蜘蛛と老婆
飛び出していったコラレットと、カサカサ疾走する謎の足音を追って、冒険者たちはピクシーの村へと急いだ。
降りしきる雪と、冷たくそそり立つ針葉樹に視界を邪魔されながらも、ひたすら走る一行。
ようやく木々の間隔が開けた、広場のような場所が見えてきた。
桃の甘い香りが鼻孔をくすぐる……しかし食欲を満たされる喜びに浸る間もなく、異様な光景が彼らの視界に飛び込んできた。
■コラレット To:村のみんな
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(フェアリー語)
みんなーっ! 大丈夫…… きゃーっ!?
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みずみずしい桃の木々に囲まれた、寒さの中にあって緑にあふれたピクシーの村は、いまや恐ろしい数の巨大な蜘蛛によって蹂躙されていた。
一体一体の大きさは、体長40センチほどはあるだろうか。
赤く色づいた桃を食いちぎり、糸を木々に張り巡らせ、美しかったであろう景色を、うごめく蜘蛛の体──緑と黄色のまだら模様──で埋め尽くしている。
■茶髪のピクシー To:コラレット
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(フェアリー語)
コラレ……ット……たすけて……
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地面に群がる蜘蛛の中から、か細い声が聞こえた。
蜘蛛たちが吹き出した糸で絡め取られたピクシーたちが、そこから逃げ出そうともがいているのだ。
■ミァ
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あああああ!! な、なんてことをなんてことをデスーー…!
ピクシーっちたちと食べごろの桃が!!!
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■ジン
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こいつらの親玉が鎧像を盗んだ犯人なら・・・足跡が消えるのも説明がつくな。
よし・・・
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ジンは蜘蛛を操る者が鎧像の手がかりを持っている可能性が高いと判断し、戦闘に参加することにした。
そして村の一番奥──何故か人間が住めるくらいの大きさの小屋のすぐ前では、同じように蜘蛛に囲まれ、全身に糸が絡みついている腰の曲がった老婆が立ちつくしていた。
■コラレット To:老婆(ユズリハ)
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(フェアリー語)
ユズリハのばっちゃ!! 逃げてーっ!
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■ユズリハ To:コラレット>冒険者たち
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(フェアリー語)
この状態で逃げられるかえ。わらわとおぬしらは一蓮托生なんじゃ。
(共通語)
……お? 人間かえ? ……いや、何やらバラエティに富んだ姿形の奴らがおるの。
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ユズリハと呼ばれた老婆は、冒険者たちの姿を見るなりそう言うと、からみつく糸の奥でにやりと笑った……気がした。
■アリス To:ピクシー達&ユズリハ(フェアリー語)
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大丈夫……じゃないよねっ。
今助けるからっ!
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そういいつつも、戦闘は仲間に任せジンの側でボディガード役として待機。
同時に、蜘蛛を操っている筈のアバランの姿を求めて周囲を見回す。
■ジン To:アリス>ALL
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すまんな、アリス。
蜘蛛単体は大した奴じゃないが、住人の救出を考えるとやっかいだな。
さて、どう使うか・・・。
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■ヒノキ To:ユズリハ
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ばーさん、待ってろ!
今そっちに行くからな。
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真っ直ぐにユズリハの元へと駆け出す。
■ユズリハ To:ヒノキ
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はて、わらわには、こんな大きい孫娘がおったかのぅ。
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すっとぼけた表情でそうつぶやく。
■ヒノキ To:ユズリハ
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この緊迫した時にボケた事言ってんじゃねぇよっ!
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■ユズリハ To:ヒノキ
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おぉ、怖い〜。年寄りは大切にせんと、末代まで祟られるぞえ〜。
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白い糸に絡まれて、曲がった腰のままそうつぶやく姿は、ある意味不気味だった。
老婆の余裕もさることながら、ピクシーと「フェアリー語」で会話した事に違和感を感じるアール。
不信に感じ、眉をひそめながらも、老婆が窮地である状況には変わらない。
■リュント
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やっと試し切りのチャンスが出来たか!?
さ〜野郎ども!俺に続け〜〜!
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一人で勇ましく突撃(笑)
しっかりと手には銀のバスタードソードを握り締めている
■ミァ To:リュント
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リューちゃん、魔剣分はしっかり働いてくださイヨー!
悪の蜘蛛親分を倒すのでスー!
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同じくピックを構えて蜘蛛退治へ。
■リュント To:ミァ
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星の数勝負だからな!
少ない方が、多い方に今日の晩飯おごりだからな!
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■アリス To:リュント
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もうっ、ゲームじゃないんだよっ。
マジメにやってよねっ!
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言いながら、まだ距離があるのでその場でロングボウを手にする。
■リュント To:アリス
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殺し合いを真面目にやってらんないだろ?
せめて、ゲーム感覚位に麻痺させないとな(笑)
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■ヒノキ To:コラレット
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おい、コラレット!
前にもこの蜘蛛が村を襲ったことはあるのか?
もしそうなら、そん時はどうやって追い返した!?
闇の精霊とかは効くのか!?
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ユズリハへと駆け寄りながら大声で。
■コラレット To:ヒノキ
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(フェアリー語)
蜘蛛に襲われたのなんて初めてだもん! 前は毛虫とか芋虫だったわ!
え、えっと……その時と同じように、闇の友だちに頼んでみる!!
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