちた。


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