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SW-PBM Scenario#158
銀のしおり

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プロローグ



 オラン、某所

■女の声 To:?
邪魔するわよ。

相手の顔色も確認せずにそう言うと、流れるような金髪を気怠げにかきあげた女は、懐から羊皮紙の束を取り出した。
ミミズがのたくったような文様のデスクにそれを置くと、細い指先でついと相手の方へ押しやり、愛想笑いを浮かべる。
薄暗い室内でも、その美しさは際立っていたが、──年齢はよくわからなかった。
■金髪の女 To:?
「報告書」。兼、あたしの推薦書。
まぁ、すぐにってわけにはいかないでしょうけど。

■? To:金髪の女
拝見しよう。

相手は女の美しい指先を愛でるように見つめた後、「報告書」を手に取った。
どこを見ているのかわからない視線のまま、それを次々とめくっていき、最後のページにたどり着くと──上目遣いで女を見つめる。
■? To:金髪の女
……いろいろと問題も多いようだが。
それを上回る実績があるようだ。
ちょうど今、頭の痛い問題が持ち上がっていてね……ある意味、実力を試すには丁度良いかもしれん。

ところで……彼はどんな容姿をしている?

■金髪の女 To:?
実際に会うまでお楽しみにしてみたら? 少なくとも、銀の網亭に同名はいないわよ。
まぁ、どうしてもって言うなら──

女はデスクの棚から羊皮紙を一枚、勝手に抜き取ると、高価そうな羽根ペンにインクを上品につけ、ペン先をさらさらと動かした。
満足げに頷いてからそれを持ち上げると、相手に向かって突き出してみせる。
■金髪の女 To:?
どう? こんな感じ。今日はちょっと上手く描けたわよ。

■? To:金髪の女
……この男はデーモンなのか?
それに、こっちのおチビさんは何だ……付け耳か? アライグマ?

■金髪の女 To:?
んもう、ちょっと目と鼻の位置がズレただけじゃないの。
こっちの子はちょっと描きたかっただけよ。それに、付け耳じゃなくて、おだんご頭よ!

憤慨した様子で羊皮紙をくしゃっと丸めると、乱暴に壁に向かって投げつけた。
室内を照らすロウソクの炎がわずかに揺れる。
■金髪の女 To:?
そんなことより……さっき言ってた「頭の痛い問題」って何なの。
別に首は突っ込まないけど、いきなり捨て駒みたいな使い方はしないでしょうね。
せっかくまとめた「報告書」を無駄にはしたくないのよ。

■? To:金髪の女
それは……彼とその仲間たち次第だと言っておこうかな、“蛇使い”よ。

相手は軽く曲げた人さし指を前後に動かし、「耳を貸せ」とジェスチャーをしてみせる。
金髪の女は怪訝そうな表情のまま、そっと頬をよせた。
■? To:金髪の女
…………。

■金髪の女 To:?
…………。

耳打ちが終わると、金髪の女は何とも言えない微妙な表情を相手に向けた。
■金髪の女 To:?
……最後まで見学して行けないのが残念だわ。
じゃあ、後のことはよろしく。
今度はそっちが「報告書」を書く番よ──失敗しても、成功してもね。

金髪の女は軽くウィンクして立ち上がると、相手が口元に笑みを浮かべたのを確認してから、その薄暗い部屋を後にした。
黒い外套をすっぽりと被りながら表へ出ると、彼女の姿は完全に夜に溶けてしまう。
■金髪の女 To:ひとりごと
やれやれ、まるで御伽……。
鬼が出るか蛇が出るか……蛇はもう出てるか。
死ぬんじゃないわよ。

そうつぶやいて、女は今度こそ暗闇の中へ消えて行った。

 銀の網亭・ある雨の日

■少年の声 To:鼻歌>おやじ
♪天がよぶ〜地がよぶ〜人がよぶ〜♪
♪愛を掴めと叫んでる〜♪

おっちゃん、久しぶり〜っ!

