#149 月夜に吠える

5-1a オラン下町

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オラン下町・事件現場周辺
冒険者達は詰め所を出て、事件があった現場の近くまで歩いてきた。
東の空には月齢13の月が輝いている。
この辺りは完全な下町で、家々には明かりが灯っている。
おそらく夕食の団欒中なのだろうか、家の中から子供の騒ぐ声なども聞こえてくる。
そして通りには家路を急ぐ人々が幾人かいるようだ。
彼らは一様に少々緊張している様子が見られる。
たぶん、怪物騒ぎの所為だろう。
■ウリディケ To:ALL
月が明るいわ、明後日には満月になってしまいますね。
今日中に誘き出せれば、最高なのですが。

ナナイの鞍上で、甲冑姿にマント代わりの神官衣をまとったウリディケが、僅かに欠けた月を眺めて、溜息をついた。
ナナイにも緊張が伝わったか、白馬の歩む動きにゆとりが無くなっている。
背負った白雪色の大剣は、月明かりに照らされ青白い光を放つ。
ウリディケはふと、街を騒がす「獣」より、幽界の輝きを放つ魔剣の方がずっと禍禍しいのではないかと感じた。
酒場に聞き込みに行ったカロンとも別れて、いよいよ見回りが始まった。
目先には、先行した囮役のメイシアスの姿も見える。今のところは、囮にも異常は無いようだった。
ウリディケと共にナナイの鞍にまたがり乗っているノーブは、囮役になっているメイシアスの周辺周囲に異常が無いかを、注意深く常に気を配っている。

メイシアスの目には、石畳に黒くなった血の跡をぽつぽつと見ることが出来た。それほど大量な血が流れている訳ではなく、ずっと辿れる程血の跡が残っている訳にはいかなかった。
辿れる範囲では、街の外方面に向かっていて、途中で途切れている。
■ファラハ To:ALL
この辺りが一昨日の2件の現場になります。
昨夜の事件はここから二本ほど通りを隔てた所になりますね。
実際に事件が起こったのはもう少し遅い時間になります。
これからどうされますか? 皆さん。

■ウリディケ To:メイシアス>ALL
メイシアスさ〜ん、ちょっと戻ってきて〜、ここがおとといの現場ですって〜。
昨日の事件も、目と鼻の先ね。

メイシアスがウリディケの声に反応して引き返してくる。
■メイシアス To:ウリディケ>ALL
ほえ〜ここがですか?
特に変わった物とか気配は…今のとこ無さそうですね。

■エルステッド To:ALL
見た目は確かに……

そうつぶやきつつエルステッドは周囲の精霊の気配を感じてみた。
ウリディケは、白馬から降りると、メイシアスが戻ってきたところで相談をもちかけた。
■ウリディケ To:ALL
まだ、出るまでに時間があるのでしたら、全員で聞き込みしましょうか?
ここが終わったら、更に昨夜の現場の方も聞き込みできそうですけど。
それとも、見回りを続けた方が良いかしら?

■メイシアス To:ALL
聞き込みですか?了解です。
ついでに地理の確認ですね♪

しかし、ファラハの意見は異なっていた。
すぐにでも聞き込みを始めようとする冒険者達に、調書の精度の高さについて説明した。
「既に聞き込みは終えている」との衛視隊としての誇りが、その言葉を言わしめたのかも知れない。
■ファラハ To:ALL
ある程度、地域住民への聞き込みは既に終わっています。
おそらく新たな情報は期待できないと思いますが……。

ウリディケはファラハの雰囲気を見て、衛視隊が聞き込みをしていないはずがないことに思い当たった。
既に日は沈み月が昇っている状況での聞き込みは、相手の心象を損ねる可能性もあり、あまり得策ではないような気がしてきた。
■ウリディケ To:ファラハ、ALL
なるほど……、それもそうね。
地理の確認は見回りしながらでもできますし、この周辺を調べたら、次の現場の調査に移りましょうか。

ウリディケは、聞き込みに同意してくれたメイシアスに、済まなそうな顔をしながら手振りで謝った。
しかし、調書の内容は不充分と考えるノーブは、ファラハの説明に噛みついた。
■ノーブ To:ファラハ
一つ尋ねるが事件の現場の遺留品の捜索もしくは現場の保全は出来ているのかのぅ?

ノーブは、盗賊の技も持たない素人同然の兵士達による捜索に疑問を持った。
だが残念なことに、人間社会には冒険者以外の職業があるということに思い至らなかったようだった。
ウリディケは、ノーブに人間社会の常識について語り始めた。
■ウリディケ To:ノーブ
ノーブさん、人間社会には「探偵(ディテクティブ)」とか冒険者の技に迫る職業もありますのよ。
衛視さん達は訓練を受け経験を積んだ立派な「職人」よ、決して只の兵士ではありませんわ。
ドワーフさん達の常識ではどうか分かりませんが、これでもまだ疑問ですか?

