SW-PBM Scenario #157

#157 衛視の心得

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バーレイン商会前
夜が明けて、ゾフィーは昨日の約束の通り、アダマス商会前に行った。
少し遅れて、一人のドワーフが事務所から出てきた。
■ドワーフ(ガリソン) To:ゾフィー
お主が今日からうちの製鉄所で働いてくれるゾフィーさんかな?
儂が親方をやらせて貰ってるガリソンだ。
宜しくな。

■ゾフィー To:ガリソン
おはようございます、ガリソン親方。
気持ちのいい朝ですわね。
はじめまして、ゾフィーと申します、こちらこそよろしくお願いいたします。

■ガリソン To:ゾフィー
おう。宜しくな。
それで、だ。お主は製鉄に関してどれだけの知識を持っているかいのう?
その話の内容で、やって貰う仕事が決まるんじゃ。
出来るだけ具体的に話して貰えると助かるんだが。

■ゾフィー To:ガリソン
そうですわね、基本的な作業は一通り頭に入っているつもりです。
鉄鉱石を選別し、砕いた欠片を高温にさらして製錬し、還元して鉄の成分を取り出す作業と申しあげたらよろしいかしら。
具体的にという話になりますと、燃料が石炭なのか、木炭なのか、また加熱を行うのか高炉なのか、ふいごなのか、などによっても変わってまいりますが、こちらではどんな仕組みを用いておられるのでしょうか。

ちなみに、わたくしの専門は刀工ですので、焼き入れを行って玉鋼にする方法も存じてはおりますが、そこまでいきますと、このような大規模な加工所向きではございませんわね。
それに今は、鉄のほうが鋼より需要が多いでしょう?

……おっと、話がそれかけましたわね、失礼しました。

■ガリソン To:ゾフィー
……こらあ驚いた。
そんだけ知識がありゃあ十分さ!
こりゃあ良い仲間に巡り会えたってことをブラキ神に感謝しないとな。

それじゃあ、何か質問がなければ、早速製鉄所に案内するぜ。

■ゾフィー To:ガリソン
ブラキ様のお導きが皆に与えられますように……。

……知っていることと、実際に動くこととはまた違いますからね。
いろいろお教えいただけると、ありがたいですわ。
ご案内お願いいたします。

■ガリソン To:ゾフィー
そんなに謙遜するこたあない。
さあ、ついてきな。仲間達に紹介するぜ。

ガリソンはそう言うと、製鉄所に向けて歩き始めた。
バーレイン商会・製鉄所
ガリソンに案内されて到着した製鉄所は活気に満ちていた。
屈強な男達が声を掛け合いながら楽しそうに作業をしている。
ガリソンが手を叩きながら集合するように言うと、作業のキリが悪い人を除く全員が集まってきた。
■ガリソン To:ALL
お前ら、この人が今日から俺たちと一緒に働いてくれるゾフィーだ。
仲良くしてやれ。
では、以上だ! 作業再開!

作業員達は一斉に自分の持ち場に戻って行った。
■ガリソン To:ゾフィー
と言う訳で、今日はあんたに一通り俺がやり方を説明する。
明日からは一人で作業をして貰うぜ?
しっかり話を聞いてくんな。

■ゾフィー To:ガリソン
ひとりで……ですか、わかりました。
どういうことをすればよろしいのでしょう?

■ガリソン To:ゾフィー
ああして、こうしてこう……とまあ、まずはこんな感じでやってくれ。
それが終わったら次だ。

ガリソンは矢継ぎ早に説明を行った。
しかし、説明は的確で、ゾフィーは苦もなく作業をこなすことが出来た。
彼女はそのまま作業の手を止めることなく、さりげなくガリソンに話しかける。
■ゾフィー To:ガリソン
的確な説明恐れ入ります、流石親方を務められるだけはございますね。
この仕事に就かれてどのくらいになりますの?

■ガリソン To:ゾフィー
ん? 儂か?
かれこれ25年くらいこの仕事をやっとるのう。
そこらの人間の若造が鼻水を垂らしているころからじゃよ。
あいつらは儂の子供のようなもんじゃわい。この街で生まれ、この街で働いている立派な若者じゃよ。

■ゾフィー To:ガリソン
なるほど……それでは、こちらに勤めておられる方は、皆様バーレイン商会生え抜きということになりますかしら。

■ガリソン To:ゾフィー
そうなるなあ。
親父の代から続いてって奴も居るし、生え抜きには間違いないわな。

■ゾフィー To:ガリソン
それだけ、老舗の重みがあるということですかしらね。
この街は、いくつもの商会が競合しているようですから、人材の確保もいろいろ苦労があるのかと思っておりましたが。

■ガリソン To:ゾフィー
いや、割と困っておらんよ。
街から流れてくる連中もいるし、近隣の村から冬場だけ働きに来る連中も居るからのう。
それに「街を愛する心」とでもいうのかのう。
そんな感じでみんなヤマに愛着を持ってるから、この仕事に誇りを持っていると儂は思ってる。
だから、働き手が足りなくて困ったことはあまりないのう。
まあ、この所の急な増産にはちと困ってたがの。
お主の様な者が来てくれたから、暫くは安心だがね。

■ゾフィー To:ガリソン
ヤマに愛着ですか……よい言葉ですね。
誇りを持てる仕事場というのも、それだけ安定した運営ができる鉱脈があるというのも、羨ましいことです。

鉱山の入口に警備兵が立っていたり、物々しい雰囲気でしたので、来たときはどうなのかと思っておりましたが……。
あれはなにかございましたの?

