オラン・下町 |
今宵もオランの下町は一仕事終わった後の酒盛りで盛り上がっていた。
それからしばらく後、夜半も過ぎようかという時刻に一人の酔っぱらいが家路を急いでいる。
今夜はよく晴れて、夜空に満月に近い月が輝いている。
これではいくら夜道といっても歩くのに支障はない。
かなり酔ったまま、男はふらふらと人々が寝静まった街を歩く。
■?? To: |
ウォォゥゥ―― |
……どこからか犬?の鳴き声が聞こえる。
いや、これは犬にしては明らかに大きすぎる。
しかし、酔っぱらいは何ら注意することなく先ほどまでと同じように歩き続ける。
そして、ある丁字路に近づいたとき……男は見てしまった。
■?? To: |
ウゥゥ―― |
そこには、月明かりに吠える――毛むくじゃらの怪物の姿が。
怪物は男に気づいたのか、振り返って飛びかかってきた!
■怪物 To:酔っぱらい |
ガゥルルゥゥゥ―― |
■酔っぱらい To: |
ひぃー!! |
男は慌てて逃げ出そうとしたがその無防備な背中を怪物の爪が抉り取った。
その一瞬後、男はあまりの痛さに声も出せずその場に倒れ伏してしまう。
■怪物 To: |
ウゥ―― ワォォォォォン―――― |
怪物は月に向かって長く長く吠え、獲物を捕まえた事を喜んでいる。
そして獲物にとどめを刺すべく、爪を振り上げたとき……
■近所の住民 To: |
こっちか!悲鳴が聞こえたのは! 急げ!……誰か衛視隊に連絡したか? ようし、俺とお前で見てみるぞ! |
先ほどの悲鳴に気づいた住民だろうか。
手に長い棒などを持って男たちが近づいてきた。
怪物は、どうやら邪魔が入った事に気づいたらしい。
あっという間に屋根の上を飛び跳ねて去っていってしまった。
住民たちはその姿を見ることなく――。
■近所の住民 To:酔っぱらい |
おい!どうした!大丈夫か! しっかりしろ! |
幸いにして酔っぱらいの男は、息絶える前に住民たちに助けられた。
これが、しばらくオランを騒がせる事件の発端だった。