■エルステッド To:ノーブ
少なくとも、ヒトの街では彼らの方がより詳しく現場を知ることが出来たと思うが…

ノーブの、調書に対する不信感を感じたのか、少し眉を顰める。
■ファラハ To:ALL
えっと……。あの。
一応回収できた遺留品は全て詰め所にあります。
現場の保全と言いましても、沢山の人が通る往来ですから、いつまでも封鎖している訳にも行きません。
遺留品の回収が終わると同時に、封鎖は解除しています。

■ノーブ To:ファラハ
ふ〜む現場を幾ら探しても無駄足になるのかのぅ?普通なら「獣」の変身した衣服の切れ端も残るかと思うのじゃがそれも見つけられんとはどうも腑に落ちんのじゃちぃと改めて確認するのじゃが貴殿ら衛視隊の遺留品の捜索範囲を教えて貰えんかのぅ?

■メイシアス To:ノーブ>ALL
まだ「獣」がワーウルフだと断定されてませんよ?可能性は極めて高そうですが…Uu
普通の迷い狼の可能性もありますし…もしかしたらお家で落としてきたかもしれません。あとは…変身した場所と現場が遠すぎる場合とかでしょうか?
必ずしも『有る』とは限らず、あればいいなぁ〜程度の物です。頑張ってる人達を非難しては可哀想ですよ。

21時までまだ時間があるようなら…血の足跡が向いてる方向へ軽く散歩してるのも良いかもしれませんね♪

そう言うメイシアスの指の先には、石畳に黒くなった血の跡が続いていた。
■ウリディケ To:メイシアス>ALL
流石ね、早速見つけてるなんて。
しばらくは、これをつけて見ましょう。

こうして、一行は「血の足跡」を追跡することにした。
とはいえ、すぐに跡はなくなっていたが、更なる手掛かりを探し始めた。

しかし、先ほどのメイシアスの控えめな言葉も、ノーブには「非難めいた発言」に聞こえていた。メイシアスに「何が言いたいのか良く分からない」反論した後、ファラハには詰め所で聞き忘れた「衛視隊の誰がワーウルフだと鑑定したのか?」の質問をした。
■ノーブ To:メイシアス>ファラハ
ここは森や草原ではないし街中なのじゃ迷い狼なんていくらなんでもありえないのじゃ
さて断定の話が出ておるし件の「獣」の毛はどなたかが「ワーウルフ」と鑑定して断定するのかのぅ?

■エルステッド To:ノーブ
私の聞いた情報が確かならば。その「毛を鑑定した」のは、たった今発言した御仁ではないのか?
疑い深き者は、己の発言すらも疑うのか?

エルフ故か。ノーブを見る目はやや冷ややかだ。
■ファラハ To:ALL
私が判断したと言いませんでしたっけ?
この話は既に2,3回したような気もしますが、もう一度だけ言います。

目撃証言、遺留品としての通常より遙かに大きな狼と思われる体毛。
これらの状況証拠からある程度断定させて貰いました。

もし、その断定が間違えていた場合は私個人の責任であり、皆さんには全く責任はありません。

何度も言った気もしますが、今からでも依頼を降りて頂いても当方は全く構いませんが。

そう答えるファラハの声は冷静だが、月明かりに映える彼女のこめかみは、心なしか、引きつっているように見える。
内心は非情に怒っているのかもしれない。

そんなノーブとファラハの会話も右から左に聞き流し、「血の足跡」の捜索を続ける。
「血の足跡」の方は、夜であっても月明りは充分に明るく、特に松明などを使用せずとも地面を捜索できた。
その足跡は被害者の返り血が付いたもので、かなり大型の狼の足跡が徐々に薄れていって5mほど行ったところで消えていた。その先は、次の現場に向かっているようだ。

ウリディケの背中には、「誘き出すのが目的」と言いたげな視線が集中するのを感じた。
■ウリディケ To:ALL
う〜ん、これ以上は追えないわね。
仕方ありませんわ、皆さんの言う通り、歩いて相手が出て来るのを待ちましょう。

こうして、次の現場に向かって更にのんびりと歩きだした。
■エルステッド To:ALL
夜は長いからな。

極力平静を装っているが、その手にはしっかりとメイジスタッフが。

更に20m進み、次の現場についた。
辿れる範囲では、街の外方面に向かっていて、途中で途切れている。
■ファラハ To:ALL
まだ夜も更けていませんし、ワーウルフも出てこないのでは無いでしょうか?
もう少し待ってみた方が良いかもしれませんね。

■ウリディケ To:ファラハ、ALL
そうね、そろそろカロンさんも聞き込みが終わる頃でしょうから、酒場に行って見ましょうか?

一行は、カロンと合流すべく『あまやどりガエル』亭へと向かった。

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GM:teshima