翌朝 10 時。天気は曇り。すぐに雨になりそうではないが、この後崩れそうな感じで肌寒い。
ロゾニィ屋敷は深い森に囲まれている。しかし屋敷までは馬車が 2 台並んで通れるほどの広い道が開かれていて、不便というほどではない。しばらく歩くと、背の高い鉄の棒を組み合わせた柵が見えてくる。高さは 3 メートルほどだろうか。
それから程なく、手に手にお弁当を持った 6 人はロゾニィ屋敷前に集合した。

屋敷の門には昨夜のように 2 人の男がいるが、交代した後のようで別の人間に代わっている。6 人の中にシャノンを見つけると、笑顔で挨拶してきた。

続けてエアヘッドが、偉そうに軽く手を挙げながら門の中に続く。レヴィックもその後につづく。さらにフィオンも続く。門番が交代してて良かった〜とか内心思いながら。昨夜の門番に会うのはさすがにまずいと思うのだ。

門を通ると正面に屋敷の玄関が見える。その後ろ側が庭になっているようだ。今は香りの高い秋薔薇の季節だが、薔薇の香りは全く感じられない。門の横の空間には、立ち枯れている何かの植物の茎が所々、膝の高さほどに寒そうに立っている。

弁当に自信ありらしい。

屋敷は赤い屋根に茶色のレンガの壁の可愛らしい作りだった。正面に見える 1 階の窓は、すべて板が打ちつけられている。玄関には板はないが、扉はピッタリと閉まっている。

多分……という感じで場所を指ししめす。

フィオンの何気ない言葉に、またちくりと胸が痛むシャノンであった。

玄関から右回りに庭を回ることになった。すぐに目についたものがある。

屋敷の右手には、掘建て小屋がある。幅 3 メートル、奥行き 2 メートル、高さ 2 メートル位。物置にでも使われていたのだろうか。屋敷側の壁に入り口があるが、窓はないので、小屋の中を伺うことはできなかった。

エアヘッドは、さっそく小屋の扉をガチャガチャあけようとする。レヴィックは意外とすばやいエアヘッドの行動に驚きつつも、とりあえずその後方 5m ほどで見守ってみる。生贄の羊は 1 頭でいいらしい。

と声はかけるがやはり後方で見守るフィオン。

その間に、エアヘッドがガチャガチャやっていた扉はすんなりと開いてしまった。鍵はかかっていなかったようだ。罠もない。

小屋の中には、庭仕事の道具や大工道具などが置いてあった。

と、後ろから覗き込むが中が埃っぽそうなのを察してか入る気は全くないらしい。エアヘッドは、剪定バサミを両手に持って、「ちょきちょき〜」と振り返った。

シャノンも覗き込むだけで入る気は全くないらしい。エアヘッドは、何か液体の入った壷をひっくり返している。

ちょうどエアヘッドが、壁に立てかけてあった鍬を蹴り飛ばしたところだ。
すっとフィオンが小屋に入ってくる。
埃のつもり具合や、足跡などを注意してみた後―――

ソーサラーが本業ならわからなくても当然なんだろうが、フィオンは申し訳なさそうな顔をした。
本職のシャルルが後を引き継いて調べる。

指差しながら解説する。でもエアヘッドのお陰で埃が舞いあがっている。

シャルルを小屋に残し、屋敷の周囲を回る間に、ユウルとレヴィックはこの屋敷の方へ森から侵入した形跡があることを見つけた。

3 ヶ所見つかった道のうち、比較的新しい真ん中の獣道を指し示した。

一行は庭をぐるっと一回りして、最終的に玄関の前まで戻ってきた。窓の下を調べていたシャルルと合流する。

レヴィックは玄関前にいくつかある足跡の中に、比較的最近のものを見つけた。

シャノンはつかつかとファリス神殿の番人に向かって歩いていく。

するとエアヘッドは、人差し指を1本立てて「ちっちっちっ」という素振りをした。一旦、ぐるっと仲間を見渡すと、右手でシャルル、左手でフィオンと手をつなぐと、門の方に歩き出して「もへ〜ん」と笑った。

相談の結果、屋敷内部の調査をする前に全員でファリス神殿に戻ることになった。神殿までは片道 1 時間。再び屋敷に戻るのは午後になっているだろう。お楽しみのお弁当会はそれまでお預け。