商会で聞き込みを終えたカーガッドらは、領主の館に戻ってきました。夕餉の時間まではまだ間があるらしく、冒険者達は茶と菓子が用意された談話室へと案内されます。
程なくして領主代行のタティアが現れ、奥の席に腰掛けました。
■タティア To:ALL |
さて、早速だが報告を聞かせて貰いたい。 何か新しい情報を得たと見うけられるが? |
■カーガッド To:タティア |
ええ、色々と情報が入ってきました。 まず、東の詰め所管内で8日前に殺人事件が発生してます。 男女が刺殺されていたらしいのですが、衛視達はちゃんと捜査せずに、 痴情のもつれとして処理しています。 我々が事情を確認したところ、凶器の使い方などに不審な点が見られ、 今回の事件と何らかの関係があるのではないかと考えられます。 あと……、その事件を担当した衛視とレイモンド商会副会長のバルドー氏が 懇意にしていることも分かりました。 なお、バルドー氏はスラムの人間を積極的に雇用しているようですね。 それで、殺人事件で殺された男の方がスラムの人間らしく、身元不明と されているのですが、鉱山で働いているスラムの人間に7日前から無断 欠勤している人がいて、殺された男はこの人ではないかと思われます。 さらに、スラムから雇用されてた人間はバルドー氏の手下同然になっているようです。 あと、バルドー氏が何者かに狙われていると本人が信じているようですね。 その根拠として、赤い目をした少女がスラムの「灰色の猫」亭という酒場に やってきて、バルドー氏の似顔絵を見せ、彼を捜していると言ったそうです。 しかも、その少女に睨まれたら身動きが取れなくなった人が居たそうですね。 もしかしたら、この少女がレッサーバンパイアと何らかの関係があるのでは無いかと思われます。 出来ればこの後、その件を「灰色の猫」亭に聞き込みに行こうかと思っています。 |
そう言って、タティアの表情を一瞬うかがい、最後に
■カーガッド To:タティア |
あとは、街の方に向かった仲間達の成果がどうだったかが気になりますね。 |
と付け加えた。
■カーガッド To:ALL |
そろそろ夕方ですし、街へ向かった方々も戻ってくる頃でしょうね。 我々の得た収穫は先程お話したとおりですし、少し待ちましょうか。 |
と言って、出されたお茶を一口飲んだ。
やがて、街での聞き込みを終えた三人も帰ってきた。
■ウォルフ To:タティア |
ただいま戻りました。 8日前に殺人事件が起こっているのですが、どうやらその一件が事件と関わりがあるようです。 殺人事件の現場には、大量出血の跡らしい黒いシミが二ヶ所あり、片方の黒いシミの中央には土色の短い溝がありました。 そこはダガーか何かを突き刺した跡のようにも見受けられ、溝の中心には薄い鉄片が埋まっていました。 その鉄片は土の中に埋まっていたひびが入ったこぶし大の石の、丁度ひび割れた部分に突き刺さっていました。 鉄片は、凶器のナイフの先端の欠損部分と一致しました。 これは推測ですが‥‥魔法でストーンサーバントに変えられていた石に対して凶器のナイフを突き立てたのではないかと思われます。 問題は、このナイフを使ったのが誰かという点なのですが‥‥。 死んだ二人に対してはもちろん、ゴーレムに対しても使われていることから、第三者がいたのではないか、と考えることもできます。 また、何故、石が土の中に埋まっていたのかも気にかかるのですが‥‥。 |
そこで一旦言葉を区切ると、
■ウォルフ To:タティア |
この街でストーンサーバントを作れるほどの術者となると、自ずと限られてくるように思われるのですが‥‥。 |
そう言って、タティアの表情を窺がうウォルフ。
■タティア To:ウォルフ |
「この街で」ということに拘るなら、たしかに限られるな。 本当にその魔法が使われたと、仮定して考えた上での話だが。 |
■ウォルフ To:タティア |
