前のページへ | 次のページへ |
【ケムセラウト村】
カンカンカンカンッ!
日が昇るまであと小一時間といったころ、警鐘と共に、屋根に上って見張りをしていたハンターの声が響いた。
■ジン To:ALL |
・・・来たか。 みんな、起きろ!奴らが来たぜ! |
■リフィル To:ジン |
了解…直ぐ出ます |
■シジリカ To:ジン |
う、うぅ〜ん (バシバシ) どっちからか分かりますか? |
■ハンターA |
敵襲! 敵襲ー――! 南東の方角から! 数は……ゴブリンが2、コボルドが4、えっと……ホブゴブリンが1! |
■ジン To:ハンターA |
作戦どおり、逃走後は追跡を頼む! とりあえず矢を射掛けるくらいの抵抗はしておいてくれ! |
■ハンターA To:ジン |
了解です! こっちは任せてください! |
■ハンターB |
こっちもだ! 北東から同数の敵が接近中! やべえ、やべえよ。あそこにはまだナツミ(鶏)やさっちん(牛)が…… |
■ジン To:ALL |
ちっ、まだ家畜が残っていたのか・・・。 どうする?ここの戦力を北東に割くか? だが・・・ゴブリンの数が少ない。 山側から本隊が攻めてくるかもしれんぞ。 酷とは思うが、俺は北東は諦めてもらいたいが・・・。 |
■リフィル To:ジン |
取り敢えず、本体が来る可能性は否めませんが、来るまでにホブゴブリンを黙らせれば、何とか成ります 幸い、コイツラには魔法が効きますから、いざと成れば…家畜諸共眠らせる手段もアリでしょう。 自分が向こう(東北)に向かいますので、此処はリールォンさんが居れば戦力的には問題ないはずです |
■ジン To:ALL |
ふむ・・・では、リールォンを残して北東を援護するか。 しかし万一の中央区襲撃の時には、リールォン1人では多数の敵に対応するのは困難だな・・。 では、魔法による一撃離脱作戦はどうだ? 戦場に着いたら、まず俺が「眠りの霧」で敵全体を攻撃する。 魔法が効いても効かなくても、俺はその攻撃が終ったら戦場を離脱し、中央区に戻る。 万一、東北の戦闘中に中央区が襲撃されても、リールォンと俺で皆が中央区に戻るまで時間稼ぎをする・・・。 どうだろう? |
■シジリカ To:ジン |
うん、それでいいと思うよ 僕も呪歌でサポートするね |
■リールォン To:ALL |
わかりました。 北東の守りは任せてください、ぜったいに村に犠牲は出させません。 |
■ジン To:リールォン>シジリカ |
ああ。すまんがよろしく頼む。 呪歌か・・・そういえば、俺は音を特定の範囲に絞る術が使える。 何かいい作戦があれば言ってくれ。 |
■リフィル To:ジン、ALL |
判りました では、取り敢えず、北東を鎮圧しに急行し、敵の本体が来れば其方に向かう方向で あと、怪しげなヤツがいれば、そいつを優先的に狙うと… しかし、こぅも見事に裏を懸かれるとは…、姿を消して先導をしてるヤツでも居るんでしょうか? |
(取り敢えず、言いたい事は言ったので、北東に急行)
■ジン To:ALL |
確かに、陽動にしては2部隊の襲撃タイミングがおかしい。 最初から獲物の場所を知っていたとしか思えんな。 |
■ハンターB To:ジン |
くッ! 出来れば俺も向かいたいところだが…… |
■ジン To:ハンターB |
いや・・・あんたはリールォンとここに残った方がいい。 山側から襲撃があったら、すぐに知らせてくれ。 |
■ハンターB To:ジン |
……わかった、信じてるぜ。 皆を……頼む。 |
リールォンを中央区に残し、北東区に向かったジン、リフィル、ウォルフ、シジリカ。
4人が北東区に駆けつけたとき、まさにゴブリンたちが家畜小屋に手をかけようとしているところであった。
