落ち葉の山から飛び上がった白い人影は、10mほどの上空でボロボロの翼を開き停滞します。
外皮は白いゴムのようで、強靱そうな両脚の間からは細長い尻尾が垂れ、両腕の先は刃物のように尖っています。
凹凸のない頭部には2つの眼球が埋まり、そのなめらかな表面を滑るように動き回ってあたりを見渡します。
その姿は少し離れた位置にいるアルテナやクレフからも見えます。

アルテナはイルミナ達の元に走ります。

怪物は近くの太い枝に降り立つと顎のあたりまで眼球を滑らせ、イルミナを見下ろしました。
目の位置はそのままに顔の中心付近に口が現れます。

アルテナもイルミナたちの元に到着しました。

怪物は木の上から3人を見下ろしたまま呟きます。

怪物は上位古代語の呪文を唱えます。

怪物が呪文を唱え終わるとイルミナ、リシィア、アルテナの周囲に眠りの雲が発生し、イルミナがその場に崩れ落ちます。
そしてそれを確認すると、怪物は翼を広げ、接近戦闘用の武器を持っていないリシィアめがけて飛びかかりました。

アルテナはリシィアをかばって滑空してきた怪物の手刀をブロードソードで受け止めます。着地した怪物は続けてアルテナに反対側の手刀を繰り出しますが、これも回避しました。

その間にリシィアは眠ったイルミナを起こします。

目を覚ましたイルミナはすぐさま体制を整えます。

クレフが召喚したバルキリーが放った光の槍は怪物の肩に突き刺さります。
怪物の心中は定かではありませんが、怪物は顔の表面にもう一つ目を出現させると光の槍の飛んできた方を見ます。

思ったよりも手強いと感じたのか、怪物は驚くべき跳躍力で再び空中に逃れます。

再びクレフ頭上に戦乙女が出現し、怪物に光の槍を発射します。
槍は腹部に突き刺さり、怪物は空中で大きく体勢を崩しました。

リシィアは空中の怪物に向かってフォースを唱えます。
怪物はさらなる攻撃魔法に気づくと空中で両腕を交差させ耐衝撃姿勢をとります。
リシィアから放たれた衝撃波は怪物を捉え、空中で爆発が起こりました。

イルミナはロングボウを構えると、まだ爆煙の中にいる怪物に向かって矢を放ちます。

視界が晴れると爆発に耐えた怪物が姿を現しますが、さすがに無傷とはいかず、ところどころ負傷しています。
イルミナの矢は偶然にも手刀の部分に当たったようで、ダメージを受けた様子はありません。

形勢不利とみた怪物は空中で方向を変え一度羽ばたくと、ものすごい速さで森の奥へと遠ざかっていきます。
イルミナはぐんぐん小さくなっていく怪物の背中めがけて矢を放ちますが、怪物に到達した時には既に外皮を貫くほどの威力はありませんでした。

怪物は60mほど滑空して森に降りました。
着地地点の木からカラスが一斉に飛び立ちます。
それっきり、森にはもとの静寂が訪れました。

と言ってクレフは立ち上がり、マントに包まります。

テスラは空を見上げると返答します。

アルテナはマントを着せたまま、テスラを背負います。