■ガリソン To:ゾフィー
ああ、あれは一応気休めに立ってるだけじゃ。
その証拠に、あんまりやる気なさそうに見えたろう?
あれは領主の私兵でな、この街の者ではない。
一応代々の決まりで、鉱山への出入り管理の為だけに居る張り子の虎って訳じゃよ。

■ゾフィー To:ガリソン
代々の決まりですか……その為に私兵をつぎ込ませられるとは、領主も楽ではございませんね。
まあ、この景気ですから、街から入る収入もそれなりに得られてはいるのでしょうけれども。
住民と領主の結びつきなどはどうなんでしょう。
先のお言葉、あまり尊敬されているような口振りにはとれなかったものですから。

■ガリソン To:ゾフィー
一言で言えば「空気」じゃよ。
良い感情も悪い感情も持っていないのが正解じゃな。
代々の領主の中には、積極的に街に出てきたのもおったが、今の領主は余り街の者の前に姿を現さんからな。

だから今の街の運営は、実質各商会がやっているものだしのう。

■ゾフィー To:ガリソン
派遣されると言う形では愛着というのも、わきづらいのでしょうかしらね。
とはいえ、責任というものもあるでしょうに。

その運営というのは、どんな形で割り振られておりますの?
アダマスさんと今の領主とが親しいとかいう噂も耳にしましたが、役割から結びつきが生じたとか、そんな話はございませんか。

■ガリソン To:ゾフィー
簡単に言えば、商会長達+住民代表数名の合議制だな。
バーレインとチェイス派が多数を占めておる。
徴税・戸籍の整備その他諸々……まあ半分役所みたいなもんだな。
アダマスは元々後発だったから、余り街の運営には係わっとらん。
そのへんもあるのじゃろうなあ。今の代に変わってから、ドマリを
合併してみたり、領主が変わってから擦り寄っていったりと、必死なようじゃよ。
ここだけの話、アダマスは領主に擦り寄って、バーレインやチェイスを追い落としたいんじゃ無いかと噂されとる。

■ゾフィー To:ガリソン
なるほど、アダマスのところは2代目ということなんでしょうか。

成り上がりたい者同士の思惑が一致したというあたりなのかしら。
追い落としというのは、まだ噂レベルの話にすぎませんの。
ドマリが合併させられたという話のようですし、バーレインやチェイスがなにもせずに様子をみているとも考えにくいですけれども。

■ガリソン To:ゾフィー
ああ。
バーレインもチェイスも古狸だから大丈夫じゃろ。
そう簡単に権力を握られたりはしないとは思うのじゃがな。
まあ、儂に話せるのはこの位じゃ。
ドマリは、若旦那が投機に失敗したから経営が傾いたらしいし。
それを丁度商売を広げたかったアダマスが吸収、というのも、まあありふれた話じゃろうて。

■ゾフィー To:ガリソン
ええ、ありふれてますわね。
この街で採掘されるのが鉄鉱石だけだという話と同様、堅実で揺るぎのない……。
……本当にそれだけなのかしら、まあ、その方が平穏な世界で過ごせるのでしょうけれども。

■ガリソン To:ゾフィー
まあ、な。
儂ら庶民は要らんことを気にしては生きていけないからのう。
基本的にお上のやることには、よほど儂らに影響が出ない限り黙認というのが庶民の生きる道じゃよ。

■ゾフィー To:ガリソン
それで生きていける……ここは本当にいい街ですわね。
この街の誇りが、これからも保たれることを願ってやみませんわ。
その為に、わたくしもがんばりませんとね。

……おっと、そちらの欠片を取っていただけませんか?

■ガリソン To:ゾフィー
ほれ。
まあ、お主は見所があるし、出来れば長く働いてくれると嬉しいわ。
じゃあ、儂はあっちで作業しているから、何かあったら呼んでくれ。

ゾフィーはそのまま夕方まで働いた。
作業員は概ね良い人ばかりで、トラブルもなく仕事を終わることが出来た。
労働時間も、ちゃんと最初に聞いた就業時間通りだった。
最後に日当を貰い、割り当てられた寮(一人部屋)に帰宅した。
なお、バーレインの寮には門限は存在しないようだ。

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GM:teshima