4人を発見したゴブリンたちは、夜空に向かって咆哮をあげると、武器を構えて襲い掛かってきた。
■ジン To:ALL |
ふむ、見事な散開陣形だな。 まるでこちらに魔法使いがいることを知っているかのようだ・・・ |
ジンの唱えた眠りの雲によって、ウォルフに向かっていたゴブリンと2体のコボルドが眠りについた。
シジリカは走り寄ってきたゴブリンを迎撃し、手傷を負わせた。
横合いから突き出されたウォルフの一撃も、確実にゴブリンにダメージを重ねている。
リフィルはホブゴブリンに攻撃するも、慣れない闇夜での戦闘のため、思うように攻撃を当てることが出来なかった。
ゴブリンと2体のコボルドに集中打を浴びるシジリカだが、闇夜の中とはいえ所詮は下級妖魔の攻撃。難なく回避に成功している。
リフィルも、持ち前の身の軽さでホブゴブリンの攻撃をかわした。
■ジン To:ALL |
予定の半分ではあるが、これで充分だろう。 俺は中央区に戻る。 あとは頼んだぞ。 |
当初の予定通り、ジンは戦場に背を向け、中央区に向けて走り出した。
ウォルフは光の精霊を呼び出し、戦場を照らし出す。
突如、背を駆け抜けた悪寒に、ジンが戦場を振り返った。
そこには西の方角からまっすぐに戦場に向け飛来する“闇の塊”があった。
闇の塊はウォルフの生み出したウィル・オー・ウィスプを飲み込み、戦場を完全に覆い隠した。
シジリカ・ウォルフがゴブリンたちの攻撃をかわした、まさにそのときのことだった。
リフィルは闇の中に身をおきながら、培われた戦いの勘で間一髪ホブゴブリンの攻撃をかわした。
しかしながら先ほどよりもより濃い、自分の手のひらすらも見通すことの出来ない闇の中では、闇雲に武器を振り回すことしか出来ず、リフィルもシジリカも攻撃を当てることが出来ない。
ジンは激変した戦況に足を止め、センスマジックを唱えた。
また、センスオーラ、インフラビジョンを併用し、敵術者を探す。
結果、闇が飛来した方角に、二つの人影を発見した。
■ジン To:ALL |
北西200mに魔力の発動体反応。 おそらく敵の術者だろうが、すでに逃走中だ。 この距離では追撃は間に合わん。 まずはこいつらを片付けよう。 |
ウォルフは闇を相殺しようと、再びウィスプを召喚するが、ウィスプは召喚された途端に闇にかき消されてしまった。
リフィルは来るべきホブゴブリンの攻撃に備えていたが、闇にまぎれたホブゴブリンの牙にかかり、傷を負ってしまう。
ゴブリンに打ちかかるシジリカだが、やはり闇の中ではゴブリンに分があるようで、攻撃はむなしく闇をきった。
ウィスプでも消せなかった闇を打ち消すため、ライトを唱えたジン。
魔法が発動した瞬間、闇と光が相互干渉し、消滅した。
闇が明けた場所にあったのは、中心に突き立った一本の矢と、逃げようとするゴブリンとコボルドの姿だった。
■ジン To:ALL |
眠らせた奴は起こされたな。 どれでもいい、生きたまま捕獲できるか? 最低でも1匹は欲しい。 |
視界をより確かにするため、ウォルフは三度ウィル・オー・ウィスプを唱えた。
戦場が、光に包まれた。
ただ一人逃げずに戦場に留まっているホブゴブリンは、逃げようとするゴブリンに踊りかかるシジリカの前に立ちふさがった。
ホブゴブリンの攻撃をかわし、一撃を打ち込んだシジリカだが、ホブゴブリンにダメージを与えることは出来ない。
リフィルの攻撃も、失敗に終わった。
戦況はパーティの優勢で続く。
頑健なホブゴブリンとはいえ、仲間が逃げ出し、たった一人で戦い続けては勝ち目はない。
蛮勇とも言うべき勇猛さで戦い続けていたホブゴブリンであったが、ついに力尽き倒れてしまった。
しかしながら、倒れ行く彼の表情は、どこか満足げに見えた。
前のページへ | 次のページへ |