まだ開店準備もおぼつかない早朝に、元気よく扉を蹴破って銀の網亭に入ってきたのは、背中にハープを担いだ旅装のグラスランナーだった。
外は雨なのか、マントからぽたぽたと雫が落ちている。
■おやじ To:グラスランナーの少年
おお、お前は……確か。
久しぶりだな。うちに来てくれたのはこれで2度目じゃなかったか?

■グラスランナーの少年 To:おやじ
おっ! すっげぇ前のことなのに覚えててくれたんだな! おいら嬉しいぞっ!
ところで、おいらのすーぱーびゅーちほーわんだふりゃふぃあんせの、ミァっち知らない?
おいら、トールクーベで宿の手伝いに飽きたから、む……むしゃしゅぎょーの旅に出てたんだ! 寂しがらせちゃったかと思ってさ〜!

キラキラした瞳で一気にまくしたてると、店内を落ち着きなくキョロキョロし始める。しかしその視線はしっかりと、いい匂いの漂ってくる厨房にも向けられていた。
■おやじ To:グラスランナーの少年
ミァ? ああ、あいつなら何でも「アレクラストひみつの大食い大会」とかいうのを探しに旅に出るとか言ってたな。
本当か嘘かは知らんが……
おかげで仕入れが普段よりかなり減って……いや、何でもない。

■グラスランナーの少年 To:おやじ
お、大食い大会!? それならそうとなぜ、おいらに知らせてくれなかったんだ〜! ミァっちのいけず〜! 相変わらず照れ屋さんだぜっ!

バックに雷を背負って驚いた後、照れたような笑みを浮かべながら地団駄を踏む。
そしてふと真剣な表情になると、自分の懐に手を当てた。
■グラスランナーの少年 To:ひとりごと>おやじ
……う〜ん……どうするかなぁ……やっぱ直接……(ぶつぶつ)

おっちゃん、まいはにーはいつ帰って来るかわかんないんだよな?
んじゃ、おいら別のとこに行く! 今この店、なーんも依頼が来てないみたいだし!

■おやじ To:グラスランナーの少年
確かに今は仕事の紹介はしてやれないが……ミァが目的なら、しばらくここで待ってみたらどうだ? 

■グラスランナーの少年 To:おやじ
だーいじょうぶっ! おいらとミァっちは固くて太い真っ赤なワイヤーで結ばれてるんだから〜♪

じゃーなっ、また来るぜ〜〜♪

しゅたっと手を挙げて一方的に宣言すると、嵐のように叫びながら出て行った。
■おやじ To:グラスランナーの少年
やれやれ……あれはじっとしているのが嫌だって顔だな。それにしてもミァの奴、いつのまに……。


 銀の網亭・ある晴れた日

■おやじ
ん、なんだこりゃ?

それから幾日か経ったある日。
開店の準備をしようと、腕と首を大きく振りながらカウンターへ向かおうとしていたおやじは、ふと依頼用の掲示板の異変に気がついた。
見覚えの無い、依頼の相談も受けた記憶も無い貼り紙が一枚、そこに当たり前のように追加されている。
しかも掲示板のど真ん中に、目立つように。
■おやじ
夜が明けたなら……七風の扉を……開け……訪れよ……って、いたずらか?
にしても、相談も無しに貼られてもなぁ……ははぁ、さてはおかみか?

何が楽しいのかにやりと口元を緩ませながら、しばらくそれを眺めるおやじ。
しかし、差出人とおぼしき署名を目に留めると、ふとにやつきが止まった。
■おやじ
ああ、そうか……。

そろそろ、帰って来る頃だろうな。
まずは一杯飲んでもらって、落ち着いてから話すとするか……。

おやじはその貼り紙を迷いもなく一気に剥がすと、さっさと丸めてポケットに入れてしまった。


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銀のしおり

GM:ともまり