続いて亡くなったナタリエさんに関してですが‥‥。 ナタリエさんが住み込みで働いていたルーベルト雑貨店のハインツさんにお話を伺ったのですが‥‥。 ナタリエさんにはサリアさんという13歳になる娘さんがいるそうです。 そのサリアさんが現在行方不明なのですが‥‥。 ナタリエさんが亡くなった日、買い物に出たサリアさんが、戻ってこなかったそうです。 まず、その夕方、三人の男がナタリエさんを訪ねてきたそうです。 そしてその夜、気が付くとナタリエが居なかったそうです。 ナタリエさんが大切にしていた、銀の短剣もなくなっていたそうです。 事件の次の夜、サリアさんは一旦帰ってきたそうですが、また出て行ってしまったそうです。 その際、サリアさんは自分を死んだものと思ってくれと、自分のことを誰にも話さないで欲しいと、そう言っていたそうです。 そしてここからが重要なのですが‥‥ サリアさんはずっと俯いたままで視線を合わそうとせず、血の気の引いたような青白い肌をしていたそうです。 |
そう言って、一息つくと更に言葉を続けるウォルフ。
■ウォルフ To:タティア |
ナタリエさんと一緒に亡くなった男性については、官憲の見立て通り、スラムの人間だろうというくらいしかわからないとのことですが‥‥。 ただ、ナタリエさんがいなくなる前に、この店の前でその男を見かけた気がするそうです。 その時、1人ではなく、2人連れか3人連れだったそうです。 我々が掴んだ情報は以上です。 |
そう言うとウォルフは一気にお茶を飲み干した。
■タティア To:ALL |
なるほど...。うん、やはり諸君に依頼したのは正解だったようだな。 この調子で、無事に解決してくれることを期待している。 さて、晩餐の支度もととのったようだ。存分に鋭気を養ってくれ。 どうやら...永い夜になりそうだからな。 |
食事を取りながらも情報の共有化に余念のないパーティー。
■ウォルフ To:ALL |
‥‥そうするとその「灰色の猫」亭に現れた少女が、サリアさんである可能性が高いようですね。 |
食事を取りながらそう静かに語るウォルフ。
■ランバート To:ALL |
あとは、サリアさんが噂のレッサーバンパイアである可能性も、ほぼ間違いないのではないでしょうか? 後は、何故彼女がバルドー氏を捜しているのか? これが解れば、殺人事件の件からバンパイアの件まで、全て明らかになりそうですね。 |
■ウォルフ To:ALL |
‥‥母を亡くし、その復讐のためにレッサーバンパイアの力を得たのだとしたら‥‥悲しすぎますね‥‥。 |
ポツリと呟くウォルフ。
やや感傷的になっているようである。
■アズラ・ラ・ライト To:ALL |
ふと思ったんでしが、サリアさんがレッサーバンパイアだった場合に、サリアさんをレッサーバンパイアにした者がいるかも知れないんでしよね? となると、サリアさん以外にも不死の者がいるかも知れないって可能性はありますですよね。 ……まあ、他にいるかどうかはサリアさんの事を解決してからでもいいとは思うんでしが。調べてる内にその辺の事も解るかも知れないですしね。 |
■カーガッド To:アズラ&ALL |
確かに、その可能性はありますね。 しかし……今のところサリアさんから辿っていくしかなさそうですね。 ともかく、まず「灰色の猫」亭でサリアさん関係の情報を聞くことから始めますか。 バルドー氏の名前を出したらスラムの住人達も協力的になるでしょうし。 とにかく食事が済んだら、急いでいくことにしましょう。 |
■キャス To:ALL |
確かにリーダーの言うとおりもう出発した方がいいんだろうけど、 ちょっとオレには分からないことがあるから、今のうちに少し教えて欲しいんだけど。 レッサーバンパイアになる方法って、バンパイアやレッサーバンバイアに襲われる以外に・・・あるものなのかな。 その、普通の女の子がレッサーバンパイアになろうと考えて、そんなすぐになれるものなのかなぁって思って。 まあ、その女の子に会えば分かるかもしれないけど、そんな1週間でね・・。 |
少し、タティアの方を向いて
■キャス To:タティア |
例えばこの町のどこかに行けば、力を与えられるとか、復讐ができるとかいう言い伝えや噂とかは無いですよね。 |
■タティア To:キャス |
そのような物騒な噂に覚えはないな。 そもそも、力などは日々磨き高めていくことで使いこなすことができるものだ。血のにじむような努力があってこそ、優位を得られるというもの。 与えられた力など、よほど心が強くない限り、それに溺れて破滅するか、それに呑まれて自滅するのが関の山だろう。 |
■ウォルフ To:ALL |
‥‥全てはサリアさん次第、ということですね‥‥。 |
そう呟くと思案気な面持ちでお茶に口をつけるウォルフ。